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第383回。やぎバターがゆ
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って知ってる?
やぎバターがゆ、って聞いて何のことかわかったら相当のマザー通でありマザー2マニアだ。
マザー2通って言いたいだけなんだけどねコレは。
でも、やぎバターがゆ、美味そうでさあ。
このゲームで初めて遊んだのは多分小学2年くらい。
両親が離婚する寸前か離婚してすぐくらいに発売になった。
母と初めて一緒に遊んだテレビゲームでもあるんだった。
母子家庭で何かコミュニケーションを、と思ってくれたのか何なのか。
スーパーマリオワールドにもゼルダの伝説神々のトライフォースにも興味を示さなかった母だったが(後でわかったが母はアクションゲームは死ぬほど苦手だった)マザー2と新・桃太郎伝説と弟切草とダークシードと…あとセガサターン版のシムシティ2000などなどじっくりやるゲームは殊の外好きで、夜中まで一生懸命やっていた。初代マザーも家にあったが、あれも母が買ってきたものだった。
そんなマザー2、なんといっても回復アイテムが独特。
現代劇であるがゆえにハンバーガー、オレンジジュース、サンドイッチにピザ、さらには市場の露天で串焼きを買ったり、レストランでスープをテイクアウト出来たり、砂漠のど真ん中で行商人から高額の水を買わされたりする。
舞台はアメリカやヨーロッパをモデルにした街が多いのだが、中盤の山場としてその文化圏からは遠く離れた山間の国・ランマ王国が登場する。
チベットや中央アジア?をイメージした、高原にある小さな王国。
なので、ここだけ他の街や国とは明らかに違う。服装、地形、背景、風景、そして食べ物。
山のふもとに小さな食堂があって、そこで買うことが出来る食べ物に
やぎバターがゆ、がある。
なんとなく高原の食べ物っぽい。
やぎバターがゆ。
やぎの肉だってそうそう滅多に食うものではない。やぎのミルクだってそうだ。
そのやぎのミルクをさらにバターにしたものを使ったおかゆである。
私がこのゲームを自力で全クリできたのは、それから約2年後の事だった。
テレビゲームの攻略に2年かかったんじゃなく、厄介な元父親の方に手間取っていた…というかそれはこの先何年にもわたって続くのだが、この頃に最初のどん底が来た。
その時に入り浸っていたマザー2の世界で、私はやぎバターがゆを見つけたのだ。
同時期に、椎名誠さんの小説にも出会っていた。
母の本棚には椎名さんの文庫本がズラっとそろっていた。
エッセイからルポ、SFも青春小説も全部あった。
オババから哀愁の街、アド・バードも武装島田倉庫も、そしてあやしい探検隊もあった。
最初は「この人もプロレス好きなんだよ、アンタも読んでみる?」とひょいと借りた
あやしい探検隊 海で笑う
が気に入って、そのあとは自分でぐいぐい読んでいった。
だからこの文章も、頭クルクルパー小説も、椎名誠さんの影響はおそらく随所で見られるハズだ。
だって原体験がそうなんだもん。
そして、その中の一冊。草の海という本で椎名さんがモンゴルの遊牧民が使う移動式テントの中で暖かそうなお茶を飲んでいる写真が、私の頭の中でスパークした。
やぎバターがゆ。
そのお茶はスーテー茶なので確か牛乳だったんだけど、牛乳と塩の入ったお茶っていう響き、馬乳酒や羊の腸詰め、さらにはやぎのミルクと椎名さんの本にはランマっぽい食べ物がいっぱい載っていた。
いつかモンゴルに行ってみたい、と思った。
まあ結局行ったのはメキシコで、しかもすぐ帰って来ちゃってるから世話ないんだけどさ。
やぎバターがゆ、未だに実物にはお目にかかれていない。
モンゴル料理店ってあるんだろうか。
今はすっかり身近になったし、ありそうなもんだな。そう言うところに行けば、バター茶飲めるかな。
そしてやぎバターがゆ、食べてみたいな。
マザー2はランマを越えると、さらに砂漠の向こうへ。
魔境の奥深くへ。
さらに大地の底へと進んでいって、最後には過去に向かう。
賑やかで色鮮やかな世界が急に黙り込み、心優しいゲームが色を失くして冷たくなってゆく。
過去に降り立った主人公たち、私の4人の友達は変わり果てた姿になって進んでゆく。
ガシャンガションガシャンガションという足音と、低く地獄の底から響く呼び声のようなBGMが真夜中のテレビから響いてくる。
もうやぎバターがゆも、まめのコロッケも、サマーズふうパスタもない。
厳選し買い込んだ回復アイテム、さとりのべんとう と マジックタルト。
そして戦争を始めるのかってくらいのペンシルロケット。
彼らはそれを持って悪の巣箱に向かい、巨大な敵を撃破する。
私は何も持たず、また厄介な元家族のもとへ向かい、巨大な後悔を言葉と拳の暴力で刻まれる。
産まれてきたことへの。
マザー2の世界に行きたい。
今でも夢に出てくる、あの変わり果てたロボットになった自分の姿を見て、私は過去の自分に聞いてやりたい。
今でもマザー2の世界に行きたいかい?
子供の私が年だけ取った私に聞く。
やぎバターがゆ、食べた?
私は彼になんて答えてあげればいいんだろう?
やぎバターがゆ、って聞いて何のことかわかったら相当のマザー通でありマザー2マニアだ。
マザー2通って言いたいだけなんだけどねコレは。
でも、やぎバターがゆ、美味そうでさあ。
このゲームで初めて遊んだのは多分小学2年くらい。
両親が離婚する寸前か離婚してすぐくらいに発売になった。
母と初めて一緒に遊んだテレビゲームでもあるんだった。
母子家庭で何かコミュニケーションを、と思ってくれたのか何なのか。
スーパーマリオワールドにもゼルダの伝説神々のトライフォースにも興味を示さなかった母だったが(後でわかったが母はアクションゲームは死ぬほど苦手だった)マザー2と新・桃太郎伝説と弟切草とダークシードと…あとセガサターン版のシムシティ2000などなどじっくりやるゲームは殊の外好きで、夜中まで一生懸命やっていた。初代マザーも家にあったが、あれも母が買ってきたものだった。
そんなマザー2、なんといっても回復アイテムが独特。
現代劇であるがゆえにハンバーガー、オレンジジュース、サンドイッチにピザ、さらには市場の露天で串焼きを買ったり、レストランでスープをテイクアウト出来たり、砂漠のど真ん中で行商人から高額の水を買わされたりする。
舞台はアメリカやヨーロッパをモデルにした街が多いのだが、中盤の山場としてその文化圏からは遠く離れた山間の国・ランマ王国が登場する。
チベットや中央アジア?をイメージした、高原にある小さな王国。
なので、ここだけ他の街や国とは明らかに違う。服装、地形、背景、風景、そして食べ物。
山のふもとに小さな食堂があって、そこで買うことが出来る食べ物に
やぎバターがゆ、がある。
なんとなく高原の食べ物っぽい。
やぎバターがゆ。
やぎの肉だってそうそう滅多に食うものではない。やぎのミルクだってそうだ。
そのやぎのミルクをさらにバターにしたものを使ったおかゆである。
私がこのゲームを自力で全クリできたのは、それから約2年後の事だった。
テレビゲームの攻略に2年かかったんじゃなく、厄介な元父親の方に手間取っていた…というかそれはこの先何年にもわたって続くのだが、この頃に最初のどん底が来た。
その時に入り浸っていたマザー2の世界で、私はやぎバターがゆを見つけたのだ。
同時期に、椎名誠さんの小説にも出会っていた。
母の本棚には椎名さんの文庫本がズラっとそろっていた。
エッセイからルポ、SFも青春小説も全部あった。
オババから哀愁の街、アド・バードも武装島田倉庫も、そしてあやしい探検隊もあった。
最初は「この人もプロレス好きなんだよ、アンタも読んでみる?」とひょいと借りた
あやしい探検隊 海で笑う
が気に入って、そのあとは自分でぐいぐい読んでいった。
だからこの文章も、頭クルクルパー小説も、椎名誠さんの影響はおそらく随所で見られるハズだ。
だって原体験がそうなんだもん。
そして、その中の一冊。草の海という本で椎名さんがモンゴルの遊牧民が使う移動式テントの中で暖かそうなお茶を飲んでいる写真が、私の頭の中でスパークした。
やぎバターがゆ。
そのお茶はスーテー茶なので確か牛乳だったんだけど、牛乳と塩の入ったお茶っていう響き、馬乳酒や羊の腸詰め、さらにはやぎのミルクと椎名さんの本にはランマっぽい食べ物がいっぱい載っていた。
いつかモンゴルに行ってみたい、と思った。
まあ結局行ったのはメキシコで、しかもすぐ帰って来ちゃってるから世話ないんだけどさ。
やぎバターがゆ、未だに実物にはお目にかかれていない。
モンゴル料理店ってあるんだろうか。
今はすっかり身近になったし、ありそうなもんだな。そう言うところに行けば、バター茶飲めるかな。
そしてやぎバターがゆ、食べてみたいな。
マザー2はランマを越えると、さらに砂漠の向こうへ。
魔境の奥深くへ。
さらに大地の底へと進んでいって、最後には過去に向かう。
賑やかで色鮮やかな世界が急に黙り込み、心優しいゲームが色を失くして冷たくなってゆく。
過去に降り立った主人公たち、私の4人の友達は変わり果てた姿になって進んでゆく。
ガシャンガションガシャンガションという足音と、低く地獄の底から響く呼び声のようなBGMが真夜中のテレビから響いてくる。
もうやぎバターがゆも、まめのコロッケも、サマーズふうパスタもない。
厳選し買い込んだ回復アイテム、さとりのべんとう と マジックタルト。
そして戦争を始めるのかってくらいのペンシルロケット。
彼らはそれを持って悪の巣箱に向かい、巨大な敵を撃破する。
私は何も持たず、また厄介な元家族のもとへ向かい、巨大な後悔を言葉と拳の暴力で刻まれる。
産まれてきたことへの。
マザー2の世界に行きたい。
今でも夢に出てくる、あの変わり果てたロボットになった自分の姿を見て、私は過去の自分に聞いてやりたい。
今でもマザー2の世界に行きたいかい?
子供の私が年だけ取った私に聞く。
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