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第三章
3-22 銀騎の開祖
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「そうだね、お尋ねの眞瀬木という呪術師とうちに接点があるかだけど、結論から言えばあった」
「へえ!」
「銀騎はどこにでも出てくるな」
予想はついていたが、自分達の周りに必ずいる銀騎の存在に永も蕾生も改めて驚いていた。
「ははは、申し訳ない。あったと言っても、かなり昔の話だ。ざっと二百五十年前の記録に少しだけね」
「そんな前かよ」
「当時は陰陽師という稼業そのものが衰退していてね、それを打破するべく銀騎朝詮という人が身内以外にも術者を募ったんだ」
「銀騎朝詮って、おたくの開祖でしょ?」
永が確認すると、皓矢も大きく頷いた。
「そう。お祖父様が尊敬してやまない偉大な先祖だ。尤も、銀騎という字に改めてからのことだけどね」
「改名したってことか?」
「そうだね。それ以前は違う漢字を充てていたんだけど、師羅鬼幽保──元々の朝詮の名前なんだけど、彼が改革して身内以外にも全国から有力な術者を集めたんだ」
「へえ……」
永がそれを初めて聞くような感じで聞いているので皓矢は首を傾げながら尋ねる。
「永くんは覚えていないかい?」
「そんな昔のことは鮮明にはわかんないな。もっと前から陰陽師には狙われてたけど、そいつの名前なんて興味なかったし。銀騎って言う名前も知ったのは最近な気がしてる」
永の記憶力のセーブについては梢賢から言われていたので、蕾生はそんなものだろうと思っていた。
「そうか。確かに君達から見ればうちはいつも胡散臭い奴らだったろうからね。
で、師羅鬼幽保は身内と有力な術者をまとめて陰陽師集団・銀騎を作った。それが今でも続いている我が家という訳だ」
「それはちょっと知ってる。親戚筋を分家において、外部からの人達を部下としてこき使ってるんでしょ。親藩と外様みたいな」
容赦ない永の例えに皓矢は苦笑しながら頷いた。
「まあ、そうだね。今から二百五十年前、銀騎の黎明期において、眞瀬木家はその外様候補だった」
「集めるというと、どのようにしたんですか?」
星弥がこれ以上出てこないと見定めた鈴心が永の後ろからひょっこり顔を出して聞いた。
「公募もしたし、こちらからスカウトに行ったりもしたようだ。眞瀬木家はこちらから幽保本人が当時の麓紫村に出向いている」
「ええ?だって隠れて住んでたのに?なんか不思議な結界が張ってあったけど?」
「そうです。私達も目の当たりにしましたが、とても奇妙なものでした。銀騎に見つかるとは思えませんでしたよ」
永と鈴心が口々に言うと、皓矢は少し考えてたら見解を述べる。
「恐らくだけど、君達が見たその奇妙な結界は雨都が村にやってきてから張り直したものじゃないかな?当時はごく普通の結界だったと記録されている。ただ、その記述を僕は少し疑っている」
「と言うと?」
「麓紫村の結界は幽保本人が出向かなければ破れないものだった可能性もある。天才の幽保には普通の結界に見えただけかもしれないね。
総じて考えると、村に張ってある結界は今も昔も強力なものであることは間違いない」
「つまり、開祖の力をもってしかコンタクトがとれなかったほど、眞瀬木の力は強いということですか?」
「そう。スカウトしたくなる気持ちもわかるだろう?」
鈴心の確認に皓矢は満足そうに頷いていた。
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「へえ!」
「銀騎はどこにでも出てくるな」
予想はついていたが、自分達の周りに必ずいる銀騎の存在に永も蕾生も改めて驚いていた。
「ははは、申し訳ない。あったと言っても、かなり昔の話だ。ざっと二百五十年前の記録に少しだけね」
「そんな前かよ」
「当時は陰陽師という稼業そのものが衰退していてね、それを打破するべく銀騎朝詮という人が身内以外にも術者を募ったんだ」
「銀騎朝詮って、おたくの開祖でしょ?」
永が確認すると、皓矢も大きく頷いた。
「そう。お祖父様が尊敬してやまない偉大な先祖だ。尤も、銀騎という字に改めてからのことだけどね」
「改名したってことか?」
「そうだね。それ以前は違う漢字を充てていたんだけど、師羅鬼幽保──元々の朝詮の名前なんだけど、彼が改革して身内以外にも全国から有力な術者を集めたんだ」
「へえ……」
永がそれを初めて聞くような感じで聞いているので皓矢は首を傾げながら尋ねる。
「永くんは覚えていないかい?」
「そんな昔のことは鮮明にはわかんないな。もっと前から陰陽師には狙われてたけど、そいつの名前なんて興味なかったし。銀騎って言う名前も知ったのは最近な気がしてる」
永の記憶力のセーブについては梢賢から言われていたので、蕾生はそんなものだろうと思っていた。
「そうか。確かに君達から見ればうちはいつも胡散臭い奴らだったろうからね。
で、師羅鬼幽保は身内と有力な術者をまとめて陰陽師集団・銀騎を作った。それが今でも続いている我が家という訳だ」
「それはちょっと知ってる。親戚筋を分家において、外部からの人達を部下としてこき使ってるんでしょ。親藩と外様みたいな」
容赦ない永の例えに皓矢は苦笑しながら頷いた。
「まあ、そうだね。今から二百五十年前、銀騎の黎明期において、眞瀬木家はその外様候補だった」
「集めるというと、どのようにしたんですか?」
星弥がこれ以上出てこないと見定めた鈴心が永の後ろからひょっこり顔を出して聞いた。
「公募もしたし、こちらからスカウトに行ったりもしたようだ。眞瀬木家はこちらから幽保本人が当時の麓紫村に出向いている」
「ええ?だって隠れて住んでたのに?なんか不思議な結界が張ってあったけど?」
「そうです。私達も目の当たりにしましたが、とても奇妙なものでした。銀騎に見つかるとは思えませんでしたよ」
永と鈴心が口々に言うと、皓矢は少し考えてたら見解を述べる。
「恐らくだけど、君達が見たその奇妙な結界は雨都が村にやってきてから張り直したものじゃないかな?当時はごく普通の結界だったと記録されている。ただ、その記述を僕は少し疑っている」
「と言うと?」
「麓紫村の結界は幽保本人が出向かなければ破れないものだった可能性もある。天才の幽保には普通の結界に見えただけかもしれないね。
総じて考えると、村に張ってある結界は今も昔も強力なものであることは間違いない」
「つまり、開祖の力をもってしかコンタクトがとれなかったほど、眞瀬木の力は強いということですか?」
「そう。スカウトしたくなる気持ちもわかるだろう?」
鈴心の確認に皓矢は満足そうに頷いていた。
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