上 下
109 / 1,299

第120回。香水のはなし。

しおりを挟む
掲載日2017年 06月04日 01時00分

中学校の頃、柔道部と言うバラ色もしくは青い春の色とは全く無縁になるであろう部活を選んだ佐野少年。 

入部の決め手になったのは 
①「空手部が無かったから」 
②「球技が苦手だから」 
③「ほかの運動部(主に野球部)に小学校の頃キライだった奴が多かったから」 
④「かといって文系の部活には馴染めなさそうだったから」 
⑤「合法的に取っ組み合いが出来るから」 
と、まあ、こんな感じ。 
何しに学校へ通っていたんだお前は。 

そうそう、入学してすぐの部活動見学で真っ先に柔道場に行ったら顧問らしきコワモテの先生に 
「おっ!キミはいい体格してるな!よーし柔道部に入れよ!な!!」 
と誘っていただき、その顧問らしきコワモテの先生はやっぱり柔道部の顧問で。 
そして目出度く1年3組に入った私の担任だった。 

柔道部の練習は厳しい。 
部活動以外でも、生活、つまり服装の乱れとかボンタン(まだあの当時は履いている子が居たのだ)、香水や毛染めなんて論外だった。まあ、坊主を強要されないだけ良かったと思うけどね。 
イジメ、シゴキ、坊主頭の強要とかそういう理不尽なことは嫌いな、コワモテだけど優しい先生だった。 
柔道とは「柔の道」であり、小さくても「武道家」であるからこそ、礼儀正しく清潔に!というわけだ。 
まあ、身体はもともとずんぐりむっくりだったのがさらにゴツくなるし、当時から進路希望はどこぞの高等学校じゃなくリングの上だった私はツラいながらも毎日楽しく鍛えていた。 
8歳から習ってて初段も持ってた少林寺拳法とチャンポンになっちゃったけど、その間に双方の良い所を多少なり学んだつもりだ。 
もともと日本に根付いた少林寺拳法は武術組織としては新しい部類で、様々な格闘技の良い所を取り入れられている。開祖・宗道臣先生自身も古流柔術の心得があるので、当然のように柔道家対策なんてのもあった。
で、道院には高段者で趣味・格闘技!みたいなマニアックな先生が多かったので
「佐野君、柔道やってるやつと戦うならこう来て、こうして、こう極めるんだ!こうだぞ、こう!」
「いででででで!!!!!!」
みたいな話をよくしてくれた。あれは面白かったな。
まあそう言いながら柔道家対策の技を駆けられて悶絶してんのも私なんだけど。
 
…何の話だっけ。ああそうだ、柔道部に入って、オサレとは縁遠くなったって話か。 
(どうも格闘技の話になると長くなってイカンな。) 

月日は流れ。 
ある日、何の因果か運命のいたずらか偶然の生贄か。 
なんと佐野君に彼女が出来たのだった! バラ色の日々よ!
しかも生まれて初めて女の子から「アイノコクハク」というものをされた。 
うーむ私も中々捨てたものではない。 
中学1年の3学期の話である。 
(ところであれ以来とんとそんな機会がないのはなぜなのか。)

でまあ付き合い始めたは良いが、その彼女Sちゃんとは中学2年の秋頃に別れてしまった。 
お互い色々と子供だった…まあ今でも大きな子供みたいと言われるが、それはいいか。 
別れてすぐに誤解が解けて、その都度ヨリを戻すんだけど、結局はお互いすれ違うばかり。 
そのまま卒業を迎えてしまったのである。切なっ。 
部活も引退して少林寺と筋トレに精を出す毎日…受験勉強なんかしてもいない。 
自習時間に受験対策用の問題プリントの裏に4コマ漫画をせっせと書いて、友達に見せてたっけな。 

春がきて。 
私は定時制高校の昼間部へ、Sちゃんはそのすぐ近くの女子高へ進んだ。 
何のきっかけか忘れたけど、高校1年の夏から秋にかけて、何度目かの復縁をした。 
高校1年とはいえ半年前まで同じ学校に居たのに、ずいぶん雰囲気が変わったような気がした。 
でも、実際会って話してみると、大して変わってない(当たり前だ)。 

黒いショートカットがよく似合う、童顔で私より少し背が低くて、笑うと左の頬にえくぼが出来る。 
昼間の誰も居ない私の家まで、学校をさぼって自転車で来てくれた。 
部屋に入って少し話をして、なんとなくいい雰囲気になって抱きしめた。 
Sちゃんは小さく言葉を投げた。 

香水、つけてるの? 

高校生になって少し変わったのは私のほうだった。 

柔道部の組長(そういえばなんで柔道部の先生ってコワモテが多いんだろうな)じゃなくて先生は基本的に 
「香水」 
「芳香剤」 
といった物を許してはくれなかったので、当然ながら香水なんて言うものを付けられるはずも無く。 
デオドラントスプレーの「せっけんのかおり」とかでも怒られたぐらいだ。 
「オトコが汗臭いのなんか気にするな!もっと払い腰の手の角度を気にしろ!」 
と言うことだったんだろうけど… 
多感な、特にアチコチにコンプレックスのある私にはこういう「男らしさ」は実は少々苦痛だった。 

その反動か、高校に入ると通学・バイトともに 
「デオドラントストーン」を水で濡らして気になる部分に塗る 
「資生堂のAGプラスを全身に振り掛ける。」 
「香水噴霧」 
と、「ひとり・注文の多いレストラン」のようになっていった。この手順を必ず踏まないと登校しなかった。と言うより怖くて人前に出られない。 まあ、これは今でもそうなんだけど。

Sちゃんと会うとなったら、普段より気合が入るのは当然と言える。
バッチリ決めたつもりが、そこを突かれて少しうろたえてしまった。 
変わらない気持ちと関係を望んでいたのに。 
背伸びなんてするもんじゃねえな。 

一度ほころんだカーペットのように、あとはどれだけ繕っても元には戻らないんだな。 
そのままぼろきれのようになってもまだ、たまにウエス代わりに思い出して心をぬぐうのですが。 
そんなぼろきれに染み付いた香りが忘れられない。 
オトコも香水ぐらいはアリだと思います。オサレであり、身だしなみであり。 
まあ、ほどほどに。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界

レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。 毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、 お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。 そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。 お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。 でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。 でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

処理中です...