上 下
47 / 1,299

第61回。映画館のはなし。

しおりを挟む
掲載日2017年 04月05日 12時00分

溺れる魚。

最近、映画をよく見ている。
DVD借りてきて、夜寝る前に暗い部屋で一人、テレビは点けたまま(当たり前か)。

昔から映画が好きで、年に何度も映画館に行っていた。
まだ近所に映画館がたくさんあった頃だったけど、お客さんは入ったり入らなかったりしていたっけな。

一番近くて一番よく通ったのは、当時近所にあった西武百貨店の6階が映画館になっていた。ここは何といってもゴジラをやっていたので、正月や夏休みはそこいらじゅうの子供たちが集まって来ていた。あとドラえもんの映画もここだったな。
ここで雲の王国やブリキの迷宮(ラビリンス)を見た記憶がある。

ゴジラは大好きだったから、物心ついたときからVSシリーズは全部見に行った。
キングギドラ、モスラ、メカゴジラ、スペースゴジラにデストロイアだったかな。ビオランテはまだ小さくて見てなかった。
いやあースペゴジの最後でゴジラが赤くなって、それがデストロイアであんな結末に…ありゃ映画館で見れた人は幸せだよ。
あの
「これで我々の来年度の予算はゼロだ。来年度があれば、だが」
も見たわけだし(後年に見直すまで忘れてたけど)

この西部の映画館で受付をやってたオバさんの娘が同じ幼稚園のホナミちゃんという子で。
コロコロしてて可愛らしい子であった。
映画を見に行くと、よくモギリのブースに座ってたっけな。

その西武からほど近くに古びた映画館があって。
ここは普段はよくわからないムツカシイ映画がかかっている映画館だった。
けどたまにガメラをやっていたので、その時はみんなで見に行った。
いつ行ってもガラッガラで、近隣の映画館では早いうちになくなってしまった。
中は広くて天井が高くて、館内の独特の薄暗くて少し湿っぽい椅子の匂いが好きだったなあ。

その映画館と西武百貨店の間ぐらいの位置にユメックスというビルがある。うさんくさい雑居ビルと風俗街の入り口を明るく彩る商業ビルなのだが、この中にも映画館があった。もののけ姫をここで見た。

あと母親とジャッキー・チェンのラッシュアワーか何かを見に行ったのに、ドクター・ドリトルを
「ジャッキー出てこないねえ…?」
と言いながら全部見たこともあった。
二人してクリス・タッカーとエディ・マーフィーの区別がつかなかった10数年前。

そして極めつけが、駅前大通りのドン突きにあった銀座東映。
保険屋さんとか普通の会社が入ってるオフィスビルと、古い食堂の3階建てのビルの間に
銀 座 東 映
って赤いネオンサインのついた門があって、その奥の煤けて古びた暗いビルにあった映画館。
いつも往来に立て看板があって
「悶絶!真昼の団地妻」
だとか
「痴漢列車PART3~女子校生のもだえ~」
だとか
「浴場・混浴女将」
とか、まあそんなタイトルがばーんと書かれていまして。

今思えば、こんなにアカラサマでこんなに陰気なポルノ映画館が徒歩5分の場所にあったのですね。この銀座東映の前を通るのが好きなS君というのが居て、いつも決まっていた(私とはあまり仲良くなかったのでたまにハブられた)下校メンバーにこのS君がいると、必ず銀座東映の前を走って通過して、その一瞬に チラッ と映画館の入り口を見るのがお好きだったようです。
映画に興味があるというよりは、彼もまたそこに集うオトナタチに興味があったのだと思います。

今ここに書いた映画館は、今現在すべてなくなってしまった。
西武百貨店は閉店して随分そのままだったけど、今は中部ガスのこぎれいなビルになってしまったし、ガメラの映画館はフェンスに選挙ポスターがべたべた掲げてある駐車場になってた。
ユメックスの映画館はどうなったんだろ、まだあるのかな。確か飲み屋か何かになったような…あのビルは色々ごちゃごちゃしててわかりにくいんだよなあ、夜になると客引きが多くて…あまり通らなくなってわからないや。

思い出の映画は、今やご家庭でお気軽にみられるけれど。
思い出の映画館は、いつも記憶の中でセピア色。
えっ銀座東映?そりゃ当然ピンク色だろうよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

50歳の独り言

たくやす
エッセイ・ノンフィクション
自己啓発とか自分への言い聞かせ自分の感想思った事を書いてる。 専門家や医学的な事でなく経験と思った事を書いてみる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

天涯孤独のアーティスト

あまゆり
エッセイ・ノンフィクション
はじめに… 自分自身の波瀾万丈の人生を書いてます。 こんな生き方も参考にしてください。 学もない私が書いていきますので読みづらい、伝わりづらい表現などあるかもしれませんが広い心でお付き合い頂ければと思います。 平成や令和の方などには逆に新鮮に思えるような昭和な出来事などもありますので不適切な表現があるかもせれませんが楽しんでもらえたらと思います。 両親が幼い頃にいなくなった私 施設に行ったり、非行に走ったり 鑑別所や、少年院に入ったり 音楽を始めたり、住む家がなくフラフラして生きて、いつの間にか会社を経営して結婚して子どもが生まれたり、女装を始めたり こんな生き方でも今生きている自分がいるってことを伝えたいと思います。 過去を振り返ることで今の自分が怠けずに生きられているのか、自分を見つめ直すことができるので頑張って書いていこうと思います。 この物語に出てくる登場人物は本人を除いて一部の人は仮名で表現しております。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...