不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第１４８回。ダイエット作戦

掲載日2017年 07月02日 01時00分

キッドさん８７キロ。
漸く体重が９０キロを割り込むようになったら３０歳を過ぎていた。
２０代後半の殆どを１００キロ台で過ごしてきた身としては、なんだか不思議な感覚だ。

ダイエット、というか、中学高校と柔道をやっていたので減量がきつかった。
階級は８０キロとか７８キロとかそんぐらいだったんだけど、中学生の男子に節制しろったって、オナ禁と同じぐらい無理だっつーの。
柔道で散々汗かいて、帰ってきて食うメシが美味くないわけがない。

しかも、当時我が家にはキッドさんの親父である輝（テル）さんが居た。この輝さん。素行不良で高校時代に生徒会長を首になるぐらいの人気と喧嘩強さを持つ男であったが、その後は料理人を目指して京都で修業をしていたこともあるのだ。
が、あまりに好き嫌いが多すぎて料理人にはなれず、酒好きが高じて飲み屋さんをやっていた。
あと家がテキ屋さんだったので焼きそばやお好み焼きもプロの味、屋台の味。

そんな人が晩御飯を作ってくれていたのである。
そりゃ食うじゃん。
でガンガン練習してご飯ガンガン食うと体重ってどっこいなのねー。

そこで！中学２年生にして体重が８０キロを中々下回らない少年期のキッドさんが望みを託したのが通販のサウナスーツ。
フリーサイズ、あなたもこれで脂肪燃焼！寝ながらダイエット！！
ＮＡＳＡの素材がどうした、特殊素材のスーツでなんちゃら。
色んなうたい文句が書かれていたのは、当時欠かさず読んでいた週刊ゴング（プロレスの週刊誌）の広告欄。
さっそく注文してみた。電話だったか、広告欄についてた注文用のはがきだったか。小遣いをはたき、ちょっとおばあちゃんから小遣いをもらい、それで着払いか払込票か何かで支払った気がする。

着いてびっくりフリーサイズだ！？ふざけんな！！
伸縮性ゼロの生地であるうえ、明らかに小さい。
こんな不自由なフリーがあるか！閉ざされた自由！反抗することもままならない！
夜の校舎窓ガラス壊して回るのはただの犯罪！

渋々着てみると、もうファスナーが上がらない。自慢のＮＡＳＡの素材がキツキツパンパン。チキチキバンバンに似てるけど。あとキツキツパンパンってちょっとやらしい。
オレの股間もキツキツパンパン、宇宙服でも突き破っちゃうぜ！
うん、心臓が胸を突き破って死（ち）にまーちゅ。

でね。
着てみたは良いけどもう身動きもとれないぐらいきっついの！
ファスナーも閉まらないし、太ももなんか腸詰みたいにパッツンパツン。
まりも羊羹みたいに針でつついたらツルン！って剥けちゃうんじゃないかと思うぐらい。キッドさんのパッツンパツンも突いたら剥けねえかなあ…ねえインターネットの全年齢向けコーナーで包茎をカミングアウトするのってどうなの？お前は。
まあ突いたことはありますけどね！！！！！ちゃんと役になってるし夜も立ってるよ！！！
明日死にます。

何の話だっけ。
ダイエットか。
で、なんとか寝たんだよ。もうホント、サウナスーツってより拘束衣だよね。
あんな状態でも熟睡できるもので、起きてみると体が軽い！
足なんかスイスイ上がる。こりゃ凄い！さてどれぐらい痩せたんだ…！？

と起き上がると、股間から膝辺りにかけてザーーックリと裂けていた。
寝返りでＮＡＳＡの素材を引き裂いたらしい。
あの時の私は認められなかったが、あのサウナスーツの生地はやっすいただのツルツルした布切れだった。それが、毎晩毎晩ワイルドシングをヘッドフォンでガンガン聞きながら筋トレしてる１４歳のガキに寝ながら無意識に引き千切られたらひとたまりもないわな。

結局、そのプラプラした哀れな自称ＮＡＳＡ素材のスーツの裏面にガムテをペタペタ貼って補修し、３日ぐらい穿いて寝てました。ええ。
そのあとすぐ捨てた。

今でもサウナスーツと聞くと、あの間抜けな自分を思い出す。
そんなダイエット作戦。もちろん大失敗。
その後、体重が８０キロを下回る日が来るのは高校２年の夏頃であるとは…この時のキッド君は知る由もないのであった。

2019年追記。
まーーーた体重は90キロ台後半になってます。