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Interlude02 トライアングルSOS!
9 運命の石
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ゴトゴトッと机に置かれた二つの青い石。それは、今スノードロップが持っている物と形や大きさは違うものの、雰囲気は同一だった。
「ジェイも持ってたの?」
アニーとベスティアを倒した時に、ミチルはそこに落ちていた青い石を見ていた。だからアニーが持っているのは知っていたが、ジェイも持っていたことに驚いた。
「ああ。あの森でベスティア主を倒した時に拾ったのだ。森に元々あったものとは思えなかったから」
「ホントだ、アニーのと色がそっくりだねえ」
二つの石の、鈍く青い光を見比べてミチルが溜息をついた。なんだか見ていると安心する。まるでジェイやアニーといる時みたいな感覚だ。
「ミチルは消えてしまったけれど、その石を見ているとミチルが側にいるようだった。この石を持っていれば必ずまたミチルに会えると信じていた」
ふっと限りなく優しく微笑むジェイの顔は、それはもう恐ろしく美しくてミチルは思わずぽっと頬を赤らめる。
胸がトクントクンする……
これが、初恋?
「ジェイ……」
「ミチル……」
二人の視線が甘く絡み合う……
「うぉっほん!」
甘い雰囲気は、クソ魔ジジイのしゃがれた咳払いによって消え去った。
「やれやれ、若い男はどこでも発情するから困る。外の川でアソコを冷やしてこい」
「おおい! ジジイまでシモネタ発してんじゃねえぞ!」
ミチルは真っ赤になって怒った。エリオットのシモネタはここが発祥だったのか。
「いいよなあ……最初の男は。それだけでアドバンテージがあるもんなあ……」
ミチルとジェイの盛り上がりを見ていたアニーは羨ましそうに呟いた。
「お前はまだいいじゃねえか。おれなんか完全に年下扱いだぜ、身体は25なのに……」
エリオットもまた己の境遇を嘆く。二人はここで初めて理解し合うことができた。
「まあ、しかしお前達の乳繰り合いでわかったかもしれん」
「チチクリ、とか言うな!」
ミチルもつられてシモネタを発してしまう。クソ魔ジジイはクソシモジジイだったのか!
「スノー! 何がわかったんだよ!」
投げやりなエリオットの声が苛立ちを帯びて響いた。それを逆撫でするようにスノードロップはずいとエリオットに近寄って囁く。
「……王子様も不憫よの。無自覚魔性の小僧に惚れた挙句にライバルが何人もいるとは」
「うるせえ!」
「あの二人だけではないぞ。小僧が魔性である限り、ライバルは更に増えるじゃろう」
ふっふっふ、と意味深に笑ってスノードロップはエリオットを脅かした。横で聞いていたアニーも震える。そしてジェイはあまり聞いていなかった。
「閑話休題じゃ。どうやらこの青い石は、お前さん達と小僧を繋げているように思う」
「繋げてるって、どういうこと?」
ミチルが首を傾げると、スノードロップは石を眺めながら続けた。
「原理はよくわからんが、三人がそれぞれに石を持っていることで小僧との縁が続くようになっておる。お互いの魔力パターンでもインストールされておるのかのう?」
魔法使いからインストールなんてハイテク語が出るとは。ミチルは少し面食らった。
「つまり、この石を持ってれば俺とミチルはたとえ離れても引き合うってこと?」
アニーがちょっと期待を込めて聞くと、スノードロップは軽く頷いた。
「うむ。その石を持っている限り小僧はそこに引き寄せられるから、長く離れることはないように思う」
「ええ、やだあ! もう、それって運命の石じゃあん!」
喜んでいるアニーには悪いが、他の者はそんな単語は知らない。アニーのちょっと妄想めいた造語なのであった。
「だからこの石はそれぞれが持っているのがいいじゃろ。とは言え、王様から分析を依頼されとるから──」
そう言ってスノードロップはまた杖を振る。
「ウェルカム・エックスレイ!」
ギャオー!
「ヒイィ! また怪獣!!」
杖で歪ませた空間から、亀のような甲羅を持った獰猛そうな生物が出てくる。そのガメラちゃんは机の上を占拠するほどの大きさだった。
「ほーれガメラちゃん。お食べ」
スノードロップはあろうことか、三人分の青い石をぽいぽいと投げてガメラちゃんに食べさせてしまった!
「何してんねん! くそまじじい!!」
あまりのことに、ミチルは初めて関西弁を使ってしまった。イケメン三人はポカーンとその様を見ている。
「騒ぐな、すぐ終わる」
「え?」
スノードロップがキランと目を光らせる。ガメラちゃんは少し口元をもごもごさせた後、青い石をプップップと吐き出した。そしてイケメン達の手にひとつずつ戻っていく。
「よし。わしはガメラちゃんがコピーしたデータを分析するとしよう」
「ファンタジーなのにハイテクノロジー!!」
ミチルが驚きながらつっこんでいるうちに、ガメラちゃんは役目を終えて消えた。
「さればお前達が次に行くべき場所は、カエルレウムじゃ」
「へ?」
事態の展開についていけないミチルは間の抜けた声を出してしまった。だがスノードロップはそれを無視してイケメン達、特にジェイに向かって言う。
「武器の材質が、従来のフォラス鋼に比べてどうなっておるか、わしの弟子でもあった特別職とやらに見てもらえ。あと、ベスティア研究はやはりカエルレウムが一番じゃからな、最近の大量発生についても調べてみい」
「む。わかった。そう言えば私は出張の身であった。どちらにしろ報告に戻らなければ」
まあ、こんだけイロイロあれば、ぽんこつじゃなくても忘れてるよねえ。
ミチルはカエルレウムがすでに懐かしくなっていた。アパートにいたおじさん元気かなあ、とか考える。
「うぉお! おれってば初めての外交特使じゃね? おい、ぽんこつ騎士! 国賓を迎える準備は出来るんだろうな!?」
「申し訳ないが、私にそんな権限はない」
「なんだとぉ!?」
エリオットのはしゃぎ様は、ミチルを少し不安にさせた。
引きこもりのお坊ちゃま、急に外に出して大丈夫かな……。
「こりゃ、王子様よ。粗暴な振る舞いでアルブスに恥をかかせるな! 任務はあくまで隠密に行え、むろん、身分もじゃ!」
「ええー」
残念そうに項垂れるエリオットを横目に、アニーがスクっと立って音頭をとる。
「よーし、それじゃあ出発するか!」
「アニー? どしたの、張り切ってるね」
ミチルが驚いて言うと、少し困ったような顔でアニーは笑う。
「……任務とか身分とかはわかんないけど、どうやら俺が一番年上らしいからね。きっちり引率してあげるよ」
ウィンク、バッチーン!
国民の彼氏健在!
「さすがアニー! 頼りになるぅ!」
アニーの輝く笑顔で、ミチルも心を弾ませた。
三人のイケメンとともに、ミチルはもう一度始まりの地、カエルレウムへ!
……行けるかどうかは、カミのみぞ知る。
「ジェイも持ってたの?」
アニーとベスティアを倒した時に、ミチルはそこに落ちていた青い石を見ていた。だからアニーが持っているのは知っていたが、ジェイも持っていたことに驚いた。
「ああ。あの森でベスティア主を倒した時に拾ったのだ。森に元々あったものとは思えなかったから」
「ホントだ、アニーのと色がそっくりだねえ」
二つの石の、鈍く青い光を見比べてミチルが溜息をついた。なんだか見ていると安心する。まるでジェイやアニーといる時みたいな感覚だ。
「ミチルは消えてしまったけれど、その石を見ているとミチルが側にいるようだった。この石を持っていれば必ずまたミチルに会えると信じていた」
ふっと限りなく優しく微笑むジェイの顔は、それはもう恐ろしく美しくてミチルは思わずぽっと頬を赤らめる。
胸がトクントクンする……
これが、初恋?
「ジェイ……」
「ミチル……」
二人の視線が甘く絡み合う……
「うぉっほん!」
甘い雰囲気は、クソ魔ジジイのしゃがれた咳払いによって消え去った。
「やれやれ、若い男はどこでも発情するから困る。外の川でアソコを冷やしてこい」
「おおい! ジジイまでシモネタ発してんじゃねえぞ!」
ミチルは真っ赤になって怒った。エリオットのシモネタはここが発祥だったのか。
「いいよなあ……最初の男は。それだけでアドバンテージがあるもんなあ……」
ミチルとジェイの盛り上がりを見ていたアニーは羨ましそうに呟いた。
「お前はまだいいじゃねえか。おれなんか完全に年下扱いだぜ、身体は25なのに……」
エリオットもまた己の境遇を嘆く。二人はここで初めて理解し合うことができた。
「まあ、しかしお前達の乳繰り合いでわかったかもしれん」
「チチクリ、とか言うな!」
ミチルもつられてシモネタを発してしまう。クソ魔ジジイはクソシモジジイだったのか!
「スノー! 何がわかったんだよ!」
投げやりなエリオットの声が苛立ちを帯びて響いた。それを逆撫でするようにスノードロップはずいとエリオットに近寄って囁く。
「……王子様も不憫よの。無自覚魔性の小僧に惚れた挙句にライバルが何人もいるとは」
「うるせえ!」
「あの二人だけではないぞ。小僧が魔性である限り、ライバルは更に増えるじゃろう」
ふっふっふ、と意味深に笑ってスノードロップはエリオットを脅かした。横で聞いていたアニーも震える。そしてジェイはあまり聞いていなかった。
「閑話休題じゃ。どうやらこの青い石は、お前さん達と小僧を繋げているように思う」
「繋げてるって、どういうこと?」
ミチルが首を傾げると、スノードロップは石を眺めながら続けた。
「原理はよくわからんが、三人がそれぞれに石を持っていることで小僧との縁が続くようになっておる。お互いの魔力パターンでもインストールされておるのかのう?」
魔法使いからインストールなんてハイテク語が出るとは。ミチルは少し面食らった。
「つまり、この石を持ってれば俺とミチルはたとえ離れても引き合うってこと?」
アニーがちょっと期待を込めて聞くと、スノードロップは軽く頷いた。
「うむ。その石を持っている限り小僧はそこに引き寄せられるから、長く離れることはないように思う」
「ええ、やだあ! もう、それって運命の石じゃあん!」
喜んでいるアニーには悪いが、他の者はそんな単語は知らない。アニーのちょっと妄想めいた造語なのであった。
「だからこの石はそれぞれが持っているのがいいじゃろ。とは言え、王様から分析を依頼されとるから──」
そう言ってスノードロップはまた杖を振る。
「ウェルカム・エックスレイ!」
ギャオー!
「ヒイィ! また怪獣!!」
杖で歪ませた空間から、亀のような甲羅を持った獰猛そうな生物が出てくる。そのガメラちゃんは机の上を占拠するほどの大きさだった。
「ほーれガメラちゃん。お食べ」
スノードロップはあろうことか、三人分の青い石をぽいぽいと投げてガメラちゃんに食べさせてしまった!
「何してんねん! くそまじじい!!」
あまりのことに、ミチルは初めて関西弁を使ってしまった。イケメン三人はポカーンとその様を見ている。
「騒ぐな、すぐ終わる」
「え?」
スノードロップがキランと目を光らせる。ガメラちゃんは少し口元をもごもごさせた後、青い石をプップップと吐き出した。そしてイケメン達の手にひとつずつ戻っていく。
「よし。わしはガメラちゃんがコピーしたデータを分析するとしよう」
「ファンタジーなのにハイテクノロジー!!」
ミチルが驚きながらつっこんでいるうちに、ガメラちゃんは役目を終えて消えた。
「さればお前達が次に行くべき場所は、カエルレウムじゃ」
「へ?」
事態の展開についていけないミチルは間の抜けた声を出してしまった。だがスノードロップはそれを無視してイケメン達、特にジェイに向かって言う。
「武器の材質が、従来のフォラス鋼に比べてどうなっておるか、わしの弟子でもあった特別職とやらに見てもらえ。あと、ベスティア研究はやはりカエルレウムが一番じゃからな、最近の大量発生についても調べてみい」
「む。わかった。そう言えば私は出張の身であった。どちらにしろ報告に戻らなければ」
まあ、こんだけイロイロあれば、ぽんこつじゃなくても忘れてるよねえ。
ミチルはカエルレウムがすでに懐かしくなっていた。アパートにいたおじさん元気かなあ、とか考える。
「うぉお! おれってば初めての外交特使じゃね? おい、ぽんこつ騎士! 国賓を迎える準備は出来るんだろうな!?」
「申し訳ないが、私にそんな権限はない」
「なんだとぉ!?」
エリオットのはしゃぎ様は、ミチルを少し不安にさせた。
引きこもりのお坊ちゃま、急に外に出して大丈夫かな……。
「こりゃ、王子様よ。粗暴な振る舞いでアルブスに恥をかかせるな! 任務はあくまで隠密に行え、むろん、身分もじゃ!」
「ええー」
残念そうに項垂れるエリオットを横目に、アニーがスクっと立って音頭をとる。
「よーし、それじゃあ出発するか!」
「アニー? どしたの、張り切ってるね」
ミチルが驚いて言うと、少し困ったような顔でアニーは笑う。
「……任務とか身分とかはわかんないけど、どうやら俺が一番年上らしいからね。きっちり引率してあげるよ」
ウィンク、バッチーン!
国民の彼氏健在!
「さすがアニー! 頼りになるぅ!」
アニーの輝く笑顔で、ミチルも心を弾ませた。
三人のイケメンとともに、ミチルはもう一度始まりの地、カエルレウムへ!
……行けるかどうかは、カミのみぞ知る。
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