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第二章
2-21 梢賢の部屋
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三人は梢賢の部屋に案内された。
畳の上にネオンカラーのカーペットが敷かれ、ガラス張りテーブルが置かれている。
アルミ製のゴミ箱やマガジンラックなど、かなり昔のヤンキーが使っていたような物ばかりが雑然と置いてあった。
パイプベッドにはあろうことか直接布団が敷いてある。
「鈴心ちゃん、大丈夫か?なんならオレのベッドに寝っ転がってもええで」
クーラーをつけてから梢賢は鈴心を気遣った。だが、返ってきたのは辛辣な言葉だった。
「臭そうなので嫌です」
「──!!」
まるで雷に打たれたように、梢賢は固まった。蕾生も気持ちはわかるが言うことではないと思った。
「そんだけ悪態つければ平気だろ」
「しかたないので座らせてもらいます」
鈴心は深く溜息をついてベッドに腰掛けた。
「ま、まあええ、麦茶でも持ってきたるわ。適当に座っててや!」
ショックから立ち直れない梢賢は一旦部屋を出て行った。永はカーペットの上に直接腰を下ろす。
「リン、本当に大丈夫か?」
「はい。家の中に入ったらだいぶ良くなりました」
「そう、良かった」
しかし、鈴心はその後黙ってしまった。そんな様子を具合が悪いだけと捉えた蕾生は部屋の壁を見回しながら永の隣に座った。
「しかし、なんだこの部屋?」
「んー、古き良き時代の青春って感じだねえ」
永も懐かしそうに部屋を眺めていた。まるでその時代を経験したかのように。
「なんで壁に布張ってんだ?」
「あれはペナントって言ってね、昔のお土産の定番だよ」
「へえー……」
初めて見るものに蕾生が目を丸くしていると、梢賢がトレイに麦茶を乗せて戻ってきた。
「おまっとうさん!どうした坊達!さてはオレの部屋のおシャンティさに腰抜かしよったな?」
「ちょっと何言ってるかわかんねえ」
今度は蕾生からの辛辣な反応に、また梢賢は固まった。
「はいはい、麦茶ありがとう。──はい、リン、飲みな」
そんな梢賢からトレイをひったくって、永はまず鈴心に麦茶を差し出した。
「ありがとうございます」
受け取った鈴心は静かに、けれど勢いよく麦茶を飲んでいる。
「まあええわ、オレはお兄さんやからな。広い心で受け止めたるわ」
引き攣った顔のまま、梢賢もようやく腰を下ろした。
===============================
お読みいただきありがとうございます
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畳の上にネオンカラーのカーペットが敷かれ、ガラス張りテーブルが置かれている。
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クーラーをつけてから梢賢は鈴心を気遣った。だが、返ってきたのは辛辣な言葉だった。
「臭そうなので嫌です」
「──!!」
まるで雷に打たれたように、梢賢は固まった。蕾生も気持ちはわかるが言うことではないと思った。
「そんだけ悪態つければ平気だろ」
「しかたないので座らせてもらいます」
鈴心は深く溜息をついてベッドに腰掛けた。
「ま、まあええ、麦茶でも持ってきたるわ。適当に座っててや!」
ショックから立ち直れない梢賢は一旦部屋を出て行った。永はカーペットの上に直接腰を下ろす。
「リン、本当に大丈夫か?」
「はい。家の中に入ったらだいぶ良くなりました」
「そう、良かった」
しかし、鈴心はその後黙ってしまった。そんな様子を具合が悪いだけと捉えた蕾生は部屋の壁を見回しながら永の隣に座った。
「しかし、なんだこの部屋?」
「んー、古き良き時代の青春って感じだねえ」
永も懐かしそうに部屋を眺めていた。まるでその時代を経験したかのように。
「なんで壁に布張ってんだ?」
「あれはペナントって言ってね、昔のお土産の定番だよ」
「へえー……」
初めて見るものに蕾生が目を丸くしていると、梢賢がトレイに麦茶を乗せて戻ってきた。
「おまっとうさん!どうした坊達!さてはオレの部屋のおシャンティさに腰抜かしよったな?」
「ちょっと何言ってるかわかんねえ」
今度は蕾生からの辛辣な反応に、また梢賢は固まった。
「はいはい、麦茶ありがとう。──はい、リン、飲みな」
そんな梢賢からトレイをひったくって、永はまず鈴心に麦茶を差し出した。
「ありがとうございます」
受け取った鈴心は静かに、けれど勢いよく麦茶を飲んでいる。
「まあええわ、オレはお兄さんやからな。広い心で受け止めたるわ」
引き攣った顔のまま、梢賢もようやく腰を下ろした。
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