失敗作は蜜の味

橙乃紅瑚

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意地悪陰険腹黒ダリルの告白 - 7

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「後は研究成果を論文にまとめ、学校長に報告するだけ」

 薬液のにおいが漂う自室の中。フラスコに入った赤い液体を見つめながら、ダリルはうっとりと呟いた。

「ふふ、俺がやり遂げたと知った時の父上の反応が楽しみだな。父上はルクスとの結婚を認めてくれるだろうか? いや、絶対認めさせるぞ。これ以上反対するならパペットを使って抗議する」

「坊ちゃま、不穏なことを仰るのはお止めなさい。パペットは人の役に立つためにあるのです、人を害することに使ってはなりません」

 老執事は紅茶を淹れながら、穏やかにダリルを諌めた。

「しかし、坊ちゃまの成功が愛するレディの魔力と結びついていたとは。お二人からは、何か運命的な結びつきを感じます」

「くくっ、運命か。そうだな、ルクスと出逢ったのは運命だったんだ!」

 赤化―それは人が神性を獲得し、神と一つになることを意味する。すなわち無から有を生み出す力を得ること。己の望みを何でも叶える力を手に入れること。赤化へと至る鍵は、ルクレーシャが持つ膨大な魔力だった。

 賢者の石の原型を創り出したダリルは、己の理論を完璧にするためにその後も実験を重ねた。
 ルクレーシャの魔力は凄まじい。彼女の力を溜め込んだダイアナの樹さえあれば、元素のバランスがどんなに崩れていても、相性の悪い元素を組み合わせても調合を成功させることができる。それはまさしく、世界を変える力だった。

「ああ、俺の女は最高だ。ますます惚れ直してしまう! 俺はルクスと力を合わせ、かつて誰も辿り着いたことのない領域に至ったんだ。どうだじいや、凄いだろう!?」

「ええ、ええ。坊ちゃま。あなたならば、必ずできると信じておりました。旦那様もお喜びになることでしょう。……ところで、まだ坊ちゃまのレディではないでしょう」

 老執事は大仰に目頭を拭った後、指の間からちらりとダリルを見つめた。

「驚きでございます。まさか、かのレディと結婚するためにここまでするとは。夫婦の契りを考える前に、まず告白して心を通わせるのが先ではないでしょうか? 坊ちゃまの愛情表現は全てが回りくどい」

「じいや! 言いたいことは分かるがな、仮にルクスと両想いになっても父上が煩いだろう? 父上を静かにさせるためには、まず賢者の石が先に必要だったんだ!」

 図星を突かれ、ダリルは早口で言い返した。

「まあ、確かに。じいやの言う通り俺は回りくどい。だが、やっと研究が一段落したんだ。これからはルクスの心を得られるように努力するさ。……さて、そろそろあいつの準備は済んだかな」

 ダリルが時計に目を遣った時、こんこんと部屋の扉が叩かれた。

「……ダリル。お望み通り着替えたわよ」

 ダリルの母と、着飾ったルクレーシャが部屋に入ってくる。桃色のドレスを着たルクレーシャを認め、ダリルはあまりの可愛さに変な声を漏らしそうになった。

(か、かわいいッ! ルクスが、俺の作ったドレスを着ている!)

 ふんわりとした桃色のロングドレスを着たルクレーシャは、ダリルの焼け付くような視線を受けてもじもじと指を組んだ。
 
 透き通る絹生地を何層も重ねたスカートは、ルクレーシャが動く度に優美な波を打ち、綻ぶ花のようにふんわりと裾をゆらめかせている。腰回りに着けられた黒曜石の装飾が、体の曲線を美しく際立たせていた。

(俺の髪、俺の目の色! ふふ、好きな女が自分の色を身に着けているのは、こんなにも嬉しいことなんだな)
 
 ルクレーシャの美しさと儚さをより一層引き立てる装いに、ダリルも老執事も感嘆の息を吐く。口を開けたままこちらを凝視するライバルの男を、ルクレーシャは恥ずかしそうな顔で睨んだ。

「ねえ、そんな風にじっと見ないでよ。似合わないって言いたいんでしょ」

「っち、違う! 俺が作ったドレスは、やはり君の魅力をよく引き立てていると思っただけだ。綺麗だぞ」

「えっ?」

 いつもらしくないライバルの言葉に、ルクレーシャが聞き間違いだろうかと首を傾げる。ダリルは赤らんだ顔で咳払いをし、彼女に手を差し出した。

「ほら、準備が出来たなら行こう。御者を待たせてるんだ」

 照れ隠しにルクレーシャの手首を引っ掴む。ダリルは頬を染めた女の様子に気が付かないまま、性急に部屋を後にした。



「奥様、二人を夜会に向かわせてよいのですか? 本日の夜会は大勢の家が参加します。あの装いは噂を呼んでしまうでしょう」

 ルクレーシャのドレスに施された黒の差し色。そしてダリルの胸元に着けられた桃色のブローチ。夜会のパートナーがお互いの色を身に着け合うというのは、恋人同士だと周囲に伝えているようなものだ。

 老執事の懸念を、ダリルの母親は優雅に笑い飛ばした。

「構わないわ。私は夫と違ってダリルの恋を応援しているもの」

「ですが……」

「噂になってもいいじゃない。あの子が本当にダリルの恋人になってしまえば何の問題もないわ。私はダリルに報われてほしいの。ねえ、あなただってそう思うでしょう?」

「勿論、私めも坊ちゃまの味方でございます」

 老執事の頷きに、ダリルの母親は楽しそうな笑い声を上げた。

「さあ、夫が帰ってくる前に行ってきて。帰ってきたら、あの子たちの様子を聞かせてちょうだい!」





 馬車に揺られながら、ルクレーシャは隣に座るダリルを小突いた。

「ダリル、あなたって本当に変わってる。勝負に勝って私にするお願い事が、ドレスを着てパーティーに出ろですって?」

「それの何が不満なんだ? 敗者は大人しく俺の言う事を聞いておけ」

「相変わらず高慢ですこと。私はただ、ダリルがこんな命令をする理由が分からないだけよ! あなたのご両親と夕食を摂ったり、家に泊まったり。平民風情がそんなことをしていいの?」

(鈍い女め。普通、そこまですれば俺の誘いの意味が分かるだろう!?)

 ルクレーシャの鈍感さに頭痛がする。ダリルが額を押さえた時、くらりと強烈な目眩が襲ってきた。

 ……眠くて仕方がない。

「別に問題ない。君は理由なんて考えず、ただ俺の命令に従っていればいいんだ……ルクス、肩を貸せ。会場に着くまで休む」

 言葉尻が途切れそうになる。徹夜続きの目が重く、意識が朦朧としてしまう。重いと抗議するルクレーシャを無視し、ダリルは細い女の肩に頭を乗せた。

(幸せだ。ルクスが俺の隣にいる)

 愛しき花の妖精。
 彼女の傍にいる時だけ、この心が安らぐ。

(大好きだ、俺のルクレーシャ。いつも君にくっついていられたらいいのにな)

 ルクレーシャと一緒にいると、堪えていた緊張と眠気が解放されていく。彼女の傍でなら上手く休むことができそうだ。
 
 微睡みの中ルクレーシャを抱きしめ、そのふわふわした髪を撫でる。いい抱き枕が手に入ったと呟くダリルに、ルクレーシャは心配そうな表情をした。

「ねえダリル、隈が出来てる。前から思ってたけどあなた寝不足よ。しっかり寝た方がいいわ」

「寝る暇なんてない。頑張らない俺に価値はない……」

「……。何よ、その言い方」

(君と一緒にいるためには、がむしゃらに進むしかないんだ)

 ルクレーシャの視線を射止めるために、常に首位でいなければならない。そうしないと、天才である彼女は自分を置いて遠くに行ってしまうから。

「俺はもっと勉強して、ライバルの手が届かないところまで行ってやる。ルクスが行く道の、それより遥か先へ……」

「ふぅん、そこまでして私に勝ちたいの? あなたの負けず嫌いも困ったものね」

「…………」

 返事はない。うとうとと船を漕ぐダリルは、今にも眠ってしまいそうだ。ダリルの頑なな態度を気にかけつつ、ルクレーシャは彼がしたいようにさせてやった。

「ところで、なんで私はずっと頭を撫でられているのかしら?」

「……猫を撫でたい気分なんだ」

「それなら本物のねこちゃんを撫でればいいじゃない。……あれ、ダリル?」

 安らかな寝息が聞こえる。どうやらダリルはすっかり寝入ってしまったようだ。肩に心地よい重みを感じながら、ルクレーシャは小声でひとりごちた。

「さすがに心配だわ。どんどん様子がおかしくなっていくんだもの」

 夜遅くまで図書館で勉強する姿。火傷だらけの手。日々悪くなっていく顔色。頑張らない自分に価値はないという自虐的な言葉。
 
 ダリルは何かに取り憑かれている。
 彼の不安に触れられないのがもどかしい。

「あなたはお貴族様だから、私が知らない苦労もたくさんしているんでしょう。でも、いくら何でも頑張り過ぎよ。そんなやり方をしていたら、いつか倒れてしまうわ」

 強引で陰険で嫌味な男。彼と顔を合わせる度に逃げたくなる。
 でも、ダリルが誰よりも努力家なのを知っている。錬金術に対するひたむきな姿勢も、自作の品を市場で楽しそうに売る様子も、全部全部輝いて見えた。
 
 ダリルは多くの美点を持つ人間だ。頑張らない自分に価値はないなんて、絶対にそんなことはないのに。

「馬鹿ダリル。あなたがそんなんじゃ、正々堂々勝負ができないわ」

 どうか、自分のことを大切にしてほしい。
 
 疲れ切った男を見つめながら、ルクレーシャは彼のことを案じた。


 *


 それから一年後。十八歳のダリルは、大きな充実感と微かな不安を抱きながら研究発表を行った。
 
 賢者の石の錬成手法と赤化に至るきっかけを、桃色の髪の少女を見つめながら語る。広々とした記念講堂の中でも、ルクレーシャの姿はすぐに見つけることができた。

「しばらくは成果のない研究を続けていましたが、私は同輩と切磋琢磨するうちに、ふと閃きを得たのです。四元素四性質の配合が著しく崩れていても、強靭な魔力さえあれば物体に魂を固定できる。その発見はまさしく奇跡だった。人が神と合一を為すための鍵、それは魔力なのではないかと」

(どうだ、ルクス。君は俺を見てくれているか? 俺のことを凄いと思ってくれているか? 愛する君と一緒にいたくて、俺は賢者の石を創り上げたんだ!)

 発表後に多くの喝采が浴びせられても、ダリルの心は満たされない。彼が求めていたのは、愛しの少女からの承認だけだったから。

(なぜ舞台に上がってこない? ルクス、俺は君だけを待ってるんだぞ!)
 
 ルクレーシャに褒めてもらいたい。彼女の言葉は、たった一言でも世界中の賞賛より価値がある……そう思いながら、ダリルは消えたルクレーシャを必死に探し回ったのだった。




 ダリルの研究成果は各界に大きな衝撃を与えた。賢者の石の錬成に成功した少年は、わずか十八にして熱い視線を浴びせられることとなった。
 
 抜きん出た才能を示したダリルには、国王からの誘いも届いた。宮廷錬金術士として仕えよという命だったが、ダリルの可能性は黄金作りに留まらない。世界を巡って見聞を広め、より深い研究に専念させた方がよいという意見にまとまった。

 各国の錬金術研究所から連日のように手紙が届く。ダリルの元に集まる期待は彼を守る盾となり、そして同時に未来への扉を開いていく。若くして偉業を成し遂げた錬金術士。その肩書きと名声は、ダリルの望みを叶えるための大きな力となった。
 
 これほどの実力があれば、皆が貴族の仕事だけをさせるのは勿体ないと言うはずだ。自分は努力の末に、ひとりの錬金術士として自由に生きられる基盤を手に入れた!

「賢者の石を錬成できたのはルクスのお陰。魔力の天才である彼女を妻に迎えれば、この家は錬金術の分野においてより一層の主導権を握れるはず……。よし、父上にはこう伝えよう」

 バルコニーで夜風に当たりながら、ダリルは父親を説得するための言葉を考えていた。

「気が早いと言われてしまいそうだが、既に結婚指輪も作ってあるんだ。一度嵌めたら二度と外せない追跡魔法付きのリング。何としてもルクスの指に嵌めて、絶対に俺から逃げられないようにするぞ! ああ、早く指輪を贈りたいッ! 俺の愛を喜んでくれるといいんだが!」

「……ダリル。束縛が激しい男は嫌われるぞ」

「っ! ち、父上! いつの間に!?」

 ダリルの肩にぽんと手が置かれる。にまにまと笑っていたダリルは、父親の登場に慌てて表情を引き締めた。

「返事がないからどうしたのかと思えば、一人でそんなことを考えていたとはな。どうやらお前は、外見でなく内面まで俺に似たらしい」

 ダリルの父親は苦笑し、慌てる息子をしばらく見つめていた。

「……ダリル。お前も知っている通り、俺は元々商人の家系だ。母さんと結ばれたいあまり、金で爵位を買って無理やりな方法で結婚した。当然のことながら、俺は社交界で随分と苦労をした。息子にはこんな苦しい目に遭ってほしくない、その一心で見合いを勧めてきたんだ」

「父上……」 

「身分の差、出自の差というものは悲惨だ。どんなに強く相手を想っていても、周囲から傷付けられるうちに愛が潰えていく。俺はお前の強さを試すために、あのような試練を課した」

 ダリルのものによく似た男の顔が柔らかく崩される。彼はダリルの頭を撫で、よくやったと呟いた。

「たかが田舎者の女の子ひとり、いずれ諦めるものだと思っていた。だが、俺によく似たお前ならば、愛する女性と結ばれるために努力するだろうとも思っていた。……ダリル、お前は己の強さを証明してみせた。俺は父親として、息子の努力に報いてやらねばなるまい」

 息を吸い、父親は力のある声ではっきりと言い切った。

「ルクレーシャ。あの子は少々お転婆だが、素直でいいお嬢さんだ。彼女との結婚を認めてやろう」

「え!? ほ、本当ですか!?」

「ああ。随分と悩んだが、母さんと話し合って決めたんだ。お前たちが夫婦になれば、我が家は錬金術分野に於いて大きな存在感を示せる。それに、母さんが彼女のことをいたく気に入っているからな」

「や、やった……。やったああああ!! 遂にルクスと結婚できるんだ!! ありがとうございます父上! ルクスと共に錬金術を極め、この家を大いに繁栄させてみせますッ!!」

 狂喜の声が夜闇に轟く。目を輝かせる息子に向けて、父親は「まず両想いになるのが先だがな」と冷静に呟いた。

「ダリル。お前を錬金術学校にやったのは、家のためになると思ったからだ。貴族に取り入ろうとする錬金術士の中には卑怯者もいる。いずれこの家を継ぐ者として、贋金や粗悪品を見抜く力を身に着けさせたかったのだ」

「お前は親の期待通り、立派な錬金術士になってくれた。しかしお前は、その力全てを彼女を得ることに使っている。自慢の息子だが同時に心配もしているのだ。その執念深さが、お前も彼女も苦しめることにならないだろうかと……」

 それはどういう意味だというダリルの問いに、父親は目を伏せた。

「警告しておこう。彼女を悲しませるようなことをしてはいけないよ。女性に対しては誠実に、嘘偽りなく接するべきだ」

 静かな声で言い含め、ダリルの父親はその場を後にした。
 

 *


 過去を反芻しながら、ダリルは深く眠るルクレーシャの頬を撫でた。

「……やっと俺のイヤリングを着けてくれたな」

 溢れ出る愛を込めて作った桜の花のイヤリング。今まで一度も着けてくれたことがなかったのに、ルクレーシャはようやくその耳に花を咲かせてくれた。

 嬉しい。
 だが、悲しくて悔しくて堪らない。

 彼女の嘘の告白が、自分の中でじくじくと痛みを放っている。

 ――こ、こういう時に、好きって言い合うともっと気持ちよくなれるって聞いたことがあるから! ちょっと試してみたくなっただけ。だから、違うの。

「……違う、か。なんて残酷な女だ、嘘で『好きだ』と言うなんて……。俺がどれだけショックを受けたか、君は解らないんだろうな……」

 天国から地獄に突き落とされた気分だ。ダリルは目を潤ませながら、残酷なのは自分の方だと呟いた。

「君が俺に好きだと言ったのは、酷い肉欲に突き動かされたから。そして君がそうなったのは、俺がまともな治療をしないせいだ。ああ、そうだ。全て俺が悪い。姑息で卑怯者の俺に、ルクスを責める資格なんてない……」

 凄まじい後悔に涙が溢れ落ちていく。愛しいルクレーシャに触れるために吐いた嘘が、がんじがらめになって自分を苦しめている。

「……転移石を持っていてよかった。これがあれば、何かあってもすぐにルクスの所に行けるからな」

 ルクレーシャを監視するために動かしているパペットたち。彼女らの眼が撮影した写真を見た時、ダリルは気が気でなかった。図書館にいるルクレーシャが、分厚い材料図鑑を読んでいたからだ。

 本当の治療法を知られたら、この甘美な時間は終わってしまう。そう考えたダリルは、パーティーを抜け出し急いでルクレーシャのもとに向かったのだった。

(いつまでこの嘘が持つのだろうか? いつまでこんな苦しい思いをしなければいけないんだ?)

 ――彼女を悲しませるようなことをしてはいけないよ。女性に対しては誠実に、嘘偽りなく接するべきだ。

 父の静かな声が脳裏に蘇る。彼が何を言わんとしていたのか、今なら分かる。父はもしかしたら、自分がこうなることを予見していたのかもしれない。

 だが、もう後戻りはできない。
 自分はルクレーシャを手に入れられたら、それでいい。

「愛しいルクス。君を抱きたい。今すぐに抱いて孕ませたい。君と家族になりたい。俺の唯一の願いは、君と共にいることなんだ!」

 その願いを叶えるためなら、何だってできる。

「……そうだ、何だってできる。この嘘がばれなければいいんだ。ばれたらばれたで、君が逃げられないように世界を作り変えてしまえばいい。俺にはあの手がある……」

 ダリルは沈んだ声で呟き、狂気的な目をルクレーシャに向けた。

「試験に勝っても負けても、泣かれても嫌われても絶対にルクスを俺のものにする。どう思われてもいい、最後は俺に堕ちてくる運命だ! 俺には、何もかも思い通りにする力があるのだから……!」

 己の望みを何でも叶える神の薬――賢者の石を使えば、人間の意思さえも操れるはずだ。

 執念の果てに創り出した赤き霊薬。
 ダリルは賢者の石を、ルクレーシャを手に入れるために使うと決めた。
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