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Interlude03 ミチル is Love …

7 新たな、ショタ!?

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「ふみゅ……」

 ミチルはジンのベッドの上で目が覚めた。
 いつの間にか眠っていたらしいが、あまり「寝た」実感はない。

 何故なら──

「おお……何だこれ……」

 床に横たわる四つの人モノ。
 左右バラバラに組まれたり敷かれたり、なんかいろいろしたらしい十六本の手足。
 金、銀、黒、青の髪の毛を振り乱したイケメン顔は、土気色であらぬ方を見たまま固まっている。

 そんなベスティアも真っ青な、バケモノの屍のような物体が、ミチルのいる所まで到達すること叶わず、冷たい床に横たわっていた。

「どうしよう、これ、ほどけるのかな……」

 図体のでかい男達が絡まっている姿を見て、ミチルは途方に暮れた。

「う、うう……」

 微かに呻き声が聞こえる。誰かが目を覚ましたのだろう。
 ミチルはおそるおそる、そのバケモノに近づいた。

「アニー、アニー?」

 金髪のホストアサシンの頬をミチルは軽く叩いた。
 すると、それは青い瞳をバチッと開いて言う。

「ミチル!? ミチルのおしりは無事かい!?」

 バッチーン!

 開口一番言うことか。ミチルは思わず、その頬を高らかに叩いてしまった。

「うう、ミチル……」

 今度は小悪魔プリンスが呻いていた。

「大丈夫、エリオット?」

 ミチルが近寄ると、それはギョロッと大きな瞳を開いて叫ぶ。

「ミチルはの伽だぁあ!」

 ペッチーン!

「しっかりしろ、エリィ!!」

 体は25歳のくせに、精神がすっかり退行してしまっているエリオットの頬にも、ミチルは気合いを入れた。


 
 この精神力が幼い二人は置いといて、残る比較的理性派の二人はどうだろう。

「う、ううぬ、儂としたことが、なんたる不覚……!」

「ああ、先生、おはようございます」

「シ、シウレン、よもや儂以外の男に××を開くことなどあるまいな……?」

 はい、パッコーン!
 ミチルはどスケベ師範の頭をぶっ叩く。
 ああ、だめだ。徹夜で戦っていたから、脳回路がイカれていらっしゃる。

「ジェイ、は……?」

 ミチルはイケメンの塊を隅々まで見て探す。
 端の方に、ようやく黒くて固そうな毛が見えた。

「ZZz……」

 聞こえたのは、疲れているせいなのか、大きめのい・び・き。

「……」

 ミチルは口を開きっぱなしで、脱力した。
 こいつは大物なのか、それとも人の心がないのか。

「起きろぉ!」

 ぎゅうぅう……!
 ミチルはぽんこつナイトの頬を思い切りつねる。

「む、むむ……! 朝か?」

 眩しそうに目を開けたジェイは、目の前のミチルに微笑んだ。

「ああ、ミチル。おはよう」

「……なんで普通に挨拶できんの、怖いんだけど」

「む?」

 これで全員の意識が戻ったが、肉塊となっているイケメン達は身動きがとれずにいる。


 
「先生、朝のお食事は──ギャアァアア!」

 ノックとともに、師範代のお兄さんが部屋に入ってくる。
 悲鳴とともに、恐らく一瞬だけ失神したようだったが、さすがの精神力で彼はその場に踏みとどまった。

「助けてくださあい!」

 ミチルは部屋の中心で叫ぶ!

 こうして盛大に絡まったイケメン達は、弟子総勢十人がかりで丁寧に解いてもらった。
 中にはイケメン達に触れて喜ぶ者もいた。
 ミチルはその様子をシラけたまなこで、眺めていた。




「まったく、結局一睡も出来なんだ」

 ボッサボサの銀髪を整えもせずに、ジンは不機嫌なまま粥をすすっていた。


 
「ほんとだぜ、オッサンのくせに元気過ぎるだろ」

 エリオットも、ぐちゃぐちゃのおかっぱ頭のまま、箸で漬物を刺す。


 
「まあ、とにかくミチルのおしりは死守できた。良かったなあ」

 寝不足に耐性があるアニーは、満足そうに食事を続けていた。


 
「ふむ。初めて食べるが、非常に滋味深い……」

 ジェイにいたっては、余裕で粥を食リポする始末。

 
 
「ちょっと、朝からしんど過ぎるんだけどぉ……」

 ミチルはげんなりして、粥をスプーンでちびちび食べていた。
 寝不足なので、いつもの食欲がなく、目の前の色々なおかずもくすんで見える。

 それぞれが黙々と食事を続けた。
 食べ終わった後の沈黙に、ミチルが耐えられなくなった頃、また部屋のドアがノックされた。

「先生、失礼します」

 どうも食器を片付けにきた様子ではない、師範代のお兄さんの雰囲気に、ジンは眠さで下がっていた首を元に戻した。

「何かあったか?」

「はい。例の少年が目を覚ましたそうです」

 その報告に、ジンだけでなく、ミチルも顔を上げる。昨夜おおよその事情を聞いているイケメン三人も、師範代を注視した。

「そうか。是非とも彼には聞きたいことがある。面会はできるのか?」

 ジンが、おそらくは虚勢で、冷静に尋ねると、師範代は言葉を濁し目線を泳がせる。

「それが……その……」

 彼が困った表情を浮かべると同時に、遠くの方からドタバタと騒がしい音が近づいてくる。

「?」

 ミチルも含めた五人は、捕物のような物音に耳を澄ませていた。
 次第に「待ちなさい!」とか「あ、こら、止まりなさい」とか、「ふぐえええ!」「のおおお!」と言った悲鳴も聞こえ始める。

 ドタバタ音がこの部屋まで到達するのに、そう時間はかからなかった。

「とぉーう!」

「ぐわぁ!」

 穏やかな性格に定評がある師範代のお兄さんは、何者かに背中を蹴られて大声とともに倒れ込んだ。

「何奴!?」

 ジンはすぐさま戦闘態勢をとる。三人のイケメン達も、ミチルを背に隠して構えた。
 そこにいたのは──

「ミチルお兄さま!」

 頬を紅潮させて、元気いっぱいの、猫のようにしなやかな身のこなしでお馴染み。
 武道大会決勝戦に出場した少年だった。
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