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第241回。アヤカシ記者ト蒸気都市ヲ行ク
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先日買った黄鱗きいろ(@osana0)さんの作品
「アヤカシ記者、蒸気都市ヲ行ク」
をカバンに忍ばせて、少しお出かけをしてきました。
出たときに買ってすぐ一気読みして、なんだかわからねえけどすげえ!と思い、その気持ちだけでも、なんというか読後に押し寄せる衝撃の温度とテンションの高まりをきいろさんにお伝えしたかった。けれど、どこがどう凄くて面白いのか、ということを未だキチンと明らかにして無かったなと。それでは作者のきいろさんにも作品にも失礼だと思いじっくり読ませていただくことにしました。
基本的に私は新幹線や電車に乗ったらずっと窓の外や運転席を見てるといつの間にかアラ不思議!目的地じゃん!!っていう人なのですが、やっぱり読み始めると止まらない。
イントロ。ヒロインのあおいちゃんが登場するシーン。
これが一番肝心で、最後の最後にこの本を閉じるときにグッとくる。
ああーっ!イイもの読んだ!って思える。
明るく、健気で、瑞々しいばかりの少女あおいちゃん。この子が後々あんなことやこんなことに巻き込まれたり巻き起こしたりするだなんて想像もつかない。
お話は、この可愛らしいあおいちゃんが駆け込んだ一軒のビルヂングに事務所を構える物憂げな大男のところに、ある依頼が舞い込むところから始まる。
ちなみにアヤカシとは様々な妖怪、化物、不可思議な生き物たちのこと。
お話は基本的にあおいちゃんの一人称、もといお喋りなナレーションで進むのだけれど、時おり実直でちょっとウブな青年憲兵・犬村や主人公であるところの大男、人呼んでアヤカシ記者こと裏島からの視点に切り替わることで飽きさせず、物語をあちらこちらから見ることができる。
細かな展開や話の筋(スジ)は是非とも黄鱗きいろさんのカクヨムや単行本をご覧頂くとして、タイトルにもある「蒸気都市」この描写、とくに路面汽車の車窓からの眺めが秀逸でした。私が大好きなテリー・ギリアムのSF映画「未来世紀ブラジル」に出てくる、どこかにあるディストピアに張り巡らされたダクトを彷彿する。
あっちはダクトで繋がった世界の物語だったけど、こっちはスチームパイプの世界というわけです。電気が蒸気に取って代わらなかった世界。
これがスチームロイド、エレキロイドといったロボット技術を二分していて、物語に絡む雷や電気と密接な関係を見せてくれます。なるほどそうか!そう使うんだ!!と勉強になるわ驚かされるわ。
そして多彩なサブキャラも魅力的です。私のお気に入りは綿貫宗太。怪盗ムジナがハリボテで、まさかこの綿貫の母が…。
綿貫、犬村、と彼らに纏わるアヤカシが名前の中にそれとなく入っていたのですが、この綿貫君の母に対する、ワーウルフからの綿貫姓の流れは最高でした。
ダジャレかよ!
と心地よいツッコミを心の中で叫びつつ、この綿貫君のようなキャラがどうしても私は好きで仕方がない。
それは彼は市井の人間であるという事に尽きます。
あおいちゃんも、ウラさんも、登場人物の殆どがアヤカシであるか、それにまつわる背景を持っている。だけど彼だけは違う。お母さんのことこそあれ、綿貫宗太はひとりの単なる人間なのだ。物凄い連中に囲まれた凡庸の僕、という立場が自分に重なる。キン肉マンのジェロニモ、ドラゴンボールのクリリンみたいなもんで、その中では十分に凄いんだけど、いかんせん周りの連中が強すぎる。
だけど彼は大事な役割を追って、アヤカシたちに劣らぬ活躍をする。これがなんとも痛快なのです。タメ語と敬語が入り混じって申し訳ない。
4つの話が最後に大きくまとまっての5つめ。
アヤカシの大トリは裏島とあおい両名。
この辺りの展開も、しっかり練られて考えられているな、と思います。
最後には逃がした狐との新しい戦いと、そこでの更なるシュテンの活躍、そして願わくば綿貫親子にもチャンスを与えてほしい…というのは私の個人的な要望ですが、どうしたって続きが気になる終わり方をしてくれています。
明るく健気なあおい。彼女の憑き物には殺されても当然のような男があてがわれる。そしてそれでも、それほどまでの苦痛を浴びてもなお思い悩むあおいのいじましさ。
普段は気だるそうな裏島の、イザとなった時の絶対性。
読んでいるときはアヤカシにも悪党どもにも、そしてあおいちゃんにも散々振り回されるけど、読み終わると全てが繋がって爽快極まりない読後感を得られる痛快作品、文句なしです!
雷獣、エレキロイド、避雷針、月野(憑きの研究=月野?)、1回目の話から全部きちんと繋がっていて、それが忘れた頃にポンポンとパズルのピースがハマるように繰り出される。予想して、当たったり外れたり裏切られたり考えすぎだったりして、読む方も忙しくしているうちに今回もあっという間にアヤカシと人間を繋ぐドアがバタンと音をたてて閉じてしまった。
明るさを取り戻し、泥水を跳ね上げて走るあおいちゃん。
焼き鳥を一本だけ食べるあおいちゃん。
危機に瀕するあおいちゃん。
ヒロインらしく波乱万丈で、作者にも読者にも愛されるいいキャラでした。
裏島も犬村もシュテンも、ホームズかぶれも、無数のエレキロイドたちも、小さな雷獣も。みんな大好きになる一冊です。
なによりも、綿貫、ありがとう(そこかよ)
ちなみに黄鱗きいろさんのカクヨムでは(小説家になろう、だぞココ!)アヤカシ記者シリーズ第二幕
「アヤカシ記者、七変化ノ香ニ酔フ。」
も発表されております。あおいちゃんのことが好きになった、彼らのことが好きになったという方は、是非あわせてお楽しみいただくと良いかと。
私も、また時折この本の扉を開いて、アヤカシの世界に遊びに行ってみようと思います。
綿貫、また来るからな!
「アヤカシ記者、蒸気都市ヲ行ク」
をカバンに忍ばせて、少しお出かけをしてきました。
出たときに買ってすぐ一気読みして、なんだかわからねえけどすげえ!と思い、その気持ちだけでも、なんというか読後に押し寄せる衝撃の温度とテンションの高まりをきいろさんにお伝えしたかった。けれど、どこがどう凄くて面白いのか、ということを未だキチンと明らかにして無かったなと。それでは作者のきいろさんにも作品にも失礼だと思いじっくり読ませていただくことにしました。
基本的に私は新幹線や電車に乗ったらずっと窓の外や運転席を見てるといつの間にかアラ不思議!目的地じゃん!!っていう人なのですが、やっぱり読み始めると止まらない。
イントロ。ヒロインのあおいちゃんが登場するシーン。
これが一番肝心で、最後の最後にこの本を閉じるときにグッとくる。
ああーっ!イイもの読んだ!って思える。
明るく、健気で、瑞々しいばかりの少女あおいちゃん。この子が後々あんなことやこんなことに巻き込まれたり巻き起こしたりするだなんて想像もつかない。
お話は、この可愛らしいあおいちゃんが駆け込んだ一軒のビルヂングに事務所を構える物憂げな大男のところに、ある依頼が舞い込むところから始まる。
ちなみにアヤカシとは様々な妖怪、化物、不可思議な生き物たちのこと。
お話は基本的にあおいちゃんの一人称、もといお喋りなナレーションで進むのだけれど、時おり実直でちょっとウブな青年憲兵・犬村や主人公であるところの大男、人呼んでアヤカシ記者こと裏島からの視点に切り替わることで飽きさせず、物語をあちらこちらから見ることができる。
細かな展開や話の筋(スジ)は是非とも黄鱗きいろさんのカクヨムや単行本をご覧頂くとして、タイトルにもある「蒸気都市」この描写、とくに路面汽車の車窓からの眺めが秀逸でした。私が大好きなテリー・ギリアムのSF映画「未来世紀ブラジル」に出てくる、どこかにあるディストピアに張り巡らされたダクトを彷彿する。
あっちはダクトで繋がった世界の物語だったけど、こっちはスチームパイプの世界というわけです。電気が蒸気に取って代わらなかった世界。
これがスチームロイド、エレキロイドといったロボット技術を二分していて、物語に絡む雷や電気と密接な関係を見せてくれます。なるほどそうか!そう使うんだ!!と勉強になるわ驚かされるわ。
そして多彩なサブキャラも魅力的です。私のお気に入りは綿貫宗太。怪盗ムジナがハリボテで、まさかこの綿貫の母が…。
綿貫、犬村、と彼らに纏わるアヤカシが名前の中にそれとなく入っていたのですが、この綿貫君の母に対する、ワーウルフからの綿貫姓の流れは最高でした。
ダジャレかよ!
と心地よいツッコミを心の中で叫びつつ、この綿貫君のようなキャラがどうしても私は好きで仕方がない。
それは彼は市井の人間であるという事に尽きます。
あおいちゃんも、ウラさんも、登場人物の殆どがアヤカシであるか、それにまつわる背景を持っている。だけど彼だけは違う。お母さんのことこそあれ、綿貫宗太はひとりの単なる人間なのだ。物凄い連中に囲まれた凡庸の僕、という立場が自分に重なる。キン肉マンのジェロニモ、ドラゴンボールのクリリンみたいなもんで、その中では十分に凄いんだけど、いかんせん周りの連中が強すぎる。
だけど彼は大事な役割を追って、アヤカシたちに劣らぬ活躍をする。これがなんとも痛快なのです。タメ語と敬語が入り混じって申し訳ない。
4つの話が最後に大きくまとまっての5つめ。
アヤカシの大トリは裏島とあおい両名。
この辺りの展開も、しっかり練られて考えられているな、と思います。
最後には逃がした狐との新しい戦いと、そこでの更なるシュテンの活躍、そして願わくば綿貫親子にもチャンスを与えてほしい…というのは私の個人的な要望ですが、どうしたって続きが気になる終わり方をしてくれています。
明るく健気なあおい。彼女の憑き物には殺されても当然のような男があてがわれる。そしてそれでも、それほどまでの苦痛を浴びてもなお思い悩むあおいのいじましさ。
普段は気だるそうな裏島の、イザとなった時の絶対性。
読んでいるときはアヤカシにも悪党どもにも、そしてあおいちゃんにも散々振り回されるけど、読み終わると全てが繋がって爽快極まりない読後感を得られる痛快作品、文句なしです!
雷獣、エレキロイド、避雷針、月野(憑きの研究=月野?)、1回目の話から全部きちんと繋がっていて、それが忘れた頃にポンポンとパズルのピースがハマるように繰り出される。予想して、当たったり外れたり裏切られたり考えすぎだったりして、読む方も忙しくしているうちに今回もあっという間にアヤカシと人間を繋ぐドアがバタンと音をたてて閉じてしまった。
明るさを取り戻し、泥水を跳ね上げて走るあおいちゃん。
焼き鳥を一本だけ食べるあおいちゃん。
危機に瀕するあおいちゃん。
ヒロインらしく波乱万丈で、作者にも読者にも愛されるいいキャラでした。
裏島も犬村もシュテンも、ホームズかぶれも、無数のエレキロイドたちも、小さな雷獣も。みんな大好きになる一冊です。
なによりも、綿貫、ありがとう(そこかよ)
ちなみに黄鱗きいろさんのカクヨムでは(小説家になろう、だぞココ!)アヤカシ記者シリーズ第二幕
「アヤカシ記者、七変化ノ香ニ酔フ。」
も発表されております。あおいちゃんのことが好きになった、彼らのことが好きになったという方は、是非あわせてお楽しみいただくと良いかと。
私も、また時折この本の扉を開いて、アヤカシの世界に遊びに行ってみようと思います。
綿貫、また来るからな!
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