不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

文字の大きさ
上 下
331 / 1,301

第303回。Candy storeのカンカンボーヤ

しおりを挟む
みんなの家や学校や職場の近くに自販機ってたくさんあるかな?
あれってコカ・コーラとかサントリーとか、メーカーのものもあるけどさ。
なんか妙に安い自販機あるよね。
横っちょにちょっとだけお菓子も売ってるやつ。

まあそれもいろんな名前がついてるんだけど、コッチでよく見かける自販機があってさ。
それが今日のサブタイトルのCandy storeってやつで。
メーカー問わず大体100円、なぜかポカリスエットのペットボトルが120円。
私の行くお客の工場においてある自販機のラインナップは可もなく不可もなく。でも特別に欲しいものもなく。こないだ久しぶりにコカ・コーラでも飲もうと思って缶入りのを買ったら、なんかパッケージがシンプルで…なんとか缶って書いてあったから何かのセットになってたやつを安く仕入れているのかもしれない。

でね、このCandy storeの自販機には可愛いイラストが描いてあって。
それがアキカンザウルス、ペットボザウルス、カンカンボーヤ。
カンカンボーヤ!?
と思うけど、本当に男の子が一人紛れている。
アキカンザウルスもペットボザウルスもそれぞれ缶とペットボトルを無理やり恐竜にしたものなんだけど、そこに空き缶を頭にかぶってSlashみたいになった男の子が一人いる。
近頃は秋なので、ザウルス兄弟(かどうかは不明)とカンカンボーヤが仲良く運動会をしているイラストになった。

空き缶を頭から深々とかぶって、同じく空き容器の恐竜と遊ぶ小さな男の子。

率直に言う。
怖くね!?
心のSOSをビンビン感じるのは私だけだろうか。

あの自販機を見るたびに、カンカンボーヤは独りぼっちで、自ら作り出した友達の恐竜と楽しく遊んでいる夢想にふけっているのではないかと。そう思えてならないのだ。

いにしえのゴジラ映画にゴジラ・ミニラ・ガバラ_オール怪獣大進撃ってのがあって、これは歴代ゴジラシリーズでもおそらくもっとも低予算で作られている。で、その映画に出てくる主人公は怪獣ではなく、団地に住んでるカギっ子でいじめられっ子のイチロウ君。このイチロウ君は自分でガラクタを拾ってきて組み合わせた装置で、怪獣がいっぱい暮らしている怪獣島と通信する。やがて彼は眠ってしまうが、その夢の中で怪獣島のミニラと出会う。しかし、実はその島には自分をいじめている男の子と同じ
ガバラ
と呼ばれるいじめっ子怪獣が居て…。

とまあそういう映画。
この映画も相当アレなのだが、カンカンボーヤからも似たようなにおいを感じてしまう。
だいたいさ、わんぱく盛りの男の子が頭から深々と空き缶をかぶって
僕、カンカンボーヤ!
ってそりゃ心配にもなるだろ。

映画のイチロウ君も家には自分ひとりぼっち、学校じゃガバラにいじめられ、ついには自ら組み立てた…というか積み上げた装置で
怪獣島、応答せよ!
怪獣島、応答せよ!
って。心のSOSが衛星兵器よりキツい電波に乗ってビリビリ出てるっつーの。

あの運動会のイラストもさ、よく見るとトラックも三角の旗もちゃんと描いてあるんだ。
ということはだよ、あれ自分たちで準備して、終わったら自分たちで片づけるわけだろ?
あの子たち、いや、本当は手伝ってくれる恐竜なんていないわけで、あの子。
大丈夫じゃないんだろうな…。

なんでたかだか自販機のイラストでこんな「いらん想像」してるかといえば、私も昔、アタマの中に友達が沢山いたから。
今はその友達も一人減り、二人減り。そして
いらん想像

いんらん妄想
に変わり。
イマジナリーフレンドからイマジナリーセックスフレンドになり。
まあ簡単に言えばオナペットですわな。

何年ぶりに言ったかなオナペットなんて言葉。
いやきちんと書いたのは初めてじゃないか。
場末のエロ本以外で使ってるとこ見たことない言葉じゃねえのか。

で、まあ、そういう脳内友達がいつの間にかいなくなって。
気が付くと居なくても平気になってた。

カンカンボーヤも、いつか空き缶を脱いで前を向いて歩きだす日が来るのだろうか。
あの恐竜たちはどこに行ってしまうのか。
たぶん後ろでゆっくり歩きながら見守ってくれていると思うし、居なくなっても大丈夫になったときには、いつの間にか忘れていると思う。
炭酸のあぶくみたいに、消えてなくなっちゃうんだ。
不思議なもので、脳内友達の名前や、どんな話をしてどんな顔してて、どんな声で、どんな性格だったのか。今じゃかけらも思い出せなかったりする。で、なんか似てるな、って人に出会ったときに不意に思い出す。
似てるんじゃない、こういう人をかつて自分で作ってたんだ!
って。
それはそれで怖いな。けど、自分の中にある、いや居る人格がないと作り出せないだろうし。
私の中には、まだ何人のカンカンボーヤが眠っているのだろう。
それは記憶の自動販売機の中で、思い出のコインを投入されるときを待っているのかもしれない。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...