不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第１４９回。背伸びしてたころもあったね

掲載日2017年 07月03日 01時00分

背が伸びなかった。
１９５センチぐらい、オカダ・カズチカ選手ぐらい身長が欲しかった。
未だにちょっと身長については劣等感がぬぐえない。まあそれは単に背丈だけの問題じゃないんだけど、とにかく昔からデカい事が好きだった。
仮面ライダーよりウルトラマンだったし、ケーキもお刺身も大きい方がイイと思ってた。
背を伸ばしたくて、色んな健康器具やサプリの広告も食い入るように見た。

お馴染み週刊ゴングの広告欄。
そこには体を接骨院の細いベッドみたいな台に固定してハンドルを回すと引っ張られて背が伸びるという仕組みの機械や、それが電動式になってさらに効果抜群！みたいなのとか、一緒に飲むと効果てきめん！のカルシウムサプリとか色々載ってた。

買った。カルシウムサプリ。
ヨーグルト味のタブレットで、一粒の大きさが１０円玉くらい。
これを一日に何粒か食うと、カルシウムやら色んな栄養が吸収されるんで…という理屈。

今でもあるけど、駄菓子屋さんに行くとヨーグレットってお菓子あるじゃん。
一つ一つがお薬みたいに押して取り出すパックになってるあれ。
まんまあれ。

というかヨーグレット買ってきて箱だけ替えて高く売ってるんじゃねえのってぐらいヨーグレットだった。

当然、背なんか伸びませんよええ。

小学６年までほぼ一番デカかったし体も分厚かった。デブだったからね。
鍛えるようになって、頭の中では１９０センチ１２０キロぐらいを理想として日々ＦＭＷのテーマ曲アルバムやムービーヒッツ２のワイルドシング（映画メジャーリーグで有名）を延々聞きながら筋トレをしていた。

が、願いも虚しく背は伸びず。
未だに１７０センチポッキリだ。
初めて友達であり仲間であり、副隊長だったケンちゃんに背丈で抜かれた時はショックだったなあ。

今でも背が高くて、自分の気に入らない顔や姿、行動をとってる人を見ると勝手に
ウーーーーーーガルルルル
と牙を剥いてしまいそうになるし、太ももの裏側を強く蹴りたくなる。
身勝手極まりなくて恐縮だけど、背の高さゆえの悩みだとか聞くと、思いなおすどころか
お前のは過ぎたるは及ばざる、だろうが！こちとら飢饉じゃ！
とやっぱり歩み寄れない。背が高くたって低くたって、その人自身の魅力や努力には関係ないってことはわかるんだ。背が高くて男前で私の好きな友達、大阪に通称係長ってひとがいるけど、彼は実に男気溢れる好青年で、本当に見習いたいところもあるし尊敬している。あまり言うと嘘っぽいけど、ホントなんだ。

まあその逆もあるってことだよ。みんながみんな彼のような好青年じゃないし、私だってみんなをみんな好きにはならない。

そこに一つ、背丈っていう動かしがたい要素が入っちゃうのは本当に厄介だけど、２０年もこじらせていると、そう簡単にもどかせないんだ。
背が伸びない、しかも自分じゃどうしようもない。で、仮に嫌いなのっぽが居たとすると、もう恨むぐらいしかないんだよ。
もちろん具体的に危害を加えたりはしないけど、心の奥底で澱のようにとごんで、ずっとゆっくり渦を巻いてるんだ。それは自分でもどうしようもない。自分で汚して育ててしまった毒の沼地みたいなものだ。

今更背が伸びたって、というかもしれない。
けど、多分私は今、明日１９０センチになったら、小躍りして喜ぶと思う。
でそのまま框に頭をぶっつけてくたばるので、どうかご容赦いただきたい。