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Interlude01 ぽんこつナイトVSホストアサシン
7 同衾自慢からの、くしゃみ!?
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ジェイが感じる胸の焦げつき。
その正体は同族嫌悪のアニーだけが気づいている。
そしてアニーには、その感情が牙を剥く前にジェイを撃退しておく必要があった。
「ミチルは小さくて細いけど、それが抱いて寝るのにちょうどいいよねえ。柔らかくて甘い匂いがしちゃって」
セクハラを吐きまくるアニーに、ミチルはもちろん文句を言いたかったが、なんか色々思い出して恥ずかしさの方が勝り動けなかった。
具体的には、背中をスーハーされたこととか、ほっぺにチュゥされたこととか、本気顔で生腰を触られたこととか。
「ほんのりあったかくて……眠った顔が無防備で世界中から隠したくなるんだよねえ」
おおい、いい加減にその口閉じろぉお!
ミチルがやっとそう叫ぼうとした時、ジェイからとんでもない発言が出た。
「確かに、それはそうだ」
「……あ?」
アニーの変態トークに、あろうことかジェイが同意した!
あまりのことに、アニーは顔を歪めて固まった。
「ミチルの寝顔は確かに可愛らしい。そして純粋無垢だ」
「ぎにゃああああ!」
アニーだけでなくジェイまでそんな事を宣い始めるなんて、ミチルは羞恥に耐えきれず雑巾を裂くような悲鳴を上げた。
「そ、そうかよ。お、お前も泊めてやるくらいは、まあ、したんだろう。そこまで知ってるってことは覗いたのか!? 変態だな!」
おい、お前が言うな!
アニーの負け惜しみをミチルは全力で突っ込みたかった。
「覗いたと言うか……夜半に気がついたらミチルが私の腕の中にいたのだ」
「のおおおおぉっ!」
アニーに突っ込む暇を与えず、ジェイからも爆弾発言が出てくる。
ミチルは叫ぶことしか出来なかった。
「そ、そんな……まさか、ミチル自ら……? なんて大胆!」
アニーは顔面蒼白でよろめいた。
「あれはそうじゃなくてっ!」
ミチルの訂正はアニーには届かなかった。
「ずるい! ミチル! 俺にもおねだりしてよ! 抱いて♡ って言って!」
「言うかああっ!」
頭を抱えて半狂乱のミチル。ジェイからの爆弾発言は尚も続く。
「それに、ミチルの匂いは甘い……と言うよりも落ち着く花のような香りだったと記憶しているが」
「お前も、もう黙れえ!」
ミチルの叫びは二人の男には届かない。
「はあ!? ミチルの匂いはミルクを温めたみたいなふんわり甘い香りだろうが!」
もうやめてえええ!
「いや、花だ。すみれの花」
特定するなあああ!
「ミルクだ! 蜂蜜をとろとろに混ぜたやつ!」
とろとろ、とか言うなあああ!
「花だ」
「ミルクだ!」
何コレ、何なのコレ!?
なんでイケメンが二人してオレの体臭で喧嘩してんの!?
「花だ。ミチルの髪の毛から特にそう感じた」
それシャンプーだから!
「ミチルのうなじはなあ、ミルクみたいな甘い匂いがすんだよ!」
お前の変態性は知らねえ!
「花!」
「ミルクッ!」
言い合いを続ければ続けるほど、ミチルの羞恥心ゲージが溜まっていく。
ぐぐ
ぐぐっと
ちょうど、あの仮装するコンテスト番組のようなゲージが。ぐぐっと上がっていく。
「もう、やだああああっ!」
なんでそうなるのっ!
「ミチル?」
二人の男が我に返って見た時には、ミチルは真っ赤な顔で泣きながら走っていた。
「恥ずかしいよおおおぉ! 助けてえええ!」
ミチルは森に逆戻りしていく。
「何処へ行くんだ、ミチル!?」
「一人で走ったら危ないよ!」
「うるせえええ! ついて来んなああ!!」
ジェイとアニーが止めるのも聞かず、ミチルは一目散に逃げ出した。
恥ずかしいよ、恥ずかしいよ、恥ずかしいよ!
オレってそんなにイヤラシイ子だったの!?
イケメンに挟まれて調子こいてました、すいません!!
異世界のカミサマ、ごめんなさい!
「はあ、はあ……」
無我夢中で走ったミチルは、暗い森の中にいた。
「あ、あれ? ここ何処?」
少し落ち着いたミチルは辺りを見回す。木々が生い茂る狭間から明るい光が見えた。
あれを目指して引き返せば戻れそうだ。
でも、今はまだ。
恥ずかしくて二人に会わせる顔がない。
「うああああっ!」
ミチルはこれまでの己の所業を思い出して悶絶した。
セクハラもされては来たけれど、自分もイケメンにセクハラしまくっていたのでは?
なんて事だ……
イケメンは皆のものなのに。あの美しさは分かち合うべきものなのに。
いつからオレはこんな強欲色魔になってしまったんだ!?
「あああああっ!!」
ミチルは地面をゴロンゴロン転がって悶えた。
そうして鼻先を雑草が掠める。
むず……
「!!」
ミチルは突然血の気が引いた。
やばい、鼻がムズムズする!
「ふぁ……っ」
やばい! いかん! ダメッ!
こんな一人っきりの時にくしゃみなんかしたらダメ!
ジェイ! せっかく会えたのに!
アニー! オレのためについてきてくれたのに!
「ふぁ……ッ」
ダメダメダメ駄目駄目ッ!!
二人と離れたくないよ!
強欲色魔でもいいよ! 一緒にいたいんだよ!
「ふぁっ、──ぶちゅんっ!」
いやあああああ!
「ミチル?」
「ミチルー?」
ジェイとアニーがやっと森まで探しに来る。
ミチルの姿はすでになかった。
「異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!」
Interlude1 ぽんこつナイトVSホストアサシン 了
次回からは 小悪魔プリンス編を始めます!よろしくお願いします!
その正体は同族嫌悪のアニーだけが気づいている。
そしてアニーには、その感情が牙を剥く前にジェイを撃退しておく必要があった。
「ミチルは小さくて細いけど、それが抱いて寝るのにちょうどいいよねえ。柔らかくて甘い匂いがしちゃって」
セクハラを吐きまくるアニーに、ミチルはもちろん文句を言いたかったが、なんか色々思い出して恥ずかしさの方が勝り動けなかった。
具体的には、背中をスーハーされたこととか、ほっぺにチュゥされたこととか、本気顔で生腰を触られたこととか。
「ほんのりあったかくて……眠った顔が無防備で世界中から隠したくなるんだよねえ」
おおい、いい加減にその口閉じろぉお!
ミチルがやっとそう叫ぼうとした時、ジェイからとんでもない発言が出た。
「確かに、それはそうだ」
「……あ?」
アニーの変態トークに、あろうことかジェイが同意した!
あまりのことに、アニーは顔を歪めて固まった。
「ミチルの寝顔は確かに可愛らしい。そして純粋無垢だ」
「ぎにゃああああ!」
アニーだけでなくジェイまでそんな事を宣い始めるなんて、ミチルは羞恥に耐えきれず雑巾を裂くような悲鳴を上げた。
「そ、そうかよ。お、お前も泊めてやるくらいは、まあ、したんだろう。そこまで知ってるってことは覗いたのか!? 変態だな!」
おい、お前が言うな!
アニーの負け惜しみをミチルは全力で突っ込みたかった。
「覗いたと言うか……夜半に気がついたらミチルが私の腕の中にいたのだ」
「のおおおおぉっ!」
アニーに突っ込む暇を与えず、ジェイからも爆弾発言が出てくる。
ミチルは叫ぶことしか出来なかった。
「そ、そんな……まさか、ミチル自ら……? なんて大胆!」
アニーは顔面蒼白でよろめいた。
「あれはそうじゃなくてっ!」
ミチルの訂正はアニーには届かなかった。
「ずるい! ミチル! 俺にもおねだりしてよ! 抱いて♡ って言って!」
「言うかああっ!」
頭を抱えて半狂乱のミチル。ジェイからの爆弾発言は尚も続く。
「それに、ミチルの匂いは甘い……と言うよりも落ち着く花のような香りだったと記憶しているが」
「お前も、もう黙れえ!」
ミチルの叫びは二人の男には届かない。
「はあ!? ミチルの匂いはミルクを温めたみたいなふんわり甘い香りだろうが!」
もうやめてえええ!
「いや、花だ。すみれの花」
特定するなあああ!
「ミルクだ! 蜂蜜をとろとろに混ぜたやつ!」
とろとろ、とか言うなあああ!
「花だ」
「ミルクだ!」
何コレ、何なのコレ!?
なんでイケメンが二人してオレの体臭で喧嘩してんの!?
「花だ。ミチルの髪の毛から特にそう感じた」
それシャンプーだから!
「ミチルのうなじはなあ、ミルクみたいな甘い匂いがすんだよ!」
お前の変態性は知らねえ!
「花!」
「ミルクッ!」
言い合いを続ければ続けるほど、ミチルの羞恥心ゲージが溜まっていく。
ぐぐ
ぐぐっと
ちょうど、あの仮装するコンテスト番組のようなゲージが。ぐぐっと上がっていく。
「もう、やだああああっ!」
なんでそうなるのっ!
「ミチル?」
二人の男が我に返って見た時には、ミチルは真っ赤な顔で泣きながら走っていた。
「恥ずかしいよおおおぉ! 助けてえええ!」
ミチルは森に逆戻りしていく。
「何処へ行くんだ、ミチル!?」
「一人で走ったら危ないよ!」
「うるせえええ! ついて来んなああ!!」
ジェイとアニーが止めるのも聞かず、ミチルは一目散に逃げ出した。
恥ずかしいよ、恥ずかしいよ、恥ずかしいよ!
オレってそんなにイヤラシイ子だったの!?
イケメンに挟まれて調子こいてました、すいません!!
異世界のカミサマ、ごめんなさい!
「はあ、はあ……」
無我夢中で走ったミチルは、暗い森の中にいた。
「あ、あれ? ここ何処?」
少し落ち着いたミチルは辺りを見回す。木々が生い茂る狭間から明るい光が見えた。
あれを目指して引き返せば戻れそうだ。
でも、今はまだ。
恥ずかしくて二人に会わせる顔がない。
「うああああっ!」
ミチルはこれまでの己の所業を思い出して悶絶した。
セクハラもされては来たけれど、自分もイケメンにセクハラしまくっていたのでは?
なんて事だ……
イケメンは皆のものなのに。あの美しさは分かち合うべきものなのに。
いつからオレはこんな強欲色魔になってしまったんだ!?
「あああああっ!!」
ミチルは地面をゴロンゴロン転がって悶えた。
そうして鼻先を雑草が掠める。
むず……
「!!」
ミチルは突然血の気が引いた。
やばい、鼻がムズムズする!
「ふぁ……っ」
やばい! いかん! ダメッ!
こんな一人っきりの時にくしゃみなんかしたらダメ!
ジェイ! せっかく会えたのに!
アニー! オレのためについてきてくれたのに!
「ふぁ……ッ」
ダメダメダメ駄目駄目ッ!!
二人と離れたくないよ!
強欲色魔でもいいよ! 一緒にいたいんだよ!
「ふぁっ、──ぶちゅんっ!」
いやあああああ!
「ミチル?」
「ミチルー?」
ジェイとアニーがやっと森まで探しに来る。
ミチルの姿はすでになかった。
「異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!」
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次回からは 小悪魔プリンス編を始めます!よろしくお願いします!
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