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Interlude03 ミチル is Love …
10 イケナイ教育!?
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決闘。それは相手の全てを奪う行為。
話し合いで解決しようだなんて、綺麗事が通らない時もあることはミチルにもわかる。
それでも、そこに至れるように努力するのが人間の文化的行動だ。それを飛び越えて暴力で解決するなどという短絡的思考には賛成できない。
「その決闘は、どうなったんです?」
ジェイが神妙な顔でジンに問う。軍人のジェイには、ミチルとは違った見解があるのだろう。恐らく決闘は行われたという前提で話は進んだ。
「まあ……所詮はイカれかけている者のたわごとだからな。それで気が済むなら、利き腕くらい折ってやれば黙るだろうと思って、儂は指定された場所に行った。だが、奴は来なかった」
「え? なんで?」
ミチルはキョトンとなって聞いてしまったが、ジェイの表情は更に厳しくなっていた。
「……先んじて、消されたのですか?」
「!」
ぽんこつのくせに、なんて冴えた事を言うんだ。とは、ミチルもさすがに思わなかった。その事実は、あまりにも冷酷だったから。
ジンは瞳を閉じ、背もたれに体重を預け、深く息を吐いてから答える。
「恐らくそうだろう。上は、儂と奴が戦えばどちらも無事では済まない。奴だけでなく儂まで死んだら人材がいなくなる、などと考えたのだろう。儂が奴ごときに遅れをとると思われたことは、全く度し難い」
ジンは悔しそうに歯噛みしていた。それは、自分の力が侮られたことよりも、同僚が理不尽にその命を奪われたことに対するものだと、ミチルはなんとなく思った。
「なるほど。しかし、ガザニア・ビーストは生きていた……」
「そのクソ餓鬼の言葉を信じるならな」
ジェイの呟きに呼応して、ジンは冷たい目線をミモザに投げる。するとミモザは少し憤慨しつつ、胸を張って言った。
「僕はクソガキじゃありません! いずれ美少年(しかも攻め)になるミモザくんですっ」
「その名を騙っている別人では?」
ミモザの発言を天然でスルーしたジェイが聞くと、ジンもまた頷きながら答えた。
「……暗殺の第一線にいた奴の名を知る者は僅かだが、その可能性の方が高いと儂も思う。おい、餓鬼。お前の師匠の特徴を言え」
「シーン……!」
無視されたミモザはヘソを曲げていて、ジンの質問に子どもらしくやり返した。
はあぁ、と殊更に疲れた顔で溜息を吐くジンのために、ミチルがミモザに向き合う。
「ねえ、ミモザくん、教えて。どんなことでもいいから」
「はい、ミチルお兄さま! 銀狐師匠は白と黒のまだら髪で、性格は根暗でヤなおじさんです! あとはぁ、笑い声が気持ち悪いです!」
「そ、そうなんだ……」
ミモザとその師匠との関係性はわからないが、弟子にここまで言われるって相当だとミチルは思った。
「いかがです、師範殿」
ジェイが聞くと、ジンは珍しく口を開けたままで固まった後、頭を抱えて項垂れた。
「それは……完全にガザニアだな……」
「では、その男は粛清を免れ、ひっそりと生き延びていたということですね」
「めんどくせえ……」
心の声を素直に吐露して、ジンはますます陰鬱になった。
「あのー……」
ミチルはどうしても確認したかった事を、おずおずと手を挙げて聞く。
「それで銀狐って人がいなくなった後、先生はどうしたの? まさか……その……」
ミチルの怖がる声音に、ジンはすぐさま体勢を立て直して少し笑った。
「心配するな、シウレン。その後も儂は全力で抗った。そうしているうちに、例の件が起こってしまって儂も罷免されたのだ」
「あ、そうなんだ!」
ミチルはそれでようやく安心した。
人の過去を気にして態度を変えるなんてことはしたくないが、さすがにコロシに関わっていたら、ちょっとどうしたらいいかわからない。
「例の件?」
「罷免?」
それまで黙っていた、アニーとエリオットの仲良し一歳違いコンビが揃って首を傾げたので、ミチルは簡潔に説明してやる。
「ええっとね、先生は鐘馗会と揉めて無実の罪を着せられて、この街に引っ込んだんだよ」
「あー、なるほどねえ」
アニーは「お前ならやりそうだ」というような納得感満載の顔をしている。
「おれはまた、美形の部下を食いまくって追放されたのかと思ったぜ」
「すっ……!」
王族ならではの洞察力を発揮したエリオットに、鋭い、と言いそうになってミチルは慌てて口を閉じた。
「ああ! それもありそう!」
「だろ? トップに仕える美丈夫なんて、どこも似たようなもんだからな!」
ケケケ、と笑いながらジンを揶揄うアニーとエリオット。
「む? 師範殿は大食漢なのか?」
相変わらずすっとぼけたジェイの言葉に、二人は更に爆笑した。
「ぶははは! 言い得て妙だ!」
「食いまくり師範、確定!」
「えーっと……」
キャッキャうふふ、と笑い合うイケメン三人衆。絵面だけ見ればこの世のパラダイス。
ちょっと自分がいなかった隙に、こんなに仲良くなって良かったと思ったミチルだったが、ジンの反応が恐ろしい。
「喧しい! 手当たり次第だった、あの頃の儂はもうおらん!」
おいおい、自ら白状してんじゃん。絶対動転してるなあ。
ミチルが苦笑していると、続けてジンは得意げに言った。
「シウレンに出会った儂は、唯一の愛に目覚めたのだ……!」
「きえええ!」
臆面もなく何言うの、この先生!
「ふざけんな、ミチルはおれの妻だっつってんだろ!」
「違う! ミチルは俺の抱き枕!」
「ミチルは私の天使だ」
負けじとエリオットもアニーもジェイも、昨日と同じ主張を繰り返す。
「きょえええ!」
ミチルの心臓がまた砕けようとした時、原子級の爆弾発言が投下された。
「ずるい! 僕もミチルお兄さまの×××に××したいですっ!」
若干10歳のいたいけな少年から、まさかの伏せ字オンパレード!
「ぎゃあああ! 何処で覚えたの、そんなヒワイな言葉ッ!」
「はい、ミチルお兄さま! 奴隷商人のいた所です!」
──え?
ミモザの無邪気な回答に、一同は凍ったように固まった。
「僕は鐘馗会に買われて、ここに来ました!」
更にヘビーな話題をぶっこまないでえええ!
話し合いで解決しようだなんて、綺麗事が通らない時もあることはミチルにもわかる。
それでも、そこに至れるように努力するのが人間の文化的行動だ。それを飛び越えて暴力で解決するなどという短絡的思考には賛成できない。
「その決闘は、どうなったんです?」
ジェイが神妙な顔でジンに問う。軍人のジェイには、ミチルとは違った見解があるのだろう。恐らく決闘は行われたという前提で話は進んだ。
「まあ……所詮はイカれかけている者のたわごとだからな。それで気が済むなら、利き腕くらい折ってやれば黙るだろうと思って、儂は指定された場所に行った。だが、奴は来なかった」
「え? なんで?」
ミチルはキョトンとなって聞いてしまったが、ジェイの表情は更に厳しくなっていた。
「……先んじて、消されたのですか?」
「!」
ぽんこつのくせに、なんて冴えた事を言うんだ。とは、ミチルもさすがに思わなかった。その事実は、あまりにも冷酷だったから。
ジンは瞳を閉じ、背もたれに体重を預け、深く息を吐いてから答える。
「恐らくそうだろう。上は、儂と奴が戦えばどちらも無事では済まない。奴だけでなく儂まで死んだら人材がいなくなる、などと考えたのだろう。儂が奴ごときに遅れをとると思われたことは、全く度し難い」
ジンは悔しそうに歯噛みしていた。それは、自分の力が侮られたことよりも、同僚が理不尽にその命を奪われたことに対するものだと、ミチルはなんとなく思った。
「なるほど。しかし、ガザニア・ビーストは生きていた……」
「そのクソ餓鬼の言葉を信じるならな」
ジェイの呟きに呼応して、ジンは冷たい目線をミモザに投げる。するとミモザは少し憤慨しつつ、胸を張って言った。
「僕はクソガキじゃありません! いずれ美少年(しかも攻め)になるミモザくんですっ」
「その名を騙っている別人では?」
ミモザの発言を天然でスルーしたジェイが聞くと、ジンもまた頷きながら答えた。
「……暗殺の第一線にいた奴の名を知る者は僅かだが、その可能性の方が高いと儂も思う。おい、餓鬼。お前の師匠の特徴を言え」
「シーン……!」
無視されたミモザはヘソを曲げていて、ジンの質問に子どもらしくやり返した。
はあぁ、と殊更に疲れた顔で溜息を吐くジンのために、ミチルがミモザに向き合う。
「ねえ、ミモザくん、教えて。どんなことでもいいから」
「はい、ミチルお兄さま! 銀狐師匠は白と黒のまだら髪で、性格は根暗でヤなおじさんです! あとはぁ、笑い声が気持ち悪いです!」
「そ、そうなんだ……」
ミモザとその師匠との関係性はわからないが、弟子にここまで言われるって相当だとミチルは思った。
「いかがです、師範殿」
ジェイが聞くと、ジンは珍しく口を開けたままで固まった後、頭を抱えて項垂れた。
「それは……完全にガザニアだな……」
「では、その男は粛清を免れ、ひっそりと生き延びていたということですね」
「めんどくせえ……」
心の声を素直に吐露して、ジンはますます陰鬱になった。
「あのー……」
ミチルはどうしても確認したかった事を、おずおずと手を挙げて聞く。
「それで銀狐って人がいなくなった後、先生はどうしたの? まさか……その……」
ミチルの怖がる声音に、ジンはすぐさま体勢を立て直して少し笑った。
「心配するな、シウレン。その後も儂は全力で抗った。そうしているうちに、例の件が起こってしまって儂も罷免されたのだ」
「あ、そうなんだ!」
ミチルはそれでようやく安心した。
人の過去を気にして態度を変えるなんてことはしたくないが、さすがにコロシに関わっていたら、ちょっとどうしたらいいかわからない。
「例の件?」
「罷免?」
それまで黙っていた、アニーとエリオットの仲良し一歳違いコンビが揃って首を傾げたので、ミチルは簡潔に説明してやる。
「ええっとね、先生は鐘馗会と揉めて無実の罪を着せられて、この街に引っ込んだんだよ」
「あー、なるほどねえ」
アニーは「お前ならやりそうだ」というような納得感満載の顔をしている。
「おれはまた、美形の部下を食いまくって追放されたのかと思ったぜ」
「すっ……!」
王族ならではの洞察力を発揮したエリオットに、鋭い、と言いそうになってミチルは慌てて口を閉じた。
「ああ! それもありそう!」
「だろ? トップに仕える美丈夫なんて、どこも似たようなもんだからな!」
ケケケ、と笑いながらジンを揶揄うアニーとエリオット。
「む? 師範殿は大食漢なのか?」
相変わらずすっとぼけたジェイの言葉に、二人は更に爆笑した。
「ぶははは! 言い得て妙だ!」
「食いまくり師範、確定!」
「えーっと……」
キャッキャうふふ、と笑い合うイケメン三人衆。絵面だけ見ればこの世のパラダイス。
ちょっと自分がいなかった隙に、こんなに仲良くなって良かったと思ったミチルだったが、ジンの反応が恐ろしい。
「喧しい! 手当たり次第だった、あの頃の儂はもうおらん!」
おいおい、自ら白状してんじゃん。絶対動転してるなあ。
ミチルが苦笑していると、続けてジンは得意げに言った。
「シウレンに出会った儂は、唯一の愛に目覚めたのだ……!」
「きえええ!」
臆面もなく何言うの、この先生!
「ふざけんな、ミチルはおれの妻だっつってんだろ!」
「違う! ミチルは俺の抱き枕!」
「ミチルは私の天使だ」
負けじとエリオットもアニーもジェイも、昨日と同じ主張を繰り返す。
「きょえええ!」
ミチルの心臓がまた砕けようとした時、原子級の爆弾発言が投下された。
「ずるい! 僕もミチルお兄さまの×××に××したいですっ!」
若干10歳のいたいけな少年から、まさかの伏せ字オンパレード!
「ぎゃあああ! 何処で覚えたの、そんなヒワイな言葉ッ!」
「はい、ミチルお兄さま! 奴隷商人のいた所です!」
──え?
ミモザの無邪気な回答に、一同は凍ったように固まった。
「僕は鐘馗会に買われて、ここに来ました!」
更にヘビーな話題をぶっこまないでえええ!
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