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第368回。炸裂パイルドライバー

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パイルドライバーって、みんな知ってる?
ここを見てくれていてプロレスが好きな人なら知ってるよね。
数多のプロレス技の中でも知名度、威力、見た目のインパクトも抜群なパイルドライバー。
ちょっと説明しづらいんだけど知らない人に言っておくと…こう

・相手の正面に立ち
・かがんだ状態の相手の頭部を自分の太ももで挟み込み
・お腹に両手を回して腰の部分で両手をがっちり組んで固定する
・そのまま相手を持ち上げて逆さまの状態にする
・膝ないし尻から着地して相手の脳天を叩き付ける

というのが大まかな流れです。
相手の頭だけをピンポイントで叩き付けるので非常に危険で、かつ見た目にも派手なので結構有名なプロレス技だと思う。
プロレス知らなくても、格ゲーやマンガなんかでやってるのを見たことある人も居るかもしれないね。

元祖と言われているのはアメリカのプロレスラー、バディ・オースチン。
この選手は現役中に得意のパイルドライバーで勝ちまくり、うち2名を再起不能にしたという噂があるほどのパイルドライバーの名手。
バディ・オースチンの繰り出すパイルドライバーはドリル・ア・ホール・パイルドライバーと呼ばれ、これが日本語に直されるときに
脳天杭打ち
と呼ばれるようになった。
ちなみにバディ・オースチンの使うパイルドライバーは膝で相手の頭を挟み、タイツを引っ張って落とす形であったと言われている。

パイルドライバー。
名前がいいな、杭打ちってそのままの名前だもん。
このほかにも様々な派生技があって、私が一番好きなのはダイナマイト・キッドも得意だった
ツームストーン・パイルドライバー
なる技。
墓石式脳天杭打ち、と訳されるこのタイプは相手を逆さまに抱え上げるところは同じだけど、体の向きがお腹をくっつけるようにして持ち上げるのでちょっとパワーが要る。
上下逆さまの状態で固定して、そのままズドン!と落とすので元祖パイルドライバーよりもさらに危険な技になっている。
実際にこの技で首を痛めて現役生命を縮めた選手は数多く存在している。
ストーンコールド・スティーブ・オースチンや、佐山聡さんの初代タイガーマスクもそう。
現在はタレントの佐々木健介さんも自伝の中で、ドイツでこの技を受けたときに全身に電気が走るような感覚に陥ったと書いている。脳天を縦に打つので衝撃が吸収しきれず、神経にもダメージが及んでしまうためだろう。

ちなみにメキシコではこのツームストーン・パイルドライバー(マルティネーテと呼ばれている)は完全に禁じ手、ご法度とされている。
日本以外の国でのプロレス用のリングマットは往々にして非常に硬くコンディションも悪い。
メキシコのマットは特にそうだと言われており、ルチャリブレの選手はみんな衝撃から身を守るために回転受け身を取っているのもそのためだ。
そんなマットでツームストーン・パイルドライバーなんぞを受けた際には本当に死んでしまうので、コレだけは絶対やっちゃダメ!という技に指定されているのだとか。
しかし世の中ダメと言われるとやりたくなる奴がいるもので、かつて活躍していた故アビスモ・ネグロなる選手はニックネームを
レイ・デ・マルティネーテ
といった。レイは王様、デというのはオブとかそういう意味。
つまりパイルドライバーの王様、パイルドライバーの名人というわけだ。
なぜ彼がそう呼ばれるようになったか、は書くととても長くなるので割愛するが、メキシコマットでは禁じ手となっているマルティネーテを使い、一世を風靡してしまった世紀の悪党なのである。

プロレスも日進月歩、常に進化を続けているなかでかつての必殺技が色あせてしまうことも少なくない。
また流行った技はみんな使い出して、あっという間に消耗されて使い尽くされてしまうこともある。
619とかパワーボムとか。
そんな中でも、ブレーンバスターやバックドロップなどと並んで今もなお見るものを魅了する、そして選手には恐れられる必殺技・パイルドライバーの威力。

他にも相手の太腿に手を回してクラッチするジャーマン式(この形を得意とした選手の名を取ってゴッチ式とも)や、脳天を打ち付ける際にジャンプして尻もちをつくジャンピング式、逆さまの状態で脳天を叩き付けるドライバー系の技は沢山存在している。
〇〇ドライバー、と付かなくてもそういう技だったりもするので紛らわしい。

90年代は特に、そうした超危険技の応酬が見られる団体もあった時代だった。
手首も固定し、脳天から思いっきり突き刺す技を連発しなくてはならない時代。
私も正直、最初は良かった。すげえ!と思ったし、自分でも(実際には使わなくても)超危険技を考えだしたりもしていた。
けど段々怖くなってしまったし、衝撃に慣れ過ぎてパイルドライバーやブレーンバスターでもショボい技だと思ってしまってた時期もあった。
エスカレートし続けていくと結局はプロレスの否定に繋がる。

そうして総合格闘技やMMAに魅了されていくのだが、私の場合はその時にルチャリブレがあった。
そっちを見て、また日本のプロレスを見るようになり、そうなると今度はショボく見えていたブレーンバスターやパイルドライバーなどの古風な技が好きになる。
シンプル・イズ・ベストだ。
日本マットでもリバイバルブームで往年の名選手や名必殺技が再び脚光を浴びることが度々あった。
アルゼンチンバックブリーカー、腕十字固めなどがその最たる例で、使い手と使い方次第でどうにでもなるのだな、と。
パイルドライバーも鈴木みのる選手が前述のゴッチ式を得意として現代マットでも活用している。
鈴木みのる選手は昭和の匂いが強く薫る、シンプルだが奥の深い選手だ。だからこそ、一撃のパイルドライバーが映えるし、それを繰り出すまでの積み重ねがきちんとなされている。
その試合、その攻撃、その受け身の一つ一つが、最後のパイルドライバーに帰結する。
このカタルシスったら、プロレスの醍醐味そのものだ!

今後も素晴らしい使い手の素晴らしい一撃を期待している。
今日はギャグもボケもナンもなしにフツーに好きなプロレス技の話、しちゃったな。
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