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第260回。世紀末さんのマンガを買ったのだ

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2019年11月、追記。
この「殺さない彼と死なない彼女」が出版された後、
世紀末さんは暫くブログを更新していなかった
あまり表に出てこなかった
そして久しぶりに姿を現したとき、その間に起ったことや思ったことをつづっていた

心無いことも言われたし、ご自身なりに悩み苦しんだこともあったと
それを読んで、この記事のことを思い出したので書き加えておきます

私が小説家になろうさんで、最初にこの記事を発表した時
世紀末さんにも喜んでいただけてとてもうれしかったです
そして月日が流れた、ある日のこと
突然、私のエッセイのアクセス数が跳ね上がったのです。それは誰かが記事の一括ダウンロードを行ったり、物好きな猛者がぶっ通しで読んでくれたりしたときにも起こることではあったのですがその時は桁違いのアクセスがありました
調べてみると、この世紀末さんの作品についての記事でした

そして何かあったのか、と検索してみると
「殺さない彼と死なない彼女」
が映画化されるというニュースがありました

みんな検索したり、誰かのツイートを見て
私のエッセイにまで届いたのです
きっとちょっと読んだけど映画の情報じゃないんで
なーんだ
と思って閉じちゃった人がほとんどだったと思います
でもそれは当たり前で、みんなそれだけ「殺さない彼と死なない彼女」のことが知りたかったのです

世紀末さん、あなたの作品は本当に本物の名作なんです
だからみんなに愛されて、知りたいと思われた
それが、当時の私のエッセイなどという末端の末端にまで届いた
それってすごいことだと思います
マイケル・ジャクソンのコンサートがあると周辺のホテルや飲食店まで潤うのと一緒です(たぶん)

私も映画になったと知って凄い!と思ったし、是非拝見してからまた感想を書いて、そこにこれを書き添えるつもりでした
でも、お友達がこの作品に興味を持ったので、
お誕生日プレゼントに一冊差し上げることにして
その時にふと思い出したので
今日、ここに追記いたします

今でも「殺さない彼と死なない彼女」という作品に興味を持って、読んでみたいと思う人が沢山いる
あなたの描いた漫画は、生み出した世界は、今日も少しずつ広がっているのです
世紀末さん、あなたは凄いよ。自信もって大丈夫だよ


以下当時の本文

ツイッターで知ったマンガ家の「世紀末」さんのマンガ
「殺さない彼と死なない彼女」
を買って読んだ。

元々は私が今とても(勝手に)ハマっている
「ハムスターの息子に産まれて良かった」(コレが名前だ。すごいだろ。カッコイイ)
さんがリツイートしてた作者の世紀末さんご本人の動画(お笑い芸人に似ているということで撮ってみたものらしい。あとでブログ読んだら書いてあった)を見て
んでブログの絵日記を読破して(二日ぐらいかかった)平成生まれの今時の女の子だなって思う反面、この人がどんな漫画を描いたのかとても興味が湧いた。

で、思わず買って今日届いてさっき読んだ。一気に読んだ。
最初は「きゃぴ子ちゃん」という作品。
愛が足りない、愛されていたい、でも愛することがわからない。愛されることもわからない。
愛があってもあっても満たされない。
気持ちのパッキンがどこかでバカになってしまったけれど心が純粋で体は成熟していって。
のちに親友になる地味子は愛されて育ってマトモに見えるけれど、いつも可愛く生きているきゃぴ子がちょっとうらやましい。でも、それ以上に、きゃぴ子への悪意やヘイトから彼女を守ろうとする気持ちが芽生える。

きゃぴ子に愛された男にはわかるまい。
きゃぴ子ちゃんにもわかるまい。
男にだって、そんな愛に飢えたきゃぴ子ちゃんにすらも、誰からも選ばれず、誰かを愛したくても愛せない悲しみがある。寂しさがある。なんで俺じゃないんだ、なんで自分はダメなんだ。
暗い部屋で一人、自問自答する心も気温も寒くて体の奥と目玉だけが熱い夜。
これを何度過ごしたか。お前にわかるか、でも、いいよ。愛される側には権利がある。相手を選んだり、愛を求める権利が女の子にはたんまりある。それを、きゃぴ子は無意識に遠慮なく行使している。それだけのことだ。
仕事はしなくちゃならないが、有給休暇は取っていい。
女の子に選ばれなかった男は、彼女が出勤してこなかった日の机と椅子みたいなものだ。
地味子ちゃんみたいな子をいつも私は好きになる。だけど、地味子ちゃんはきゃぴ子ちゃんに構っててそれどころじゃない。自分なんかが、って思っているのに、私からの愛には答えてくれない。
この寂しさが、あっけらかんとして笑ったり泣いたりするきゃぴ子ちゃんの日常からポロポロこぼれてきて読むほどに切ない。

君が代ちゃん。
これは愛したい女の子と愛がわからない男の子が出てくる。
好きと言われて続けることで八千代君の心は優しくとけてゆく。
川の流れが地面を削ってジグザグからおだやかなカーブに地図を書き換えてしまうように、君が代ちゃんの「好き」が八千代君の「わからない」を少しずつ崩して、逆に心のお濠は埋めてゆく。
徐々に、徐々に二人は近づいていって、八千代君の原体験を知る。
八千代君のトラウマ。
そして君が代ちゃんによって磨かれ続け、憧れだった女性にも再会し、彼は幸せをつかむために少しだけ自らの色素を強くする。

最後の表題作
「殺さない彼と死なない彼女」
これは、本当に良い作品だった。
インターミッションのマンガをよく読んでおくと最後の最後にゾックゾクくる。
ああ!来た!!って。でさ、この流れで行くとアイツが次に狙うのって…って思うじゃん。
でも、この本と、この作品のタイトルを思い出して、ほっとするけど、やっぱり泣ける。

この本に収録されている3作品のいいところは、全部ちゃんと初めから書いているところだと思う。
友達になる、付き合う、好きになる、その切っ掛けも、最初の印象も、それが刻一刻と変わっていくところも書いてある。だから最後の最後で泣かされるし、小坂君と死カノちゃんの結末が重たく、読んでるコッチまで心に穴が開いたような喪失感を覚える。
あとやっぱり芸が細かい。
死カノちゃん(本名もちゃんとある。コレに気が付くと最後の彼女の吹っ切れた結末もまたキツイ)の頭に本が乗っかってたり、アイスを見て「アイスだ!」とひとこと添えるだけで雰囲気がガラっと変わる。
あのサイコ野郎なんかは、もうサイコ野郎なんだと紹介されてるから、奴の存在理由も犯行の理由も全部それで片付けてる。アイツにも育ちや心の傷があるのかも知れんし、ホントに別に特に無くてああなのかもしれないが、それを知ろうとも思わない。そのぐらい狂ってやがる。あの徹底した悪役が、この物語の重要な結末を示唆しているとは。
だからこそ、都合の悪いことからも目を逸らせないようになっている。
遣る瀬無くて、切なくて、毎日生きていくことが、せっかく楽しくなったのに。
読んでいるコッチが、彼ら以上に悲しくなってしまう。

あと、あの結末の後にあとがきのあとに、というおまけマンガも入ってて、それでちょっと安心できる。
ああ終わった、と気持ちに整理がつく。
ブログでお馴染みの緩い四コマ漫画。でも、あのマンガを一冊作るにあたっての戦いが垣間見える日常。

彼は夢枕で言った。
自殺と他殺じゃ行くところが違うんだ。
じゃあ、あの二人は…。

素晴らしかった。初期の西原理恵子さんみたいな絵柄で、ほんわかしながらも真っすぐで鋭い。
是非皆さんも…モテない男は読んで損はない。けど、お前がモテるためには多分ならない。
そんでまた女の子にフラれたり、勇気が出なくて悶々としてたら、ココへ来てバカな話をしよう。
私もそうするから。
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