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泣きたくなるほど、ノスタルジックな夏でした。2.
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泣きたくなるほど、ノスタルジックな夏でした
起き上がり何処かへ逃げ出そうとのけぞり手足を突っ張る彼女の喉元に、折り曲げた肘に体重を乗せて押し付け布団の上に押し戻す。ぐべ、と声にもならない音を出し、唇の端から唾液を泡立たせ溢れさせる。いま目の前に横たわっているのは、もう、愛しい恋人ではない。望まないセックスの望まない膣内射精を拒むために、決死の形相でなりふり構わずのたうち回る肉と孔だ。しかし彼女の頤と自分の肩とで挟み込まれた僕の前腕はしっかり固定され、愛しい肉孔(にくあな)の持ち主の喉元を圧し潰し続けた。頸動脈ではなく気道を潰すこの技は苦痛が大きく、彼女の眼からは血の混じった涙が流れ始め、紅潮した顔がトマトのように膨れ上がった。そして彼女の息が詰まれば詰まるほど、ぬめりの増した膣壁で僕のことをキツく締め付けた。
避妊具も潤滑油もつけず、死ぬほど首を絞めながら続けるキのままのセックスに没頭する僕たちと、開け放たれた玄関の向こうに広がる間延びした風景の間で、茫然自失したまま立ち尽くしていた彼女の父親が我に返って叫んだ。
「お、おい! な、ななにをしているんだゃ!」
この期に及んで「ナニをしてる」と来たもんだ。全くいつものことながら野暮な親父だ。肘を退けて彼女の髪の毛を掴み、父親の方を向かせアゴの下から頬を掴む。
「ねえ、ナニしてるの、だって。ナニしてるか教えてあげなよ」
首の絞まりが解けたことで全身に酸素と血が巡って、安堵と脱力のあまり彼女は無言のまましょわしょわと大量の尿を垂れ流した。生温かい感触が腹の下を流れて行って心地よいが、布団に沁みる傍から異臭を放ち始めて興ざめする。まあ、ちょうどいいし、もうシオにしようか。
「そろそろ終わるからね」
腰を打ち付けるスピードが一段階増したことで、何かを察した彼女が決死の抵抗を再開するが、その両肩を強く押し戻してそのまま圧し掛かる。ぶにゅ、と彼女の胸が僕の胸板の下でひしゃげて潰れる。親父と彼女の目が合った。棒立ちの親父の股間が悲しいくらいに膨れていた。それを見た彼女の絶望的な表情と、裏腹な膣壁のきつい収縮で僕は具合よく達することが出来た。自分で自分の脈動を、彼女の肉孔越しに感じるのはいいものだ。
涙すら枯れ果てて虚ろな目をした彼女から体をどかして、色んな体液と血の混じったものを硬く粗末なティッシュペーパーで拭い取る。ふう、と一息ついたところで猛然と立ち上がった彼女が、そのまま服も着ずに引き戸の外に広がる長閑な風景へと、脱兎の如く飛び出していった。激しく揺れる尻の隙間から血の混じった僕の精液をポタポタこぼし、たまにブリブリと下劣な音を立てて空気と一緒に吹き出して。
「あっ、オイ!」
見向きもされず横を通り過ぎられた親父が、マヌケな顔をして追いかける。それを異臭を漂わせる布団の上に胡坐をかいて見送りながら、僕もゆっくりと身支度をした。
汚れて生臭く塩辛い異臭を放つ手指を、彼女の歯磨き粉を拝借して念入りに洗う。こうするとシモの臭いが良く取れるとSMの女王様が言っていた。なるほど餅は餅屋だ。無様な豚男の相手をするのに色んな所に指を突っ込まなくちゃならない人たちの言う事は実に正しく、不快な肉孔臭はすぐに消え、癪に障る柑橘系のミントの香りが鼻先をくすぐった。
玄関を出ると、良く晴れた里山の向こうに穏やかな三河湾が広がっていた。濃い緑と深い青と、何処までもバカみたく晴れた空。なんていい景色だろう。いま蹂躙され発狂した女の子が下半身丸出しで駆け出していって、それをギンギンの男根に劣情が充満していることを隠そうとも出来ずに追いかけてゆくのが彼女の父親だなんて。そんな極小単位に凝縮された地獄絵図が繰り広げられているなんて。きっと世の中の人たちは、誰も知らないのだろう。
この粗末な離れのなかで巻き起こっていた出来事が、ボイラーの蒸気みたいに吹き出して、何処かに向かって雲散霧消していく。外へ出たら何もかもオシマイさ、あとは霧になるか雲になるか、風に攫われて消えてゆくだけ。馬鹿な父娘だ──
起き上がり何処かへ逃げ出そうとのけぞり手足を突っ張る彼女の喉元に、折り曲げた肘に体重を乗せて押し付け布団の上に押し戻す。ぐべ、と声にもならない音を出し、唇の端から唾液を泡立たせ溢れさせる。いま目の前に横たわっているのは、もう、愛しい恋人ではない。望まないセックスの望まない膣内射精を拒むために、決死の形相でなりふり構わずのたうち回る肉と孔だ。しかし彼女の頤と自分の肩とで挟み込まれた僕の前腕はしっかり固定され、愛しい肉孔(にくあな)の持ち主の喉元を圧し潰し続けた。頸動脈ではなく気道を潰すこの技は苦痛が大きく、彼女の眼からは血の混じった涙が流れ始め、紅潮した顔がトマトのように膨れ上がった。そして彼女の息が詰まれば詰まるほど、ぬめりの増した膣壁で僕のことをキツく締め付けた。
避妊具も潤滑油もつけず、死ぬほど首を絞めながら続けるキのままのセックスに没頭する僕たちと、開け放たれた玄関の向こうに広がる間延びした風景の間で、茫然自失したまま立ち尽くしていた彼女の父親が我に返って叫んだ。
「お、おい! な、ななにをしているんだゃ!」
この期に及んで「ナニをしてる」と来たもんだ。全くいつものことながら野暮な親父だ。肘を退けて彼女の髪の毛を掴み、父親の方を向かせアゴの下から頬を掴む。
「ねえ、ナニしてるの、だって。ナニしてるか教えてあげなよ」
首の絞まりが解けたことで全身に酸素と血が巡って、安堵と脱力のあまり彼女は無言のまましょわしょわと大量の尿を垂れ流した。生温かい感触が腹の下を流れて行って心地よいが、布団に沁みる傍から異臭を放ち始めて興ざめする。まあ、ちょうどいいし、もうシオにしようか。
「そろそろ終わるからね」
腰を打ち付けるスピードが一段階増したことで、何かを察した彼女が決死の抵抗を再開するが、その両肩を強く押し戻してそのまま圧し掛かる。ぶにゅ、と彼女の胸が僕の胸板の下でひしゃげて潰れる。親父と彼女の目が合った。棒立ちの親父の股間が悲しいくらいに膨れていた。それを見た彼女の絶望的な表情と、裏腹な膣壁のきつい収縮で僕は具合よく達することが出来た。自分で自分の脈動を、彼女の肉孔越しに感じるのはいいものだ。
涙すら枯れ果てて虚ろな目をした彼女から体をどかして、色んな体液と血の混じったものを硬く粗末なティッシュペーパーで拭い取る。ふう、と一息ついたところで猛然と立ち上がった彼女が、そのまま服も着ずに引き戸の外に広がる長閑な風景へと、脱兎の如く飛び出していった。激しく揺れる尻の隙間から血の混じった僕の精液をポタポタこぼし、たまにブリブリと下劣な音を立てて空気と一緒に吹き出して。
「あっ、オイ!」
見向きもされず横を通り過ぎられた親父が、マヌケな顔をして追いかける。それを異臭を漂わせる布団の上に胡坐をかいて見送りながら、僕もゆっくりと身支度をした。
汚れて生臭く塩辛い異臭を放つ手指を、彼女の歯磨き粉を拝借して念入りに洗う。こうするとシモの臭いが良く取れるとSMの女王様が言っていた。なるほど餅は餅屋だ。無様な豚男の相手をするのに色んな所に指を突っ込まなくちゃならない人たちの言う事は実に正しく、不快な肉孔臭はすぐに消え、癪に障る柑橘系のミントの香りが鼻先をくすぐった。
玄関を出ると、良く晴れた里山の向こうに穏やかな三河湾が広がっていた。濃い緑と深い青と、何処までもバカみたく晴れた空。なんていい景色だろう。いま蹂躙され発狂した女の子が下半身丸出しで駆け出していって、それをギンギンの男根に劣情が充満していることを隠そうとも出来ずに追いかけてゆくのが彼女の父親だなんて。そんな極小単位に凝縮された地獄絵図が繰り広げられているなんて。きっと世の中の人たちは、誰も知らないのだろう。
この粗末な離れのなかで巻き起こっていた出来事が、ボイラーの蒸気みたいに吹き出して、何処かに向かって雲散霧消していく。外へ出たら何もかもオシマイさ、あとは霧になるか雲になるか、風に攫われて消えてゆくだけ。馬鹿な父娘だ──
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