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第384回。帰りマン感覚。
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言葉にしづらい、けど、なんかこの感覚…!っていうとき、ない?
伊集院さんのラジオ、特に深夜の馬鹿力を聞いてる人は
空脳
って言えばわかってもらえるかも。
空脳と書いて「そらのう」と読みます。思わずウッカリ聞き間違えたのが空耳っていうように、脳みそがウッカリしちゃって、なんか記憶そのものもうんにょりしちゃってる、そんな感覚を言い表す
空脳
という便利で素敵な言葉。
それに類するかどうかはわからないけど、私にも私なりの、そういう感覚を得たときに発する言葉がある。
それが帰りマン感覚。
帰りマン=かえりまん、とは、帰ってきたウルトラマンのこと。
帰ってきたウルトラマンとは、ウルトラQから続くウルトラシリーズ第4作。
ウルトラ兄弟の4番目のお兄さん。
ジャック、新マン、ウルトラマン二世などとも呼ばれている。
この帰ってきたウルトラマンで劇中用いられた映像のように、なんだかキラキラしていて影があって、見ていると不思議な感覚に陥りそうな風景や写真をさして
帰りマン感覚
と呼ぶことにしているのです。
どういうことかって?
帰ってきたウルトラマンを見たことがある人には
第47話「狙われた女」に登場した ひとだま怪獣フェミゴン の話
とか、ああいう回に見られる、にぎやかな街と対照的な暗い場所に蠢くナニカ、を浮き上がらせるかのようなシーン、と言えば伝わってくれるのではないだろうか。
帰ってきたウルトラマンってやっぱり独特で、日本は経済成長真っただ中の、世の中が右肩上がりだったころの日本の話。だからギラギラ明るいネオンの陰は果てしなく底なしの暗闇で。
その暗闇の奥の方で沈殿した化学物質同士がスパークしたような鈍く一瞬の輝きが確かに網膜に焼き付いて暫く深緑色のあざが視界に残るような、そんな感覚。
とにかく、これが帰ってきたウルトラマンの魅力であり、底知れぬ恐ろしさでもあり、それが美しいとも感じるのだ。
たとえば名作中の名作・怪獣使いと少年。
善良な宇宙人であるメイツ星人は地球を調査するためやってきたが、大気汚染のせいで体が病に蝕まれてしまい今や立つこともやっとの有様。しかし、彼は少年を助けるために巨大魚怪獣ムルチを自身の力で河原に封じ込めたため、その場を離れるわけにもいかなくなっていた。
ふるさとの星に帰るためには、その宇宙船に乗ればいいのだが…もはやその力さえ残されておらず、しかも彼が居なくなれば封印が解けてムルチが…。
そのメイツ星人は金山(かなやま)と名乗り、やはり身寄りのない地球人の少年と河原のバラックでひっそりを暮らしていたが、そこへ少年が宇宙人ではないかと疑う市民が押し寄せてきた。人間が人間の子供を殺そうとするのを必死で制止する郷秀樹。リンチにかけられそうになる少年。
やめろ、やめてくれ!宇宙人は私なんだ!!
そこへ現れた金山老人。顔は醜く爛れ、惨めな服装をしたその老人を、警官が射殺してしまう。
金山老人、いやメイツ星人は死に、やがて豪雨の中ムルチが蘇生し暴れ狂う。どす黒い炎を上げる街を片っ端から破壊しながら。
とまあ、そんな話。明るさのかけらもない、陰惨極まりない話なのだが、この帰ってきたウルトラマンと怪獣ムルチの戦闘シーンは、いつものウルトラマンが戦う際に流れる軽快なマーチではなく、重厚なMATのテーマ。通称ワンダバコーラスと呼ばれるこれが流れているということは、この戦いは帰ってきたウルトラマンではなく、人間・郷秀樹の戦いでもあった。
命がけで守ってきた地球は人間によって汚され、命がけで守ってきた人間は自らの手で罪のない命を奪い、子供まで手にかけようとした。一度は絶望した郷秀樹=ウルトラマンだったが、虚無僧姿の伊吹隊長に喝破され再び戦う決意を抱きウルトラマンに変身する。
ウルトラマンとしての意志、地球の危機ではなく、郷秀樹として怪獣を戦うことを決意した。
その証明がワンダバコーラス=人間と怪獣の戦い、というわけだ。
降りしきる雨の中で燃え上がる炎の中で崩れ去っていく街。それを左から右へパーンしながら進むカメラ。
ウルトラマンと怪獣の濡れた体に反射するオレンジの炎。
美しい炎。
ワンダバコーラス。
爆発する建物。
炎。
吠える怪獣。
ワンダバコーラス。
炎。
ウルトラマンの眼。
炎。
ムルチの赤い眼
ワンダバコーラス。
炎。
呆然と見守る視聴者…もとい私の脳裏に刻まれた、豪雨と炎とウルトラマンの白く光る眼と、怪獣ムルチの赤々と光る眼。
これと、さらに帰ってきたウルトラマンのオープニングや変身時の背景、あの琥珀色のキラキラ。
あれが重なり合う。
琥珀色のキラキラが回転しつつ、不思議な効果音が鳴り響くあのイントロ。
そしてオープニング。
キラキラキラキラキロキロキロカロコロキラコロ…という何とも言葉にしづらいあの音。
ああ、もう1900文字を超えてしまった…!
他にもゴキネズラの時のピエロが迷い込んだ夢の島や、ミステラー星人、と不可思議感覚満載の帰ってきたウルトラマン。皆さんも是非ご覧になっては如何でしょうか。
伊集院さんのラジオ、特に深夜の馬鹿力を聞いてる人は
空脳
って言えばわかってもらえるかも。
空脳と書いて「そらのう」と読みます。思わずウッカリ聞き間違えたのが空耳っていうように、脳みそがウッカリしちゃって、なんか記憶そのものもうんにょりしちゃってる、そんな感覚を言い表す
空脳
という便利で素敵な言葉。
それに類するかどうかはわからないけど、私にも私なりの、そういう感覚を得たときに発する言葉がある。
それが帰りマン感覚。
帰りマン=かえりまん、とは、帰ってきたウルトラマンのこと。
帰ってきたウルトラマンとは、ウルトラQから続くウルトラシリーズ第4作。
ウルトラ兄弟の4番目のお兄さん。
ジャック、新マン、ウルトラマン二世などとも呼ばれている。
この帰ってきたウルトラマンで劇中用いられた映像のように、なんだかキラキラしていて影があって、見ていると不思議な感覚に陥りそうな風景や写真をさして
帰りマン感覚
と呼ぶことにしているのです。
どういうことかって?
帰ってきたウルトラマンを見たことがある人には
第47話「狙われた女」に登場した ひとだま怪獣フェミゴン の話
とか、ああいう回に見られる、にぎやかな街と対照的な暗い場所に蠢くナニカ、を浮き上がらせるかのようなシーン、と言えば伝わってくれるのではないだろうか。
帰ってきたウルトラマンってやっぱり独特で、日本は経済成長真っただ中の、世の中が右肩上がりだったころの日本の話。だからギラギラ明るいネオンの陰は果てしなく底なしの暗闇で。
その暗闇の奥の方で沈殿した化学物質同士がスパークしたような鈍く一瞬の輝きが確かに網膜に焼き付いて暫く深緑色のあざが視界に残るような、そんな感覚。
とにかく、これが帰ってきたウルトラマンの魅力であり、底知れぬ恐ろしさでもあり、それが美しいとも感じるのだ。
たとえば名作中の名作・怪獣使いと少年。
善良な宇宙人であるメイツ星人は地球を調査するためやってきたが、大気汚染のせいで体が病に蝕まれてしまい今や立つこともやっとの有様。しかし、彼は少年を助けるために巨大魚怪獣ムルチを自身の力で河原に封じ込めたため、その場を離れるわけにもいかなくなっていた。
ふるさとの星に帰るためには、その宇宙船に乗ればいいのだが…もはやその力さえ残されておらず、しかも彼が居なくなれば封印が解けてムルチが…。
そのメイツ星人は金山(かなやま)と名乗り、やはり身寄りのない地球人の少年と河原のバラックでひっそりを暮らしていたが、そこへ少年が宇宙人ではないかと疑う市民が押し寄せてきた。人間が人間の子供を殺そうとするのを必死で制止する郷秀樹。リンチにかけられそうになる少年。
やめろ、やめてくれ!宇宙人は私なんだ!!
そこへ現れた金山老人。顔は醜く爛れ、惨めな服装をしたその老人を、警官が射殺してしまう。
金山老人、いやメイツ星人は死に、やがて豪雨の中ムルチが蘇生し暴れ狂う。どす黒い炎を上げる街を片っ端から破壊しながら。
とまあ、そんな話。明るさのかけらもない、陰惨極まりない話なのだが、この帰ってきたウルトラマンと怪獣ムルチの戦闘シーンは、いつものウルトラマンが戦う際に流れる軽快なマーチではなく、重厚なMATのテーマ。通称ワンダバコーラスと呼ばれるこれが流れているということは、この戦いは帰ってきたウルトラマンではなく、人間・郷秀樹の戦いでもあった。
命がけで守ってきた地球は人間によって汚され、命がけで守ってきた人間は自らの手で罪のない命を奪い、子供まで手にかけようとした。一度は絶望した郷秀樹=ウルトラマンだったが、虚無僧姿の伊吹隊長に喝破され再び戦う決意を抱きウルトラマンに変身する。
ウルトラマンとしての意志、地球の危機ではなく、郷秀樹として怪獣を戦うことを決意した。
その証明がワンダバコーラス=人間と怪獣の戦い、というわけだ。
降りしきる雨の中で燃え上がる炎の中で崩れ去っていく街。それを左から右へパーンしながら進むカメラ。
ウルトラマンと怪獣の濡れた体に反射するオレンジの炎。
美しい炎。
ワンダバコーラス。
爆発する建物。
炎。
吠える怪獣。
ワンダバコーラス。
炎。
ウルトラマンの眼。
炎。
ムルチの赤い眼
ワンダバコーラス。
炎。
呆然と見守る視聴者…もとい私の脳裏に刻まれた、豪雨と炎とウルトラマンの白く光る眼と、怪獣ムルチの赤々と光る眼。
これと、さらに帰ってきたウルトラマンのオープニングや変身時の背景、あの琥珀色のキラキラ。
あれが重なり合う。
琥珀色のキラキラが回転しつつ、不思議な効果音が鳴り響くあのイントロ。
そしてオープニング。
キラキラキラキラキロキロキロカロコロキラコロ…という何とも言葉にしづらいあの音。
ああ、もう1900文字を超えてしまった…!
他にもゴキネズラの時のピエロが迷い込んだ夢の島や、ミステラー星人、と不可思議感覚満載の帰ってきたウルトラマン。皆さんも是非ご覧になっては如何でしょうか。
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