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第126回。姉さんといっしょ。
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掲載日2017年 06月10日 01時00分
私に実の姉は居ない。でも、姉さんが居る。
年上の、女性の友達って感じのひと。
美人で女優の鈴木砂羽さんと宝生舞さんを足してちょっとがらっぱちにした感じ。お酒が強い。
口は悪いが心の優しい、面倒見のいい人なんだ。
私も口喧嘩じゃなかなわない、物知りで弁の立つひと。
東京のどっかに住んでて、もう知り合って15年くらいになる…。
そんな美人とそもそもどうして知り合ったのかというと、実は全くの偶然だった。
本当に些細な間違いが切っ掛けで今に至るまで付き合いが続いている、というか面倒を見てもらってる。
それって凄いことだよなあ。
あの頃、キッドさん高校生だったんだよ。参っちゃうよな。
高校2年の冬。
当時私は、同級の男の子たちと草野球チームをやっていた。
というか同じ高校でイッコ上の友達であるゴトウケイスケ君から
「佐野君、野球やらない?」
と誘ってもらったので草野球くらいならと思って仲間に入れてもらった。
市内だけどアチコチから寄せ集まった連中ばかりだったから、違う中学の子たちと遊びながら練習するのは楽しくて、何気に中学のとき柔道の試合や練習で会ってたカナメ君と再会したり(妹が可愛かったな)、チームのリーダー格だったコウヅマ君の家でBBQをしたり楽しいチームだった。
その中にコバヤシ君という主要メンバーの一人が居た。
金髪で小柄で痩せてるけど迫力のある子だった。普段は気が優しくて凄くいい奴だったなあ。
で、いつだったかの練習後にコバヤシ君が私のケータイに新しいメールアドレスを入力してくれた。
なんでも機種変更をしたんで変わっちゃったらしい。
そうそう、あの当時は機種変すると番号もアドレスも変わっちゃうし、赤外線通信とか、機種偏した後で一斉にメールが送れたりもしなかった。だから、手打ちで入力するんよ。
でね、そのコバヤシくんのメールアドレスがとてもユニークで、記号やアルファベットを使って顔文字みたいになってるやつだった。
あとでメールするね!と言って、その日は別れた。
あの頃は携帯電話でメールか電話をするのがせいぜいで、LINEもスカイプも無かった。なんだったらパケ放題とかが出始めた頃で、無料通話だとかパケット定額なんてのも夢のまた夢。
使えば使っただけお金がかかる時代だった。ウィルコムもないし。
だけど、やっぱり手元にあれば用なんかなくたって使いたいと思うわな。
その日のうちにメールをした。
すると返事が
「誰ですか?」
もう15年も前の事なので詳しくは忘れてしまったけれど、アンタなんか全然知らないよ、と。
「本当に知らないんです、疑い深い人ですね。私は人違いです」
コバヤシ君をはじめチームのメンバーは結構イタズラ好きだし、最初はからかってるのかなと思ってた。
そういうイタズラやなりすましもあったしね。
だけど段々ホントに違うとわかってきた、どうやらコバヤシ君がアドレスを打ち間違えたようだ。
せっかくだからメル友になりません?と言ってくれたので、こりゃ面白いとありがたくその申し出を受けることに。これが今日まで続いているってわけ。
メル友って言葉も久しぶりに使ったなあ…というか、ほぼ使わないまんま廃れていく言葉だよなあ。
結局、その後姉さんと呼ぶまで紆余曲折あった。
最初は当時姉さんが勤めてたお店の源氏名で呼んでたのが、未だにスマホのアドレス帳に残ってる。
だから、何となくその名前で憶えている。本名も(結婚してから苗字変わっただろうけど)知ってるけど、何となく千夏さん、そのあとは姉さんって呼ぶようになった。
私に姉が居たら、こんな人がイイなと思うから。
まあ話し方から考え方からどっちかっていうと兄さんだけどね。
お互いの生活が変化したり、時代が色々と移り変わって。
連絡手段も電話からスカイプになった。
多分、直接会ったのは4回か5回くらい…かな?
姉さんと会った時の出来事をモデルにした小説も書いたりした(「明後日」ってのがそう。)けど、本人に読んで貰ったらまだまだだね、と。
今はそうして、創作物を見てもらったりもしている。
自分じゃよく出来たつもりでも、彼女に言わせりゃ色々改善点があって。
ある日
「お前、ずいぶん素直に言う事聞くようになったな」
と言われた。ああ私も丸くなったのかしらと思ったものだ。跳ねっ返りのクソガキだったのが少しは年を重ねたのかなあ。
それでも姉さんは今でも才気煥発、きっといつまでも敵わないんだろうなと思う。それであってほしいし。
あと久しく顔を見てないけど、きっと今でも美人でいるんだろうなと思う。
綺麗でお酒が強くて色の白い素肌で、口が悪くて頭が切れて、時々おかしなことを言い出して困らせる。
こんな素敵な人が、考えて思いつくはずもなく。
やっぱり事実は小説よりも奇なり、だなあ。
たまーに元気してるかなと思って連絡してみると、病気で死にそうだったり、疲れ果ててたり、何かと大変みたいだけどいつも変わらない姉さんでいてくれて相手してくれる。
これからも元気で美しく、ずっと私の姉さんでいて欲しいと思っている。
でも、もうちょっと優しくしてほしいなあ…こんなことをいうと
「なんだよ、十分優しいだろぉ?」
と凄まれるのだけれど。
そういうとこも含めて、私はこの人が好きなのだ。というおはなし。
私に実の姉は居ない。でも、姉さんが居る。
年上の、女性の友達って感じのひと。
美人で女優の鈴木砂羽さんと宝生舞さんを足してちょっとがらっぱちにした感じ。お酒が強い。
口は悪いが心の優しい、面倒見のいい人なんだ。
私も口喧嘩じゃなかなわない、物知りで弁の立つひと。
東京のどっかに住んでて、もう知り合って15年くらいになる…。
そんな美人とそもそもどうして知り合ったのかというと、実は全くの偶然だった。
本当に些細な間違いが切っ掛けで今に至るまで付き合いが続いている、というか面倒を見てもらってる。
それって凄いことだよなあ。
あの頃、キッドさん高校生だったんだよ。参っちゃうよな。
高校2年の冬。
当時私は、同級の男の子たちと草野球チームをやっていた。
というか同じ高校でイッコ上の友達であるゴトウケイスケ君から
「佐野君、野球やらない?」
と誘ってもらったので草野球くらいならと思って仲間に入れてもらった。
市内だけどアチコチから寄せ集まった連中ばかりだったから、違う中学の子たちと遊びながら練習するのは楽しくて、何気に中学のとき柔道の試合や練習で会ってたカナメ君と再会したり(妹が可愛かったな)、チームのリーダー格だったコウヅマ君の家でBBQをしたり楽しいチームだった。
その中にコバヤシ君という主要メンバーの一人が居た。
金髪で小柄で痩せてるけど迫力のある子だった。普段は気が優しくて凄くいい奴だったなあ。
で、いつだったかの練習後にコバヤシ君が私のケータイに新しいメールアドレスを入力してくれた。
なんでも機種変更をしたんで変わっちゃったらしい。
そうそう、あの当時は機種変すると番号もアドレスも変わっちゃうし、赤外線通信とか、機種偏した後で一斉にメールが送れたりもしなかった。だから、手打ちで入力するんよ。
でね、そのコバヤシくんのメールアドレスがとてもユニークで、記号やアルファベットを使って顔文字みたいになってるやつだった。
あとでメールするね!と言って、その日は別れた。
あの頃は携帯電話でメールか電話をするのがせいぜいで、LINEもスカイプも無かった。なんだったらパケ放題とかが出始めた頃で、無料通話だとかパケット定額なんてのも夢のまた夢。
使えば使っただけお金がかかる時代だった。ウィルコムもないし。
だけど、やっぱり手元にあれば用なんかなくたって使いたいと思うわな。
その日のうちにメールをした。
すると返事が
「誰ですか?」
もう15年も前の事なので詳しくは忘れてしまったけれど、アンタなんか全然知らないよ、と。
「本当に知らないんです、疑い深い人ですね。私は人違いです」
コバヤシ君をはじめチームのメンバーは結構イタズラ好きだし、最初はからかってるのかなと思ってた。
そういうイタズラやなりすましもあったしね。
だけど段々ホントに違うとわかってきた、どうやらコバヤシ君がアドレスを打ち間違えたようだ。
せっかくだからメル友になりません?と言ってくれたので、こりゃ面白いとありがたくその申し出を受けることに。これが今日まで続いているってわけ。
メル友って言葉も久しぶりに使ったなあ…というか、ほぼ使わないまんま廃れていく言葉だよなあ。
結局、その後姉さんと呼ぶまで紆余曲折あった。
最初は当時姉さんが勤めてたお店の源氏名で呼んでたのが、未だにスマホのアドレス帳に残ってる。
だから、何となくその名前で憶えている。本名も(結婚してから苗字変わっただろうけど)知ってるけど、何となく千夏さん、そのあとは姉さんって呼ぶようになった。
私に姉が居たら、こんな人がイイなと思うから。
まあ話し方から考え方からどっちかっていうと兄さんだけどね。
お互いの生活が変化したり、時代が色々と移り変わって。
連絡手段も電話からスカイプになった。
多分、直接会ったのは4回か5回くらい…かな?
姉さんと会った時の出来事をモデルにした小説も書いたりした(「明後日」ってのがそう。)けど、本人に読んで貰ったらまだまだだね、と。
今はそうして、創作物を見てもらったりもしている。
自分じゃよく出来たつもりでも、彼女に言わせりゃ色々改善点があって。
ある日
「お前、ずいぶん素直に言う事聞くようになったな」
と言われた。ああ私も丸くなったのかしらと思ったものだ。跳ねっ返りのクソガキだったのが少しは年を重ねたのかなあ。
それでも姉さんは今でも才気煥発、きっといつまでも敵わないんだろうなと思う。それであってほしいし。
あと久しく顔を見てないけど、きっと今でも美人でいるんだろうなと思う。
綺麗でお酒が強くて色の白い素肌で、口が悪くて頭が切れて、時々おかしなことを言い出して困らせる。
こんな素敵な人が、考えて思いつくはずもなく。
やっぱり事実は小説よりも奇なり、だなあ。
たまーに元気してるかなと思って連絡してみると、病気で死にそうだったり、疲れ果ててたり、何かと大変みたいだけどいつも変わらない姉さんでいてくれて相手してくれる。
これからも元気で美しく、ずっと私の姉さんでいて欲しいと思っている。
でも、もうちょっと優しくしてほしいなあ…こんなことをいうと
「なんだよ、十分優しいだろぉ?」
と凄まれるのだけれど。
そういうとこも含めて、私はこの人が好きなのだ。というおはなし。
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