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第320回。マザー3の話をしようじゃないか
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オッケーですか?
(あの声)
2の話は散々したけど、3はあんまりしてないなって。
みんな買った?
私は予約して、マザー3仕様のゲームボーイのちっちゃいやつも買ったよ。
あの当時は毎日ほぼ日も読んでて、天久先生の味写(あじしゃ)が好きだった。
で買ってスイッチを入れるわな。
手元の小さな画面で始まるマザーに戸惑うような楽しみなような。
イヤホンして画面を見つめる。
のっけから結構キツい物語が続く。
出てくるキャラクターも、前までと違って露骨に嫌な奴、扱いづらいオッサン、必ずしもいい人ばかりじゃない世界。そして交差点に立ち尽くす背の高い男。
最初の平和でのどかな母子の物語が、後々までずっと尾を引く。そんなゲームだ。
起こってほしくないことばかり起こるのに、なぜかその真っ最中は少し笑えたり、悲しかったり、冒険に夢中になれたり、音楽でノリノリになれたりする。
感情があっちこっち心地よく揺さぶられて、気が付くとずいぶん遠くまで来ている。
私はイカヅチタワーで我に返った。
ああ、もうだいぶ進んできてしまったんだな、と。
そしてその転機は、すぐにやってきた。あの散々憎たらしい真似をした男が、バナナ一つで奈落の底に真っ逆さま。
マザーシリーズといえば音楽。
今回も愉快なバンドが登場する。
その演奏を担当しているのがクレイジーケンバンドと聞いて、驚くやら嬉しいやら。
私は小学校高学年でパンチ!パンチ!パンチ!を聞いて以来のケンさんファンなのだ。ノッサンも好き。
お城に何度も入るのだけど、あそこでパーティしてるオバケがワインを飲んでるところ好きだったなあ。
あれはいいオバケで、敵として出てくるのは悪いオバケ、ってのもよかった。
ドロボウ親子もサルと主人も、それぞれのドラマが進行して、その先で絡み合う。
一つ一つの章が濃いんだけど、それがしっかりつながるから気持ちがいい。
6章だっけ、ひまわり畑でお母さんの幻影を追いかけるだけのやつ。
あれ悲しかったな。
あのゲームをやるときは、時間にゆとりをもって、絶対イヤホンした方がいい。
私は少なくともそう思う。サウンドバトルもだけど、普通に聞いてて気持ちのいい曲も多いし、肝心のところの曲は本当に最高だったから。
ひまわり畑のところはイヤホン必須だったと思う。
どせいさんも再登場してくれるし、今回も「のりものです」など便利な発明をしてくれる。
相変わらずのぽてんしゃる!を誇る彼らだが、やっぱり正体はわからない。
とても素敵な生き物なのだが、それがなんなのかはよくわからない。
この糸井式の心地よさ。
何だかわからないけど、とてもいい。
それでいいじゃない。
そういわれているようで。
ちなみに今作には糸井さんおすすめの焼きそばやとんかつの情報がどこかに載っていた。
東京に行くときにそのお店に行くことはおそらくないと思うけど、なんかいいこと聞いたなって感じがする。
マザー3は何度も何度も出るという噂があった。
最初はニンテンドー64で出るというので、小学校高学年の私は心待ちにしていた。
実際にちょっとだけ開発中の画面が雑誌に載ったりもしていた。
ずっと待っていたけど、結局出ないまま私は大人になっていた。
小学校高学年の私は学校に行けず、家庭に居場所もなく、近所の祖父母の住んでいる団地の部屋で、ひとりマザー2をやっていた。冬の寒い日。石油ストーブの熱と匂い。おじいちゃんが作ってくれた昼食のワンタンが美味しかった。
だから、主人公カズヤの「すきなこんだて」は、長いこと「ワンタン」だった。
イーグルランドにも中華料理が普及していたことを祈りばかりだ。
ランマ王国にはさぞかし美味しいワンタンがあったことだろう。食堂のメニューには載ってなかったけど。
やぎバターがゆ、美味しそうだったなあ。
結局それから10年ぐらい経って、ついに発売されることになった。
ほぼ日でもマザー関連の企画が色々と始まった。
発売を心待ちにしていたのは二十歳になった私と、小学校高学年の私。
二人の私が一緒に遊んだ。
随所に置かれているマザー2のオブジェ。
大都会の映画館では、あの冒険が映画になっていた。
一つ一つ噛み締める余裕が出てきたのは2回目以降のプレイだったけど、回を重ねるごとに序盤の悲劇が億劫になっていった。
テンイエティとか、すてきなポーズをとる石像とか、おげんきになるキノコとか、明太子マンとか、ネガティブマンとか…書き出せばキリがないぐらい、楽しい要素もいっぱいあった。
タネヒネリ島は、まあ、2006ねんバージョンのムーンサイドだったのかもしれないけど。
あの郵便ポストを覗くセリフは、今でも私に影響を与えているなあと思う。
赤黒い糸井さんが垣間見える、ステキな幻覚だった。
私はマザー2を遊ぶときは、全員に話しかけ、全アイテムを収集し、全部の敵を倒すことにしている。
マザー3もそれに倣った。
敵の後姿も図鑑に収めることが出来るので、アイテムが無いうちは散々苦労して後ろに回り込んだ。
ブタマスクだろうが嫌な町長だろうが、物語が進むたびに話しかけに行った。
が!しかし、あとで読んだ攻略記事に、イカズチタワーの片隅にひとり、ブタマスクが隠れていたことが書かれていた。柱の陰に居たらしい。
気づかなかった…。
そこで心が折れてしまった。
何度も遊んだのに。
あれ以来、再開してもろくに進められないまま、バンドをやっててスタジオ代にも事欠くような時期に本体ごと売ってしまった。2000円だった。
6年生の私、ごめんよ。また買うからさ。一緒に遊ぼうぜ。
(あの声)
2の話は散々したけど、3はあんまりしてないなって。
みんな買った?
私は予約して、マザー3仕様のゲームボーイのちっちゃいやつも買ったよ。
あの当時は毎日ほぼ日も読んでて、天久先生の味写(あじしゃ)が好きだった。
で買ってスイッチを入れるわな。
手元の小さな画面で始まるマザーに戸惑うような楽しみなような。
イヤホンして画面を見つめる。
のっけから結構キツい物語が続く。
出てくるキャラクターも、前までと違って露骨に嫌な奴、扱いづらいオッサン、必ずしもいい人ばかりじゃない世界。そして交差点に立ち尽くす背の高い男。
最初の平和でのどかな母子の物語が、後々までずっと尾を引く。そんなゲームだ。
起こってほしくないことばかり起こるのに、なぜかその真っ最中は少し笑えたり、悲しかったり、冒険に夢中になれたり、音楽でノリノリになれたりする。
感情があっちこっち心地よく揺さぶられて、気が付くとずいぶん遠くまで来ている。
私はイカヅチタワーで我に返った。
ああ、もうだいぶ進んできてしまったんだな、と。
そしてその転機は、すぐにやってきた。あの散々憎たらしい真似をした男が、バナナ一つで奈落の底に真っ逆さま。
マザーシリーズといえば音楽。
今回も愉快なバンドが登場する。
その演奏を担当しているのがクレイジーケンバンドと聞いて、驚くやら嬉しいやら。
私は小学校高学年でパンチ!パンチ!パンチ!を聞いて以来のケンさんファンなのだ。ノッサンも好き。
お城に何度も入るのだけど、あそこでパーティしてるオバケがワインを飲んでるところ好きだったなあ。
あれはいいオバケで、敵として出てくるのは悪いオバケ、ってのもよかった。
ドロボウ親子もサルと主人も、それぞれのドラマが進行して、その先で絡み合う。
一つ一つの章が濃いんだけど、それがしっかりつながるから気持ちがいい。
6章だっけ、ひまわり畑でお母さんの幻影を追いかけるだけのやつ。
あれ悲しかったな。
あのゲームをやるときは、時間にゆとりをもって、絶対イヤホンした方がいい。
私は少なくともそう思う。サウンドバトルもだけど、普通に聞いてて気持ちのいい曲も多いし、肝心のところの曲は本当に最高だったから。
ひまわり畑のところはイヤホン必須だったと思う。
どせいさんも再登場してくれるし、今回も「のりものです」など便利な発明をしてくれる。
相変わらずのぽてんしゃる!を誇る彼らだが、やっぱり正体はわからない。
とても素敵な生き物なのだが、それがなんなのかはよくわからない。
この糸井式の心地よさ。
何だかわからないけど、とてもいい。
それでいいじゃない。
そういわれているようで。
ちなみに今作には糸井さんおすすめの焼きそばやとんかつの情報がどこかに載っていた。
東京に行くときにそのお店に行くことはおそらくないと思うけど、なんかいいこと聞いたなって感じがする。
マザー3は何度も何度も出るという噂があった。
最初はニンテンドー64で出るというので、小学校高学年の私は心待ちにしていた。
実際にちょっとだけ開発中の画面が雑誌に載ったりもしていた。
ずっと待っていたけど、結局出ないまま私は大人になっていた。
小学校高学年の私は学校に行けず、家庭に居場所もなく、近所の祖父母の住んでいる団地の部屋で、ひとりマザー2をやっていた。冬の寒い日。石油ストーブの熱と匂い。おじいちゃんが作ってくれた昼食のワンタンが美味しかった。
だから、主人公カズヤの「すきなこんだて」は、長いこと「ワンタン」だった。
イーグルランドにも中華料理が普及していたことを祈りばかりだ。
ランマ王国にはさぞかし美味しいワンタンがあったことだろう。食堂のメニューには載ってなかったけど。
やぎバターがゆ、美味しそうだったなあ。
結局それから10年ぐらい経って、ついに発売されることになった。
ほぼ日でもマザー関連の企画が色々と始まった。
発売を心待ちにしていたのは二十歳になった私と、小学校高学年の私。
二人の私が一緒に遊んだ。
随所に置かれているマザー2のオブジェ。
大都会の映画館では、あの冒険が映画になっていた。
一つ一つ噛み締める余裕が出てきたのは2回目以降のプレイだったけど、回を重ねるごとに序盤の悲劇が億劫になっていった。
テンイエティとか、すてきなポーズをとる石像とか、おげんきになるキノコとか、明太子マンとか、ネガティブマンとか…書き出せばキリがないぐらい、楽しい要素もいっぱいあった。
タネヒネリ島は、まあ、2006ねんバージョンのムーンサイドだったのかもしれないけど。
あの郵便ポストを覗くセリフは、今でも私に影響を与えているなあと思う。
赤黒い糸井さんが垣間見える、ステキな幻覚だった。
私はマザー2を遊ぶときは、全員に話しかけ、全アイテムを収集し、全部の敵を倒すことにしている。
マザー3もそれに倣った。
敵の後姿も図鑑に収めることが出来るので、アイテムが無いうちは散々苦労して後ろに回り込んだ。
ブタマスクだろうが嫌な町長だろうが、物語が進むたびに話しかけに行った。
が!しかし、あとで読んだ攻略記事に、イカズチタワーの片隅にひとり、ブタマスクが隠れていたことが書かれていた。柱の陰に居たらしい。
気づかなかった…。
そこで心が折れてしまった。
何度も遊んだのに。
あれ以来、再開してもろくに進められないまま、バンドをやっててスタジオ代にも事欠くような時期に本体ごと売ってしまった。2000円だった。
6年生の私、ごめんよ。また買うからさ。一緒に遊ぼうぜ。
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