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第一章
1-6 関西弁?
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永が宥めると、見かねた鈴心が話題を変えた。
「あの、何故関西弁を?ここは違いますよね?」
「いやや、鈴心ちゃんも鋭いねえ!オレのこの喋りはキャラ付けや!大学デビューってやつ!」
思っても見なかった答えに、永も蕾生も言葉を失う。
だが、鈴心はその聞き慣れない単語を反芻した。
「大学、デビュー、とは?」
「オレ、山奥のどど田舎出身やろ?でも大学は君らの学校の近くやねん。つまり都会や。都会モンにはなめられんようにせんとあかん!
元から芸人とかむっちゃ好きやねん、ほんでその喋り方をな、勉強してん。芸人はモテるからなあ、オレもきっとモテる!」
拳まで握って力説するが、内容は実にしょうもない。鈴心は理解に苦しんだ後、理解するのをやめ、愛想笑いで心の距離をとった。
「は、はあ……そうですか……」
「だからな、オレの関西弁はネイティブやないから、たまーに変な言葉遣いするかもしれん。けど、そこはご愛嬌やで!そういう隙がある方がモテるって書いてあったしな!」
「はあ……そういうものなんですね……」
何に書いてあったかなんて、鈴心にとってはどうでもいい話だった。だが流石に会って数分の相手にいつもの調子でバッサリいく訳にもいかず、愛想笑いを続けていると、梢賢はへにゃっと笑ってその手をとった。
「鈴心ちゃんはむっちゃええ子やなあ」
「え?」
「こんなオレの馬鹿な話を真面目に聞いてくれてありがとなあ。大学の女の子達は全然聞いてくれん、ケータイと爪ばっか見とる!」
──でしょうね、とはまだ流石に言えない鈴心は握られた手をそのままに、ひたすら苦笑を続けていた。
「あ、ちょっと」
我慢が出来なくなったのは永の方で、鈴心の手を握る梢賢の手をそっと解く。額に少し怒りの筋をつけて。
「ん?んん?──もしかして付き合ってんの?」
その微妙な様子を敏感に感じ取った梢賢は永と鈴心を見合わせて無遠慮に言った。
蕾生はそのデリカシーの無さにまた言葉を失う。
「えっ!?」
永は肩を震わせて年に一度あるかないかの動揺を見せたが、鈴心からは単なる事実が告げられた。
「いえ。私はハル様の部下です」
その言葉に無になってしまった永を見て、蕾生は何やってんだと言う代わりに大きく溜息を吐いた。
「そ、そんなことより!麓紫村まで案内してくれるんでしょ!?さっさと行きましょうよ!」
慌てて話題を変える永に、梢賢は右手を制止を表す様に立てて言う。
「あ──いや、せっかく高紫市まで出てきたんや、先に紹介したい人がおる」
「え?」
「その前に、茶ァしばかへん?」
高くなってきた日差しに汗を滲ませて梢賢はにっこりと笑った。
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「いやや、鈴心ちゃんも鋭いねえ!オレのこの喋りはキャラ付けや!大学デビューってやつ!」
思っても見なかった答えに、永も蕾生も言葉を失う。
だが、鈴心はその聞き慣れない単語を反芻した。
「大学、デビュー、とは?」
「オレ、山奥のどど田舎出身やろ?でも大学は君らの学校の近くやねん。つまり都会や。都会モンにはなめられんようにせんとあかん!
元から芸人とかむっちゃ好きやねん、ほんでその喋り方をな、勉強してん。芸人はモテるからなあ、オレもきっとモテる!」
拳まで握って力説するが、内容は実にしょうもない。鈴心は理解に苦しんだ後、理解するのをやめ、愛想笑いで心の距離をとった。
「は、はあ……そうですか……」
「だからな、オレの関西弁はネイティブやないから、たまーに変な言葉遣いするかもしれん。けど、そこはご愛嬌やで!そういう隙がある方がモテるって書いてあったしな!」
「はあ……そういうものなんですね……」
何に書いてあったかなんて、鈴心にとってはどうでもいい話だった。だが流石に会って数分の相手にいつもの調子でバッサリいく訳にもいかず、愛想笑いを続けていると、梢賢はへにゃっと笑ってその手をとった。
「鈴心ちゃんはむっちゃええ子やなあ」
「え?」
「こんなオレの馬鹿な話を真面目に聞いてくれてありがとなあ。大学の女の子達は全然聞いてくれん、ケータイと爪ばっか見とる!」
──でしょうね、とはまだ流石に言えない鈴心は握られた手をそのままに、ひたすら苦笑を続けていた。
「あ、ちょっと」
我慢が出来なくなったのは永の方で、鈴心の手を握る梢賢の手をそっと解く。額に少し怒りの筋をつけて。
「ん?んん?──もしかして付き合ってんの?」
その微妙な様子を敏感に感じ取った梢賢は永と鈴心を見合わせて無遠慮に言った。
蕾生はそのデリカシーの無さにまた言葉を失う。
「えっ!?」
永は肩を震わせて年に一度あるかないかの動揺を見せたが、鈴心からは単なる事実が告げられた。
「いえ。私はハル様の部下です」
その言葉に無になってしまった永を見て、蕾生は何やってんだと言う代わりに大きく溜息を吐いた。
「そ、そんなことより!麓紫村まで案内してくれるんでしょ!?さっさと行きましょうよ!」
慌てて話題を変える永に、梢賢は右手を制止を表す様に立てて言う。
「あ──いや、せっかく高紫市まで出てきたんや、先に紹介したい人がおる」
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高くなってきた日差しに汗を滲ませて梢賢はにっこりと笑った。
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