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12.Syzygy
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軟らかな赤褐色の肉に四肢をずっぷりと埋め込まれてしまったラズリは、弱点を数多の触手でしつこく嬲られ続けていた。
両手を上に持ち上げられ、足を大きく開かされた状態で拘束されている。ぴちゃぴちゃ、にゅぷにゅぷ。粘り気のある水音と共に、強い快楽をただ享受することしかできない……。
「ふぐっ、んっ、んぅ、んんんむぅぅっ……! ふうっ、は、あぁっ……」
ラズリはルブラから執拗に口付けをされていた。
両頬を大きな手でがっしりと掴まれながら、肉厚な舌で無理やり唇をこじ開けられる。奥に引っ込めた舌を無理やり横から掬いあげられ、舌根から先端までを柔らかくなぞられる。敏感な上顎を左右に舐められ、思わず流れ込んでくる唾液を嚥下してしまう。
「ん、ふうっ……る、ぶらぁ……んは、ん、んむぅっ……!」
この男のキスはいつもそうだ。長くて苦しいのに、依存性がある。もっともっとしてほしいと望んでしまう。舌を絡め合っているだけなのに、まるで頭の中までかき回されているかのような気分になって、そのまま蕩けてしまいそうになる。耐え難い。こんな刺激を与えられてはまたおかしくなってしまう。
ラズリは正気を失うことを怖れながらも、久しぶりに味わう愛しい男の体温に涙を溢れさせた。世界の終焉がすぐそこに近づいているというのに、焦がれた男にもう一度会えたことが心の底から嬉しかった。
(会いたかった。ずっと欲しかったの、あなたが欲しかったのよ。ルブラ……)
肉の壁に埋め込まれた四肢は、壁の中で蠢く幾つもの触手になぞりあげられている。指の一本一本をしゃぶられ、壁にくっつけられている臀部や背中、露わになった脇をぬめる蛸足でくすぐられる。粘液塗れの軟らかい触手が、敏感な足の裏を舐めるように這い回る。
吸盤に胸の先端をちゅうちゅうと吸われ、うねる触腕に股間をずるずると擦られる。蛸の足が動く度に陰唇をめくりあげられ、無理やり愛液を掻き出されてしまう。
吸盤の引っ掛かりに包皮ごと陰核を弾かれ、芯に刺激を与えるよう執拗に揉み込まれる。ルブラの下半身から伸びるもうひとつの蛸足が、痙攣する秘部を焦らすように後孔から膣口までをゆっくりとなぞりあげる。
「あっ、あ、んあぁぁ……はあっ、んむ、あ、ひ、ぅっ……!」
もう何度絶頂しただろうか。
ラズリは快楽に霞む目で、ルブラに許しを請う視線を送った。
思い切り声を出して何とか快楽を外に逃したいのに、拘束され口を塞がれるせいで、暴発する快感を全て受け止めてしまう……。
「んはぁっ、んっんっ! ぷはぁっ……! や、だめっ……も、い、っく! いっちゃ……あっ! あああぁぁぁぁ……」
ルブラの手によって作り変えられた敏感な身体が、執拗な責めの手に抗えるはずもない。吸盤に吸い付かれた陰核から、またすぐに鋭い絶頂感が込み上げる。その刺激は痙攣する膣口や、触手に舐め潰される乳首にまで次々と伝播していく。大きな嬌声を上げながら、ラズリはひたすら甘い極みの余韻に浸った。
自分を喰らわんとするかのような熱烈なキスと与えられる快楽に、ただ荒い息を吐くことしかできない。
身体が熱い。気持ちいい。気持ちよすぎて情けなく喘いでしまう。
これでは、ルブラとまともに話すことはできない……。
ルブラは金の目を見開き、瞬きもせずにラズリを見つめた。
弱々しい声を上げる女を無表情で苛み、その後頭部に手を回し口蓋の更に奥を犯そうとする。ラズリを窒息させるかのような激しい口吻を繰り返しながらも、ルブラは人外の声で彼女への恨み言を紡ぎ続けた。
笛のような音が、ラズリの頭を埋め尽くす。
『なぜ逃げた。なぜ俺を殺した! なぜ、なぜ、なぜ? なぜ俺を受け入れてくれなかった? あんなに好きだと伝えたのに。お前の心を得るために手を尽くしたのに! お前は俺の感情の一片すら掬い取ってくれなかったな……』
『お前が言った愛の言葉に、俺は心から縋っちまった……。それが嘘だって気が付いた時、俺がどんな気持ちだったか分かるか? なあラズリ、馬鹿なラズリ……。お前は酷い女だ。逃げるためにあんな嘘を吐くなんて、本当に残酷な女だ! 惨めな俺を見て嗤ってんだろ? 神ともあろう者がなんて無様なんだって! ああ、そうだ。俺はお前のせいでめちゃくちゃになっちまった。お前のせいで、俺は同族からの笑い物だ!』
『どんなにこの気持ちを伝えても、お前は何も返してくれなかった。俺の何がいけなかった? 何を変えればよかったんだ? どうして俺の手を取ってくれなかったんだ!? 分からねえよ、ラズリ!』
『許さねえ、許さねえ。許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえッ!! その魂を以て俺に償え。永遠に、永遠に、永遠に永遠に永遠に。俺の気が済むまで、ずっとだ!! 辛い、怖い、苦しい、切ない、こんな思いをさせるお前をいっそ殺してやりたい……』
くぐもった笛のような音は、確かな声としてラズリの耳に入っていく。深い絶望と怨嗟が籠もったその声を聞いていられず、ラズリは目を潤ませた。
(……ルブラ、ごめんなさい)
自分はここまでの傷を彼に負わせてしまったのだ。
切なくて苦しくて仕方がない。
ルブラを抱きしめて心から愛していると伝えたいのに、四肢を拘束されているせいでそれができない。必死に身動ぐラズリを見下ろし、ルブラは昏い目で笑った。
「素直じゃねえな。大人しく俺に可愛がられていればいいものを……。この期に及んで、まだ逃げようとしてんのかよ?」
「んあっ、はあっ、はぁ……ち、がうわ。あなたと、はなしたくて……」
「話す? ……はっ、馬鹿言え。何について話そうってんだ? 話す機会なんて、今までにたくさんあっただろうが。俺の懇願を打ち捨てて逃げたのはお前だろ! なのに今更話そうだって? 勝手なことを言ってんじゃねえぞ」
ルブラは狂気の籠もった視線でラズリを射抜いた。
苦しそうに荒い息を吐く彼女を見て、酷薄さの滲む笑みを浮かべる。温かさのひとつもないその表情に、ラズリはざっと顔を強張らせた。
「あはははははっ! 自分のせいで世界が滅ぼされたくなくて、何とか俺を説得しようとしてんだろ? 正義感の強いラズリちゃんらしいぜ! ははっ! あは、はははははは……。無駄だ。どんなに喚いたって無駄だぜラズリ……。もうお前の言うことは聞かねえ。お前が何を言おうと、関係ない……」
金の瞳が、傷付いたようにゆらゆらと揺れている。
ルブラはわざとふざけた調子で笑った後、憎悪が滲む表情でラズリの青い目を睨みつけた。
「海で眠りながら考えたんだ、神を殺した女の正体を! そんなことできる奴はあいつしかいない。……お前、天空神だろ。俺を海に封じた憎きあいつなんだろ!?」
――ラズリくん、天空神の化身である君はxxxxxの敵だ。恨みあり余る敵なのだぞ!
「……っ」
ルブラの瞳に渦巻く強烈な怨毒に思わず息を呑む。
ああ、マーシュの言う通りだ。この男は酷く自分を憎んでいる……。
顔を逸らそうとするラズリの顎を掴み、ルブラは低い声で彼女を問い詰めた。
「あはははっ……。あははははははははは! その反応、当たりだな! 何だお前、自分の正体を知って島にやって来たのか? その上で俺を弄んだのかよ!?」
「ちっ、ちがう……! わたし、何も知らなかった! まーしゅ、隊長に言われて、はじめて知ったの……。信じて、お願い……!」
「っち。あの忌々しいクソ野郎がお前を差し向けたって訳か。あの男、やっぱり血の海に沈めてやる必要があるらしい! ……でもまあ、知っていようが知っていまいが、お前が俺の怨敵ってことには変わりねえ。ははっ! 俺の復活に合わせてお前がこの世界に現れるとはな。これも星の巡り合わせか?」
ルブラは皮肉げに唇を歪め、ラズリの耳元で囁いた。
「ただの人間にしちゃ随分と強い霊気を持ってると思ったんだ。どんなに狂気に浸しても変貌しねえし、青空を見りゃあっという間に正気を取り戻す。……何よりもその目の色。その空みてえな目の色が、憎き天空神の色にそっくりだと思った」
聞いた者をくらくらと酔わせるような人外の声で、ルブラはラズリの耳に怨念を注いだ。
『俺は海に封じられる前、お前に深い深い傷を負わせてやった。下僕どもからお前が空に散ったと聞いた時は、すっげえすっきりしたぜ! ……だがな、お前への恨みは決して消えなかった。華々しい新世界の到来を阻んだお前のことは、何度殺しても殺し足りないほど憎かった!』
『俺はお前を恨みながら、何十万年も海の底で眠った。星揃う暁には地球の全てを支配すると、それだけを望みながら目覚めの時を待ち続けた。……いつも夢に見るのはお前の敗北だった。お前を穢し、堕とし、弄び、隷属させてやる想像をして自分を慰めた!』
『……くひひひっ、ひひ、ひひひひひっ!! あああああっ、傑作だ! 本っ当に傑作だ!! あれだけ憎み続けた天空の神が、こんな弱っちい人間の雌になって俺の前に現れるんだからよ! お前を如何にも甚振ってやれと言わんばかりの巡り合わせじゃねえか! なあ!? あははっ、どんな方法でお前を苦しめてやろうか!? 積もり積もった恨みを全部全部ぶつけてやるからな、覚悟しろよ天空神があぁぁぁ……!!』
ルブラから向けられる憎悪に心が揺れ、拉げ、決壊する。
ラズリは青い目からぼろぼろと涙を溢れさせ、そんなに私が憎いかと呟いた。
『憎いだってええぇぇぇええ!? 本気で言ってんのかよ!? あはははははははははははっっ、笑わせるぜ!! ……ああ、憎い。憎くて堪らねえよ! ……だがな、神だったお前よりも、今のお前の方がずっとずっと憎い!!』
ルブラの蛸足がラズリの首に巻き付く。
柔らかく頸部を圧迫され、ラズリは恐怖と悲しみに目を見開いた。
『俺は最初、お前のことを天空神の眷属だと思っていた。復活を邪魔した人間の女をすぐに狂死させようとした。だがお前は人間のくせに、俺の視線に抗った。……だからやり方を変えることにしたんだ。ただお前を殺してやるだけではつまらない。愛の言葉を囁いてお前を籠絡し、その魂を穢し、肉体を乗っ取って鳥どもを殺し回るつもりだった! 天空神へ復讐をしてやるつもりだった! 矮小な人間の雌なんか、虫けらと変わらない下等な存在だと思っていた……』
「ん、ひぅっ……」
ラズリの流す涙が、ルブラの舌に一滴残らず舐め取られていく。彼はラズリの滑らかな頬をねっとりと舐め回し、女の強張った表情を愉しんだ。
『何度も何度もお前を堕とそうとした。目にたっぷり狂気を込めて、その魂を呪ってやろうとした! 天のような色の目が気に入らなかった。青い目を濁らせてどろどろに穢してやるつもりだった! 愛を、人間の営みを、お前の存在を、心の底から馬鹿らしいと嘲っていた! なのに……なのに、なのに!』
ラズリは強く抱きしめられた。
ルブラの下半身から伸びる蛸足が全身に絡みつき、ラズリはとうとう身動ぐことさえできなくなってしまった。
ルブラの太い腕が小刻みに震える。
彼は泣きそうな声を出しながらラズリにしがみついた。
「お前と過ごすうちに俺はおかしくなっちまった……! お前といると、湯に浸かったみてえに胸があったかくなった。不自然に脈打って、内側がこそばゆくなったり、頭がぼんやりしたり、顔に熱が集まったりした! 訳の分からねえ変化なのに、不思議と嫌な気分にはならなかったんだ!」
「……るぶ、ら?」
「胸が変になる理由を突き止めたくて、毎日お前に真珠を渡した。海から得た知識を使って料理を作った。山の方が好きだなんて言うお前が気に入らなくて、必死に海の魅力を伝えた……」
真珠を星に喩えて笑う、ラズリのきらきらとした笑顔が好きだった。
共に浜辺を歩く穏やかな時間が好きだった。
潮風に靡く黒髪を見るのが好きだった。
彼女が纏う熱帯の花の香りが好きだった。
ラズリとの生活は宝物だった。
憎しみと嘲りに満ちた闇の心に、初めて幸福というものが宿ったのだ。
――ルブラがいたら寂しくないわね。あなたがいてくれて良かったわ。
そう言ってもらえて嬉しかった。
俺も同じだ。ラズリがいたら寂しくない。お前に出逢えて良かった……。
「やがてはっきりと気が付いたんだ。俺は、お前に惹かれてるんだって! ……認めたくなかった。神である俺が人間の雌に心奪われただなんて、そんなの許せなかった! なのにこのザマだ! お前のせいだ。お前があの時、俺の名前を呼んだからっ……!」
窮地に立たされた絶体絶命の時において、自分を呼んでくれたことが嬉しかった。
無意識のうちに助けを求めてくれたことが嬉しかった。
この女をずっとずっと守りたい。
何を捧げても、何を賭しても傍にいたい。
世界なんてどうでもよかった。
ラズリのために生きること、それが一番の望みだった。
「お前から頼られたり、甘えられたりすると心が満たされた。もっと縋ってほしい、笑顔を見せてほしい、傍にいたい……そう思うようになった。俺はもう、お前の身体を乗っ取ろうとは思っていなかった。ただひたすらにお前が愛おしかったんだ!」
夫婦になりたかった。
番として迎えたかった。
ずっとずっと一緒にいてほしかった。
おかしくなるほどラズリを愛していた。彼女に心から受け入れられて、共に歩む権利が欲しかった。
隣でラズリが笑ってくれることこそ、自分の幸福だった。
「お前のことが解らなかった。俺に縋ってくるくせに、どうして俺のものになってくれないのか解らなかった! 何度も何度も海に潜って、骨から人の営みを学んだ。できるだけお前に優しくあろうとした! でもお前は俺と目を合わせてくれなくなった。……話そうとしたって、手を振り解いて逃げたよな?」
魂を削りながら、必死に胸に抱える愛を伝え続けたのに。
なのにラズリは清らかな目のまま自分を遠ざけた。自分から離れていくことが、堪らなく怖かった!
「……はは。どうしたら良かったんだろうな。俺はきっと、ずっと前から選択を誤っちまったんだ……」
どうしたら信頼してもらえたのか。
どうしたら自分を受け入れてもらえたのか。
俺が人間じゃないから? 俺が水神だったから?
何がいけなかったんだ? 解らない。もがけばもがくほど、この女は自分を拒絶した。
寂しい、苦しい。辛い、助けてほしい。
どうか嫌わないでと、何度心の中で懇願したか!
「……。でも、もういいんだ。いくら憎まれても、嫌われても……」
――大好き。ルブラ、私もあなたのことを愛してるわ。
嘘吐き。
嘘吐き嘘吐き嘘吐き。嘘吐き!
逃げるお前に向けて、俺がどんな気持ちで縋ったのか分かるか!?
嘘吐き女。お前は最低だ。
あんなに甘い顔で愛を囁かなくたっていいじゃねえか。
だから俺はお前の愛を信じてしまったんだ。
馬鹿らしい。哀れだ。惨めだ。
あんな酷い嘘を吐かれるくらいなら、もう愛なんてものは求めない!!
「……もう、何もかも手遅れだから」
ルブラはラズリを拘束する触腕に力を込めた。
苦しげな呻き声が上がる。込み上げる悲しみを我慢し、ルブラは歪に微笑んだ。
「ラズリ。俺の正体を本能的に知ってたんだろ? だからきっと、俺を拒絶し続けたんだ……。俺が自分の敵だって気が付いてたんだろ……」
「ん、ぐうっ……ひ、ち、がっ……!」
「敵。そうだ、敵……。俺たちの関係はそれが一番しっくり来るよなあ、ラズリ? だから俺は、敵であるお前をずっと苦しめてやる。俺が感じた苦しみを、全てお前に味わわせてやる! お前は俺の奴隷だ、そして俺を狂わせた罪人だ。お前はこの肉の牢獄の中で、俺と共に永遠を過ごすんだ! その肉体を、その魂を穢し尽くしてやる! 俺が狂ったように、お前も狂っておかしくなってしまえばいい!」
美しい金の瞳が、狂気に眩く輝く。
「俺は選択を間違えた。でも、間違えたのはお前もだ。……愛してるだなんて、酷い嘘を吐きやがって」
「違うわ、ルブラっ! 私は本当にあなたを愛してるの!」
ラズリは触腕に締め付けられながらも、ルブラを抱きしめようと必死に身動いだ。
「……違わねえ。お前は俺を愛していない。眷属の骨で俺を殺した、それが答えだろ? 天空神として、俺を受け入れる訳にはいかなかったんだろ……」
「違うってば! お願いよ、話を聞いて! 傷付けてごめんなさい、私はルブラのことを――」
『あああああもう、うざってえなあクソ女!! お前、どこまで俺を苦しめれば気が済むんだよ!? 本当に卑怯な女だ!!』
ルブラの激昂が、ラズリの鼓膜をびりびりと震わせる。
唇を強く噛み締め、潤む目を必死に吊り上げるルブラが痛々しくて仕方ない。ラズリはもどかしさに涙を流しながらルブラを見つめた。
『……はっ。やっぱり愛なんて下らねえものじゃねえか。そんなものよりも余程憎悪の方が信頼できるぜ! ……憎め。俺を憎めよ、ラズリ。心の底から俺を憎め! 忌み嫌え! 俺への憎悪に狂ってくれ! 狂って、狂って、俺と同じところまで堕ちてしまえ!!』
憎まれたくなかった。
嫌われたくなかった。
でもラズリの愛が得られないなら、代わりに憎悪が欲しい。
この身を焼き尽くすほどの強烈な憎悪が欲しい。憎んで憎んで憎んで、自分への憎しみに振り回されておかしくなってほしい。憎しみによって、自分の存在を心に深く植え付けたい。
無理やり肉を食わせた俺を憎め。
無理やり身体を暴いた俺を憎め。
お前を殺そうとした俺を憎め。お前を愛してしまった俺を憎め。
憎め。憎め。俺を愛さないなら憎んでくれよ。
俺はお前の一番になりたいんだ。何よりも誰よりも、この俺を一番に憎め!
それでこそ胸に抱えるこの愛と釣り合いが取れる。
それでこそ俺の心が慰められる。
それでこそ、救われる……。
『……また徹底的に犯してやるよ、ラズリ。悍ましい姿でお前のことを犯してやる。俺はどんな姿にも化けることができるんだ。例えばこんな風に元の姿に近づけることもできるし――』
ルブラの顔が異形に変化する。顎から無数の触手を髭のように伸ばした、緑色の皮膚を持つ怪物。
『――こんな風に蛸の姿になることもできる』
ラズリが目を瞬く間に、ルブラは蛸に姿を変えた。
赤褐色の大蛸。六つの金眼を持つ大蛸。
ラズリは自分よりも遥かに大きな蛸を前に息を呑んだ。
『ふふっ、くくくくくく……。怖いか? 痛めつけられると思ったか? はは、別にお前を喰ったりはしねえよ。……今日はこの姿でお前を犯してやる。俺はこの姿に化けるのが気に入ってんだ。足が多いと色々なことができるからなあ? 人間の男には決して与えられない、至上の快楽をくれてやる……』
首には触手が巻き付いている。そして胸の上にも、ぬめる蛸足をぴとりとくっつけられる。自分の命を握るようなルブラの真似に、ラズリは弱々しい懇願の眼差しを彼に向けた。
『俺にされるがままだなあ、ラズリ。もうお前は何も出来ない。決して俺には敵わない』
大蛸の目には病的な愛が宿っている。
獲物の女を隅々まで食い尽くさんとする、苛烈な愛が。
『ここは海底都市、人間じゃ決して行き着けない海の底。今度こそ助けは来ないぜ、ラズリ! あはははっ、ははははははははっっ!!』
ラズリの下腹に刻まれた紋が妖しく光る。
自分の奥底から抗いがたい色欲が込み上げてきて、ラズリは困惑の嬌声を上げた。
「ひ、ううっ!? あつっ、あつい! んあああぁぁぁぁっ………!! はあっ、は、る、ぶら……! わ、たしに、何をしたの……!? たこ、が……あつい、の!」
身体が熱い。疼く。
全身の感覚が、酷く鋭敏になっている。
ラズリの肌に咲いた赤い痕を優しく摩り、ルブラはじっと下腹の蛸を見つめた。
『ラズリ、それはお前への呪いだ。お前の身体を変質させてやる。……お前は天の光が届かない、この暗い暗い海底にずっと閉じ込められるんだ。ふふひ。ひひひひひひひっ……!』
悪夢を見せて、その清らかな魂を狂気の海に沈ませた。
強靭な精神を侵蝕し、少しずつ正気を失わせた。
魂を喚びよせ、存分にその愛おしい身体を嬲った。
下僕を差し向け、蛸を食わせ、その肉体を構成する組織を作り変えた。
そうして、その身体に巡る青い霊気を全てかき消してやった!
……ああ、美しい。
もはやこの女はどこもかしこも、俺に蝕まれた。
準備は整った。
この女を隷属させてやる時が来た!
『もうお前は天空神などではない、ただの弱々しい女だ。……さあ、宴の時間だ。俺を存分に愉しませろ、ラズリ……』
そうしてラズリは、無数の蛸足に飲み込まれた。
*
ぬるぬる、ずりゅずりゅ。
執拗に摩擦され何度も絶頂を迎えさせられた秘部を、また太い蛸足で激しく擦られている。
「ふあああッ、ああっ! やあっ、も、またこすられてっ……いくぅぅっ! ――――んあっ、あ、あああああぁぁぁぁッ……!」
触腕が前後に動く度、どろどろとした粘液とラズリの愛液が混じり合い下品な水音が響く。ぐちゅぐちゅ、ずるんずるん、にゅぷにゅぷ……。脳まで侵されるようなその水音に、ラズリの快感がどんどん増幅する。
ああ、自分は今酷いことをされている。
肉の壁に埋め込まれ、粘液まみれにされ、何の抵抗もできないままルブラに嬲られている……。
赤褐色の肉に埋め尽くされた部屋は酷く狂気的だ。
天井から、床から、壁から、粘液塗れの触手が幾つも伸びている。
人間の男根そっくりの触手。あるいは幾つもの瘤やいぼを備えたもの。先端がぱっくりと開いた触手や、最奥を抉るのに適した螺旋状のもの、そして二又に分かれた触手や、白濁を吐き出す変わった触手もある。
姿かたちも、大きさも種類も様々だが、いずれも女を嬲るために用意されたことは解った。
ラズリの心に、被虐的な期待が込み上げる。
自分は徹底的に犯されるのだ。
あの触手たちに陵辱され、めちゃめちゃになるまで輪姦される。
……ぞくぞくしてしまう。
『ひひ、いい顔するじゃねえか。ラズリちゃんよぉ……俺の肉を見て興奮したか?』
浅ましいこの姿を、全部ルブラに見られてしまっている。六つの金眼に凝視され、ラズリは羞恥にぎゅっと目を瞑った。
『この部屋はお前を可愛がるために造ったんだぜ、ラズリ……。この部屋自体が俺なんだ。この蛸足とあの触手で、お前をとろとろに蕩かしてやるからなあ! ひゃははははっ!』
蛸足は力強くも軟らかい。どろどろとした粘液を纏ったその足で秘部を擦られると、まるで大きな舌に舐め回されているかのような感覚がする。
ルブラに監禁され、一日中陰核を虐められ続けた被虐の快楽を思い出し、ラズリはまた呆気なく達してしまった。
「はあぁ、あっまた、またい、くっ……! ひいんっ! いったばかりなのにっ、もういや、ふああっ――――んうううぅぅっ……!」
蛸足の動きは止まらない。終わりの見えない快楽地獄に、ラズリは力無く泣き声を上げた。
擦られているだけならばまだ良かった。蛸の吸盤が巧みに形を変えたり、くぽくぽと開閉したりして、ラズリの弱点に吸い付いてくるのだ。
膣口に吸い付き愛液を啜られる。陰核を吸引され、ふるふると揺り動かされる。すぼまった後ろの孔をちゅうちゅうと吸われる。
達しすぎて秘部の痙攣が止まらない。下半身がばらばらになってしまったかのように、全く力を入れることができない。開脚状態で腫れ上がった陰核を優しく吸われると、何が何だか分からなくなってしまう。ラズリは快楽から来る目眩の中、切羽詰まった嬌声を上げた。
「んひぃっ!? んやあぁぁあぁッ!!」
快楽を与えられているのは秘部だけではない。
乳輪を粘液塗れの大きな吸盤に吸われ、乳首を弾かれたり、こりこりと潰されたりする。触腕が男の手のように蠢いて、胸を下から掬い上げるように揉み込んでくる。
肉の壁の中で四肢を舐めしゃぶられ、足の裏をぐねぐねと動く触手にくすぐられる。壁にくっつけられた背中と尻を、何かでべろべろと舐め回されている……。
「はあ……あ、ああっ……あ、あああぁぁ……ん、ひあっ……」
いつまでも絶頂の余韻が収まらない。
気持ちよすぎて、涙や涎がぼたぼたと流れ出てしまう。
滴る体液をルブラの蛸足に一滴残らず掬い取られた後、ラズリはずるりと肉の壁から引き摺り出された。
軟らかな床に優しく横たえられる。
どろどろとした床に這い蹲りながら、ラズリはひくひくと全身を震わせた。
身体がおかしい。淫欲が消えない。
最奥がひりついて、絶えずきゅうきゅうと収縮している。
ルブラが欲しい。欲しい。欲しくて堪らない。あの男の寵愛を受けられるのなら、世界なんてどうでもいいと思ってしまうくらいに身体の疼きが止まらない。欲しい欲しい、ルブラのことが、心の底から欲しい……。
「はあっ、はあ、あ、う、あぁぁ……? な、にこれぇ……!?」
自分を本能的に守る、最後の砦が崩れたような気がする……。
『……ふひひ、やっと変質しやがったか』
ラズリは逞しい触腕に全身を持ち上げられた。
宙吊りにされ、腕を縛られ、再び足を大きく開かされる。
ルブラはけたけたと笑いながら、ラズリの下腹の紋を愛おしそうに摩った。
『その紋は隷属の徴だ。……ラズリ、お前はもう陸じゃ生きられねえぞ』
「……ど、ういうこと?」
『蛸を大量に食べた奴が……俺に犯された奴が、無事でいられると思ってんのかよ。お前の肉はもう、俺の肉にすっかり差し替わってんだ! 俺の霊気を撒き散らかす奴が陸で暮らしてみろ、お前とすれ違った奴はみーんな魚人になっちまうだろうなあ。お前の家族も、あの忌々しい男もだ! あはははっ、あははははは!!』
蛸足をびたびたと床に打ち付けながら、ルブラは六つの眼を細めた。
『らーずりちゃん。お前は俺の傍でしか生きられねえんだよ。水神の霊気を満たしてもらわなきゃ苦しむような可愛い可愛い身体になっちまったんだ! お前はここ! ずっとこの肉の部屋で俺といちゃいちゃしながら暮らすんだよおぉぉぉお!! ……ああ、逃げようだなんて思うなよ。外に出たら水圧であっという間に潰れちまうからなあ!』
『空には無量大数の水がある。俺が合図すれば、お前が好きな山も何もかも水底に沈む! 水と狂気に彩られし華やかなる世界がとうとう訪れるんだ! 星辰は俺に味方した、天空神は俺の手に堕ちた! 俺の時代だ!! ……ふひひひっ! あははっ、ふふひひっ。ひひひひひっ! あはははああははあはははっっっっ!!! らずり、らずりぃぃぃぃぃ………! 海ってのはいいもんだぜ? ずっとずっと一緒に暮らしていこうなあ!』
ルブラの狂喜が部屋中に轟き、反響する。
金眼に悲しみと喜びを宿しながら、ルブラは更にラズリを嬲ろうと襲いかかった。
*
吊り下げられた状態で、力の入らない身体の最奥を激しく穿たれる。ラズリは胸を淫らに揺らしながら、抗いようのない快楽と力強い律動を味わった。
「んひっ、はふぅっ、はあっ、あっ、あっ、あっ、うあああっ、あぁんっ! あ、ああっ! あっ! ッ――――ああああああっ!」
解されきった膣と後孔を、二本の太い触手でずぶずぶに犯されている。人間の男根を模した逞しい触腕が、蕩けきった最奥をたんたんと一定のリズムで叩いてくる。穴を隅々までみっちりと埋められ、泣きどころを容赦なく擦られる肉の悦びに、ラズリはがくがくと足を震わせながら達した。
左右に擦られればどぷどぷと愛液を吐き出してしまう天井を巧みにくすぐられる。陰核の裏側を優しく押さえつけられる。子宮口を吸盤にちゅうちゅうと吸われる。
触手が出し入れされるたびに、ラズリの秘部からびしゃびしゃと潮が飛び出す。それは泡立った愛液と共に滴り落ち、ルブラの身体を濡らしていった。
「はひっ、いくっ、い、いくうぅぅぅ! いっ、もういやあっ! とまってよお! あっまたいくっ、だめ、だめだめっ……はあっ、や、ふああああぁぁぁぁッ!! くうっ! んひっ……はぉっ、おっ、おかしくなっちゃ……はあんっ、ああああああああああっ!」
一突きごとに甘い痺れが襲い来る。達するのが止まらない。力が入らなくて、媚びるような鼻にかかった声を上げてしまう……。
ルブラはラズリの恥辱に塗れた姿を存分に愉しみながら、彼女の最奥に膨れ上がった触手の先端を押し付けた。
『はあっ、はあっ、ああっ、いい……。いいぜラズリ、愛しい俺のラズリ……! お前の中は本当に気持ちがいい。どちらの穴も最高だ! ほおら、もっとずりずり擦ってやるからよ、また深くイっちまいな……!』
「ふぅぅっ!? ああっ、あっ、んああああっ! 突かないでっ、もうつかないれよぉぉ……。ふああっ、あ、はああああっっ! あ、ひっ!? や、やだっ! ……なんか、びくびくしてっ――」
自分の穴を犯す太い触手が、どくどくと脈打ち暴れまわる。ラズリは射精を促すかのようなその震えに、どくりと胸を跳ねさせた。
「あ、ああぁぁ……! 出さ、れちゃ……!」
触手の先端から大量の白濁が吐き出される。媚毒に塗れた精液を塗りつけるように触腕を動かされる。吸盤に吸い付かれ、体液を啜られる。
奥を満たす熱い奔流に、ラズリもまた引きずられる形で激しく絶頂を迎えた。
「んはあああああぁぁぁ……。い、いいっ、す、ごおぉ……もうやっ、あふれちゃ、あっ、あっ、あああああああっ、わたし、いくッ、いくいくっ! いっ、はあああッ、あ、あああああああっ!」
『ラズリ、ラズリ、可愛いなあラズリ……。俺の精を受け止めてくれ、たくさんたくさん卵を産んでくれ! 海を、俺たちの子供で満たしてやろうな……』
ルブラの精を飲み込む度、下腹に刻まれた隷属の徴が光る。散々気持ちよくさせられたのに、まだ足りない。もっともっと欲しい。
ラズリは指に絡みつく触腕の先端を握りしめながら、自分がすっかり変質してしまったことを思い知った。
*
何時間経っただろうか。
ラズリは白濁に汚れた床に転がされながら、数多の触手に輪姦され続けていた。
「ふッ、ひぐっ、う、うああっ……あ、あっ、あああぁぁぁ……」
泣き叫ぶ体力はもうない。達しすぎて頭がくらくらするのに、下半身の感覚はどんどんと研ぎ澄まされていく。膣も、後ろの穴も気持ちがいい。ずっとこうして自分の内を埋められていたい。自分をここまで可愛がってくれる触手たちが、ルブラのことがとても愛おしい……。
『おいラズリ、呆けてねえで答えろって。どれが一番いいんだ?』
無数の触手がラズリを取り囲んでいる。
人間の男根によく似た触手。蛸の足そっくりの触手。幾つもの瘤やいぼを備えた触手。先端がぱっくりと開き、中で小さな突起が蠢く吸引型の触手。最奥を抉るのに適した螺旋状の触手。二又に分かれ、突きこまれる度に陰核も刺激される触手。媚毒を含んだ白濁を吐き出す触手。
ルブラはそれらでラズリを犯し抜き、どれが一番気持ちよかったかと尋ねるのだった。
『お前のために色んな形を用意してやったんだぜ? お前が気に入ったやつでたくさん可愛がってやるからさ、早く答えろってば』
「あ、あああっ……ふあ、あっ、あっ、はあああんっ……」
『ほらほら、喘いでねえでさっさと答えろよ。早く言わないともう一周するぜ? ふひひひひっ、……ひひ! 次はどれでお前の奥を突いてやろうかなあ? 楽しいなあラズリ! あはははは! 狂え、俺を憎め、早く壊れろ! ラズリぃぃぃぃ!!』
「……る、ぶら……」
ラズリは快楽に支配されながらも、ルブラに向かって手を伸ばした。
「……にく、まないよ……どんなこと、されたって……」
ルブラの地獄は終わらない。
愛が受け入れられなかった苦痛に、彼の心は揺れ続けている。
彼を救えるのは私だけだ。
私はあなたを救うために、あなたに救われるために海へ向かった。
「わたし、は……あなたのことが、すきだから……」
もう拒絶しない。逃げない。
憎しみも愛も何もかも、あなたからの感情はすべて受け止めると決めたから。
「……ルブラ、愛してるわ、ルブラ…………」
蛸の軟らかい頭にぴたりと寄り添い、ラズリは腕いっぱいにルブラを抱きしめた。
両手を上に持ち上げられ、足を大きく開かされた状態で拘束されている。ぴちゃぴちゃ、にゅぷにゅぷ。粘り気のある水音と共に、強い快楽をただ享受することしかできない……。
「ふぐっ、んっ、んぅ、んんんむぅぅっ……! ふうっ、は、あぁっ……」
ラズリはルブラから執拗に口付けをされていた。
両頬を大きな手でがっしりと掴まれながら、肉厚な舌で無理やり唇をこじ開けられる。奥に引っ込めた舌を無理やり横から掬いあげられ、舌根から先端までを柔らかくなぞられる。敏感な上顎を左右に舐められ、思わず流れ込んでくる唾液を嚥下してしまう。
「ん、ふうっ……る、ぶらぁ……んは、ん、んむぅっ……!」
この男のキスはいつもそうだ。長くて苦しいのに、依存性がある。もっともっとしてほしいと望んでしまう。舌を絡め合っているだけなのに、まるで頭の中までかき回されているかのような気分になって、そのまま蕩けてしまいそうになる。耐え難い。こんな刺激を与えられてはまたおかしくなってしまう。
ラズリは正気を失うことを怖れながらも、久しぶりに味わう愛しい男の体温に涙を溢れさせた。世界の終焉がすぐそこに近づいているというのに、焦がれた男にもう一度会えたことが心の底から嬉しかった。
(会いたかった。ずっと欲しかったの、あなたが欲しかったのよ。ルブラ……)
肉の壁に埋め込まれた四肢は、壁の中で蠢く幾つもの触手になぞりあげられている。指の一本一本をしゃぶられ、壁にくっつけられている臀部や背中、露わになった脇をぬめる蛸足でくすぐられる。粘液塗れの軟らかい触手が、敏感な足の裏を舐めるように這い回る。
吸盤に胸の先端をちゅうちゅうと吸われ、うねる触腕に股間をずるずると擦られる。蛸の足が動く度に陰唇をめくりあげられ、無理やり愛液を掻き出されてしまう。
吸盤の引っ掛かりに包皮ごと陰核を弾かれ、芯に刺激を与えるよう執拗に揉み込まれる。ルブラの下半身から伸びるもうひとつの蛸足が、痙攣する秘部を焦らすように後孔から膣口までをゆっくりとなぞりあげる。
「あっ、あ、んあぁぁ……はあっ、んむ、あ、ひ、ぅっ……!」
もう何度絶頂しただろうか。
ラズリは快楽に霞む目で、ルブラに許しを請う視線を送った。
思い切り声を出して何とか快楽を外に逃したいのに、拘束され口を塞がれるせいで、暴発する快感を全て受け止めてしまう……。
「んはぁっ、んっんっ! ぷはぁっ……! や、だめっ……も、い、っく! いっちゃ……あっ! あああぁぁぁぁ……」
ルブラの手によって作り変えられた敏感な身体が、執拗な責めの手に抗えるはずもない。吸盤に吸い付かれた陰核から、またすぐに鋭い絶頂感が込み上げる。その刺激は痙攣する膣口や、触手に舐め潰される乳首にまで次々と伝播していく。大きな嬌声を上げながら、ラズリはひたすら甘い極みの余韻に浸った。
自分を喰らわんとするかのような熱烈なキスと与えられる快楽に、ただ荒い息を吐くことしかできない。
身体が熱い。気持ちいい。気持ちよすぎて情けなく喘いでしまう。
これでは、ルブラとまともに話すことはできない……。
ルブラは金の目を見開き、瞬きもせずにラズリを見つめた。
弱々しい声を上げる女を無表情で苛み、その後頭部に手を回し口蓋の更に奥を犯そうとする。ラズリを窒息させるかのような激しい口吻を繰り返しながらも、ルブラは人外の声で彼女への恨み言を紡ぎ続けた。
笛のような音が、ラズリの頭を埋め尽くす。
『なぜ逃げた。なぜ俺を殺した! なぜ、なぜ、なぜ? なぜ俺を受け入れてくれなかった? あんなに好きだと伝えたのに。お前の心を得るために手を尽くしたのに! お前は俺の感情の一片すら掬い取ってくれなかったな……』
『お前が言った愛の言葉に、俺は心から縋っちまった……。それが嘘だって気が付いた時、俺がどんな気持ちだったか分かるか? なあラズリ、馬鹿なラズリ……。お前は酷い女だ。逃げるためにあんな嘘を吐くなんて、本当に残酷な女だ! 惨めな俺を見て嗤ってんだろ? 神ともあろう者がなんて無様なんだって! ああ、そうだ。俺はお前のせいでめちゃくちゃになっちまった。お前のせいで、俺は同族からの笑い物だ!』
『どんなにこの気持ちを伝えても、お前は何も返してくれなかった。俺の何がいけなかった? 何を変えればよかったんだ? どうして俺の手を取ってくれなかったんだ!? 分からねえよ、ラズリ!』
『許さねえ、許さねえ。許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえッ!! その魂を以て俺に償え。永遠に、永遠に、永遠に永遠に永遠に。俺の気が済むまで、ずっとだ!! 辛い、怖い、苦しい、切ない、こんな思いをさせるお前をいっそ殺してやりたい……』
くぐもった笛のような音は、確かな声としてラズリの耳に入っていく。深い絶望と怨嗟が籠もったその声を聞いていられず、ラズリは目を潤ませた。
(……ルブラ、ごめんなさい)
自分はここまでの傷を彼に負わせてしまったのだ。
切なくて苦しくて仕方がない。
ルブラを抱きしめて心から愛していると伝えたいのに、四肢を拘束されているせいでそれができない。必死に身動ぐラズリを見下ろし、ルブラは昏い目で笑った。
「素直じゃねえな。大人しく俺に可愛がられていればいいものを……。この期に及んで、まだ逃げようとしてんのかよ?」
「んあっ、はあっ、はぁ……ち、がうわ。あなたと、はなしたくて……」
「話す? ……はっ、馬鹿言え。何について話そうってんだ? 話す機会なんて、今までにたくさんあっただろうが。俺の懇願を打ち捨てて逃げたのはお前だろ! なのに今更話そうだって? 勝手なことを言ってんじゃねえぞ」
ルブラは狂気の籠もった視線でラズリを射抜いた。
苦しそうに荒い息を吐く彼女を見て、酷薄さの滲む笑みを浮かべる。温かさのひとつもないその表情に、ラズリはざっと顔を強張らせた。
「あはははははっ! 自分のせいで世界が滅ぼされたくなくて、何とか俺を説得しようとしてんだろ? 正義感の強いラズリちゃんらしいぜ! ははっ! あは、はははははは……。無駄だ。どんなに喚いたって無駄だぜラズリ……。もうお前の言うことは聞かねえ。お前が何を言おうと、関係ない……」
金の瞳が、傷付いたようにゆらゆらと揺れている。
ルブラはわざとふざけた調子で笑った後、憎悪が滲む表情でラズリの青い目を睨みつけた。
「海で眠りながら考えたんだ、神を殺した女の正体を! そんなことできる奴はあいつしかいない。……お前、天空神だろ。俺を海に封じた憎きあいつなんだろ!?」
――ラズリくん、天空神の化身である君はxxxxxの敵だ。恨みあり余る敵なのだぞ!
「……っ」
ルブラの瞳に渦巻く強烈な怨毒に思わず息を呑む。
ああ、マーシュの言う通りだ。この男は酷く自分を憎んでいる……。
顔を逸らそうとするラズリの顎を掴み、ルブラは低い声で彼女を問い詰めた。
「あはははっ……。あははははははははは! その反応、当たりだな! 何だお前、自分の正体を知って島にやって来たのか? その上で俺を弄んだのかよ!?」
「ちっ、ちがう……! わたし、何も知らなかった! まーしゅ、隊長に言われて、はじめて知ったの……。信じて、お願い……!」
「っち。あの忌々しいクソ野郎がお前を差し向けたって訳か。あの男、やっぱり血の海に沈めてやる必要があるらしい! ……でもまあ、知っていようが知っていまいが、お前が俺の怨敵ってことには変わりねえ。ははっ! 俺の復活に合わせてお前がこの世界に現れるとはな。これも星の巡り合わせか?」
ルブラは皮肉げに唇を歪め、ラズリの耳元で囁いた。
「ただの人間にしちゃ随分と強い霊気を持ってると思ったんだ。どんなに狂気に浸しても変貌しねえし、青空を見りゃあっという間に正気を取り戻す。……何よりもその目の色。その空みてえな目の色が、憎き天空神の色にそっくりだと思った」
聞いた者をくらくらと酔わせるような人外の声で、ルブラはラズリの耳に怨念を注いだ。
『俺は海に封じられる前、お前に深い深い傷を負わせてやった。下僕どもからお前が空に散ったと聞いた時は、すっげえすっきりしたぜ! ……だがな、お前への恨みは決して消えなかった。華々しい新世界の到来を阻んだお前のことは、何度殺しても殺し足りないほど憎かった!』
『俺はお前を恨みながら、何十万年も海の底で眠った。星揃う暁には地球の全てを支配すると、それだけを望みながら目覚めの時を待ち続けた。……いつも夢に見るのはお前の敗北だった。お前を穢し、堕とし、弄び、隷属させてやる想像をして自分を慰めた!』
『……くひひひっ、ひひ、ひひひひひっ!! あああああっ、傑作だ! 本っ当に傑作だ!! あれだけ憎み続けた天空の神が、こんな弱っちい人間の雌になって俺の前に現れるんだからよ! お前を如何にも甚振ってやれと言わんばかりの巡り合わせじゃねえか! なあ!? あははっ、どんな方法でお前を苦しめてやろうか!? 積もり積もった恨みを全部全部ぶつけてやるからな、覚悟しろよ天空神があぁぁぁ……!!』
ルブラから向けられる憎悪に心が揺れ、拉げ、決壊する。
ラズリは青い目からぼろぼろと涙を溢れさせ、そんなに私が憎いかと呟いた。
『憎いだってええぇぇぇええ!? 本気で言ってんのかよ!? あはははははははははははっっ、笑わせるぜ!! ……ああ、憎い。憎くて堪らねえよ! ……だがな、神だったお前よりも、今のお前の方がずっとずっと憎い!!』
ルブラの蛸足がラズリの首に巻き付く。
柔らかく頸部を圧迫され、ラズリは恐怖と悲しみに目を見開いた。
『俺は最初、お前のことを天空神の眷属だと思っていた。復活を邪魔した人間の女をすぐに狂死させようとした。だがお前は人間のくせに、俺の視線に抗った。……だからやり方を変えることにしたんだ。ただお前を殺してやるだけではつまらない。愛の言葉を囁いてお前を籠絡し、その魂を穢し、肉体を乗っ取って鳥どもを殺し回るつもりだった! 天空神へ復讐をしてやるつもりだった! 矮小な人間の雌なんか、虫けらと変わらない下等な存在だと思っていた……』
「ん、ひぅっ……」
ラズリの流す涙が、ルブラの舌に一滴残らず舐め取られていく。彼はラズリの滑らかな頬をねっとりと舐め回し、女の強張った表情を愉しんだ。
『何度も何度もお前を堕とそうとした。目にたっぷり狂気を込めて、その魂を呪ってやろうとした! 天のような色の目が気に入らなかった。青い目を濁らせてどろどろに穢してやるつもりだった! 愛を、人間の営みを、お前の存在を、心の底から馬鹿らしいと嘲っていた! なのに……なのに、なのに!』
ラズリは強く抱きしめられた。
ルブラの下半身から伸びる蛸足が全身に絡みつき、ラズリはとうとう身動ぐことさえできなくなってしまった。
ルブラの太い腕が小刻みに震える。
彼は泣きそうな声を出しながらラズリにしがみついた。
「お前と過ごすうちに俺はおかしくなっちまった……! お前といると、湯に浸かったみてえに胸があったかくなった。不自然に脈打って、内側がこそばゆくなったり、頭がぼんやりしたり、顔に熱が集まったりした! 訳の分からねえ変化なのに、不思議と嫌な気分にはならなかったんだ!」
「……るぶ、ら?」
「胸が変になる理由を突き止めたくて、毎日お前に真珠を渡した。海から得た知識を使って料理を作った。山の方が好きだなんて言うお前が気に入らなくて、必死に海の魅力を伝えた……」
真珠を星に喩えて笑う、ラズリのきらきらとした笑顔が好きだった。
共に浜辺を歩く穏やかな時間が好きだった。
潮風に靡く黒髪を見るのが好きだった。
彼女が纏う熱帯の花の香りが好きだった。
ラズリとの生活は宝物だった。
憎しみと嘲りに満ちた闇の心に、初めて幸福というものが宿ったのだ。
――ルブラがいたら寂しくないわね。あなたがいてくれて良かったわ。
そう言ってもらえて嬉しかった。
俺も同じだ。ラズリがいたら寂しくない。お前に出逢えて良かった……。
「やがてはっきりと気が付いたんだ。俺は、お前に惹かれてるんだって! ……認めたくなかった。神である俺が人間の雌に心奪われただなんて、そんなの許せなかった! なのにこのザマだ! お前のせいだ。お前があの時、俺の名前を呼んだからっ……!」
窮地に立たされた絶体絶命の時において、自分を呼んでくれたことが嬉しかった。
無意識のうちに助けを求めてくれたことが嬉しかった。
この女をずっとずっと守りたい。
何を捧げても、何を賭しても傍にいたい。
世界なんてどうでもよかった。
ラズリのために生きること、それが一番の望みだった。
「お前から頼られたり、甘えられたりすると心が満たされた。もっと縋ってほしい、笑顔を見せてほしい、傍にいたい……そう思うようになった。俺はもう、お前の身体を乗っ取ろうとは思っていなかった。ただひたすらにお前が愛おしかったんだ!」
夫婦になりたかった。
番として迎えたかった。
ずっとずっと一緒にいてほしかった。
おかしくなるほどラズリを愛していた。彼女に心から受け入れられて、共に歩む権利が欲しかった。
隣でラズリが笑ってくれることこそ、自分の幸福だった。
「お前のことが解らなかった。俺に縋ってくるくせに、どうして俺のものになってくれないのか解らなかった! 何度も何度も海に潜って、骨から人の営みを学んだ。できるだけお前に優しくあろうとした! でもお前は俺と目を合わせてくれなくなった。……話そうとしたって、手を振り解いて逃げたよな?」
魂を削りながら、必死に胸に抱える愛を伝え続けたのに。
なのにラズリは清らかな目のまま自分を遠ざけた。自分から離れていくことが、堪らなく怖かった!
「……はは。どうしたら良かったんだろうな。俺はきっと、ずっと前から選択を誤っちまったんだ……」
どうしたら信頼してもらえたのか。
どうしたら自分を受け入れてもらえたのか。
俺が人間じゃないから? 俺が水神だったから?
何がいけなかったんだ? 解らない。もがけばもがくほど、この女は自分を拒絶した。
寂しい、苦しい。辛い、助けてほしい。
どうか嫌わないでと、何度心の中で懇願したか!
「……。でも、もういいんだ。いくら憎まれても、嫌われても……」
――大好き。ルブラ、私もあなたのことを愛してるわ。
嘘吐き。
嘘吐き嘘吐き嘘吐き。嘘吐き!
逃げるお前に向けて、俺がどんな気持ちで縋ったのか分かるか!?
嘘吐き女。お前は最低だ。
あんなに甘い顔で愛を囁かなくたっていいじゃねえか。
だから俺はお前の愛を信じてしまったんだ。
馬鹿らしい。哀れだ。惨めだ。
あんな酷い嘘を吐かれるくらいなら、もう愛なんてものは求めない!!
「……もう、何もかも手遅れだから」
ルブラはラズリを拘束する触腕に力を込めた。
苦しげな呻き声が上がる。込み上げる悲しみを我慢し、ルブラは歪に微笑んだ。
「ラズリ。俺の正体を本能的に知ってたんだろ? だからきっと、俺を拒絶し続けたんだ……。俺が自分の敵だって気が付いてたんだろ……」
「ん、ぐうっ……ひ、ち、がっ……!」
「敵。そうだ、敵……。俺たちの関係はそれが一番しっくり来るよなあ、ラズリ? だから俺は、敵であるお前をずっと苦しめてやる。俺が感じた苦しみを、全てお前に味わわせてやる! お前は俺の奴隷だ、そして俺を狂わせた罪人だ。お前はこの肉の牢獄の中で、俺と共に永遠を過ごすんだ! その肉体を、その魂を穢し尽くしてやる! 俺が狂ったように、お前も狂っておかしくなってしまえばいい!」
美しい金の瞳が、狂気に眩く輝く。
「俺は選択を間違えた。でも、間違えたのはお前もだ。……愛してるだなんて、酷い嘘を吐きやがって」
「違うわ、ルブラっ! 私は本当にあなたを愛してるの!」
ラズリは触腕に締め付けられながらも、ルブラを抱きしめようと必死に身動いだ。
「……違わねえ。お前は俺を愛していない。眷属の骨で俺を殺した、それが答えだろ? 天空神として、俺を受け入れる訳にはいかなかったんだろ……」
「違うってば! お願いよ、話を聞いて! 傷付けてごめんなさい、私はルブラのことを――」
『あああああもう、うざってえなあクソ女!! お前、どこまで俺を苦しめれば気が済むんだよ!? 本当に卑怯な女だ!!』
ルブラの激昂が、ラズリの鼓膜をびりびりと震わせる。
唇を強く噛み締め、潤む目を必死に吊り上げるルブラが痛々しくて仕方ない。ラズリはもどかしさに涙を流しながらルブラを見つめた。
『……はっ。やっぱり愛なんて下らねえものじゃねえか。そんなものよりも余程憎悪の方が信頼できるぜ! ……憎め。俺を憎めよ、ラズリ。心の底から俺を憎め! 忌み嫌え! 俺への憎悪に狂ってくれ! 狂って、狂って、俺と同じところまで堕ちてしまえ!!』
憎まれたくなかった。
嫌われたくなかった。
でもラズリの愛が得られないなら、代わりに憎悪が欲しい。
この身を焼き尽くすほどの強烈な憎悪が欲しい。憎んで憎んで憎んで、自分への憎しみに振り回されておかしくなってほしい。憎しみによって、自分の存在を心に深く植え付けたい。
無理やり肉を食わせた俺を憎め。
無理やり身体を暴いた俺を憎め。
お前を殺そうとした俺を憎め。お前を愛してしまった俺を憎め。
憎め。憎め。俺を愛さないなら憎んでくれよ。
俺はお前の一番になりたいんだ。何よりも誰よりも、この俺を一番に憎め!
それでこそ胸に抱えるこの愛と釣り合いが取れる。
それでこそ俺の心が慰められる。
それでこそ、救われる……。
『……また徹底的に犯してやるよ、ラズリ。悍ましい姿でお前のことを犯してやる。俺はどんな姿にも化けることができるんだ。例えばこんな風に元の姿に近づけることもできるし――』
ルブラの顔が異形に変化する。顎から無数の触手を髭のように伸ばした、緑色の皮膚を持つ怪物。
『――こんな風に蛸の姿になることもできる』
ラズリが目を瞬く間に、ルブラは蛸に姿を変えた。
赤褐色の大蛸。六つの金眼を持つ大蛸。
ラズリは自分よりも遥かに大きな蛸を前に息を呑んだ。
『ふふっ、くくくくくく……。怖いか? 痛めつけられると思ったか? はは、別にお前を喰ったりはしねえよ。……今日はこの姿でお前を犯してやる。俺はこの姿に化けるのが気に入ってんだ。足が多いと色々なことができるからなあ? 人間の男には決して与えられない、至上の快楽をくれてやる……』
首には触手が巻き付いている。そして胸の上にも、ぬめる蛸足をぴとりとくっつけられる。自分の命を握るようなルブラの真似に、ラズリは弱々しい懇願の眼差しを彼に向けた。
『俺にされるがままだなあ、ラズリ。もうお前は何も出来ない。決して俺には敵わない』
大蛸の目には病的な愛が宿っている。
獲物の女を隅々まで食い尽くさんとする、苛烈な愛が。
『ここは海底都市、人間じゃ決して行き着けない海の底。今度こそ助けは来ないぜ、ラズリ! あはははっ、ははははははははっっ!!』
ラズリの下腹に刻まれた紋が妖しく光る。
自分の奥底から抗いがたい色欲が込み上げてきて、ラズリは困惑の嬌声を上げた。
「ひ、ううっ!? あつっ、あつい! んあああぁぁぁぁっ………!! はあっ、は、る、ぶら……! わ、たしに、何をしたの……!? たこ、が……あつい、の!」
身体が熱い。疼く。
全身の感覚が、酷く鋭敏になっている。
ラズリの肌に咲いた赤い痕を優しく摩り、ルブラはじっと下腹の蛸を見つめた。
『ラズリ、それはお前への呪いだ。お前の身体を変質させてやる。……お前は天の光が届かない、この暗い暗い海底にずっと閉じ込められるんだ。ふふひ。ひひひひひひひっ……!』
悪夢を見せて、その清らかな魂を狂気の海に沈ませた。
強靭な精神を侵蝕し、少しずつ正気を失わせた。
魂を喚びよせ、存分にその愛おしい身体を嬲った。
下僕を差し向け、蛸を食わせ、その肉体を構成する組織を作り変えた。
そうして、その身体に巡る青い霊気を全てかき消してやった!
……ああ、美しい。
もはやこの女はどこもかしこも、俺に蝕まれた。
準備は整った。
この女を隷属させてやる時が来た!
『もうお前は天空神などではない、ただの弱々しい女だ。……さあ、宴の時間だ。俺を存分に愉しませろ、ラズリ……』
そうしてラズリは、無数の蛸足に飲み込まれた。
*
ぬるぬる、ずりゅずりゅ。
執拗に摩擦され何度も絶頂を迎えさせられた秘部を、また太い蛸足で激しく擦られている。
「ふあああッ、ああっ! やあっ、も、またこすられてっ……いくぅぅっ! ――――んあっ、あ、あああああぁぁぁぁッ……!」
触腕が前後に動く度、どろどろとした粘液とラズリの愛液が混じり合い下品な水音が響く。ぐちゅぐちゅ、ずるんずるん、にゅぷにゅぷ……。脳まで侵されるようなその水音に、ラズリの快感がどんどん増幅する。
ああ、自分は今酷いことをされている。
肉の壁に埋め込まれ、粘液まみれにされ、何の抵抗もできないままルブラに嬲られている……。
赤褐色の肉に埋め尽くされた部屋は酷く狂気的だ。
天井から、床から、壁から、粘液塗れの触手が幾つも伸びている。
人間の男根そっくりの触手。あるいは幾つもの瘤やいぼを備えたもの。先端がぱっくりと開いた触手や、最奥を抉るのに適した螺旋状のもの、そして二又に分かれた触手や、白濁を吐き出す変わった触手もある。
姿かたちも、大きさも種類も様々だが、いずれも女を嬲るために用意されたことは解った。
ラズリの心に、被虐的な期待が込み上げる。
自分は徹底的に犯されるのだ。
あの触手たちに陵辱され、めちゃめちゃになるまで輪姦される。
……ぞくぞくしてしまう。
『ひひ、いい顔するじゃねえか。ラズリちゃんよぉ……俺の肉を見て興奮したか?』
浅ましいこの姿を、全部ルブラに見られてしまっている。六つの金眼に凝視され、ラズリは羞恥にぎゅっと目を瞑った。
『この部屋はお前を可愛がるために造ったんだぜ、ラズリ……。この部屋自体が俺なんだ。この蛸足とあの触手で、お前をとろとろに蕩かしてやるからなあ! ひゃははははっ!』
蛸足は力強くも軟らかい。どろどろとした粘液を纏ったその足で秘部を擦られると、まるで大きな舌に舐め回されているかのような感覚がする。
ルブラに監禁され、一日中陰核を虐められ続けた被虐の快楽を思い出し、ラズリはまた呆気なく達してしまった。
「はあぁ、あっまた、またい、くっ……! ひいんっ! いったばかりなのにっ、もういや、ふああっ――――んうううぅぅっ……!」
蛸足の動きは止まらない。終わりの見えない快楽地獄に、ラズリは力無く泣き声を上げた。
擦られているだけならばまだ良かった。蛸の吸盤が巧みに形を変えたり、くぽくぽと開閉したりして、ラズリの弱点に吸い付いてくるのだ。
膣口に吸い付き愛液を啜られる。陰核を吸引され、ふるふると揺り動かされる。すぼまった後ろの孔をちゅうちゅうと吸われる。
達しすぎて秘部の痙攣が止まらない。下半身がばらばらになってしまったかのように、全く力を入れることができない。開脚状態で腫れ上がった陰核を優しく吸われると、何が何だか分からなくなってしまう。ラズリは快楽から来る目眩の中、切羽詰まった嬌声を上げた。
「んひぃっ!? んやあぁぁあぁッ!!」
快楽を与えられているのは秘部だけではない。
乳輪を粘液塗れの大きな吸盤に吸われ、乳首を弾かれたり、こりこりと潰されたりする。触腕が男の手のように蠢いて、胸を下から掬い上げるように揉み込んでくる。
肉の壁の中で四肢を舐めしゃぶられ、足の裏をぐねぐねと動く触手にくすぐられる。壁にくっつけられた背中と尻を、何かでべろべろと舐め回されている……。
「はあ……あ、ああっ……あ、あああぁぁ……ん、ひあっ……」
いつまでも絶頂の余韻が収まらない。
気持ちよすぎて、涙や涎がぼたぼたと流れ出てしまう。
滴る体液をルブラの蛸足に一滴残らず掬い取られた後、ラズリはずるりと肉の壁から引き摺り出された。
軟らかな床に優しく横たえられる。
どろどろとした床に這い蹲りながら、ラズリはひくひくと全身を震わせた。
身体がおかしい。淫欲が消えない。
最奥がひりついて、絶えずきゅうきゅうと収縮している。
ルブラが欲しい。欲しい。欲しくて堪らない。あの男の寵愛を受けられるのなら、世界なんてどうでもいいと思ってしまうくらいに身体の疼きが止まらない。欲しい欲しい、ルブラのことが、心の底から欲しい……。
「はあっ、はあ、あ、う、あぁぁ……? な、にこれぇ……!?」
自分を本能的に守る、最後の砦が崩れたような気がする……。
『……ふひひ、やっと変質しやがったか』
ラズリは逞しい触腕に全身を持ち上げられた。
宙吊りにされ、腕を縛られ、再び足を大きく開かされる。
ルブラはけたけたと笑いながら、ラズリの下腹の紋を愛おしそうに摩った。
『その紋は隷属の徴だ。……ラズリ、お前はもう陸じゃ生きられねえぞ』
「……ど、ういうこと?」
『蛸を大量に食べた奴が……俺に犯された奴が、無事でいられると思ってんのかよ。お前の肉はもう、俺の肉にすっかり差し替わってんだ! 俺の霊気を撒き散らかす奴が陸で暮らしてみろ、お前とすれ違った奴はみーんな魚人になっちまうだろうなあ。お前の家族も、あの忌々しい男もだ! あはははっ、あははははは!!』
蛸足をびたびたと床に打ち付けながら、ルブラは六つの眼を細めた。
『らーずりちゃん。お前は俺の傍でしか生きられねえんだよ。水神の霊気を満たしてもらわなきゃ苦しむような可愛い可愛い身体になっちまったんだ! お前はここ! ずっとこの肉の部屋で俺といちゃいちゃしながら暮らすんだよおぉぉぉお!! ……ああ、逃げようだなんて思うなよ。外に出たら水圧であっという間に潰れちまうからなあ!』
『空には無量大数の水がある。俺が合図すれば、お前が好きな山も何もかも水底に沈む! 水と狂気に彩られし華やかなる世界がとうとう訪れるんだ! 星辰は俺に味方した、天空神は俺の手に堕ちた! 俺の時代だ!! ……ふひひひっ! あははっ、ふふひひっ。ひひひひひっ! あはははああははあはははっっっっ!!! らずり、らずりぃぃぃぃぃ………! 海ってのはいいもんだぜ? ずっとずっと一緒に暮らしていこうなあ!』
ルブラの狂喜が部屋中に轟き、反響する。
金眼に悲しみと喜びを宿しながら、ルブラは更にラズリを嬲ろうと襲いかかった。
*
吊り下げられた状態で、力の入らない身体の最奥を激しく穿たれる。ラズリは胸を淫らに揺らしながら、抗いようのない快楽と力強い律動を味わった。
「んひっ、はふぅっ、はあっ、あっ、あっ、あっ、うあああっ、あぁんっ! あ、ああっ! あっ! ッ――――ああああああっ!」
解されきった膣と後孔を、二本の太い触手でずぶずぶに犯されている。人間の男根を模した逞しい触腕が、蕩けきった最奥をたんたんと一定のリズムで叩いてくる。穴を隅々までみっちりと埋められ、泣きどころを容赦なく擦られる肉の悦びに、ラズリはがくがくと足を震わせながら達した。
左右に擦られればどぷどぷと愛液を吐き出してしまう天井を巧みにくすぐられる。陰核の裏側を優しく押さえつけられる。子宮口を吸盤にちゅうちゅうと吸われる。
触手が出し入れされるたびに、ラズリの秘部からびしゃびしゃと潮が飛び出す。それは泡立った愛液と共に滴り落ち、ルブラの身体を濡らしていった。
「はひっ、いくっ、い、いくうぅぅぅ! いっ、もういやあっ! とまってよお! あっまたいくっ、だめ、だめだめっ……はあっ、や、ふああああぁぁぁぁッ!! くうっ! んひっ……はぉっ、おっ、おかしくなっちゃ……はあんっ、ああああああああああっ!」
一突きごとに甘い痺れが襲い来る。達するのが止まらない。力が入らなくて、媚びるような鼻にかかった声を上げてしまう……。
ルブラはラズリの恥辱に塗れた姿を存分に愉しみながら、彼女の最奥に膨れ上がった触手の先端を押し付けた。
『はあっ、はあっ、ああっ、いい……。いいぜラズリ、愛しい俺のラズリ……! お前の中は本当に気持ちがいい。どちらの穴も最高だ! ほおら、もっとずりずり擦ってやるからよ、また深くイっちまいな……!』
「ふぅぅっ!? ああっ、あっ、んああああっ! 突かないでっ、もうつかないれよぉぉ……。ふああっ、あ、はああああっっ! あ、ひっ!? や、やだっ! ……なんか、びくびくしてっ――」
自分の穴を犯す太い触手が、どくどくと脈打ち暴れまわる。ラズリは射精を促すかのようなその震えに、どくりと胸を跳ねさせた。
「あ、ああぁぁ……! 出さ、れちゃ……!」
触手の先端から大量の白濁が吐き出される。媚毒に塗れた精液を塗りつけるように触腕を動かされる。吸盤に吸い付かれ、体液を啜られる。
奥を満たす熱い奔流に、ラズリもまた引きずられる形で激しく絶頂を迎えた。
「んはあああああぁぁぁ……。い、いいっ、す、ごおぉ……もうやっ、あふれちゃ、あっ、あっ、あああああああっ、わたし、いくッ、いくいくっ! いっ、はあああッ、あ、あああああああっ!」
『ラズリ、ラズリ、可愛いなあラズリ……。俺の精を受け止めてくれ、たくさんたくさん卵を産んでくれ! 海を、俺たちの子供で満たしてやろうな……』
ルブラの精を飲み込む度、下腹に刻まれた隷属の徴が光る。散々気持ちよくさせられたのに、まだ足りない。もっともっと欲しい。
ラズリは指に絡みつく触腕の先端を握りしめながら、自分がすっかり変質してしまったことを思い知った。
*
何時間経っただろうか。
ラズリは白濁に汚れた床に転がされながら、数多の触手に輪姦され続けていた。
「ふッ、ひぐっ、う、うああっ……あ、あっ、あああぁぁぁ……」
泣き叫ぶ体力はもうない。達しすぎて頭がくらくらするのに、下半身の感覚はどんどんと研ぎ澄まされていく。膣も、後ろの穴も気持ちがいい。ずっとこうして自分の内を埋められていたい。自分をここまで可愛がってくれる触手たちが、ルブラのことがとても愛おしい……。
『おいラズリ、呆けてねえで答えろって。どれが一番いいんだ?』
無数の触手がラズリを取り囲んでいる。
人間の男根によく似た触手。蛸の足そっくりの触手。幾つもの瘤やいぼを備えた触手。先端がぱっくりと開き、中で小さな突起が蠢く吸引型の触手。最奥を抉るのに適した螺旋状の触手。二又に分かれ、突きこまれる度に陰核も刺激される触手。媚毒を含んだ白濁を吐き出す触手。
ルブラはそれらでラズリを犯し抜き、どれが一番気持ちよかったかと尋ねるのだった。
『お前のために色んな形を用意してやったんだぜ? お前が気に入ったやつでたくさん可愛がってやるからさ、早く答えろってば』
「あ、あああっ……ふあ、あっ、あっ、はあああんっ……」
『ほらほら、喘いでねえでさっさと答えろよ。早く言わないともう一周するぜ? ふひひひひっ、……ひひ! 次はどれでお前の奥を突いてやろうかなあ? 楽しいなあラズリ! あはははは! 狂え、俺を憎め、早く壊れろ! ラズリぃぃぃぃ!!』
「……る、ぶら……」
ラズリは快楽に支配されながらも、ルブラに向かって手を伸ばした。
「……にく、まないよ……どんなこと、されたって……」
ルブラの地獄は終わらない。
愛が受け入れられなかった苦痛に、彼の心は揺れ続けている。
彼を救えるのは私だけだ。
私はあなたを救うために、あなたに救われるために海へ向かった。
「わたし、は……あなたのことが、すきだから……」
もう拒絶しない。逃げない。
憎しみも愛も何もかも、あなたからの感情はすべて受け止めると決めたから。
「……ルブラ、愛してるわ、ルブラ…………」
蛸の軟らかい頭にぴたりと寄り添い、ラズリは腕いっぱいにルブラを抱きしめた。
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