転生帰録2──鵺が嗤う絹の楔

城山リツ

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第二章

2-24 呪いの根源

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「残念ながら時代はわからないけどね。お坊様が会ったのは亡霊だったんだから、確実にそれより過去の人物だろうけど」
 
「そうなるとくくばかま──ってのは字の通り裾を括って歩きやすくした袴やねんけど、洋服だとするとズボンかね?」
 
 梢賢しょうけんの考えに、はるかは軽く頷いた。
 
「断定はできないけど、可能性はあると思うね。その亡霊がどこの国のどの時代の人かがわからないから、服装の話は頭の片隅に置くくらいでいいと思う」
 
「ふむ。重要なのは、初代が会ったぬえの亡霊は人間だった──ちゅうことやな?」
 
「あ!」
 
 梢賢の示したものの重要さに蕾生らいおも気づいた。それは今までの認識を変えそうなくらいのものだった。
 
「そう。僕がはなぶさ治親はるちかだった時に会った鵺は最初から獣だった。けど、ここの部分を読んで欲しいんだけど──」
 
 今度は永が書物の頁を捲って指差した。それを覗き込んだ梢賢が読み上げる。
 
「あー、「私は呪いの成れの果て。私は黒い獣」ってその亡霊が言ったってとこやな?」
 
「うん。つまり、鵺は元々人間だった──のかもしれない」
 
「それって、俺と同じってことか?」
 
 蕾生が聞けば、永は少し歯切れ悪く答える。
 
「うん……お坊様が会った亡霊もかつて鵺に呪われた人なのかも」
 
「ちゅーことは、ライオン君がそいつから鵺の呪いをなすりつけられたってことやんな?」
 
「まあ、今の所はそう考えるのが良さそうだね」
 
 断定はしないものの、永がそう結ぶと梢賢は肩で息を吐いた。
 
「なるほどなあ。呪いの発生源みたいなもんは見えてきたけど、呪いを解くってなると何もわからんな」
 
「そうなんだよ。結局お坊様が会った亡霊は繰り返し転生させていることを伝えただけだった。
 だから当時の僕は一生懸命お坊様に説明したんだ。英治親がどうやって鵺を倒したのか。雷郷らいごうがどんな風に鵺化したのかをね」
 
 梢賢は永に説明を聞きながら書物を捲る。
 
「うん、それは本にも書いてあるよ。それを聞いた初代が萱獅子刀かんじしとう慧心弓けいしんきゅうを使えば鵺を倒せるかもしれんっちゅーアドバイスをしたんやな?」
 
「そう。僕らは未だにその教えに従って、萱獅子刀と慧心弓を探している」







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