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第256回。渋谷でボブ
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2013年ぐらいの話。
その日、私は渋谷で友達と待ち合わせをしていた。
夕方のラッシュと重なってごったがえす広場で茫然としていると、なんかデカい植木鉢みたいになった植え込みの手すりのさらに上のところも座れそうになっている。なんつったらいいんだろう。
でそこに座ってボンヤリしていると、隣に座っている男性が
デンゼル・ワシントンをもうちょっと恰幅良くしたような感じ
のおじさんだった。勿論外人さん。
白髪交じりのゴマシオ頭に顎髭。
赤を基調にした派手なジャンパーを着て、色褪せたジーパン。
ココが日本なのが惜しいくらい、ザ・アメリカ人!って感じ。まあそうなんだけど。
暇だったのでぎこちなくたどたどしい英語で話しかけてみた。
やあ、僕はサノだ。元気かい?
俺はボブだ。元気だよ。
ボブはどっから来たの?
アメリカだよ、デトロイトさ。
トーキョーには何しに?
娘に会いに来た。娘はトーキョーで働いてるんだ。
TOKYOは何回目?
2回目だ。去年もクリスマスを娘と過ごしたんだ。日本の街は綺麗だな。とてもビューティフルだ。
大体こんな感じの話をしていた。
下手糞な英語とカタコトの日本語とでなんともぶっきらぼうだけど、ボブはとても感じの良い紳士だった。ボソボソとした極小国際交流が少し軌道に乗ってきた頃、急に足元の人の流れが変わったと思ったら誰かが狙いすましたように
「あ!〇〇だ」
と叫んだ。するとそこに、金髪で色の白いスーツ姿の韓国人男性がカメラマンやマネージャーらしきサングラスの男性、なんか烏合の衆、を引き連れて、彼の写真をパシャパシャっと適当に撮影してあっという間に去って行った。人だかりの中でニコニコしていたそのモデルらしき男性を私もボブも全く知らなかった。
サノ、ありゃ誰だ
んー、たぶんフェイマスな男だけど、アイ・ドント・ノゥだよ
ボブはハハハと笑って、俺もだ、と言った。そこへ彼の娘さんがやってきた。
ああサノ、娘が来たヨ。
そう言って彼は私に娘を紹介してくれた。娘さんは少し照れたような困ったような顔をして笑った。
正直、物凄く可愛かった。
顔が小さくて髪の毛はクルクルパーマをアップにして、スタイル抜群。
プリンとしたおっぱいが弾けるように揺れていて、お尻もまん丸だった。
足もスラっとしていてクリっとした目と真っすぐな鼻筋にぽってりした唇。
うわあ、と見とれていると、ボブが娘の肩をポンポンと叩いて歩き出そうとしていた。
サノ、ありがとよ。
こちらこそ、ボブ。Have a nice day!
(コレはアメリカンプロレスのキメ台詞だったので頭に入ってた)
ボブはニカっと笑って手を振りながら雑踏の中に消えていった。
あ!
娘の名前聞くの忘れてた!!!
そんなわけで、キッドさんはあの日以来、ブラジル人や金髪のお姉さん以外の外人さんにも興味津々なのでありました。
あの時に20代前半ぐらいだとして、もう30歳近いボブの娘。
ボブは50代後半だったと思うから、もうおじいちゃんだ。
今頃はぐんぐん逞しくなって、あの可憐な姿はどこへやら。
アレサ・フランクリンみてえになってたりしてな。
キッドさんの生まれて初めてお付き合いした女の子は生粋のブラジル人でジュリアーナちゃんといったけど、小5で美人でおっぱいがデカくてピアスしてて背が高くて足が早くて力が強かった。だからクラスの女子からは浮いていて、私も体が分厚くて力は強いけど乱暴者でクラスの男子から浮いてて、おあつらえ向きみたいな二人だった。学校をさぼって駅ビルのディズニーストアに入り浸ったり、公園で他愛ない話をしたり、自転車で土手を何処までも走ってみたりしてた。
ホントに可愛かったし綺麗な顔をしていた。
小学6年の4月28日にブラジルに帰ってしまった。親御さんの出稼ぎに連れられてきていたので否も応も無かった。
あれから20年ぐらい経った。
もうアレサ・フランクリンも通り越しているかもしれない。
でもまだ31か。それなら、ケツがリックドムみたいになっただけで済むかも知れないな。
ジュリアーナちゃんは日本に住んで長かったので普通に日本語が喋れた。
ボブとはカタコトの英語と日本語でなんとかなった。
メキシコに居た時なんかもっとひどいスペイン語の単語だけでほぼ乗り切った(まあそのほかの生活を乗り切れなかったけど)
それ以外にも、意外と外人さんと話すときは気合で何とかなることが多い。
語学は気合いだ。あと身振り手振りだ。
小学生の頃、同級生から浮いてた理由のひとつが、この身振り手振りのうざさだったらしいのだが、お陰で小さな役には立っている。
学校生活ってその時はそれがすべてで宇宙の果てまで行っても後ろの壁に書道の時間に書いた
太陽
あいさつ
浦安鉄筋家族
ハムスターの息子に産まれて良かった
などの半紙が飾ってある(後半二つはウソだけど今なら書いて貼り出したい)もんだけど、そんなもんは卒業でも中退でも逃げ切っちゃえば小さな世界。ガラスのビンの底で背伸びしあってるだけに過ぎない。
もちろん、その背比べで勝たなければビンの外でもロクな目には遭わないんだけどね。
でも、一度飛び出したあとで見るビンはあまりに小さい。
私は、飛び出したはいいけどあのビンの小ささが居心地よかった方の人間なんだろうけども。
自分の可能性を開くのは結局のところ勉強でもスキルでも学歴でもない、それらを積み上げるための気合なのだ。
その日、私は渋谷で友達と待ち合わせをしていた。
夕方のラッシュと重なってごったがえす広場で茫然としていると、なんかデカい植木鉢みたいになった植え込みの手すりのさらに上のところも座れそうになっている。なんつったらいいんだろう。
でそこに座ってボンヤリしていると、隣に座っている男性が
デンゼル・ワシントンをもうちょっと恰幅良くしたような感じ
のおじさんだった。勿論外人さん。
白髪交じりのゴマシオ頭に顎髭。
赤を基調にした派手なジャンパーを着て、色褪せたジーパン。
ココが日本なのが惜しいくらい、ザ・アメリカ人!って感じ。まあそうなんだけど。
暇だったのでぎこちなくたどたどしい英語で話しかけてみた。
やあ、僕はサノだ。元気かい?
俺はボブだ。元気だよ。
ボブはどっから来たの?
アメリカだよ、デトロイトさ。
トーキョーには何しに?
娘に会いに来た。娘はトーキョーで働いてるんだ。
TOKYOは何回目?
2回目だ。去年もクリスマスを娘と過ごしたんだ。日本の街は綺麗だな。とてもビューティフルだ。
大体こんな感じの話をしていた。
下手糞な英語とカタコトの日本語とでなんともぶっきらぼうだけど、ボブはとても感じの良い紳士だった。ボソボソとした極小国際交流が少し軌道に乗ってきた頃、急に足元の人の流れが変わったと思ったら誰かが狙いすましたように
「あ!〇〇だ」
と叫んだ。するとそこに、金髪で色の白いスーツ姿の韓国人男性がカメラマンやマネージャーらしきサングラスの男性、なんか烏合の衆、を引き連れて、彼の写真をパシャパシャっと適当に撮影してあっという間に去って行った。人だかりの中でニコニコしていたそのモデルらしき男性を私もボブも全く知らなかった。
サノ、ありゃ誰だ
んー、たぶんフェイマスな男だけど、アイ・ドント・ノゥだよ
ボブはハハハと笑って、俺もだ、と言った。そこへ彼の娘さんがやってきた。
ああサノ、娘が来たヨ。
そう言って彼は私に娘を紹介してくれた。娘さんは少し照れたような困ったような顔をして笑った。
正直、物凄く可愛かった。
顔が小さくて髪の毛はクルクルパーマをアップにして、スタイル抜群。
プリンとしたおっぱいが弾けるように揺れていて、お尻もまん丸だった。
足もスラっとしていてクリっとした目と真っすぐな鼻筋にぽってりした唇。
うわあ、と見とれていると、ボブが娘の肩をポンポンと叩いて歩き出そうとしていた。
サノ、ありがとよ。
こちらこそ、ボブ。Have a nice day!
(コレはアメリカンプロレスのキメ台詞だったので頭に入ってた)
ボブはニカっと笑って手を振りながら雑踏の中に消えていった。
あ!
娘の名前聞くの忘れてた!!!
そんなわけで、キッドさんはあの日以来、ブラジル人や金髪のお姉さん以外の外人さんにも興味津々なのでありました。
あの時に20代前半ぐらいだとして、もう30歳近いボブの娘。
ボブは50代後半だったと思うから、もうおじいちゃんだ。
今頃はぐんぐん逞しくなって、あの可憐な姿はどこへやら。
アレサ・フランクリンみてえになってたりしてな。
キッドさんの生まれて初めてお付き合いした女の子は生粋のブラジル人でジュリアーナちゃんといったけど、小5で美人でおっぱいがデカくてピアスしてて背が高くて足が早くて力が強かった。だからクラスの女子からは浮いていて、私も体が分厚くて力は強いけど乱暴者でクラスの男子から浮いてて、おあつらえ向きみたいな二人だった。学校をさぼって駅ビルのディズニーストアに入り浸ったり、公園で他愛ない話をしたり、自転車で土手を何処までも走ってみたりしてた。
ホントに可愛かったし綺麗な顔をしていた。
小学6年の4月28日にブラジルに帰ってしまった。親御さんの出稼ぎに連れられてきていたので否も応も無かった。
あれから20年ぐらい経った。
もうアレサ・フランクリンも通り越しているかもしれない。
でもまだ31か。それなら、ケツがリックドムみたいになっただけで済むかも知れないな。
ジュリアーナちゃんは日本に住んで長かったので普通に日本語が喋れた。
ボブとはカタコトの英語と日本語でなんとかなった。
メキシコに居た時なんかもっとひどいスペイン語の単語だけでほぼ乗り切った(まあそのほかの生活を乗り切れなかったけど)
それ以外にも、意外と外人さんと話すときは気合で何とかなることが多い。
語学は気合いだ。あと身振り手振りだ。
小学生の頃、同級生から浮いてた理由のひとつが、この身振り手振りのうざさだったらしいのだが、お陰で小さな役には立っている。
学校生活ってその時はそれがすべてで宇宙の果てまで行っても後ろの壁に書道の時間に書いた
太陽
あいさつ
浦安鉄筋家族
ハムスターの息子に産まれて良かった
などの半紙が飾ってある(後半二つはウソだけど今なら書いて貼り出したい)もんだけど、そんなもんは卒業でも中退でも逃げ切っちゃえば小さな世界。ガラスのビンの底で背伸びしあってるだけに過ぎない。
もちろん、その背比べで勝たなければビンの外でもロクな目には遭わないんだけどね。
でも、一度飛び出したあとで見るビンはあまりに小さい。
私は、飛び出したはいいけどあのビンの小ささが居心地よかった方の人間なんだろうけども。
自分の可能性を開くのは結局のところ勉強でもスキルでも学歴でもない、それらを積み上げるための気合なのだ。
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