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第131回。バリゾーゴンを知ってるかい?
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掲載日2017年 06月15日 01時00分
小学校4年生くらいの時だったと思う。
ある日、街中の電柱や駐車場のフェンスに奇妙なポスターが貼られていた。
それはどぎつい色彩で描かれた下手糞なイラストと殴り書きのタイトルで
「バリゾーゴン」
とあった。どうやら巡回映画らしい。
我が町の文化会館だか市民会館だかのホールで行われるというその上映会は18歳未満立ち入り禁止。
エロではなくグロ方面で。
入場料は幾らだったか…2千円くらいだったと思う。
ダメと言われると気になるが、何しろポスターにはデカデカと18禁が謳われているしポスターのイラストも相まってちょっと怖い。
上映会の日までまだかなりある。
が、日を追うごとにポスターの数は増え、そのポスターに添えられているキャッチコピーも様々なものがあった。
「あなたは真の恐怖を味わう」
「ホラー映画ナンバーワン」
みたいな王道を往くものから
「これを見ないと天罰が云々」
「人類の罪をどうたらこうたら」
のような、ちょっとアレなものまで。
中で未だに忘れられないのが
「もののけ姫はマンガだ!…当たり前か」
というやつ。ホントにあったんだって!担当者、ネタ切れか?と思ったものだった。
上映会が間近に迫ると、ポスターだけでは飽き足らずなんとも不気味な写真を窓やボディに貼り付けたワゴン車が街中を走り回っていた。昼間っから映画ブルースブラザーズ(よくこの映画が例えに出るコーナーだなあ)よろしく屋根に括りつけられたスピーカーから
「バリゾーゴン…バリゾーゴン…」
としわがれた男性の声で繰り返していた。他にも色々な誘い文句を述べていたんだろうけど、その部分だけ今でも覚えている。
ワゴン車はその時点でもだいぶ古くなったオンボロのディーゼル車で、真っ黒な煙を吐きながら腐乱死体か何かをピンボケで撮ったような写真をたくさん貼り付けていた。例の下手なんだか薄気味悪いんだかでお馴染みのポスターも一緒に。
そして公開日。なんと友人のクマさんの一番上のお姉さんが当時すでに18歳だったためにこれを見に行ったらしい…まあこのクマさんのお姉さんというのが、二人居るのだがお二人とも好奇心旺盛というかサブカルまっしぐらというか、とても「センサブル」な方々で。
こういう催しごとを見逃す人ではなかったのだ。
で結果はというと、コレが、絵にかいたような
糞!!!!!!!
だったそうで。
まさかコレで終わり? といったところでホントに映画が呆気なく終わってしまい、直後に金返せコールが発生。暴動寸前になったところで仏頂面の女性がやってきて終わったから帰れと言うも火に油。
「責任者を出せ!」
と迫られても
「いません」
の一点張り。どうやら慣れているようだ。
結局、ポスターや宣伝カーにあったようなショッキングなシーンは殆ど無く、三流映画をめいっぱい、それも手作業で宣伝しては街々で顰蹙を買っているようだった。
終わったあとは暫く、いろんな噂が飛び交った。
宗教団体の資金集めだったとか、ただの自主製作映画だったとか、本当に殺人が起こってしまい(撮影中の事故とか出演者が何人も死んでるとかそんな感じの)呪われた映画だった、とか。
でも、それもすぐに忘れ去られてしまった。
今でもたまに思い出すけど、あれはなんだったんだろうなあ、で留めている。
たぶん、一番つまんないのは映画でも思い出でもなく、今コレを検索することだから。
出てこなきゃ出てこないでいいけどね。
でもアレだけアチコチにポスターを貼ったり公共施設を押さえたりしてるってことはアチコチに出没してただろうし、他にも知ってる人くらいは居るかも知れないなあ。
バリゾーゴン。
いま来たら、見に行くだろうけどね。
小学校4年生くらいの時だったと思う。
ある日、街中の電柱や駐車場のフェンスに奇妙なポスターが貼られていた。
それはどぎつい色彩で描かれた下手糞なイラストと殴り書きのタイトルで
「バリゾーゴン」
とあった。どうやら巡回映画らしい。
我が町の文化会館だか市民会館だかのホールで行われるというその上映会は18歳未満立ち入り禁止。
エロではなくグロ方面で。
入場料は幾らだったか…2千円くらいだったと思う。
ダメと言われると気になるが、何しろポスターにはデカデカと18禁が謳われているしポスターのイラストも相まってちょっと怖い。
上映会の日までまだかなりある。
が、日を追うごとにポスターの数は増え、そのポスターに添えられているキャッチコピーも様々なものがあった。
「あなたは真の恐怖を味わう」
「ホラー映画ナンバーワン」
みたいな王道を往くものから
「これを見ないと天罰が云々」
「人類の罪をどうたらこうたら」
のような、ちょっとアレなものまで。
中で未だに忘れられないのが
「もののけ姫はマンガだ!…当たり前か」
というやつ。ホントにあったんだって!担当者、ネタ切れか?と思ったものだった。
上映会が間近に迫ると、ポスターだけでは飽き足らずなんとも不気味な写真を窓やボディに貼り付けたワゴン車が街中を走り回っていた。昼間っから映画ブルースブラザーズ(よくこの映画が例えに出るコーナーだなあ)よろしく屋根に括りつけられたスピーカーから
「バリゾーゴン…バリゾーゴン…」
としわがれた男性の声で繰り返していた。他にも色々な誘い文句を述べていたんだろうけど、その部分だけ今でも覚えている。
ワゴン車はその時点でもだいぶ古くなったオンボロのディーゼル車で、真っ黒な煙を吐きながら腐乱死体か何かをピンボケで撮ったような写真をたくさん貼り付けていた。例の下手なんだか薄気味悪いんだかでお馴染みのポスターも一緒に。
そして公開日。なんと友人のクマさんの一番上のお姉さんが当時すでに18歳だったためにこれを見に行ったらしい…まあこのクマさんのお姉さんというのが、二人居るのだがお二人とも好奇心旺盛というかサブカルまっしぐらというか、とても「センサブル」な方々で。
こういう催しごとを見逃す人ではなかったのだ。
で結果はというと、コレが、絵にかいたような
糞!!!!!!!
だったそうで。
まさかコレで終わり? といったところでホントに映画が呆気なく終わってしまい、直後に金返せコールが発生。暴動寸前になったところで仏頂面の女性がやってきて終わったから帰れと言うも火に油。
「責任者を出せ!」
と迫られても
「いません」
の一点張り。どうやら慣れているようだ。
結局、ポスターや宣伝カーにあったようなショッキングなシーンは殆ど無く、三流映画をめいっぱい、それも手作業で宣伝しては街々で顰蹙を買っているようだった。
終わったあとは暫く、いろんな噂が飛び交った。
宗教団体の資金集めだったとか、ただの自主製作映画だったとか、本当に殺人が起こってしまい(撮影中の事故とか出演者が何人も死んでるとかそんな感じの)呪われた映画だった、とか。
でも、それもすぐに忘れ去られてしまった。
今でもたまに思い出すけど、あれはなんだったんだろうなあ、で留めている。
たぶん、一番つまんないのは映画でも思い出でもなく、今コレを検索することだから。
出てこなきゃ出てこないでいいけどね。
でもアレだけアチコチにポスターを貼ったり公共施設を押さえたりしてるってことはアチコチに出没してただろうし、他にも知ってる人くらいは居るかも知れないなあ。
バリゾーゴン。
いま来たら、見に行くだろうけどね。
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