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Interlude03 ミチル is Love …
5 廃屋の矛盾
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ジンが第四のイケメンであると、認めざるを得なくなった三人のイケメン達は肩を落としてしばらく黙っていた。
重苦しい雰囲気を、ミチルがどうしようかと思っていた時、新・年長者のジンが声をかける。
「おい、いつまでそうしている。貴様らはそれで納得したかもしれんが、儂はまだだ」
「は?」
項垂れていたエリオットは、怪訝な顔でジンを見た。
「儂は、まだ貴様らが鐘馗会と繋がっている可能性を捨ててはいない」
「!?」
ジンの冷たい物言いに、ジェイもアニーも驚いた顔でジンを見る。
だが、それよりも先にミチルが反論していた。
「先生!? 今さっき、エリオットから仲間だって言われたばっかでしょ! なんでそうなるの?」
ミチルの訴えと言えど、ジンは冷淡な姿勢を崩さなかった。
「仲間、とは片腹痛い。貴様らは、あの廃墟にたむろしていた。あれはな、この町で唯一得体の知れない建物なのだ」
「どういう事?」
ミチルは路地裏の廃ビルを思い出す。いかにも「悪者のアジト」という風情であった。だからこそ、ジンはそこに鐘馗会がいると見て踏み込んだのだとミチルは思っていた。それ以外に理由があるというのか?
「あれは、今でこそ古びた家屋の群れにある廃屋のひとつに見える。だが、そもそもあれがどんな建物だったのか、知る者は誰もいない」
「ええ?」
「儂がここに流れ着いた時ももちろん、町で一番長生きの老人に聞いても、あれは廃屋としか記憶されていない」
「確かにボロボロだったけど、そんなに古くは見えなかったよ。普通の廃ビルでしょ?」
ミチルはコンクリートの具合を思い出す。老人が知らないとなると築百年は超えていないといけないが、そこまで古そうには見えなかった。
だが、その見立てには決定的な矛盾がある事を、ミチルはすぐに思い知る。
「……びる、とは何だ?」
「ああっ!!」
ジンの質問に、ミチルは全身が雷で打たれたような衝撃を受けた。
そもそもカエルラ=プルーマは、確証はないが、ミチルのいた地球から見て500年ほど前の文化を持っている。
だとすれば、ここに近代的な鉄筋コンクリートのビルがあるはずがない。
「あの、先生? 確認なんですけど、ここにコンクリートってあります……?」
「こんく……? 知らん」
ジンの答えに、ミチルはますます薄ら寒くなった。
「で、でも、あのビル……じゃなくて廃屋はコンクリートで出来てたよね?」
「こんくりぃと、とは資材の名か? さすがシウレンは冴えている。あの廃屋が不思議な石を固めたような、見たことのないもので建てられている事を、今まさに儂は言おうとしたのだ」
「……」
なんか褒められたけど、全然嬉しくない。ミチルの頭は訳のわからない恐怖に支配されかけていたからだ。
「街の外れにあったため、近隣の住人も次第に怖がって引っ越したと言う。それで今、あのあたりは閑散とした雰囲気なのだ」
ジンの説明をそこまで聞いて、エリオットが肩で息を吐きながら言った。
「なるほどね。おれ達もあの建物は不思議に思ってた。見た目はボロいのに、すげえ頑丈なんだ。継ぎ目がないからレンガとかでもない」
すると、アニーとジェイもそれぞれの感想を付け足して言う。
「周りの家屋は木造で、倒壊してるのもあったから、雨風がしのげるのはあそこしかなかったんだ」
「……小さなゴーストタウンのようだったからな」
三人の言葉を聞いた後、ミチルは改めて尋ねる。
「じゃあ、三人はあの廃ビルにずっといたの?」
「まあな。ミチルにくっついて転移した感覚はあったのに、気がついたらおれ達だけでお前の姿がないから焦ったぜ」
エリオットはその時の状況を思い出し、苦悶の表情をしていた。
アニーも同じような顔で、説明を引き継ぐ。
「でもエリオットが、ミチルは絶対に近くに転移してるはずだって言うからさ、その廃屋を拠点に町を探し回ったんだよ」
「そうだったんだ……ごめんね」
ミチルがシュンとなってしまったので、アニーはううんと首を振って笑った。
「俺は信じてたよ、デスティニー・ストーンがきっと君の所へ導いてくれるってね」
「アニー……」
優しい笑顔に、ミチルは泣きそうになる。本当に会えて良かった、と改めて心から思う。
「おれ達はジェイの乏しい路銀で食い繋いで、一週間ミチルを探し続けた。そしたら、いきなりその白髪ジジイがミチルを抱えて乗り込んできたってワケ」
エリオットがそう締めると、ジェイが遠慮がちにジンに尋ねる。
「どうだろうか、これが我らの全てだ。信じてはもらえないだろうか」
「……ひとつ、確認を」
それでもジンは眉をひそめたまま、人差し指を立てて冷静に言った。
「貴様らは、廃屋で鐘馗会の奴らを見なかったのだな?」
「だからぁ、そのショーキカイって何なんだよ?」
エリオットはテーブルに肘をついてゲンナリしている。ジンの疑い深さに呆れているのだった。
そんな態度にも特に動じずに、ジンは説明し始める。
「少し因縁がある、商人ギルドだ。テン・イーという大商人が後ろ盾になっているという噂があってな、このテンという奴が──」
「テン・イーだって!?」
ジンの言葉を遮って、アニーがガタッと立ち上がった後、テーブルをバアンと両手で叩いた。
その表情からは、優しい笑顔が消え失せている。
「先生! テン・イーなんて初耳だよ!」
ミチルも慌ててジンに詰め寄った。
「そうだったか?」
二人の剣幕を、ジンはケロッとした顔で見ていた。ジェイとエリオットも、首を傾げている。
「テン・イー……ッ!」
生涯の仇の名を呼ぶアニーの顔は、怒りに引き攣っていた。
重苦しい雰囲気を、ミチルがどうしようかと思っていた時、新・年長者のジンが声をかける。
「おい、いつまでそうしている。貴様らはそれで納得したかもしれんが、儂はまだだ」
「は?」
項垂れていたエリオットは、怪訝な顔でジンを見た。
「儂は、まだ貴様らが鐘馗会と繋がっている可能性を捨ててはいない」
「!?」
ジンの冷たい物言いに、ジェイもアニーも驚いた顔でジンを見る。
だが、それよりも先にミチルが反論していた。
「先生!? 今さっき、エリオットから仲間だって言われたばっかでしょ! なんでそうなるの?」
ミチルの訴えと言えど、ジンは冷淡な姿勢を崩さなかった。
「仲間、とは片腹痛い。貴様らは、あの廃墟にたむろしていた。あれはな、この町で唯一得体の知れない建物なのだ」
「どういう事?」
ミチルは路地裏の廃ビルを思い出す。いかにも「悪者のアジト」という風情であった。だからこそ、ジンはそこに鐘馗会がいると見て踏み込んだのだとミチルは思っていた。それ以外に理由があるというのか?
「あれは、今でこそ古びた家屋の群れにある廃屋のひとつに見える。だが、そもそもあれがどんな建物だったのか、知る者は誰もいない」
「ええ?」
「儂がここに流れ着いた時ももちろん、町で一番長生きの老人に聞いても、あれは廃屋としか記憶されていない」
「確かにボロボロだったけど、そんなに古くは見えなかったよ。普通の廃ビルでしょ?」
ミチルはコンクリートの具合を思い出す。老人が知らないとなると築百年は超えていないといけないが、そこまで古そうには見えなかった。
だが、その見立てには決定的な矛盾がある事を、ミチルはすぐに思い知る。
「……びる、とは何だ?」
「ああっ!!」
ジンの質問に、ミチルは全身が雷で打たれたような衝撃を受けた。
そもそもカエルラ=プルーマは、確証はないが、ミチルのいた地球から見て500年ほど前の文化を持っている。
だとすれば、ここに近代的な鉄筋コンクリートのビルがあるはずがない。
「あの、先生? 確認なんですけど、ここにコンクリートってあります……?」
「こんく……? 知らん」
ジンの答えに、ミチルはますます薄ら寒くなった。
「で、でも、あのビル……じゃなくて廃屋はコンクリートで出来てたよね?」
「こんくりぃと、とは資材の名か? さすがシウレンは冴えている。あの廃屋が不思議な石を固めたような、見たことのないもので建てられている事を、今まさに儂は言おうとしたのだ」
「……」
なんか褒められたけど、全然嬉しくない。ミチルの頭は訳のわからない恐怖に支配されかけていたからだ。
「街の外れにあったため、近隣の住人も次第に怖がって引っ越したと言う。それで今、あのあたりは閑散とした雰囲気なのだ」
ジンの説明をそこまで聞いて、エリオットが肩で息を吐きながら言った。
「なるほどね。おれ達もあの建物は不思議に思ってた。見た目はボロいのに、すげえ頑丈なんだ。継ぎ目がないからレンガとかでもない」
すると、アニーとジェイもそれぞれの感想を付け足して言う。
「周りの家屋は木造で、倒壊してるのもあったから、雨風がしのげるのはあそこしかなかったんだ」
「……小さなゴーストタウンのようだったからな」
三人の言葉を聞いた後、ミチルは改めて尋ねる。
「じゃあ、三人はあの廃ビルにずっといたの?」
「まあな。ミチルにくっついて転移した感覚はあったのに、気がついたらおれ達だけでお前の姿がないから焦ったぜ」
エリオットはその時の状況を思い出し、苦悶の表情をしていた。
アニーも同じような顔で、説明を引き継ぐ。
「でもエリオットが、ミチルは絶対に近くに転移してるはずだって言うからさ、その廃屋を拠点に町を探し回ったんだよ」
「そうだったんだ……ごめんね」
ミチルがシュンとなってしまったので、アニーはううんと首を振って笑った。
「俺は信じてたよ、デスティニー・ストーンがきっと君の所へ導いてくれるってね」
「アニー……」
優しい笑顔に、ミチルは泣きそうになる。本当に会えて良かった、と改めて心から思う。
「おれ達はジェイの乏しい路銀で食い繋いで、一週間ミチルを探し続けた。そしたら、いきなりその白髪ジジイがミチルを抱えて乗り込んできたってワケ」
エリオットがそう締めると、ジェイが遠慮がちにジンに尋ねる。
「どうだろうか、これが我らの全てだ。信じてはもらえないだろうか」
「……ひとつ、確認を」
それでもジンは眉をひそめたまま、人差し指を立てて冷静に言った。
「貴様らは、廃屋で鐘馗会の奴らを見なかったのだな?」
「だからぁ、そのショーキカイって何なんだよ?」
エリオットはテーブルに肘をついてゲンナリしている。ジンの疑い深さに呆れているのだった。
そんな態度にも特に動じずに、ジンは説明し始める。
「少し因縁がある、商人ギルドだ。テン・イーという大商人が後ろ盾になっているという噂があってな、このテンという奴が──」
「テン・イーだって!?」
ジンの言葉を遮って、アニーがガタッと立ち上がった後、テーブルをバアンと両手で叩いた。
その表情からは、優しい笑顔が消え失せている。
「先生! テン・イーなんて初耳だよ!」
ミチルも慌ててジンに詰め寄った。
「そうだったか?」
二人の剣幕を、ジンはケロッとした顔で見ていた。ジェイとエリオットも、首を傾げている。
「テン・イー……ッ!」
生涯の仇の名を呼ぶアニーの顔は、怒りに引き攣っていた。
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