不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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第71回。ガソリンスタンドでバイトしてた頃好きだった人のはなし。

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高校1年の春から早速バイトを始めた。
私が通っていたのは定時制なのでバイトOKどころか、働いている人でも通える学校なので生徒の半数以上はバイトをしていた。

お客さんにも店員の皆さんにも可愛がって頂いていて、今でも給油や修理・点検・洗車はココに通っている。あれから15年くらい経っているけど、みんな元気そうで何よりだ。

そんな出光のスタンドからすぐ近くに、あの当時マツダレンタカーのお店があった。
このお店が出光のお客さんだったので、店員さんがレンタカーやユニックの給油に来ていた。
わナンバーの車が入ってくると、中に誰が乗っているかスバヤク確認してすぐさま接客のために飛び出していた。
そこのマツダレンタカーのお姉さんに当時ぞっこん惚れていたからだ。

このお姉さん(クボタさん)は当時20代前半。明るい茶髪にちょっと掠れた声、顔たちも整っていて、遊び慣れてる感じのするカワイイお姉さんだった。あの当時すごくオトナに思えてたけど、今にして思えば随分若い。まあ高校生の分際で惚れ込むには生意気か。
徹夜で遊んでそのまま仕事に来てたり、機嫌がいいと待合室の自販機でジュースおごってくれたりもした。こっちもヒマだとちょっと立ち話したりして、彼女が来るのが毎日待ち遠しかった。

この当時、キッドさんの体重は80キロ前後。
自転車通学とバイト通いに加えて、このバイト先の坂道をさらに数キロ上った先の道院まで少林寺拳法の修行に週2回通っていた。そしてさらに漢方薬を飲みだすとコレが体質にマッチしてか鼻炎も改善されるわダイエットにもなるわで75キロくらいまで絞れていた。
ある日クボタさんが
「佐野君、最近痩せたよねー!そっちのがかっこいいよ!」
と福音のメッセージ。
佐野さん(キッドさんの本名)は思わず
「いま75キロだから、70キロ切ったらデートしてくれるぅ?」
と言ってみた。
するとクボタさん
「いーよ!」
「え???」
「いいよ、佐野君が本気なら付き合ってあげるよ!」

これでキッドさん、ハートと体脂肪に火がついた。
晩飯のご飯のおかわりを辞め、茶碗も一回り小さくして、筋トレを増やし、買い食いも辞めた。
小遣いも貯まるし体重はぐんぐん落ちた。漢方薬のおかげもあってそれから2か月でついに…ついに体重が69キロに!!
学生服がずいぶん緩くなって、体もたいへん軽くなって。
身も心も軽やかにガソリンスタンドに出勤したキッドさんに、社員Oさんから思わぬひとことが。
「こないだクボっち(クボタさんの愛称)が彼氏とボウリング行ったらしくてさあ~…」
へ?
なんとキッドさんがダイエットしてる間にクボタさんに彼氏が出来ていたのだ!!!!!

ああ今思い出しても甘めの失意で軽く死にたくなるね(笑)ははは…。
そんなわけでその日は仕事をしていても心ここにあらず。
よくガソリンの種類を間違えたりしなかったな…と思うけど、全くその日の仕事の記憶がなかったことを覚えている。15年も経つと、その辺の記憶なんて一括りになっちゃうもんだけど、この日この瞬間の事と、もうひとつ。そのことをクボタさんから直接聞いた時の事だけは今でもハッキリ覚えている。

衝撃の発覚から数日のち。キッドさんはバイトが終わって自転車を飛ばしていた。
するとマツダレンタカーの店先にクボタさんが居た。声をかけて軽く話して、店の前の自販機でコーヒーを買ってあげて
「そういえば体重、70キロ切ったよ!」
「ほんと!?すごーい、おめでとう!じゃあ…」
「でも、彼氏が…」
「あっ、うん、あの、ごめん!」
終始笑い話のトーンと動きではあったけど、やっぱり確かに彼氏は居たのだった。

でまあ、この後キッドさんは元の木阿弥。暴飲暴食で高校卒業するときには86キロまで太っていました。…ってもコレを書いてる今日現在89キロで、最大120キロ近くまで太ってた事を思えば86キロもまだまだ軽いって気がするから不思議なもんだ。

そのマツダレンタカーも随分前になくなってしまい、TIMESのレンタカーか何かになっていた。
で、つい先日、そのTIMESも無くなって土地ごと更地になってた。
2019年現在、そこはリフォーム会社になっている。

クボタさん、今いずこ。
あれから15年かあ…今から付き合おうって言われても…。

まあ付き合うよね(付き合うんかい!)。
そんな美人のお姉さんの思い出。
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