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2-C わんこ後輩×3-A 真面目先輩
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わんこ後輩 佐久間 トモ
真面目先輩 今野 ナツ
☆二人は文芸部です。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
「せんぱーい! せんぱぁぁい! 部活の時間ですよぉ!」
三年生の校舎に響く声。しかしその声は三年生ではない。
「先輩の、先輩だけの可愛い後輩、佐久間トモがやって来ましたよぉお!」
大きな耳をパタパタさせて、大きな尻尾もぶんぶん振って。
だが彼は犬ではない。放課後、三年A組に必ず現れる二年生だ。
犬のような耳と尻尾は、その言動により周囲の者がそう錯覚するだけ。
「ナツせんぱぁい! 部活という名の愛の巣に帰りましょー!」
彼の挙動が、周囲のスルースキルの限度を超えた頃、その攻撃は飛んでくる。
「うるさい!」
だがそのゲンコツは、トモの顔に届かない。だいたい胸のあたりが限度。そこにぺちり、と軽い音を立てるだけ。
「お前は毎日毎日、騒がしいんだよ! でかい図体で叫ぶな、恥ずかしいっ!」
トモより頭ひとつ小さい三年生。黒髪ストレートで眼鏡をかけた『真面目』顔を真っ赤にしていた。
彼こそが、佐久間トモが愛してやまない文芸部部長の今野ナツである。
「ナツ先輩♡ 今日もめっちゃ可愛いですね! 昨日よりもさらに可愛いですよ!」
「何度言えばわかるんだ、男に可愛いとか言うんじゃない!」
「ええー、kawaii♡に男も女もないでしょ? ジェンダー差別ですよ、表現の自由を重んじる文芸部がそんなこと言っていいんですかぁ?」
「ぐぬぬ……」
絵に描いたような文学少年・今野ナツの弱点をついた的確な返答であった。
三年A組の級友達はそんな二人のやり取りをすでに見慣れてしまって、冷やかすのも飽きた程だ。
大型犬が迎えに来る。
クラスイチ大人しい文学少年が、放課後だけ言動が粗暴になる。
なんだかんだ犬がじゃれついて、部活に連れて行く。
そういうパッケージが出来てしまっていた。
◇ ◇ ◇
金犀学園高等部。文芸部の在籍は現在二人。
部室棟で割り当てられた小さな一部屋だけが、トモとナツの城である。
向かい合わせに机が二つあるだけの部室。部活が弱小なので、ノートパソコンも一台しかない。
トモが入る前はナツが使っていたが、今はそれをトモに譲り、ナツは自前のタブレットで作品を制作している。
部室に来るまでの行動からして、チャラい見た目のトモはナツを愛でるか漫画でも読んでいるのだろうと思われている。
意外にもトモまでちゃんと執筆をしていることは周囲には知られていない。
「先輩、今は何書いてるんですか?」
自分より三倍は早いタイプ音が鳴り続けている。ナツが快調に書いているものについてトモは聞いてみた。
「うん、先月秋田川賞が出ただろ。昨日読み終わったから内容をまとめているんだ」
「ああ。感想文ですか」
トモが軽くそう言うと、ナツは急に顔を上げて睨みながら訂正した。
「書評、だ!」
「……怒る先輩も可愛いですねえ」
だが、目の前の後輩は頬を緩ませてそんなことを言う。
ナツは大きく息を吐いて、また視線を画面に戻した。
「お前はどうなんだ、最近真面目にやってるようだが、何を書いてる?」
画面を見ながらナツが聞くと、トモはやっと聞いてくれたと、喜んで答える。
「へへへー! ズバリ、タイトルは『ナツ物語』って言います! あ、サマーとナツをかけたダブルミーニングでしてね」
「おい、そのナツ、って言うのはまさか……」
ナツは恐る恐るまた顔を上げてトモに聞く。
するとトモはぽっと頬を赤らめて答えた。
「ナツ先輩のことですよぉ! オレから見た先輩の素晴らしさ、そして可愛さを詰め込んだ、エッセイと言うか観察日記です!」
「やっぱり……お前はブレないな……」
誇らしげに言ってのけるトモに、深い溜息を吐いた後、ナツはまた視線を画面に戻した。
「あれ? 恥ずかしいから止めろ! とか言わないんですか?」
トモが聞くと、ナツは自分の原稿をタイプしながら言った。
「言わないよ。お前の表現の自由はお前のものだ。モチーフが俺なのは部長だからだろ」
「……それだけじゃないですけど。続けていいんですか?」
「完成させるなら構わない。何でも書き上げることが大切だ」
「……はい!」
トモは嬉しかった。
当然怒って止められると思ったからだ。それはそれでお仕置きが美味しいからいいと思っていた。
ナツはトモの想像をいつも超えてくる。とても良い方向に。
だから、トモはナツが大好きだ。
「ただし、検閲はするからな。恥ずかし過ぎるエピソードは容赦なくボツにするから覚悟しておけ」
「了解でありますっ!」
トモはビシッと手で敬礼のポーズを作って応えた。
自然とノートパソコンを叩く指にリズムが生まれていた。
しばらくして、ナツが少し難しい顔をしながら画面を見続けているので、トモは気分転換になればと声をかけた。
「先輩は文化祭に向けて、書評の薄い本を作るんですか?」
トモの質問に、ナツはまた顔を上げて凄んだ。
「薄い本じゃない! 本来の意味での同人誌だ!」
「本来もなにも、今、同人誌って言ったらパロディの薄い本のことですよぉ。トレンドはしょうがないですよね」
「お前、随分詳しくなったな。まさかその手の本屋に行ったんじゃないだろうな?」
ナツがジト目で聞くと、トモはケロッとして答えた。
「行きましたよ、そんで買いました」
すると、ナツは顔を赤らめてどもる。
「おま、おまえ、まさか……」
「エッチなのはね、年齢制限厳しくて買えませんでした。あ、二次じゃなくて買ったのは一次です、先輩はパロディ嫌いですもんね」
「な、何、買った……?」
「あれえ?先輩気になるんですか?」
トモがニヤニヤして聞くと、ナツはまだ顔を赤くしたまま言いにくそうにしていた。
「そりゃ、後輩がどんなものに触れたのか、知っておく必要が……あるだろ」
ごにょごにょと呟くように言うナツが可愛くて、トモは思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、なんとか耐えた。
抱きしめるのはもうちょっと揶揄ってからにしよう。
「DKの後輩×先輩ものです! 今んとこそれしか興味ないんで」
「……」
ナツは口を開けて固まっていた。
「5冊買いました! どれもめっちゃキュンキュンしました!」
「お前……それはどう聞いてもBLなのでは?」
「そうですよ。純文学なんて置いてないですよ、アニメショップの隣の本屋ですよ?」
あっけらかんと答えるトモを置いて、ナツはがっくり項垂れた。
「何故、よりにもよってソレに辿り着いてしまうんだ、お前は……」
「だって、参考になるかと思ってえ」
「何の参考だ!」
ナツが狼狽えながら叫んだ。顔が真っ赤になっている。
今だ、と思った。
「先輩を、オとす参考ですよ」
「!」
トモは立ち上がって向かい合う机の上から、ナツを見据えた。
「何が書いてあったか気になります?実践してあげましょうか」
「な……」
トモに囚われてしまったナツの大きな瞳が揺らいでいた。
「攻めの後輩は、まず受けの先輩の眼鏡を外すんです」
言いながらトモは手を伸ばし、ナツの眼鏡を取り上げた。
他の生徒には見せたことのない素顔が現れる。少し幼い、無垢で可愛らしい瞳が。
トモは、今それを自分だけが見ていることにゾクゾクした。
「ちょっ……!」
眼鏡を外されたナツは慌ててその行方を追うように立ち上がる。
「すると、先輩は慌てて立ち上がる。そこを後輩がまんまと引き寄せるんです」
「あ……っ」
トモはすぐ目の前に来たナツの顔を左手で引き寄せて、そのまま口付けた。
「んっ……!」
初めてしたキスは、とても柔らかくて甘かった。
ナツの熱が伝わる。トモは自分が昂っていくのを感じていた。
「──っていう感じです」
惜しみながら唇を離し、トモはにっこり笑って言った。
「お前……ずるいぞ……」
ナツは恥じらいながら唇をきゅっと結んでいた。
あ。ヤバい。
オレ、煽られた。
トモはナツの眼鏡を、自分の机にコトリと置いて席を立つと、ナツにゆっくり近づいた。
もう一度、唇に触れたい。
出来るなら、唇以外も触れたい。
「眼鏡、返せ……」
ずっと真っ赤な顔でおねだりしたら、どうなるのか教えてあげる。
「眼鏡ないと、見えない?」
「うん……」
素直に頷いたナツの顔を、トモは両手で包んだ。
「いいじゃん、すぐ側のオレだけ見えれば」
「あ……」
親指で唇に触れる。柔らかくて、熱かった。
トモはナツの唇を少し開いて、そのまま深く口付けた。
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☆ BONUS TRACK ☆
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「んっ……ふっ」
トモはナツに深く、深く口付けていた。
舌を絡めて、吐息さえも吸い取るように。
「……っは」
ナツが苦しそうに身を捩ったので、トモは仕方なく唇を離す。
荒い呼吸とともに、ナツの瞳は熱っぽく蕩けるようになっていた。
「あ……ト、モ」
初めて名前で呼ばれた。
いつも「おい」とか「お前」だったのに、今は甘えるような声でトモの名を呼ぶナツ。
それだけで、トモの理性を飛ばすには充分だった。
「先輩、ヤバいよ……それ」
トモはもう一度ナツに口付ける。
激しく、深く、性急に。
「んっ、んう……!」
トモの情熱を受けるナツは、足に力が入らなくなり、トモの背中にしがみついた。
密着した体が、熱い。
トモはキスしながら、ナツのブレザーをゆっくりと剥いだ。
パサリ、と音を立てて落ちたその上にナツの体を倒していく。
固い床にその体を沈めて、トモはナツにキスを繰り返した。
「んっ、ふぅ……はっ」
ナツの甘い呼吸が、トモをどんどん昂らせる。
「あっ……!」
トモはナツの首筋に吸い付きながら、ネクタイを緩めてシャツのボタンを上から外し始めた。
「やっ、トモ……! 何!?」
体をギクリと震わせてナツが小さく叫ぶ。それでもトモはボタンを外す手を止めなかった。
「はあ……先輩、好き……」
「えっ……」
思わず漏れたトモの声に、ナツは驚きで一瞬固まった。
その隙を逃さずにナツのシャツを開く。白くてきめ細やかな肌が露われた。
「先輩、触るよ……」
言いながらトモは右手をナツの胸に這わせる。ドクドクという振動が伝わった。
「あ……っ! や……!」
少し指で摘むと、そこはゆっくりと起き上がってきた。
「あ、ああ……っ」
ナツの声は余裕をなくし、高くなる。
初めて聞く艶かしい声に、トモはもっと煽られていった。
「先輩、可愛い……」
トモは右の乳首を摘みながら、左の乳首を舌先で舐め上げた。
するとナツの体はビクッと震えだす。
「はあっ! だめぇ……!」
トモの袖を掴もうともがくナツは、羞恥に身を捩るけれど、トモの舌の動きは止まらなかった。
ナツの乳首を舐った後、唇を寄せ強く吸いついた。
「ああっ!」
一際甲高い声をナツが発し、トモが唇を離すと紅くなった突起はふるっと震えた。
「はぁ……も、やぁ……」
少し涙を滲ませて、恥ずかしさで震える表情が、とてもけなげで愛おしかった。
トモはもう一度その唇を貪る。
「んっ、んん……ぅ!」
ナツの唇を追い詰めながら、トモは思う。
もっと、先輩に触れたい。
「ん、ん、んふっ……!」
ちゅ、ちゅ、とナツの唇を啄み、意識を口元に向けながら、トモはナツのベルトを緩めて腰回りに手を差し入れた。
「あ、ちょっ! 待っ……!」
ナツが狼狽えて暴れたため、思いの外スルリとズボンが降りた。
下着だけになったナツの下半身は、じわりと既に濡れていた。
「やっ、見ないで!」
「先輩……こんなに感じてたの……?」
トモは嬉しくなって、下着の上からナツを握りこむ。
するとそこは段々と固くなって存在を主張し始めた。
「だめ……だって……」
泣きそうなナツの声は、かえってトモを興奮させた。
下着をずらす。
するとナツのそこは桃色に染まって、先端から蜜が溢れていた。
「いやあ……」
「見られて興奮しちゃった……?ヒクヒク震えて辛そうだね……」
「そんなん、言う、なあ……!」
ナツは羞恥で顔を手で覆ってしまう。
トモは優しく耳元で囁いた。
「隠さないで、先輩……」
「!」
堪らなくなって、ナツの瞳から涙が一筋零れた。
「ね、少し起きれる……?」
トモの言葉に、ナツは素直に従って上体を起こした。
「先輩が可愛いから……オレも、こんななんだ」
言いながらトモは自分のベルトも緩めて、ズボンをずらし、猛った己自身を取り出して見せる。
「あ……」
ナツはそれを大きな瞳でじっと見て、ますます頬を紅く染めた。
「一緒に、擦って……いい?」
「え……あ……」
ナツの瞳が戸惑いに揺らぐ。
トモは返事を聞かないまま、体を寄せた。
「オレの肩に、腕、まわして」
「ん……」
ナツは素直にトモに体を預けてしがみついた。
「先輩、好き……」
「!」
耳元でそう囁くと、トモの下半身がビクと揺れた。
「ねえ、オレのこと……好き?」
聞きながら、トモは己自身をナツに擦り付ける。まとめて握り込んで擦った。
「あ、ああっ!」
ナツが快感に溺れていくのがわかる。
トモは擦りながら、その先端を親指でくにくにと弄った。
「はあっ! ああっ、あ……っ、あん!」
ナツの嬌声を聞きながら、昂った両者を追い込んでいく。
快感に次ぐ快感に、トモは幸福で震えた。
「あっ、トモ……! 出ちゃう……!」
「先輩、オレも……出る……っ」
一緒に、こんな瞬間を迎えられるなんて……
「ああああっ!!」
最高だ。
吐き出した幸せの余韻を確かめようと、トモはナツの顔を覗き込んだ。
甘い息を吐いて、ナツは熱い瞳でトモを見ていた。
「トモォ……」
「せんぱ……っんう」
ナツから口付けが与えられた。
この短い間に沢山キスをしたけれど、今ほど気持ちのいい感触はない。
「先輩?」
唇を離したナツは、またトモに寄りかかった。
「順番が、違う」
少し拗ねたような声が耳に響く。
「俺も……好き、だよ」
響いた言葉に驚いて、トモはナツの体を抱きしめながら聞いた。
「マジ?」
「好きでもないのに、こんなこと許すと思うか?」
ナツは少し身を離して、トモを軽く睨んで笑った。
「ナメんなよ、先輩だぞ」
「わーん!」
トモは思い切りナツに抱きついた。見えない尻尾をぶんぶん振って。
「ヤバい! 今日のナツ先輩観察日記はスゴイことになるっ!」
「お前、書いたらコロス!!」
「ウソウソ、わおーん!」
あんなに可愛くて恥ずかしい先輩、誰にも見せる訳ないじゃん。
オレだけのものなんだから。
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真面目先輩 今野 ナツ
☆二人は文芸部です。
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「せんぱーい! せんぱぁぁい! 部活の時間ですよぉ!」
三年生の校舎に響く声。しかしその声は三年生ではない。
「先輩の、先輩だけの可愛い後輩、佐久間トモがやって来ましたよぉお!」
大きな耳をパタパタさせて、大きな尻尾もぶんぶん振って。
だが彼は犬ではない。放課後、三年A組に必ず現れる二年生だ。
犬のような耳と尻尾は、その言動により周囲の者がそう錯覚するだけ。
「ナツせんぱぁい! 部活という名の愛の巣に帰りましょー!」
彼の挙動が、周囲のスルースキルの限度を超えた頃、その攻撃は飛んでくる。
「うるさい!」
だがそのゲンコツは、トモの顔に届かない。だいたい胸のあたりが限度。そこにぺちり、と軽い音を立てるだけ。
「お前は毎日毎日、騒がしいんだよ! でかい図体で叫ぶな、恥ずかしいっ!」
トモより頭ひとつ小さい三年生。黒髪ストレートで眼鏡をかけた『真面目』顔を真っ赤にしていた。
彼こそが、佐久間トモが愛してやまない文芸部部長の今野ナツである。
「ナツ先輩♡ 今日もめっちゃ可愛いですね! 昨日よりもさらに可愛いですよ!」
「何度言えばわかるんだ、男に可愛いとか言うんじゃない!」
「ええー、kawaii♡に男も女もないでしょ? ジェンダー差別ですよ、表現の自由を重んじる文芸部がそんなこと言っていいんですかぁ?」
「ぐぬぬ……」
絵に描いたような文学少年・今野ナツの弱点をついた的確な返答であった。
三年A組の級友達はそんな二人のやり取りをすでに見慣れてしまって、冷やかすのも飽きた程だ。
大型犬が迎えに来る。
クラスイチ大人しい文学少年が、放課後だけ言動が粗暴になる。
なんだかんだ犬がじゃれついて、部活に連れて行く。
そういうパッケージが出来てしまっていた。
◇ ◇ ◇
金犀学園高等部。文芸部の在籍は現在二人。
部室棟で割り当てられた小さな一部屋だけが、トモとナツの城である。
向かい合わせに机が二つあるだけの部室。部活が弱小なので、ノートパソコンも一台しかない。
トモが入る前はナツが使っていたが、今はそれをトモに譲り、ナツは自前のタブレットで作品を制作している。
部室に来るまでの行動からして、チャラい見た目のトモはナツを愛でるか漫画でも読んでいるのだろうと思われている。
意外にもトモまでちゃんと執筆をしていることは周囲には知られていない。
「先輩、今は何書いてるんですか?」
自分より三倍は早いタイプ音が鳴り続けている。ナツが快調に書いているものについてトモは聞いてみた。
「うん、先月秋田川賞が出ただろ。昨日読み終わったから内容をまとめているんだ」
「ああ。感想文ですか」
トモが軽くそう言うと、ナツは急に顔を上げて睨みながら訂正した。
「書評、だ!」
「……怒る先輩も可愛いですねえ」
だが、目の前の後輩は頬を緩ませてそんなことを言う。
ナツは大きく息を吐いて、また視線を画面に戻した。
「お前はどうなんだ、最近真面目にやってるようだが、何を書いてる?」
画面を見ながらナツが聞くと、トモはやっと聞いてくれたと、喜んで答える。
「へへへー! ズバリ、タイトルは『ナツ物語』って言います! あ、サマーとナツをかけたダブルミーニングでしてね」
「おい、そのナツ、って言うのはまさか……」
ナツは恐る恐るまた顔を上げてトモに聞く。
するとトモはぽっと頬を赤らめて答えた。
「ナツ先輩のことですよぉ! オレから見た先輩の素晴らしさ、そして可愛さを詰め込んだ、エッセイと言うか観察日記です!」
「やっぱり……お前はブレないな……」
誇らしげに言ってのけるトモに、深い溜息を吐いた後、ナツはまた視線を画面に戻した。
「あれ? 恥ずかしいから止めろ! とか言わないんですか?」
トモが聞くと、ナツは自分の原稿をタイプしながら言った。
「言わないよ。お前の表現の自由はお前のものだ。モチーフが俺なのは部長だからだろ」
「……それだけじゃないですけど。続けていいんですか?」
「完成させるなら構わない。何でも書き上げることが大切だ」
「……はい!」
トモは嬉しかった。
当然怒って止められると思ったからだ。それはそれでお仕置きが美味しいからいいと思っていた。
ナツはトモの想像をいつも超えてくる。とても良い方向に。
だから、トモはナツが大好きだ。
「ただし、検閲はするからな。恥ずかし過ぎるエピソードは容赦なくボツにするから覚悟しておけ」
「了解でありますっ!」
トモはビシッと手で敬礼のポーズを作って応えた。
自然とノートパソコンを叩く指にリズムが生まれていた。
しばらくして、ナツが少し難しい顔をしながら画面を見続けているので、トモは気分転換になればと声をかけた。
「先輩は文化祭に向けて、書評の薄い本を作るんですか?」
トモの質問に、ナツはまた顔を上げて凄んだ。
「薄い本じゃない! 本来の意味での同人誌だ!」
「本来もなにも、今、同人誌って言ったらパロディの薄い本のことですよぉ。トレンドはしょうがないですよね」
「お前、随分詳しくなったな。まさかその手の本屋に行ったんじゃないだろうな?」
ナツがジト目で聞くと、トモはケロッとして答えた。
「行きましたよ、そんで買いました」
すると、ナツは顔を赤らめてどもる。
「おま、おまえ、まさか……」
「エッチなのはね、年齢制限厳しくて買えませんでした。あ、二次じゃなくて買ったのは一次です、先輩はパロディ嫌いですもんね」
「な、何、買った……?」
「あれえ?先輩気になるんですか?」
トモがニヤニヤして聞くと、ナツはまだ顔を赤くしたまま言いにくそうにしていた。
「そりゃ、後輩がどんなものに触れたのか、知っておく必要が……あるだろ」
ごにょごにょと呟くように言うナツが可愛くて、トモは思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、なんとか耐えた。
抱きしめるのはもうちょっと揶揄ってからにしよう。
「DKの後輩×先輩ものです! 今んとこそれしか興味ないんで」
「……」
ナツは口を開けて固まっていた。
「5冊買いました! どれもめっちゃキュンキュンしました!」
「お前……それはどう聞いてもBLなのでは?」
「そうですよ。純文学なんて置いてないですよ、アニメショップの隣の本屋ですよ?」
あっけらかんと答えるトモを置いて、ナツはがっくり項垂れた。
「何故、よりにもよってソレに辿り着いてしまうんだ、お前は……」
「だって、参考になるかと思ってえ」
「何の参考だ!」
ナツが狼狽えながら叫んだ。顔が真っ赤になっている。
今だ、と思った。
「先輩を、オとす参考ですよ」
「!」
トモは立ち上がって向かい合う机の上から、ナツを見据えた。
「何が書いてあったか気になります?実践してあげましょうか」
「な……」
トモに囚われてしまったナツの大きな瞳が揺らいでいた。
「攻めの後輩は、まず受けの先輩の眼鏡を外すんです」
言いながらトモは手を伸ばし、ナツの眼鏡を取り上げた。
他の生徒には見せたことのない素顔が現れる。少し幼い、無垢で可愛らしい瞳が。
トモは、今それを自分だけが見ていることにゾクゾクした。
「ちょっ……!」
眼鏡を外されたナツは慌ててその行方を追うように立ち上がる。
「すると、先輩は慌てて立ち上がる。そこを後輩がまんまと引き寄せるんです」
「あ……っ」
トモはすぐ目の前に来たナツの顔を左手で引き寄せて、そのまま口付けた。
「んっ……!」
初めてしたキスは、とても柔らかくて甘かった。
ナツの熱が伝わる。トモは自分が昂っていくのを感じていた。
「──っていう感じです」
惜しみながら唇を離し、トモはにっこり笑って言った。
「お前……ずるいぞ……」
ナツは恥じらいながら唇をきゅっと結んでいた。
あ。ヤバい。
オレ、煽られた。
トモはナツの眼鏡を、自分の机にコトリと置いて席を立つと、ナツにゆっくり近づいた。
もう一度、唇に触れたい。
出来るなら、唇以外も触れたい。
「眼鏡、返せ……」
ずっと真っ赤な顔でおねだりしたら、どうなるのか教えてあげる。
「眼鏡ないと、見えない?」
「うん……」
素直に頷いたナツの顔を、トモは両手で包んだ。
「いいじゃん、すぐ側のオレだけ見えれば」
「あ……」
親指で唇に触れる。柔らかくて、熱かった。
トモはナツの唇を少し開いて、そのまま深く口付けた。
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☆ BONUS TRACK ☆
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「んっ……ふっ」
トモはナツに深く、深く口付けていた。
舌を絡めて、吐息さえも吸い取るように。
「……っは」
ナツが苦しそうに身を捩ったので、トモは仕方なく唇を離す。
荒い呼吸とともに、ナツの瞳は熱っぽく蕩けるようになっていた。
「あ……ト、モ」
初めて名前で呼ばれた。
いつも「おい」とか「お前」だったのに、今は甘えるような声でトモの名を呼ぶナツ。
それだけで、トモの理性を飛ばすには充分だった。
「先輩、ヤバいよ……それ」
トモはもう一度ナツに口付ける。
激しく、深く、性急に。
「んっ、んう……!」
トモの情熱を受けるナツは、足に力が入らなくなり、トモの背中にしがみついた。
密着した体が、熱い。
トモはキスしながら、ナツのブレザーをゆっくりと剥いだ。
パサリ、と音を立てて落ちたその上にナツの体を倒していく。
固い床にその体を沈めて、トモはナツにキスを繰り返した。
「んっ、ふぅ……はっ」
ナツの甘い呼吸が、トモをどんどん昂らせる。
「あっ……!」
トモはナツの首筋に吸い付きながら、ネクタイを緩めてシャツのボタンを上から外し始めた。
「やっ、トモ……! 何!?」
体をギクリと震わせてナツが小さく叫ぶ。それでもトモはボタンを外す手を止めなかった。
「はあ……先輩、好き……」
「えっ……」
思わず漏れたトモの声に、ナツは驚きで一瞬固まった。
その隙を逃さずにナツのシャツを開く。白くてきめ細やかな肌が露われた。
「先輩、触るよ……」
言いながらトモは右手をナツの胸に這わせる。ドクドクという振動が伝わった。
「あ……っ! や……!」
少し指で摘むと、そこはゆっくりと起き上がってきた。
「あ、ああ……っ」
ナツの声は余裕をなくし、高くなる。
初めて聞く艶かしい声に、トモはもっと煽られていった。
「先輩、可愛い……」
トモは右の乳首を摘みながら、左の乳首を舌先で舐め上げた。
するとナツの体はビクッと震えだす。
「はあっ! だめぇ……!」
トモの袖を掴もうともがくナツは、羞恥に身を捩るけれど、トモの舌の動きは止まらなかった。
ナツの乳首を舐った後、唇を寄せ強く吸いついた。
「ああっ!」
一際甲高い声をナツが発し、トモが唇を離すと紅くなった突起はふるっと震えた。
「はぁ……も、やぁ……」
少し涙を滲ませて、恥ずかしさで震える表情が、とてもけなげで愛おしかった。
トモはもう一度その唇を貪る。
「んっ、んん……ぅ!」
ナツの唇を追い詰めながら、トモは思う。
もっと、先輩に触れたい。
「ん、ん、んふっ……!」
ちゅ、ちゅ、とナツの唇を啄み、意識を口元に向けながら、トモはナツのベルトを緩めて腰回りに手を差し入れた。
「あ、ちょっ! 待っ……!」
ナツが狼狽えて暴れたため、思いの外スルリとズボンが降りた。
下着だけになったナツの下半身は、じわりと既に濡れていた。
「やっ、見ないで!」
「先輩……こんなに感じてたの……?」
トモは嬉しくなって、下着の上からナツを握りこむ。
するとそこは段々と固くなって存在を主張し始めた。
「だめ……だって……」
泣きそうなナツの声は、かえってトモを興奮させた。
下着をずらす。
するとナツのそこは桃色に染まって、先端から蜜が溢れていた。
「いやあ……」
「見られて興奮しちゃった……?ヒクヒク震えて辛そうだね……」
「そんなん、言う、なあ……!」
ナツは羞恥で顔を手で覆ってしまう。
トモは優しく耳元で囁いた。
「隠さないで、先輩……」
「!」
堪らなくなって、ナツの瞳から涙が一筋零れた。
「ね、少し起きれる……?」
トモの言葉に、ナツは素直に従って上体を起こした。
「先輩が可愛いから……オレも、こんななんだ」
言いながらトモは自分のベルトも緩めて、ズボンをずらし、猛った己自身を取り出して見せる。
「あ……」
ナツはそれを大きな瞳でじっと見て、ますます頬を紅く染めた。
「一緒に、擦って……いい?」
「え……あ……」
ナツの瞳が戸惑いに揺らぐ。
トモは返事を聞かないまま、体を寄せた。
「オレの肩に、腕、まわして」
「ん……」
ナツは素直にトモに体を預けてしがみついた。
「先輩、好き……」
「!」
耳元でそう囁くと、トモの下半身がビクと揺れた。
「ねえ、オレのこと……好き?」
聞きながら、トモは己自身をナツに擦り付ける。まとめて握り込んで擦った。
「あ、ああっ!」
ナツが快感に溺れていくのがわかる。
トモは擦りながら、その先端を親指でくにくにと弄った。
「はあっ! ああっ、あ……っ、あん!」
ナツの嬌声を聞きながら、昂った両者を追い込んでいく。
快感に次ぐ快感に、トモは幸福で震えた。
「あっ、トモ……! 出ちゃう……!」
「先輩、オレも……出る……っ」
一緒に、こんな瞬間を迎えられるなんて……
「ああああっ!!」
最高だ。
吐き出した幸せの余韻を確かめようと、トモはナツの顔を覗き込んだ。
甘い息を吐いて、ナツは熱い瞳でトモを見ていた。
「トモォ……」
「せんぱ……っんう」
ナツから口付けが与えられた。
この短い間に沢山キスをしたけれど、今ほど気持ちのいい感触はない。
「先輩?」
唇を離したナツは、またトモに寄りかかった。
「順番が、違う」
少し拗ねたような声が耳に響く。
「俺も……好き、だよ」
響いた言葉に驚いて、トモはナツの体を抱きしめながら聞いた。
「マジ?」
「好きでもないのに、こんなこと許すと思うか?」
ナツは少し身を離して、トモを軽く睨んで笑った。
「ナメんなよ、先輩だぞ」
「わーん!」
トモは思い切りナツに抱きついた。見えない尻尾をぶんぶん振って。
「ヤバい! 今日のナツ先輩観察日記はスゴイことになるっ!」
「お前、書いたらコロス!!」
「ウソウソ、わおーん!」
あんなに可愛くて恥ずかしい先輩、誰にも見せる訳ないじゃん。
オレだけのものなんだから。
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