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第374回。名古屋で龍でメキシコで(アミーゴ鈴木先輩のこと)

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2018年2月11日。
名古屋に向かったもうひとつの理由は、プロレスリング・チームでら さんを観戦するため。
この日の対戦カードを見て目が点になった。
いや
目ん玉飛び出るようなカード
が其処にあった。
今のネタがわかる人はプロレスマニアのど真ん中を行ってるアレですよ、ええ、アレしていきますよそこは。ああ。なあ、金沢。

藤田あかね選手VS青木いつ希選手。
そう、私のイチ推し女子レスラー同士のシングルマッチ。
なに、イチ推しが二人も居るのかって?いいんだよ、アイスリボンさんではイチ推しの藤田あかね選手と、ジャパンプロレス2000さん所属の青木いつ希選手。新人選手枠でのイチ推し。
ということでひとつ…。

そんなわけで東スポーツセンターまでやってきたのだ。
ナゴヤドームが目の前!
ナゴヤドームと言えば中日ドラゴンズ!
中日ドラゴンズと言えば、そう!名古屋でドラゴンといえばウルティモ・ドラゴン校長。
え、藤田あかね選手じゃないのかって?
先に言っておくとそれぞれ長くなるのでなるべく分割してじっくり書かせていただく予定です。
今回は、名古屋で龍でメキシコで、ということでひとつ…。
この日のメインイベントでチームでら認定チャンピオン(チームでら認定ドラツェーガー王者)の石田慎也選手に挑戦するのが、私の闘龍門メキシコ時代の先輩であるところのアミーゴ鈴木選手なのだ!!

えっと、そっか。まずそこがお分かりにならない方もいらっしゃると思いますので、たぶんハッキリ書くのは初めてだと思うのですがご説明いたします。
闘龍門メキシコというのは、いまお名前を出したウルティモ・ドラゴンさんという人が設立したメキシコはナウカルパンという街にあるプロレスラー養成学校で(だから専ら校長と呼ばれているし未だに私もそうお呼びしている)私はそこの2005年度前期入門生でした。
で、その頃すでにアミーゴ鈴木さんは別名義でデビューなさっていて、私が入った時には寮長も務めてらした方。
顔は厳ついけどいつも温和でとても優しい先輩でした。

志半ばどころか志しただけで挫折した私だけど、当時の先輩はみんな今でも優しいし、私も応援させて頂いている。アミーゴ鈴木選手は私がいつも観戦している大衆プロレス松山座さんにも時折参戦しているものの中々タイミングが合わず、今日がなんと12年ぶりぐらいの再会。
最後にお会いしたのはおそらく2006年か7年の新宿FACE。
感慨深いものがあった。

で、いきなりメインイベントのことを書いてしまうのは、それだけこの日は鈴木先輩のことも応援していたし、お会い出来て少しだけだったけどお話も出来て、それがとても嬉しかったから。

対戦相手の石田慎也選手は第三代ドラツェーガー王者。
高井憲吾選手、影山道雄選手、根本薫選手に蓮香誠選手と昨今のインディ団体の中ではガッチリ系の選手が揃うチームでらさんで、小柄ながら王座についた実力は如何に。
ちなみに石田選手の入場コスチュームがイカのような触手が生えたものだったんだけど、スプラトゥーンお好きなのかな?

一方のアミーゴ鈴木先輩は身長は石田選手と同じかやや低いか。私とほぼ同じ170センチくらいだったはず。しかし体格・キャリア・技術では断然の差がある。
石田選手がデビューした2012年には、すでに鈴木先輩には10年近い選手歴があったはずだ。
私が言うと随分薄い手前味噌(奥には薄いブイヤベース)で恐縮だけれど、これは手ごわい相手を迎えたと思う。

試合にはベルトのほかに、賞金10万円が懸けられていた。
コレは前回のチームでらさんの大会で鈴木先輩が獲得したものを、今回の試合に持ち越して懸けたものだそう。選手権試合をしてもいいけど、その10万円も懸けろ、というわけで…石田選手、若いのにチャッカリしている。そういうお客さんを惹きつけるための工夫が見られるのは素晴らしい。それもデビューして5年でそれが出来るとは将来有望ではないか。

序盤はルチャ・リブレの動きを取り混ぜつつじっくりと進む。
この前のセミファイナルがしっちゃかめっちゃかで、明るく楽しく騒がしく、ゲラゲラ笑える試合であったこともあり緊張感が伝わるいい立ち上がり。
小技の一つ一つが渋い鈴木先輩に、イキイキとした動きで切り返していく石田選手。
試合は一発の投げ技、一瞬の関節技で動き出すこともある。目が離せない熱戦が続く。

私は最初こそお客さんらしく
アミーゴ!
と、あくまでアミーゴ鈴木選手を応援していた。でも熱が入ってくると(途中でフト我に返って気付いたんだけど)普通に
鈴木さん!!!
と叫んでいた。
鈴木さん立って立って!
ロープロープ!
手を叩いて声を張り上げてプロレスを見る、というより、一緒に戦いたくなっていた。
私は選手になんかなれなかったし、プロレスをやったことなんてないから何もわからないけど。
鈴木さんに勝ってほしかったし、そうしたらベルトと一緒に記念撮影していただいて、その写真を松山勘十郎さんにお見せして驚かせようと思っていた。

終盤に向けて鈴木さんのメキシコ伝来の関節技が幾つも決まる。
ジャベ(=鍵という意味)と呼ばれるこの複合関節技はルチャ・リブレ独特のもので、どの技も熟練を要するが威力は絶大。日本でもちょっと使い手は限られている…が闘龍門出身の選手はみんなこれが出来る。お笑いスタイル、ユニークプロレスと呼ばれがちな松山勘十郎さんだって、幾つも隠し持っている秘密兵器なのだ。
首、腕、足、腰と同時に搾り上げられて苦悶の表情を浮かべつつも耐えきった石田選手をブレーンバスターの大技で仕留めにかかるもこれもキックアウト。
さらに巻き返して、鈴木さんを場外に蹴落としてからの空中殺法一閃。
リングを囲むロープを飛び越しての豪快な一発で完全に流れを掴んでしまった。
目の前で倒れ伏した鈴木さんを石田選手は自らリングに上げて、回転式のネックブリーカー?らしき技を決める。速度と体重の乗った一発が決まり、さらにダメ押しでもう一発。
これで私の大好きだった優しい先輩は無念の3カウントを聞いた。
惜しかった、しかし、いい試合だった。

試合が終わるや否や、石田選手はベルトそっちのけで目録を引っ掴んで破り捨てる…が、なんと中身は空っぽ!
いつの間にかそそくさとリングを降りていた(こういう時に逃げ足が速いのも鈴木さんらしい)アミーゴ鈴木選手
「お前、試合前に中身確認してなかったろ、バーーーカ!ギャハハハ!!」
と吐き捨てて退場。
石田選手、気を取り直してチームでらを引っ張っていくと、そして刺激が欲しいのでどんどん挑戦者を探していくし名乗り出てほしいと宣言。
所属は同じ名古屋のスポルティーバエンターテインメントさんだそうで、プロフィールによれば夢はWWEに上がること。この名古屋から、是非とも世界に羽ばたいてほしいと思います!
とても面白い選手でした。

全試合終了後の売店で(実はキッチリ推しの選手お二人と記念撮影を済ませてからなのだが)漸く、12年ぶりぐらいの再会。
あの狂ったような笑い声をあげたアミーゴ鈴木選手から、私の先輩・鈴木さんに戻って少しだけお話をさせていただく。
寡黙で、温和な、あの頃の鈴木さんのままだった。
この二面性はプロレスラーの性というものなのだろう。リングに上がれば別人で、見ているこっちも別世界で。
私は、その別世界に挑むことが出来なかったけど、自分の知っている人がその世界で今も頑張っていることが、私自身をも今も生かしてくれていると思う。
プロレスラーが知り合いに居るって、なんか、いいじゃん?

アミーゴ鈴木選手オリジナルのスポーツ用シャツを購入し、実は今それを着て、その上からTシャツとフリースを着てコレを書いている。ノースリーブなので重ね着にも良いかなと思ったのだ。

鈴木さん、お疲れ様でした!
またいつか、お元気で。
私も元気で頑張ります。
一緒に撮っていただいた写真は、すぐ勘十郎さんにお送りしました(笑)
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