不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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第19回。フーセンガムうりきれ。

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掲載日2017年 02月24日 21時16分

まず店に入ったら赤い服を着た女性を探すんだ。
外で深々と降り続く雪の音が、屋根越しにしっかりと聞こえるほど小さな店だからすぐに見つかる。

女性に話しかけると、ガムを買わないかと聞かれる。
フーセンガム、ありきたりな品物だが、手に入るのはそこだけだ。この世界では。

フーセンガムを買うと、オマケに猿がもらえる。
猿のオマケにガムじゃない、ガムのオマケが猿なんだ。

その猿の大好物は、ガムなんだ。だからガムをやれば猿が付いてくる。
小さな店だが売っている物で小遣いをやりくりして買える物は少ない。代わりに売れるようなものを持っているなら、それを売れば遠足気分に浸る事は出来るだろう。

猿を連れて雪道を進むんだ。寄宿舎を振り返っても誰も居ない。
温かなベッドと友情はしばらくお預け。君のベッドなら彼が温めておいてくれる。心配はいらない。

雪原の野良犬は唸り、カラスとヤギが嘶くだろう。
湖を渡るんだ、夜明けに猿とガムを使え。シチューはテントの中だ。

洞窟の中はずっと雨だが、今は気にする事は無い。
石碑と巨人の足元をすり抜けてアンドーナッツの研究所を目指せ。

君が銀色の球体で遥か彼方を目指す頃、あの小さな店の片隅で赤い服の女性は次のお客にこう言う。
「フーセンガムはうりきれになっちゃったんですよ。」
その次のお客にも、その次も、未来永劫。
「フーセンガムはうりきれになっちゃったんですよ。」
しんしんと降り続く雪。猿の居なくなった店の片隅で。
「フーセンガムはうりきれになっちゃったんですよ。」
フーセンガムは、フーセンガムは、フーセンガムはうりきれになっちゃったなっちゃったなっちゃったフーセンガムはフーセンガムはうりきれうりきれにフーセンガムフーセンガムフーセンガム
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