転生帰録2──鵺が嗤う絹の楔

城山リツ

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第五章

5-2 RPG⑤使徒の頂点

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「さあてと、今日もすみれさんは綺麗かなー?」
 
 わざと戯けて言う梢賢しょうけんは空元気を出している、と蕾生らいおは思った。インターホンを鳴らすとすぐに菫が出迎えた。
 
「まあ、いらっしゃい。こずえちゃん、蕾生様」
 
「おはようございますぅ。お言葉に甘えてまた来ちゃいました」
 
 可愛く年少ぶる梢賢に菫はにっこり笑っている。どう見ても異性として見られていないのに、梢賢の涙ぐましい努力に蕾生は呆れていた。
 
「いつでも大歓迎よ。ちょうど朝のお祈りが終わったところなの」
 
あおいくんはお勉強ですか?」
 
「ええ、そうよ」
 
 梢賢はリビングに入っても誰もいないので確認すると菫がにこやかに答える。もうひとつ、踏み込んでみた。
 
あいちゃんは?」
 
「……知らないわ」
 
「……」
 
 途端に無表情で冷たくなる菫の反応を見た蕾生は、せめて藍に対する仕打ちだけでも先になんとかできないかと考えたが、いい方法は浮かばなかった。
 
「さあ、今日はなんのお話をしましょうか?」
 
 先ほどの質問などなかったかのように、菫は明るい声音で二人に笑いかける。梢賢もそれを掘り下げることはせず、情報収集に努めようとしていた。
 
「そうですね、この前からチラチラお聞きしてるメシア様ってお方はどういう……?」
 
 蕾生が伊藤を疑ったように、梢賢の方はメシアが眞瀬木ませき灰砥かいとではないかと疑っていた。菫はそういう背景事情は知る由もないのですんなりと教えてくれる。
 
「うつろ神様の使徒様──葵や蕾生様達のような方達の頂点に立ってるお方よ。すでに覚醒を終えられていて、その御身にうつろ神様が降臨される日まで厳しい修行を続けていらっしゃると聞くわ」
 
「て言うと、うつろ神様は実体がないんで?」
 
「それはそうよ。日本には他にもいろいろな神様がいるけど、誰もお姿を見たことはないでしょ?それとおんなじ!」
 
「あ、あー、なるほど!そりゃそうですねえ!」
 
 今日も菫はご機嫌だった。それを崩さないように梢賢も愛想笑いを浮かべる。
 
「あの、使徒とメシアって人の違いってなんスか?」
 
 続けて蕾生が聞くと、菫は少し考えながらも教えてくれた。
 
「そうねえ、どちらも覚醒した使徒様なんだけど、その中でもメシア様は覚醒の深度が特別でね。うつろ神様に一番近い所にいらっしゃるお方よ」
 
「覚醒ってなんなんスか?」
 
 皓矢こうやから聞かれていることもあって蕾生が掘り下げると、菫は更に考えながら答える。
 
「うーん、具体的に聞かれると困っちゃうわね。私も見たことないし。お姿が変わる方もいれば、オーラの色が変わる方もいたり、個性があるって有宇儀ゆうぎ様は仰ったわ」
 
「つまり、覚醒すると何かしらが変わるってことですかね?」
 
 歯切れの悪い菫から何とか引き出そうと梢賢も助け舟を出す。すると菫はニンマリと意味深に笑った。
 
「そうね。何しろ私達とはひとつ上の階層に上がった存在になるのだから。──その覚醒、もうすぐ見れるかもしれないわよ?」







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