リア=リローランと黒の鷹

橙乃紅瑚

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第二章

34.愛欲 ★

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「はあっ……はあっ……」

 リアは荒い息を吐きながら、ゆっくりと工場への道を歩いた。身体が熱い。熱くて苦しくて仕方がない。それ以上歩を進めることができず、リアはとうとう街路樹に手をついて座り込んだ。

「はあっ、はあっ、はあっ……くる、しいっ……」

 冬晴れの日、やたらに青く澄んだ空を見上げリアは目眩を起こした。リアは一週間も屋敷から出られなかった。ファティアナへは装身具を頻繁に渡しているため休んだところで問題はないが、リアは屋敷から出たかった。外に出て自分の頭を切り替えないと、あの広い屋敷の中で狂っていってしまいそうだった。

 今日、ゼルドリックは任務で屋敷を空けると言った。リアは工場に少し顔を出した後、王都の病院に行くことを決めていた。ゼルドリックの「治療」を受ける度疼きは強くなるばかりで、一向に身体は楽にならない。ゼルドリックの言葉を信じることができなかった。

「赤い髪のお姉さん! 大丈夫ですか!? 立てますか?」

 可愛らしい声が聞こえた。リアが顔を上げると、獣人の女性が心配そうにリアのもとへ駆け寄ってきた。この女性は確か、ゼルドリックとよく行く菓子屋の店員だったはずだ。可愛らしい猫耳がぴょこぴょこと動いている。

「あ、……お菓子屋の、店員さん……」

 リアが呟くと、獣人の女性は気遣わしげに水筒を差し出した。リアは礼を言ってこくりと水筒の茶を流し込む。温かく香りの良いお茶は、リアの熱を少し落ちつけてくれた。

「……ふう、落ち着きました。どうもありがとうございます」

 リアが頭を下げると、猫耳の女性は安心したように笑った。リボンの着いた猫耳が可愛らしく動き、リアはその愛らしさについ頬を緩めてしまった。

「お姉さん、今日はあのお兄さんとは一緒じゃないんですか?」

「お兄さん? ……もしかして、ダークエルフの?」

「そうですそうです! 私の家ってこの辺にあるんですけど、実はお姉さんがあのお兄さんと一緒に歩いているのが見えちゃって……。すごく仲良さそうで羨ましいです! 背が高くて、がっしりとしていて素敵な彼氏さんですよね! 私もお姉さんみたいに、あんな風にエスコートされながら歩いてみたいです! とっても憧れるなあ……」

 猫耳の女性はうっとりとリアに言った。

(彼氏……か)

 じくり、とリアの心が痛んだ。ゼルドリックとは恋仲ではない。彼の愛玩動物と伝えた方が適切な気がした。

「あっ……。彼は、別に、私の恋人ではないんです」

 リアの答えに、猫耳の女性は大きく目を見開いた。リアの答えが意外なようだった。

「え? 何度も一緒に私のお店に来て、長時間仲良く話をして、にこにこと笑い合って……あれで、彼氏じゃないというんですか? あ、もしかして旦那さんでしたか?」

「いえ、結婚もしていません。訳あって、一緒に暮らしているだけの同居人です」

「いやいやいや! お姉さん! そりゃあり得ませんよ! 彼はお姉さんのことをとろけた目で見てたじゃないですか! あれは、ラブですよ!」

「ら、ラブって……」

 猫耳の女性は活発な女性のようだった。リアとゼルドリックの仲を勢い良く詮索したがった。リアはしきりに彼とは恋人ではないのだと繰り返すと、女性は渋々納得した。

「はええ……。意外でした。まさかお兄さんとの間に何にもないとは……。でも見ててじれったいので、早く付き合っちゃってください!」

「えっ!? は、はい……?」

「あ、大変! そろそろ行かなければならない時間です! お姉さん、ぜひまたあのお兄さんと一緒にお店に来て下さいね!」

 手を振って、猫耳の女性は走っていった。
 リアは手を振り見送った後俯いた。

(周囲からは恋人だと、そう見えたのね。あれだけ触れられていれば当然か。……実際は、そうでないのに)

 リアはまた、とぼとぼと工場への道を歩いていった。冬の空気が頬を撫でる。自分から突き放したのに、ゼルドリックの居ない道が酷く寂しく思えた。

(……寒い、なあ……)

 リアは身体を震わせ、マフラーを巻き直した。
 彼女の姿を、街路樹に留まった一羽の黒い鷹がじっと見ていた。


 ――――――――――


 怠い身体を引きずって工場で作業をしていると、リアに来客があった。細く長い首筋と手足、波打つミルクティー色の髪を持つ美しい男のエルフ。その美しいが無表情な顔に、リアは懐かしさを感じた。

「パルナパ様。お久しぶりです」

 リアが微笑むと、アンジェロもほんの僅かに口角を上げた。

「久しぶりだな、リローラン殿。たまたま時間が出来てな、あなたの様子が気になって見に来たのだ。邪魔したら済まない」

「いえ、とんでもないです! パルナパ様がお元気そうで何よりです」

 リアは鍛冶場にあるテーブルと椅子を運んで、アンジェロに腰掛けるよう促した。アンジェロは椅子に座り、リアを表情のない顔で見た。

「リローラン殿。私のことは名で呼んでくれていい。あなたは食事を分けてくれた恩人だからな」

「あっ……。それならば、アンジェロ様と。私のこともリアと呼んで下さい」

「それは遠慮する。あなたの名を呼べば、私がゼルドリック様に怒られる」

「え、ゼルに?」

 リアが思わず呟くと、アンジェロは瞬きをひとつした。リアはしまったと思った。

「ほう。愛称で呼ぶ仲だったか」

「いえ、これは違うのです……」

「照れずともいいだろう。私はリローラン殿とゼルドリック様が仲良くなったとて、特別何も思わない」

「あ、そうですか」

 リアは俯いた。そしてしばらく無言の時間が続く。アンジェロは俯くリアに切り出した。

「リローラン殿。ゼルドリック様とは上手くいっているか」

 アンジェロはまたこの問いをした。
 上手くいっている。そう答えればいいだけなのに。リアは顔馴染みのエルフに会ったせいか、自分を律する心が緩んだのを感じた。中々答えないリアを前に、アンジェロは訝しげに声をかけた。

「リローラン殿?」

「……上手くいってません。私は彼を酷く傷付けてしまいました」

 リアは震える声でそう言った。思わず泣きそうになり必死で堪える。

「それはどういう……」

 リアは詳細を答えようとしたが、何から話すべきか、何を話すべきか迷った。口を噤むリアに対しアンジェロは、無理に話さなくても良いと言った。

「リローラン殿。私と共にはずれの村に行く気はないか」

「え?」

「私とマルティンは文通をしているのだ。手紙の中でな、マルティンはしきりにあなたのことを心配し、様子を伺うことばかり書いている。あなたの元気がないと彼に返事を出そうものなら、酷く心配するだろうからな。ならば直接マルティンと顔を合わせて、あなたのその悩みを聞いてもらえばいいだろう。もうすぐ私は村に向かう用事がある。あなたの護衛を引き受けよう。休みを取って一緒に来るといい」

 リアはアンジェロの優しさに、ぽろりと涙を流した。リアは急にマルティンが恋しくなった。あの心優しい弟を抱き締めて、たくさん話をしたかった。

「あなたは辛抱強い。はずれの村にて、ゼルドリック様があなたに取った行動は決して褒められたものではない。それでもあなたは微笑みを絶やさず応対をしてくれたのだ。そのあなたが泣いている、余程辛いことがあったのだろう」

 アンジェロの声はごく平坦なものだったが、非常に気遣いの感じられる言葉だった。

「うっ……アンジェロ様、ありがとうございます……。」

「良い。あなたは恩人であるからこれくらいはする」

「あ、あの……。ゼル、も……。アンジェロ様と一緒にはずれの村へ向かうのですか?」

「ゼルドリック様? なぜだ?」

「アンジェロ様は、いつもゼルと一緒にいらっしゃったので」

「なるほどな。彼は私の目付役だった。だがあなたが王都に来てしばらくしてから、我々は別の仕事をするようになった。私も一人であちこち視察に行かされる羽目になってな。まあ、とにかくゼルドリック様は村には向かわない。安心すると良い」

「……ありがとうございます」

「ゼルドリック様に隠れての仕事は楽だったが、一人仕事もそれなりに楽しい。出先で自由に美味いものを食べられることに気が付いたからな。はずれの村に行ったらマルティンから新鮮な鹿肉を貰うつもりだ。あなたも一緒に食べよう」

 アンジェロはリアに安心感を与えるようにまた口角を上げた。彼は村で見かけた時よりも、随分としっかりしているように見えた。おそらく、食べ物につられて一人で仕事をこなすうちに、役人としての責任感や威厳のようなものがそれなりに身についたらしかった。

「リローラン殿。ひとつ聞いてよいか」

「はい、何でしょう?」

「あなたはその……ゼルドリック様と恋仲か?」

「え……」

「私があなたの様子を見に来た理由は二つある。一つはマルティンがあなたを心配していたという理由だが……」

 アンジェロは溜息を吐いた。

「もう一つは、あなたの存在が中央政府の中で随分と話題になっている。エリートを堕落させた魔性の女がいるとな。ゼルドリック様は、あなたに非常に熱を注いでいると聞いた。かつての目付役であった役人が、周囲から噂されるほどに女性に入れ込んでいては、私も恥ずかしい思いをするのでな。あなたにゼルドリック様を窘めてもらいたい」

「あっ……」

 リアはざっと背筋が冷えるのを感じた。ゼルドリックはやはり立場を危うくしてしまっているのだ。リアは顔を青褪めさせ、肩を震わせた。アンジェロはリアの様子を変に感じたのか、どうしたのだと顔を覗き込んで聞いた。

「わ、私は……ゼル、の恋人ではありません」

「彼を愛称で呼ぶのにか?」

 アンジェロは含みのある目線で、リアの首元の、黒と青に彩られたチョーカーを見た。

「恋仲ではないとしたら、では何だ」

「わ、私は……身体を治療してもらうことと引き換えに……彼に飼われているのです」

 リアは涙を流した。口に出してしまえば、相当悍ましいことのように聞こえた。アンジェロにとってもそれは同じらしく、彼は大きく目を見開いて唇を戦慄かせた。「飼われる」という言葉が指す意味を、アンジェロは理解しているようだった。

「そ、れは……本当か? 本当に、ゼルドリック様がそんなことを?」

 リアはこくりと頷いた。

「何度も、ゼルを窘めたのです。私があなたの立場を危うくする原因であってほしくないと。それでも彼は聞いてくれなくて、彼は怒って、結局、そしてっ……! ……すみません。どう話してよいか……。お願いです、私がゼルに飼われていることを、誰にも言わないで下さい……」

 リアは思わず、ゼルドリックとの歪な関係を他者に話してしまった。物静かで無表情なこのエルフは、心の内を話したくなるような不思議な魅力があった。リアはそれにつられ、自分の心の悲痛を明らかにした。アンジェロは涙を流すリアを見つめ、そっと答えを返した。

「分かった。誓おう。誰にも話さないと」

「すみません、上手く話せずに……」

「よい。今は話さなくてもよい。辛かっただろう」

 アンジェロは涙を流すリアを慰めようとした。アンジェロがリアに手を伸ばしたその瞬間、ばちりと凄まじい電気が走った。空気中に紫の電流が走るのがはっきりと見えるくらいの強さだった。アンジェロは勢い良く床に倒れ込み、リアは急いでその身体を抱き起こした。アンジェロの細く白い指から煙が出ている。彼は指を火傷していた。

「っつ!! これ、は……」

「アンジェロ様! 大変! 早く冷やさないと……!」

「よい。これくらいは、魔法ですぐ治せる」

 アンジェロは指を庇うと、心配そうに自分を支えるリアに向けて言った。

「今のは……、一体? なぜ、私の身体から……? どうしてっ……」

「リローラン殿、心配するな。私は大丈夫だから」

 アンジェロはふらふらと立ちあがりつつも、怯えるリアを気遣った。そして黒ずんだ指を見て溜息を吐いた。

「私の勘違いでなければ、あなたはゼルドリック様に強く好意を寄せているように見えた。それは今も同じか」

 リアは目を見開いた。
 自分の好意は指摘されるほどに漏れ出ていたのだろうか?

「どうして、そう思われたのですか?」

「以前あなたの前でゼルドリック様の名前を出した時、あなたは顔を赤らめた。共に食事を取ったり薔薇の咲く庭を毎朝散歩していると私に嬉しそうに言った。そこから曇りのないゼルドリック様への好意が伝わってきた。あなたは、実に分かりやすい」

「……そんなに分かりやすいものですか」

「ああ。なのに私は、なぜこんなことになってしまったのか不思議に思っている。上手くいかないものなのだな」

 独り言のように呟いて、アンジェロはリアを見た。先程の問いの答えを促されているようだった。

「今でも、彼のことは好きです。……あの時よりもずっと。ずっと……」

「そうか。彼はひねくれ者だ。どうしようもないひねくれ者だ。あなたをこれからもたくさん傷付けてしまうだろう。だが、それでもゼルドリック様のことが好きだと言うのなら。彼との対話を諦めないでくれ。私には大きな行き違いがあるように思える」

 アンジェロは短く平坦な声で言った。そして片手を掲げ転移魔法の準備をした。

「……彼が。ゼルが……。私の話を聞いてくれたら良いのですが……」

 リアが寂しく微笑むと、アンジェロは目に痛々しさを宿した。

「ゼルドリック様は、以前私に頻繁に相談をしてきた。はずれの村に向かう際、あなたに何を贈ればいいかについて」

「え……?」

「彼は彼なりにあなたを気遣っていた。彼が不器用で、屈折して、歪んでいても、あなたに喜んでもらうためにその心をずっと砕いてきた。彼は、あなたにそれを話さぬだろうがな」

「……知りませんでした」

「彼も、あなたと上手くいっていないのは不本意だろう。だがあなたの口から出された言葉が事実ならば、彼の行動は当然許されるべきではない。役人として、男として恥ずべきことだ。……捻じ曲がった関係がお互いに望んだものでないのならば、よく話し合った方が良い。仲良く過ごせるに越したことはないだろう」

 アンジェロは溜息を吐き、リアに美しい茶色の瞳を向けた。

「もしも、ゼルドリック様との対話が上手く行かずに、あなたになお危害が加えられるようなことがあれば。そしてあなたが彼から離れたいと望んだ時は……。私が協力しよう。恩人のために。そして友人の姉のために」

「アンジェロ様……。ありがとうございます」

 アンジェロはいつになくリアの前で口を開いた。彼はこれほど話すのだったかと、リアは思った。だがリアは彼の平坦な声に、どこか力強さを感じた。アンジェロは自分を強く後押ししてくれたのだと理解した。彼に微笑みを返せば、アンジェロは頷きとひとつリアに返した。そして彼は鍛冶場から、音もなく去っていった。

(そう。そうよ……。ゼルとの会話を、諦めてはならない)

 リアは目を閉じた。どうか、彼と上手く話せますようにと祈った。


 ――――――――――


 リアはアンジェロと話した後、昼過ぎに工場を抜け出し病院に向かった。歩を進める毎に鼓動は速くなり、耳の奥でどくどくと己の心音が響く。頭は重く、視界も霞むようだった。もしも悪い病だったらどうすればいいのかと、リアはたまらなく不安になった。

 身体を引きずりながら、急いで病院への道を行く。ゼルドリックが屋敷を空ける今日、何としても病院へ行きこの熱の正体を確かめたかった。

 彼は自分を病院へ行かせてくれない。彼のいない今しか機は無い。
 リアは込み上げる痛みにも似た疼きや熱を我慢して、必死に足を動かした。

「はあっ、はあ……。やっと着いた……。」

 リアは病院の前に来てほっと息を吐いた。自分の身体を医者に診てもらえるのだと思うと安心感が込み上げた。自分の治療に当たるゼルドリックへの罪悪感はあったが、リアは限界を感じていた。このまま彼に治療を任せていては、強くなるばかりの熱でいずれ狂ってしまう気がした。

 後は病院の扉を叩くだけだ。リアが歩を進めた時、黒い靄が目の前を覆い尽くした。目の前が黒一色に染まり、靄で周囲の景色が何も見えなくなる。

「……え?」

 リアはその黒い靄を認めた途端ぞっとし、恐怖で足が震えた。この靄はよく知っている。これは……。

「……ゼ、ル……。どうして、ここに……?」

 靄の中からゼルドリックが現れた。その顔は表情が抜け落ち、青い目ばかりが不気味に光っている。猛禽類のような鋭い瞳が獲物を見定めるようにリアをじっと見つめた。彼は酷く怒っている。リアは思わず後ずさったが、ゼルドリックは大股でリアに近づき、彼女の腕を凄まじい勢いで掴み捻り上げた。

「……君はもう少し頭が良いと思っていたのだがな。俺が最高の治療を施してやっているというのに、そこらの町医者如きに頼ろうとするとは。俺への侮辱と取ったぞ……?」

「う、ああっ……! 痛い、痛いっ! 放してゼル……!」

 リアは捻り上げられた腕の痛みに呻いた。こう捻り上げられては腕に力を入れることが出来ない。リアは涙を滲ませ、ゼルドリックを見た。彼の眉は跳ね上がりぎりぎりと歯を食いしばっている。敵意を剥き出しにするようなその顔が恐ろしく、リアは思わず堪えていた涙を流してしまった。

「悪くない。女の泣き顔など鬱陶しいだけだと思っていたのに。君が痛みに泣く顔はこんなにもそそられるのだな」

 ゼルドリックはリアの涙をべろりと舐め取り、嬉しそうに笑んだ。その瞳にとろりとした情欲が宿るのを見たリアは、尚更恐怖に身を硬くした。

(おかしいっ……! ゼルは優しくて、私がいつも怪我をしたら心配してくれるのに! こんなっ、人に痛みを与えることで興奮するわけがっ……)

「さて、俺を信頼せず、好意を無下にするような女にはじっくりと仕置きしてやらねばな。覚悟しておけよ……」

「ひっ……い、いやっ! いやあっ、誰かっ! 助けっ……んぐっ……!」

 リアが思わず周囲に助けを求めようすると、ゼルドリックはリアの口を塞ぎ身体を強く抱き寄せた。

「無駄な抵抗はしないことだ。その分……君への仕置きが酷くなる」

 リアの耳元に暗い声が落とされた。リアはその声の恐ろしさに、それ以上動くことが出来なくなった。無抵抗のリアを見下ろし満足そうに笑った後、ゼルドリックは屋敷へとリアを攫った。






 屋敷へと連れ去られた後、リアはゼルドリックから指でねっとりと膣穴を犯されていた。長く骨ばった指で良いところを執拗に擦られ、幾度目かの絶頂がリアの身体を襲う。

「んんっ、んんんん!! ふ、ううううっ……」

 リアは裸に剥かれ、ゼルドリックのベッドの上に寝かされていた。口に布の轡を噛まされ、腕は後ろに縛られ、大きく脚を開かれた状態で足首を固定されている。秘部はどろどろに溶かされ、白く泡立った愛液がゼルドリックの指に絡みつく。ベッドに縫い付けられ涙を流すリアを見て、ゼルドリックはうっとりと笑った。

「はあっ……リア、たまらない……。抵抗も出来ず、涙を流して何度も達く君は……とても美しい」

 ゼルドリックの身体が覆い被さってくる。リアは自分の涙を嬉しそうに舐め取るゼルドリックに、大きく目を見開き必死に首を捩った。 

「……なあ、リア。君に教えただろう? 対外的に俺と君は恋人だと言うようにと。なぜ言わなかった? なぜただの同居人などと言ったのだ? あの獣人の女に、身体を重ね合わせる仲だと教えてやれば良かったのに……」

 リアはゼルドリックの質問が良く分からなかった。そして、その意味を理解した時、ぞっと背筋を震わせた。朝出会った、猫耳を持つ獣人の女性の言葉が蘇る。

 ――素敵な彼氏さんですよね! 

 彼は、あの言葉を、彼女と交わした言葉を聞いていた? 
 どこから? 彼はずっと監視していたから、病院の前で自分を捕まえることが出来たのだろうか? 
 リアはぞわぞわとした悪寒が走るのを感じた。

「くくっ……。俺は何でもお見通しさ。君のことはよく見ている。だから、下手なことはしない方がいいぞ。俺がいない時でもな……」

 ゼルドリックは唇を歪め、そしてリアの白い首筋に手を掛けた。急所に手を添えられ、リアの身体がぴくりと震える。

「恥ずかしがり屋の君だ。俺と恋仲と言うのが恥ずかしいならば……言わずとも周囲に伝わるようにしてやろうか……」

「ん、んんっ……」

 ゼルドリックはリアの首筋を何度も何度も吸って、赤い花びらを散らした。どんな服でも見えてしまうようなところにまで。リアは轡の中でくぐもった声を上げた。

「さて、リア……。俺に言うことがあるだろう? 聞かせてもらおうか」

 リアの口から布が外される。リアの涙と唾液に塗れたそれはねっとりと糸を引いた後リアの胸に落とされた。

「ぷはっ……。はあっ、はあっ……。ゼ、ル……。こんなこと、もう止めてよ……私の話を聞いて……」

「またそれか。違うだろう? 俺から離れようとしてごめんなさいだろう? リア……!」

「あはぁんっ……! あ、あああっ、あっそこ、だめっ…!」

 ぐじゅり、といやらしい音を立てて、ゼルドリックの指がリアの膣口に突き立てられる。力なく声を上げてしまう弱い所を擦られ、リアは乱れきった声を上げた。

「あ、あ、あっ、やだ、なんかきちゃっ……やだあっ、ゼルおねがい! 手を止めて!」

 リアはゼルドリックに擦られ続けているうつろの奥が、ぼうっと熱を持ったのを感じた。絶頂感と共に、尿意にもよく似たむずむずとした感覚が股間を襲う。リアは羞恥から必死に声を上げたが、ゼルドリックは手を止めなかった。むしろ執拗に、追い詰めるようにそこを指で撫でた。

「くくっ……。やけに暴れるじゃないか? そんなに気持ちいいか?」

「ううっ、ひいっ、やだ、なん、か……漏れる、漏れちゃいそうなのっ! だめっ!」

「漏れる? そうかそうか、いい年こいた女がお漏らしとは……」

 ゼルドリックは嬉しそうにそう言って、ざらざらとした天井を擦り上げた。重さのある深い快楽が迫り上がる。リアは身体を痙攣させ、目を潤ませ、襲いくる深い快楽の前に屈服した。

「あ、あああっ……ああああああああっ……」

 びしゃびしゃとリアの秘所から潮が吹き出る。リアは目から涙をはらはらと流し、羞恥と快楽で頭が焼き切れそうな感覚を味わった。好きな男に絶頂しながら漏らすところを見られている。恥ずかしくてたまらないのに、浅ましくも身体は悦んでいた。

「う、ううっ、あああっ! ……いやあああっ……や、だあっ……! ご、ごめんなさっ……」

「くくくっ、ははははっ……! リア、悪い子だな? 君のお漏らしで俺の身体がべたべたになってしまった……」

「ひっく、ううっ……うああっ……そんなこと、いわないでえっ……」

 しゃくり上げるリアの髪を優しく撫でて、ゼルドリックはリアの耳元に柔らかく言葉を落とした。どろりとした情欲に塗れた声が、リアの耳をねっとりと犯す。

「ああ……。そんなに泣いて……。良いのだよ、リア。どんな君も美しい。羞恥に震える君はとても愛らしい……。もっと気持ちよくなって、もっと恥ずかしい姿を晒して、そうしてどこにも行けない淫らな身体になってしまえばいい。君をこんなにも満たせるのは俺だけだぞ……。だから君は俺の傍にいるのだ。俺から決して離れようとするな……」

「あ、あふ、ううっ……」

「リア。俺とずっとこの屋敷で暮らしていこう。君は何も考えないでいい……。俺に全てを委ね、朝も夜も身体を交わして、いつまでもいつまでも一緒に過ごしていこう。何も心配することはない。君にはたっぷりと贅沢をさせてやる。 なあリア、だから……。俺の支配を受け入れてしまえ。そうすれば君はもっと気持ち良く、もっと幸せになれる……。俺は君をずっと手元で可愛がってやるからな……」

 耳を甘噛みされ、敏感な穴に舌を差し込まれる。快楽に深く溺れる身体にそんな言葉を落とされては、思わず頷いてしまいそうだった。それほどに、恋い焦がれる男からの言葉は甘かった。

(だ、め……。気を確かに、持たないと……。流されては、だめ……)

 リアは流されそうになる自分を叱咤した。本音を言えば、ゼルドリックがこれほど自分を求めてくれることが嬉しかった。だが彼の支配を受け入れてしまっては、自分はずっと彼の愛玩動物という立場に甘んじてしまう。

 自分はゼルドリックと対等でいたい。恋人になりたい。恋人という関係が手に入らないとしても、彼の良き友人でありたい。彼との今までの優しく温かな生活を、こんな爛れた関係で汚したくない。

 ――あなたと彼は、よく話し合った方が良い。

 アンジェロの言葉を思い出す。そうだ。ゼルと自分は、お互いをもっと理解し合わなければ……。

「ゼル……。お願い。話を、聞いて……。私の気持ちを――」

 リアは懇願した。ゼルドリックはリアの意志を失わない赤い瞳を見て、密かに慄いた。もっと快楽を与え、もっと気力を奪わなければこの女を折ることはできない。絶対に自分の手から逃したくなかった。ゼルドリックは躍起になった。

「本当に君は笑ってしまうほど頑固だな……まあ良い、折れるまで続けるだけだ」

「ああっ!? ゼル、何を……」

 ゼルドリックはまたぐじゅぐじゅと音を立て、リアの膣を責め立てた。再び迫り上がる快楽に、リアは情けなく喘ぎ声を上げる。一度達してしまった分敏感になったそこは、呆気なく熱を持ち、リアの身体を支配した。

「リア、君の潮を飲んでいない」

「……え、んんっ、ふ、うっ!……何を、なにをっ……いって、いるの……?」

「君の愛液の味は良く知っている……甘酸っぱくて何とも言えない癖になる味。この前たんとご馳走になったからな。だが……。君の吹き上げる潮の味は知らない。飲んでみたい。君の泉から出た飛沫を……」

 リアはぞっとした。ゼルドリックの言葉が信じられなかった。顔を真っ赤にして、必死にゼルドリックの手から逃れようと身を捩った。

「あああっ、あうっ! いやだ、いや、いやっ! このっ、へんたいっ……」

「変態? その変態にここまで啼かされているのは誰だ? 淫乱女」

 わざとリアを馬鹿にするような言葉を言って、ゼルドリックはリアの膣天井を擦り上げる。リアは切羽詰まった短い声を吐き出して、強烈な絶頂を迎えた。飛沫が秘所から勢い良く吹き出て、リアは強い羞恥にぼろぼろと涙を流した。

「あっ、あ、あ、あっ……あああああああああっ!!」

「んんっ……んむっ、んむっ……は、ああっ……美味い、な……」

 ゼルドリックはリアの吹き出た潮をゆっくりと味わい、狂気の滲んだ笑みを浮かべた。そして痙攣するリアを気遣うことなく、また彼女を食わんと伸し掛かってくる。彼の恐ろしげな笑みに、リアは身体を震わせることしか出来なかった。

「リア……リア……。次はないぞ。君が俺から離れようとしてみろ……。」

「う、っうう……?」

 ゼルドリックはリアの白い下腹を、ゆっくりと撫で上げた。

「君が逃げようとするのなら。俺も君を気遣うことはしない。無理やり君の穴を暴いて、俺のものを突っ込んで、一番奥に濃いものを注ぎこんでやる……!」

「あっ……い、いや……」

 ゼルドリックの青い瞳が爛々と輝く。リアはうつろを貫かれ、満たされ、最奥で射精される夢での快感を思い出してしまった。

 あれは、駄目だ。あの肉の快感を自分の奥に叩き込まれたら、今度こそゼルドリックの支配を受け入れてしまう……。

 首を横に振り逃げようとするリアに、ゼルドリックは昏い瞳を向けた。

 慄き、涙を流すリアに何を思ったのか。ゼルドリックはリアの赤い瞳をじっと見下ろした後、快楽に震える身体を抱き締め、何度も桃色の唇にキスを落とした。
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