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第四章 新たな仲間とともに
第4話 コレタマ部
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蕾生と星弥、二人だけの部員に向かって、永が仰々しい口調で切り出した。
「では、コレタマ部の活動を始めます!」
「コレタマ?」
星弥が首を傾げると、待ってましたと言わんばかりに永が説明した。
「これからの地球環境を考える──略してコレタマ部ね」
「……」
星弥が無反応なので蕾生は渋々捕捉してやった。
「あれからずっとそのあだ名考えてたんだと」
蕾生が目撃したのは午後の授業中、永がノートのはじに何かを書いては頭を捻っていた姿だ。
授業が終わる頃、やっといくつか書いた単語の中のひとつに花丸をグリグリと書いた様を後ろから見ていた蕾生は、何とも言えない気持ちになった。
「そうなんだ、か、可愛いと思うよ」
「まあ、俺はなんでもいい」
どもりながら目を逸らす星弥と無関心の蕾生。
二人の否定的な反応にもめげずに永は続けた。
「ふ、ヒラ部員は黙らっしゃい。ンン、初日の今日はとても重大な議題があります」
咳払いで空気感を変え、神妙な面持ちで言えば、つられて二人も固唾を呑んで永の言葉を待つ。
「リンをこの場にどうやって呼ぶのか? ──であります」
改まったわりに想像の域を出なかった議題に、蕾生も星弥も緊張を解いて唸った。
「あー、それな」
「そうなんだよねえ……」
「一番簡単なのはリモート参加だけど、銀騎家の携帯電話やパソコンは無理でしょ?」
永がそう言うと、星弥も即座に頷く。
「だねえ。電波を傍受されてたら、クラブ作った意味がなくなっちゃう」
「鈴心はこの時間だと何やってるんだ?」
続いて蕾生が質問すると、星弥は小首を傾げながら答えた。
「うーんと、多いのは勉強かな。兄さんが毎日パソコンに課題を送ってくるから、それをやってると思う。ここ数年は研究で忙しくてマンツーマン授業ができなくなったんだよね」
それを聞いた永が前のめりになって尋ねる。
「ふうん。じゃあ、以前よりもリンは自由なんだ?」
「そうだね、活動範囲は自宅と研究所だけなんだけど、好きな時に勉強したり、読書したりしてるみたいだよ。研究所も顔パスでどこでも入れるし」
「それは普通に軟禁状態だろ」
「まあ……」
蕾生の冷ややかな指摘に星弥は苦い顔をしてみせた。
「ふむ。やっぱり研究所の敷地より外には出られない感じ?」
永が問うと、星弥は頷きながら答える。
「難しいと思う、お祖父様から禁止されてるし。わたしから兄さんに頼んでみることも考えたけど──」
「怪しまれるだろうな」
「うん……急にそんなこと言い出したら、ね」
蕾生の的確な言葉を肯定して、星弥は困った表情で眉を寄せた。
「せめてあそこから出られたらなー。その後こっちの学校に忍び込むくらいはリンなら簡単なんだけど」
永もぼやくけれど、良い考えは浮かびそうにない。
「アナログだけど、交換日記くらいしか思いつかないかなあ」
「そうだねえ、メールやメッセージアプリは危険だから、手書きのノートでやり取りするのが一番秘密は守れる」
星弥と永のやり取りを聞いて、蕾生は少し苛立って反応した。
「──めんどくせえな、タイムラグもかなり出来るし」
「でも、それくらいしか……」
「思いつかないよねえ……」
結局この日は良いアイディアが出る事はなく、とりあえず星弥がノートを買っておくことだけが決まって散会となってしまった。
「では、コレタマ部の活動を始めます!」
「コレタマ?」
星弥が首を傾げると、待ってましたと言わんばかりに永が説明した。
「これからの地球環境を考える──略してコレタマ部ね」
「……」
星弥が無反応なので蕾生は渋々捕捉してやった。
「あれからずっとそのあだ名考えてたんだと」
蕾生が目撃したのは午後の授業中、永がノートのはじに何かを書いては頭を捻っていた姿だ。
授業が終わる頃、やっといくつか書いた単語の中のひとつに花丸をグリグリと書いた様を後ろから見ていた蕾生は、何とも言えない気持ちになった。
「そうなんだ、か、可愛いと思うよ」
「まあ、俺はなんでもいい」
どもりながら目を逸らす星弥と無関心の蕾生。
二人の否定的な反応にもめげずに永は続けた。
「ふ、ヒラ部員は黙らっしゃい。ンン、初日の今日はとても重大な議題があります」
咳払いで空気感を変え、神妙な面持ちで言えば、つられて二人も固唾を呑んで永の言葉を待つ。
「リンをこの場にどうやって呼ぶのか? ──であります」
改まったわりに想像の域を出なかった議題に、蕾生も星弥も緊張を解いて唸った。
「あー、それな」
「そうなんだよねえ……」
「一番簡単なのはリモート参加だけど、銀騎家の携帯電話やパソコンは無理でしょ?」
永がそう言うと、星弥も即座に頷く。
「だねえ。電波を傍受されてたら、クラブ作った意味がなくなっちゃう」
「鈴心はこの時間だと何やってるんだ?」
続いて蕾生が質問すると、星弥は小首を傾げながら答えた。
「うーんと、多いのは勉強かな。兄さんが毎日パソコンに課題を送ってくるから、それをやってると思う。ここ数年は研究で忙しくてマンツーマン授業ができなくなったんだよね」
それを聞いた永が前のめりになって尋ねる。
「ふうん。じゃあ、以前よりもリンは自由なんだ?」
「そうだね、活動範囲は自宅と研究所だけなんだけど、好きな時に勉強したり、読書したりしてるみたいだよ。研究所も顔パスでどこでも入れるし」
「それは普通に軟禁状態だろ」
「まあ……」
蕾生の冷ややかな指摘に星弥は苦い顔をしてみせた。
「ふむ。やっぱり研究所の敷地より外には出られない感じ?」
永が問うと、星弥は頷きながら答える。
「難しいと思う、お祖父様から禁止されてるし。わたしから兄さんに頼んでみることも考えたけど──」
「怪しまれるだろうな」
「うん……急にそんなこと言い出したら、ね」
蕾生の的確な言葉を肯定して、星弥は困った表情で眉を寄せた。
「せめてあそこから出られたらなー。その後こっちの学校に忍び込むくらいはリンなら簡単なんだけど」
永もぼやくけれど、良い考えは浮かびそうにない。
「アナログだけど、交換日記くらいしか思いつかないかなあ」
「そうだねえ、メールやメッセージアプリは危険だから、手書きのノートでやり取りするのが一番秘密は守れる」
星弥と永のやり取りを聞いて、蕾生は少し苛立って反応した。
「──めんどくせえな、タイムラグもかなり出来るし」
「でも、それくらいしか……」
「思いつかないよねえ……」
結局この日は良いアイディアが出る事はなく、とりあえず星弥がノートを買っておくことだけが決まって散会となってしまった。
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