不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第２９６回。数学が苦手

数学が苦手だ。

どのぐらい苦手かというと、イケ好かない昼間のＦＭラジオでこじゃれたトーク、それも
「こんにちは、お昼のひと時を如何お過ごしですかー？ナビゲーターのワタラセヨーコです（そんな奴はいないけどこんなかんじの名前の人多くね？）今日はねー、あのー、庭にね、私の家の。もう小さなキンカンがついてて、ああ冬だなーって思いました。さて」
っつってピチカート・ファイヴの何の脈絡もない、自分をオシャレに見せるための曲を流すような人

ぐらい苦手。
もしくは中学２年の１年間で数学のテストでただの１点も取れなかったぐらい。

そっちの方が遥かにわかりやすいし誰も傷つけねえんじゃねえの？

まあいいや。ピチカートファイヴは普通に好きだし私。

そうそう、そうなんだよ。
書いたかな？
私ね、たぶん中学１年の後半から中３の初め頃まで、中２のことは殆ど一度も、数学のテストで得点を取ってないのよ。０点。
０点連続防衛記録を８回に伸ばして、当時の獣神サンダーライガー選手が持っていたＩＷＧＰジュニアヘビー級王座防衛記録に並んだぞっつって喜んでたから、少なくとも８回はテストで点を取ってない。

数学は授業もテストも、あとで休み時間になったら友人で巨漢のクマさんに見せるための四コマ漫画を仕込む時間だった。こっちは２Ｂ、４Ｂ、ＨＢ、さらに固い鉛筆から色鉛筆、シャーペンにボールペンにと使い分けて描いていた。キッドさんは(文章が面白いかはさて置いて)絵が死ぬほど苦手ではあるものの描きたいものはあったので、クマさんにだけそっと見せる内輪ネタの四コマ漫画がこの当時沢山生産された。つまりそれだけ授業に身が入ってなかった。
同じ部活の友人や同級生（この区別の差に意味がある）が死にまくったり冒険の旅に出るものだったが、たまに問題用紙ごと回収されて肝を冷やしたりもしていた。

余談だが一方のクマさんも、問題用紙の裏面をビッシリ使った
あったら嫌なパンチパーマの焼きそば屋さん
とか
巨デブと二畳しかない間取りのちゃんこ鍋屋でマンツーマンちゃんこ
などの狂った名作を多数生み出していたので、まあ二人してバカなことをやっていたものだった。

大体さ、なんだよ散々計算したのにあまりが出るとか、解なし、とか。
ねえのなんか分かってりゃ式なんかさすな！
と思うけど、数式を学ぶのだからうんぬんかんぬん。
そりゃまあ、射精するのは同じだからオナニーしてろって言われたらヤだけどさ。

∴
とかあるじゃん。ゆ・え・に、でコレ。わかるかこんなもん！
そんな点を３つ打って ゆえに、ならお前、解答用紙のどっかに
・・・・・
って書いてありがとうのサイン、なんてのもアリなんじゃねえの？
なにカムの歌だって話だけどさ。しかも古い。

あんまり出来ないんで、どっから出来なくなったのか確かめようってことになった。
当時は公文式に通ってたんだけど、そこのイタガキ先生がとてもやさしくていい先生で。
とても可愛がっていただいていた。というか今も近所に住んでるんでたまに会う。お元気そうで何よりです。
でそのイタガキ先生に相談をした。

結果、小学２年の算数からやり直すことに。
本当にこの辺りから怪しかった。
流石に掛け算の筆算、割り算ぐらいまではスイスイ解いていく。
こりゃ頭の体操にもいいや。将来、こうして簡単な数式を連続で解く事で脳を活性化させるとか言って、テレビゲームを出せば売れるな！なんて思ったりしておけば今頃…！

で、小３の割り算の筆算で躓いた。
繰り返すがこの当時中３である。
サッパリわからない。なんだ、あのヤンキー親父が昔の名残でまだやってるリーゼントヘアーみたいな式は！
あと建設現場でそういう髪の毛でサングラスしてるおっさんは顔が怖い分話すと優しい。人が多い。例外もある。

でね、そんな人生の方程式で世渡りの計算なんかする以前に割り算の筆算である。
どーーーー考えても割り切れない、いや、これ、あまり３っていうけど、ええー…？
ついに頭が煮詰まりそうだったので、数学担当、いつも不愛想でクールで怖い、理知的に淡々と間違いを訂正してくれるけどたまにその冷静さの端々に図体ばかりデカくてバカなクソガキ（私だ）への苛立ちが見えるナカタ先生に
「先生、とことん考えたけどわかんねえっす…」
とビッチリ書き込んで小さくてヘタな数字でいっぱいになったプリントをそーーーっと差し出すと
「アンタ、これは大学生が数学の研究するやり方だよ」
みたいなことを言われた。大学で数学の研究、というワードを何となく覚えている。

そんなことより、あの小学３年生用の数式から、どうやってそんなアカデミックな真似をしでかしたのか、そっちを覚えていれば今頃…！

これ以降、二度とそんな境地に達することもなく、なんだかんだ因数分解までは出来るようになった。一年ぐらいかかったけど。で、定時制高校に入るには因数分解が出来ないとダメだっていう噂だったので、そこまでは一生懸命やった。

これがキッドさんが唯一やった受験勉強。
結局、受験当日は因数分解の、もう一つ手前の、ほら、あれ、なんてったっけ。
あの数式しか出てこなかった。

今でも数学と聞くとよくわからないが、メキシコのレスラーには
数学仮面 エル・マティマティコ
なる選手が居る。なぜそんな…！と思うが、この選手が編み出した必殺技こそが
マティマティカ
のちに日本では
キン肉バスター
として一世を風靡したあの技なのだ。

今日はここまでー（いいオチが思いつかなかった）