不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

文字の大きさ
上 下
226 / 1,301

第227回。金券ガムのはなし。

しおりを挟む
掲載日2017年 09月19日 01時00分

毎度深夜にもかかわらず公開時間の午前1時にも大体30~40ほどのアクセスを頂いております。一日平均するとザックリ130アクセス前後となります。ありがとうございます。
でね、そんなココを読んでくださっている方の中に、現役稼働中の駄菓子屋さんに行ってた人はどのぐらい居るんだろう?

今日びのオシャレなショッピングモールに、ものすげえわざとらしい駄菓子コーナー、それもなんか
なつかし横丁
とか
ゆうやけ商店街
とかやってるところはノーカンな!
そもそもお前らがそんなところにデカい店建ててるから、あっちは夕焼け通り越して斜陽なんだって話だよ!まあ原因はそれだけじゃねえけど、明らかにとどめを刺しに来ている連中のお遊びに付き合ってまで食う駄菓子は美味いか?

まあそうは言ってもキッドさんも二十歳過ぎのころ横浜の女の子と付き合ってて、デートの度にポーターズだかどっかのモールにあった駄菓子とか昭和グッズのお店でウルトラマンのジオラマのガチャポンを馬鹿みてえに回してたんだけどね。

でまあ、そういう今風にオシャレな懐かしいコーナーとか、あえて小汚い木造建築の煤けた風体を出しています居酒屋みてえな連中はほっといてだ。

やっぱほっとかない。
あのさあ、こないだ家にあった昔の家電を見てて思ったんだけどさ。
大昔のお金持ちが持ってたクーラーより、いま現在の普通の暮らしというか、ちょっと頑張らないと苦しいなって人が使ってるエアコンの方が下手すると性能いいよな。
不便だったんだろうよ、昔は。
エアコンなんか無かった人とか、夜中は店なんかどこも閉まってたとか、そういう時代の人からしたら、上っ面だけ真似した懐かしの店構えとか駄菓子コーナーなんてのはどうなんだろうね?
私が、私の年代がジジイババアになる年になって、今のこの生活よりもっとずっと便利になったとして。リニアが当たり前なのに懐かしの新幹線なんて言われてさ。
納得いくか疑問だよね。

でまあ、そういうオシャレ連中のイケ好かねえ、あえてのなつかしさ、なんてのは今度こそアピヨン星雲の彼方に放り投げて、だ。

駄菓子屋さんの店先にさ、ガムの箱あったじゃん?
箱の真ん中よりやや下あたりに黄色いプラスチックの、巨大な毛穴の汚れみてえなボタンがニョッキリ出てて、スコポンと押すと丸っこいガムが出るやつ。
あれ金券になるんだよな。色によって金額が違っててさ。
赤が100円、オレンジが70円、黄色が50円、緑が30円、青が10円だったか…私がそれをやってた駄菓子屋さんは商店街の中にあって、そこのはデッカイ犬の形のマッシーンだった。スコポン式のボタンではなく、横にスライドするやつで、10円玉をセットしてレバーといっしょにガッチャンコ!するとガムが犬の鼻の下辺りからコロコロコロンと出てくる。で、そのガムの出るところが、ちょうど店のおじいさんが座ってるソロバンのすぐ手元にセットされているというわけ。誤魔化しが効かないんだ。

あのさ、なつかし商店街もいいけどさ、昔の店のジジイババアって結構無神経だったぜ。もう散々悪ガキに荒らされて人間不信度マッドマックスの、なんで駄菓子屋やってんだってくらい子供嫌いのババアとか居たもん。昔、友達の住んでた団地の近くにすげえ安くて品ぞろえがいい駄菓子屋さんがあって、そこは確かに安いし、品数も半端なかった。だけど店のババア、っても当時で50手前ぐらいの、なんつーかな、ダークサイドに落ちたあき竹城さんみたいな。もしくは邪悪なイワトビペンギン。その横に小柄で気弱を具現化したようなヨレヨレの亭主がちょこんと座っていた。会計とか品出しとかは、こっちの亭主がやってた。
ダーク竹城の仕事は、ガキの監視と追いだし。
「金持ってないなら来るな!」
「買ったらさっさと出てけ!」
「買わないなら帰れよコラ!」
といったゴキゲンなシャウトが狭い店内にビリビリと響き渡る。
安いって噂を聞いていっぺん行ったけど、もうおっかねえのなんの。すぐ行かなくなった。

アチコチの町内にひとつは駄菓子屋さんがあったから、遠征してたりしたな。酒屋さんとか八百屋さんが駄菓子も置いてたり、うちのはす向かいのお店みたいにタコ焼きやお好み焼きなんかも出してくれたり。色んなお店があった。
そのうちに、どのお店もじわじわとアイスを置かなくなったり鉄板焼きはやめちゃったりして、少しずつ衰退していった。
うちのはす向かいのお店も、最初にカキ氷をやめた。そして鉄板料理。最後にはひっそりとお菓子も仕入れなくなり、ある日から店が開かなくなった。

犬のマシーンがあったお店は、実はまだ多分やってる。
少なくとも店舗は残っている。
商店街はアーケードがなくなり、妙に洒落たお店や空回りしている地域交流ステーションが出来て少しずつ変わっている。
あのお店が残るも残らないもわからないけど、小さなガム玉ひとつで一喜一憂出来てた頃にはどうしたって戻らない。あれを今やってはしゃいだところで、それは
ファミ横商店街
と同じノリだから。

ちなみにスコポンボタンのガム箱は近所の花火とお菓子の問屋さんで買えるのだが、あれを個人所有したら終わりな気がして。
家で一人でスコポンして、赤が出て喜んだところでしょうがないし…。
でも、見かけるとつい欲しくなる。子供の頃、黄色よりいい色が出たためしがなかったからかなあ。
こないだ言ってたようないい塩梅のほら吹きジジイになったら、駄菓子屋を始めるのもいいかも知れない。で店のガキにガムを買ってもらいながら
「ワシは昔メキシコの砂漠でサボテンを丸かじりしてたんだ。あれはトゲは大した事ないけど、すっぱいぞ」
とか話しかけてウザがられよう。
でも、当たりはちゃんと入れてあげよう。
あのお店がインチキしてたとは思わない。けど、たぶん補充もろくすっぽしてなさそうだったから…。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

玲央のきもち

綴玲央(つづりれお)
エッセイ・ノンフィクション
日々の思いや感じたことをポエムにして綴ります。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

差掛エッセイ

色白ゆうじろう
エッセイ・ノンフィクション
エッセイ集です。日常のぼやきとか、気づきとか何でも書いていきます。

処理中です...