空晴ラビット 1

やました

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第1章

プロローグ

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「行って……必ずまた会えるから。」

燃え盛る炎の中お母さんは意識を失っているお父さんを抱え、そう言ってにこっと笑った。

「いや!お母さん!!お父さん!!」

「……ミヨコ!行くぞ!」


必死に抵抗したけど、お兄ちゃんは無理やり私を茂みの中へと引っ張った。





それからどのくらい走っただろう。
まだ8歳の私と10歳の兄の体力は限界だった。

私たちは暗い茂みの中、身を隠しうずくまるように横になる。

「ごめん、ミヨコ……お父さん…お母さん……」

兄は呟くようにそう言った。

――― 意識がもうろうとしてくる。


その時、茂みをかき分けて誰かが近づいてくる音がした。

「……っ!?」

兄はビックリして私を庇うように立ち上がった。

「誰だ!来るな!」

兄は近づいてくるその人影に威嚇する。

すると人影はピタッとそこで立ち止まった。

「ごめんね、驚かせるつもりじゃなかったんだ……君たち、**へ向かっているんだろう?案内をしに来たんだ。」

少し小声に、その人影の主が答えた。

「……いい、自分たちで行く……ほっといてくれ」

兄はそう言って人影の主を睨みつける。

「そういう訳にはいかないんだ。ここは危ない。いつ魔ノラが襲ってくるか分からないからね。」

人影の主はそう言って私たちから背を向けた。

「**はすぐそこだ。ついておいで。」


私と兄は、仕方なくその人影について行くことにした。

人影の主は背を向けたまま迷いなく歩いていく。
それを私たちは必死に追いかけた。

しばらくすると、草むらをぬけて広い野原に出た。


「ついたよ。ここが**の中さ。あそこの隅にある家が君たちの父の家だよ。」

人影だったその人がこちらを振り返りそう言った。
黒い髪に整った顔立ちをしているその男はニコッと私たちに笑いかける。

―――確かに、あの家は私たちのお父さんの家に違いなかった。

「……なぜこの場所を知っているんですか?」

兄は男の方へ振り返りそう言った。


しかし、そこにはもう男の姿はなかった。


空には綺麗な星々と三日月がのぼっている。

「……きれい。」

私は思わずそう呟いた。


こうして私たちは、お父さんの故郷**の中へたどり着くことが出来たのだった。







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