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第三章
3-4 黒幕は誰
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「ちょっと待てよ。伊藤ってのは村人じゃないんだろ?蔵に盗みに入れるのは村人しか考えられないって言ってたじゃねえか」
「そうですね。それに見知らぬ人は私達以外は村に入っていないとも」
蕾生と鈴心の反論は想定内だと言うように、梢賢は余裕を見せながら勿体ぶった言い方をする。
「珪兄やんがさ、銀騎なら式神でも使って誰にも見られずに盗めるだろって言うてたやろ?」
「ああ、確かに」
「それと同じことができる人達をオレは知ってるんやけど」
「──眞瀬木!?」
永は思わず声を上げる。鈴心も目を見開いて驚いていた。
「わざわざ里を出た意味、わかってくれた?」
ドヤ顔で言う梢賢を褒めてやる気遣いを忘れるほどに、永は思考するのに忙しかった。
「そうか。藤生も眞瀬木も、あの場ではいかにも被害者風だったからそこまで考えなかった」
「眞瀬木が伊藤の黒幕ってことか?じゃあ雨辺を支援してるのは眞瀬木で、支援者は鵺を信仰してるから──」
「眞瀬木の誰かが鵺の信仰者……」
永と蕾生の考えを聞いた梢賢は目を細めながら言った。
「そ。ハル坊が初日に鵺を信仰する素地が里にはあるのかって聞いたやろ。ドンピシャなんであん時は鳥肌たったで」
「なるほど。確かに実際に見た方が良かったね」
永は眞瀬木墨砥、珪、瑠深の顔と印象を思い出していた。
仏頂面な忠臣タイプ、陰険そうなインテリタイプ、気の強い快活タイプ。三者三様の人物像だが共通しているのは呪術師特有の身に纏うおどろおどろしさ。職種から見ても鵺に興味がありそうだ。
「タイミングがいいのか悪いのかわからへんけど、盗難事件のおかげで浮き彫りにはなったな」
「では、眞瀬木が鵺を信仰する素地というのはどういう……?」
核心をつく鈴心の質問に、梢賢は残念そうに答えた。
「ああー、それ知りたいよなあ。でもそれだけは言えへんねん。言ったら父ちゃんの首が飛ぶ」
「ええ!?」
「まさか、そこまで」
蕾生は冗談だろうと少し笑ったが、現実主義の永さえも真面目に聞いていた。
「今まで見聞きした村の様子なら、やりかねないね」
「まじかよ……」
「そんな訳でよ、眞瀬木と銀騎の関係についてはオレは言えへんねん」
「!」
「──うん?」
サラッと言った梢賢の言葉に、鈴心が過剰に反応した。それは永も同様だった。
「眞瀬木と銀騎って関係あんのか?」
「ライ、シー!」
「?」
鈍感な蕾生の言葉を鈴心が遮るけれど、当の蕾生にはまるでわかっていない。
「君らの後見人に聞いてみたら何かわかるんちゃう?」
「──わかった」
永はすぐに携帯電話でメールを打ち始めた。送信相手はもちろん銀騎皓矢である。
「どういうことだ?」
「今のが梢賢の精一杯だということです」
梢賢は一度だけ銀騎という単語を使うことによって眞瀬木と銀騎に何かがあることを示唆した。自分の口からは言えないから、銀騎に聞いてみろということだ。
「すまんなあ」
ヘラヘラ笑う梢賢は満足そうだった。
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「そうですね。それに見知らぬ人は私達以外は村に入っていないとも」
蕾生と鈴心の反論は想定内だと言うように、梢賢は余裕を見せながら勿体ぶった言い方をする。
「珪兄やんがさ、銀騎なら式神でも使って誰にも見られずに盗めるだろって言うてたやろ?」
「ああ、確かに」
「それと同じことができる人達をオレは知ってるんやけど」
「──眞瀬木!?」
永は思わず声を上げる。鈴心も目を見開いて驚いていた。
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「眞瀬木が伊藤の黒幕ってことか?じゃあ雨辺を支援してるのは眞瀬木で、支援者は鵺を信仰してるから──」
「眞瀬木の誰かが鵺の信仰者……」
永と蕾生の考えを聞いた梢賢は目を細めながら言った。
「そ。ハル坊が初日に鵺を信仰する素地が里にはあるのかって聞いたやろ。ドンピシャなんであん時は鳥肌たったで」
「なるほど。確かに実際に見た方が良かったね」
永は眞瀬木墨砥、珪、瑠深の顔と印象を思い出していた。
仏頂面な忠臣タイプ、陰険そうなインテリタイプ、気の強い快活タイプ。三者三様の人物像だが共通しているのは呪術師特有の身に纏うおどろおどろしさ。職種から見ても鵺に興味がありそうだ。
「タイミングがいいのか悪いのかわからへんけど、盗難事件のおかげで浮き彫りにはなったな」
「では、眞瀬木が鵺を信仰する素地というのはどういう……?」
核心をつく鈴心の質問に、梢賢は残念そうに答えた。
「ああー、それ知りたいよなあ。でもそれだけは言えへんねん。言ったら父ちゃんの首が飛ぶ」
「ええ!?」
「まさか、そこまで」
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「今まで見聞きした村の様子なら、やりかねないね」
「まじかよ……」
「そんな訳でよ、眞瀬木と銀騎の関係についてはオレは言えへんねん」
「!」
「──うん?」
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「眞瀬木と銀騎って関係あんのか?」
「ライ、シー!」
「?」
鈍感な蕾生の言葉を鈴心が遮るけれど、当の蕾生にはまるでわかっていない。
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「──わかった」
永はすぐに携帯電話でメールを打ち始めた。送信相手はもちろん銀騎皓矢である。
「どういうことだ?」
「今のが梢賢の精一杯だということです」
梢賢は一度だけ銀騎という単語を使うことによって眞瀬木と銀騎に何かがあることを示唆した。自分の口からは言えないから、銀騎に聞いてみろということだ。
「すまんなあ」
ヘラヘラ笑う梢賢は満足そうだった。
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