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第十一話 ★
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丹念に身を清めたニコルは、薄布一枚だけを纏ってベッドに向かった。ベッドにはこんもりと盛り上がった山がある。レインが毛布の下で丸まっているのだろうか。
「レイン、お風呂済ませたよ」
ニコルが声を掛けると毛布の下から腕が伸びてきて、彼女をあっという間に引きずり込んだ。驚くニコルの顔の横に手が置かれる。荒い息を吐きながら自分の上に覆い被さる男に、ニコルは真っ赤な顔を向けた。
「ニコ、寒くない?」
「う、うん」
程よく温められた毛布の中で、レインの目がぎらぎらと光り輝いている。彼は裸だ。体毛越しでもはっきりと分かるほど逞しく割れた腹筋に、胸元の毛と同じくふんわりと盛り上がった白い陰毛。そそり勃つピンク色の男根は怒張していて、太い血管が浮き出ている。
テントでも目にした、屈強な男の裸体がすぐそこにある。間近に感じるレインの体温とにおいに、ニコルは胸が激しく跳ねるのを感じた。
(わ……私、とうとうレインとしちゃうんだね……!)
レインが体を寄せ、己の毛を擦り付けてくる。瑞々しいニコルの太ももがもふもふ、ふわふわと擽られる。愛しい少女にマーキングを施しながら、レインは吐息混じりの声で懇願した。
「……見せてよ、ニコ。隠さないで」
欲望を露わにした震え声に、ニコルの肩がぴくりと跳ねる。焼け付くような強い視線の中、ニコルはおそるおそる布を退けた。
「っ……はず、かしいよ……」
少女の白い肌が露わになる。
焦がれ続けた女の生まれたままの姿を目にし、レインは感嘆の息を吐いた。
華奢な肩にくびれた腰、肉付きの良い乳房。微かに光る金色の髪と陰毛が美しい。ニコルの肉体は健康的で、女性らしい艶かしさに溢れている。無垢で淫らなその肢体を目に焼き付けるように、レインは何度も瞬きをした。
「うぅ……! レイン、そんなに見ないで」
「どうして? すごく綺麗だ。それに、はだかんぼの君は一度見てるよ」
「変だって思われたら嫌だわ。その……あそこが毛深い、とか」
女の子は色々気にするのよと言いながら太ももをすり合わせるニコルに、レインは大きな笑い声を上げた。
「ぷっ、あははははっ! 何言ってるの、毛なんて気にする必要ないじゃないか! 僕なんて全身毛だらけなんだよ」
ふわふわもこもことした手がニコルの頭を撫で回す。レインの言葉に彼女も吹き出し、二人はお互いの顔を見て笑いあった。
「ねえ、ニコ。ご褒美もらって本当にいいの?」
美しい獣の貌が近づいてくる。伏せられた長い睫毛は少し憂いを帯びていて、何か思い悩むことがあるのだとニコルに伝えてくる。ニコルはレインの口吻を撫で、しっかりと頷いた。
「もちろん。そのつもりでいいよって返事をしたの」
「でも、元には戻れなくなるよ。君を抱いたら歯止めが効かなくなる。絶対に今より束縛してしまう。僕は君のことが好きすぎるんだ。可愛すぎて他の誰にも見せたくないから、どこかに閉じ込めておきたいくらいなんだ」
レインは俯き、沈んだ声でニコルに問いかけた。
「分かってると思うけど、僕は不純な男だよ。君は務めを果たすために頑張ってたけど、僕はご褒美が欲しくて本気を出した。何より僕と一緒にいたら獣人の呪いが――」
「もう、そこまで!」
ぶつぶつと呟くレインの黒い鼻をちょんとつつき、ニコルは彼の言葉を遮った。
「言ったでしょ! あなたのは呪いじゃなくて祝福なんだって。私、レインと一緒にいられてとても幸せだった。レインの存在を嫌だって思ったことは一度もないわ」
「……しつこくてごめん。でも僕、まだ気にしてるんだよ。僕と一緒になったらニコはいつまでも苦労するんじゃないかって。来年の仕事も、今回みたいに大変な思いをするよ」
「それでもいい、死ぬまでドジのニコルのままでいい! どんなに大変な思いをしたって、あなたが助けてくれるでしょう? レインがいれば最後は絶対に上手くいく」
力強いニコルの言葉にレインの睫毛が微かに震える。ニコルが彼の大きな額にキスをしながら「世界一大好きよ」と囁くと、レインは嬉しそうに獣耳を動かした。
「レイン、抱いて。あの時レインが我慢してくれたのは知ってるけど、お預けをくらって焦れったいって思ったんだから」
あなたが欲しい。
ニコルがレインにそう囁くと、彼はニコルの頬に鼻先を近づけた。
「……もう我慢できない。愛しいサンタクロース、君のことが大好きだ」
レインの感極まった声が胸を震わせる。
ああ、やっとレインと一緒になれるんだ。
ニコルは目を閉じ、男の接触を受け入れる姿勢を見せた。
「ニコ、大好き」
「んっ……んぅ」
レインの赤い舌が、ニコルの桃色の唇にそっとくっつけられる。角度を変えて、強さを変えて。触れるだけの接触を数秒した後に、レインはニコルの様子を窺いながら舌を動かし始めた。
「ふ……は、あぁ……はっ、レイ、ン……きもち、いい……」
「うん……うん、とっても気持ちいいね、ニコ。ね……僕たちのファーストキスを覚えてる? ニコが僕の舌にこうやって唇をくっつけてくれたんだよ。ふふ……なんだかあの時を思い出すね」
「ふあっ……ふふ……そう、だね……」
互いの存在を確かめる慰撫の口付け。互いに微笑みあいながら行われる穏やかなキスに、ニコルの胸がとくとくと跳ねる。ぬめり気のある優しい舌の感触に、少女の唇から喜びの吐息が漏れ出ていく。
「はぁっ……レイン……好き、大好き……」
目元に朱を差し、口腔の快楽に浸るニコルが愛おしい。彼女の甘い息遣いを味わいながらレインはうっとりと目を瞬いた。
「ニコの唇は美味しいね」
「んはっ、はぁ……ふ、ふふ……。そうかな?」
「うん。ミルクに似ていて、なんだか胸がいっぱいになる味がするんだ」
少女の艷やかな桃色の唇をひと舐めし、レインは満ち足りた笑みを浮かべた。
「僕、君と初めて会った時からずっとキスしたいって思ってたんだよ。ぷるぷるつやつやの唇は、果物みたいでとっても美味しそうに見えたから」
「ふぁっ、レイ、ン……」
「ああ……目が蕩けてる。かわいい。何度キスしても、もっとしたくなる」
甘い言葉と共に再び唇を奪われる。
顎を持たれながら、唇を舌先でちろちろと舐められる。自在にうねるレインの舌はニコルの下唇をそっと掬い上げたり、敏感な口の外周をねっとりと這い回ったりする。ニコルはレインの口先に一生懸命唇をくっつけながら、はふはふと不器用な呼吸をした。
「にこ、ニコ……」
男の声が切なく胸を震わせる。
足りない。もどかしい。愛するレインとキスをするのはとても気持ちいいのに、口付ければ口付けるほど、なぜか飢えていく気がする。
自分の芯が潤み、蕩ける。もっとこの男が欲しい。その体温で自分を包みこんでほしい……。ニコルが無意識のうちにレインにすり寄ると、彼は無言の要求に応えるように少女の頬を摩った。
「ニコ、口を開けて」
優しい声掛けと共に柔らかく唇をつつかれる。ニコルが少し口を開くと、レインの舌がにゅるりと入り込んできた。
「んひっ!? んやあぅっ!」
敏感な上顎を遠慮なく舐め上げられ、ニコルの口から甲高い声が飛び出る。やや激しさを含んだ愛撫にニコルは肩を跳ね上がらせた。
人間ではおよそ届かないであろう喉の奥から歯の裏側までを一気になぞられ、歯のひとつひとつに男の舌を這わされる。執拗な接触に思わず舌を隠そうとすれば、引っ込めた舌を横から掬い取られ、そのまま絡みついた舌に舐め回される。食べられてしまうかのような濃厚な口付けに、ニコルはぎゅっと目を瞑った。
「んっ、んっ、んんんむぅっ……!」
「はあ、はっ……はあ……。ふふっ、ニコの舌はちっちゃいね。僕の舌より薄くて短くて、持ち主と同じくらい可愛い……。ああ、だめだよ。逃げないで。君も舌を絡ませて……」
「んむぅぅ……!? ああっ、ぁはあ……っ! れ、いん……! ひたっ、すっちゃだめぇ……!」
口腔の隅々まで犯される。互いの熱い息が混じり合ってひとつになる。濡れた肉の擦れ合いに、口から重さのある快感が奔り抜ける。己の舌先を恍惚とした顔で吸ってくる男にニコルは被虐的な視線を向けた。
「んっ、んにゅっ、んんんん……」
ちゅ、じゅう、じゅるり。少女の切ない声と共に、粘り気のある水音が絶えず響く。飲みきれない唾液がニコルの唇から溢れ、彼女の首までを濡らしていく。目を瞑るニコルがまなじりを濡らすと、レインはふわふわした指を彼女の耳に挿し入れてきた。
「ねえニコ。僕の目を見て」
「やっ……はず、かし……よぉ……」
「頼むよ、僕を見てほしいんだ。見つめ合いながらキスしたら、もっと気持ちよくなれるよ」
なんでも僕のお願いを聞いてくれるって言ったでしょう?
悪戯っぽく囁かれたその言葉に、ニコルはぴくりと肩を震わせた。
そんな風に言われては断れないじゃないか……。羞恥を堪えながらおそるおそるニコルが目を開くと、レインの双眼が優しい色を宿しながら彼女を見つめていた。
「……可愛い。可愛いね、ニコ……」
黄と青の目には、悦楽に顔を蕩けさせる女がくっきりと映っている。レインとキスをしている時の自分は、こんなにもいやらしい表情をしているのか――。目を逸らしたくなるほどいやらしい女の表情に、ニコルは顔を背けたくなった。
「ふ、はっ……にこっ、僕のにこる。大好き、大好き……」
「んむぅっ……! は、あ、んんんっ……」
濃厚な口付けは続く。欲を剥き出しにした獣の息遣いが、なお快楽を増幅させる。ひとつの生き物のようにうごめく獣の舌は、ニコルの小さな舌にくるりと絡みつき、舌根から敏感な舌先までをぬるぬると扱き上げる。
掠れた声で可愛い、大好きと囁かれると全身が溶けてしまいそうだ。淫らな粘膜同士の接触に、ニコルは自分の秘部から雫が溢れ出ていくのを感じた。
(ぁ……この感じ、また……)
股から何かが垂れる感覚がする。自分の内側がむずむずするような感覚と共に訪れるこの変化は、レインにキスをされると必ず起きる。
初心なニコルはそれが何を意味するのか分からなかったが、月のものを迎えた時と似た感覚にどうしようもない恥ずかしさを感じていた。
ちゅく、ちゅくと音を立てながらレインの舌がニコルの腔内を蹂躙する。目を見開きながらひたすら少女を食らわんとする男は獣らしい荒々しさがあって、少し怖ろしい雰囲気を放っている。レインはニコルの両頬をがっちりと掴んだ後、彼女の舌を殊更強く吸い上げた。束縛感の強いキスに、ニコルの唇からくぐもった声が飛び出る。
「んっ、んむうううぅぅ……!」
「ぷっ、は、はあっ……! はあっ、はっ……。ニコの、美味しかったぁ……」
「んやっ、んぅ……れ、いん……」
粘っこい糸がふたりを繋ぐ。濃厚な接触に、ニコルは息も絶え絶えにくたりと力を抜いた。
レインの舌がニコルの口からゆっくりと引き抜かれ、唾液にまみれたそれがそのまま彼女の肌に這わされる。レインは口角を上げ、己の舌で少女を蕩けさせた充実感に浸った。
「甘えん坊のトナカイにお恵みを……愛しいニコ、もっと君の肌をぺろぺろさせて」
荒い息を吐くレインは、濡れた口元を拭うこともせずにニコルの耳を可愛がった。濡れた舌が耳朶に触れる。敏感な耳裏をつつかれ、ニコルは弱々しく首を横に振った。
「あぁ……あ……み、み……舐めちゃだめ……!」
耳たぶを優しく噛まれる。己の獣耳とは違う耳の形にレインは強い興味を抱いた。
「ニコのみみ、ちっちゃくて可愛い。僕のと全然違う」
レインは小さなそれに舌を差し入れ、少女の耳の穴を優しく塞いだ。ニコルの聴覚がレインのもたらす音に占められていく。くちゅ、くちゅ。粘っこい水音が頭の中に大きく響く。生温かい息を注ぎ込まれ、敏感な耳穴に舌を入れられると、身を捩りたくなるような切ない快感がこみ上げてくる。
「ぁ、ぁあっ! やっ……ま、って。れいん……そこぉ、敏感なのぉ……! は、あぁん……はっ、はぁぁぁ……」
「ふふっ、僕が舐めるたびにひくひくする。君は耳も敏感なんだね」
ぴちゃ、ぴちゃり、くちゅ。脳髄まで響くような唾液音がニコルをどんどん淫らな気持ちにさせる。あえかな声を漏らし、少女はびくびくと体を震わせた。
薄い耳の皮膚を丹念に舐められた後は、首に舌を這わされる。大好きだと囁かれながら、ごく優しい力で首をかぷりと噛まれる。花嫁の首に所有印を残したいと思う、男の独占欲の現れ。獣らしさを感じさせるトナカイの求愛行動を、ニコルは微笑みながら受け入れた。
「ああ……堪らない。特にここはにおいが濃いね」
両腕を上に縫い留められる。レインの尖った鼻先が腋に近づいてきて、ニコルは思わず悲鳴を上げた。
「えっ!? ま、まって! レインっ、わきは舐めちゃだめよっ! そんなところ汚いから!」
「どうして? お風呂上がりの君のここはとっても綺麗だよ。ふふ、石鹸の香りに混じってニコ本来のにおいがする。僕を魅了する甘い甘いにおいだ。ね、もっと嗅がせて」
「あっ、あっ、だめ……!」
ふす、ふすと音を立てて黒鼻がひくつく。ニコルは一生懸命逃げようとしたが、レインの太い腕がそれを許さない。呆気なく腋に舌をくっつけられ、そのままべろりと勢い良く舐めあげられる。皺のひとつひとつをなぞるような執拗な舐め方に、ニコルは大きく体を跳ね上がらせた。
「んはあっ! あはああぁぁぁあんっ!」
(なっ、なんで? 何で私、こんな声出して……!?)
ニコルは戸惑った。くすぐったいのに気持ちがいい。
皮膚の薄いそこを舐められる度、寒気に似たぞわぞわとした感覚が全身を走り抜ける。敏感な神経が寄り集まった腋の窪み。普段秘められている場所に鼻をくっつけられ、そのまま舐め回される背徳感が堪らない。
「ひっ、ひぃ! んやぁっ、レインってばぁっ……そこぺろぺろしないでぇ……! くしゅっ、くすぐったいのお!」
「はっ、はあ! ふぅ……ニコのわき、とっても美味しいっ……」
レインの生温かい鼻息が腋に掛かる。顔を見上げられながら腋をねっとり舐められ、ニコルはかっと顔が熱くなるのを感じた。腋を舐められてみっともなく声を上げる自分を見られている。好きな男の前で醜態を晒していると思うと酷く恥ずかしい。
「やんっ、ひゃうぅっ……! にゃっ、なんでそんなとこぉっ……こっち見ないでよレインっ、わたひのかおっ、みないでぇ……!」
(やだぁっ……。腋を嗅がれてるのにっ、間近で見られて恥ずかしいのに……なのになんで? 声、抑えられない……!)
感じ入った声を上げる少女をじっと見つめ、レインはもう片方の腋にも舌を伸ばした。石鹸の香りに混じって、ニコル本来の甘いにおいが鼻をくすぐる。腋の窪みに鼻をくっつけ、わざと音を立ててにおいを嗅ぐと少女の喘ぎ声はいっそう強くなった。
「ふひゃっ!? ああっ、あっ、はひぃっ! まってレインっ、おねがいだからまってぇ! はうぅんっ! そこくすぐったいからぁっ! ひゃっ、ひゃめえぇっ……! んっ、んんっ。んくうぅぅぅ……!」
毛が生え揃った手がニコルの細い腕を撫で回す。柔らかい指がニコルの腋をこちょこちょと擽ったり、つうっと皺をなぞったりする。必死に逃げようとしても両手をひとまとめに押さえつけられ、屈強な体に縫い留められてしまう。少しの抵抗も許してくれないレインの優しい拘束。強いこそばゆさと、それに含まれるどろりとした快楽に襲われ、ニコルは途切れ途切れの息を上げた。
「あはあっ、ああぁぁ……ひんっ、だめぇ……」
体をかくかくと震わせるニコルに構わず、レインは丹念にニコルの腋に奉仕し続けた。少女が快感に喘ぐ度、舌先に感じる甘酸っぱさはどんどん強くなる。やや意地悪そうな笑みでレインはそっと囁いた。
「だめ? 本当に? ニコってばとっても気持ちよさそうだよ。腋を舐められるの好きなんでしょ、もっと舐めてほしいって顔してるよ」
「あっ、ぁ、やあぁっ……! ち、ちがうもん……。そんなところっ、舐めちゃいけないんだよ? んやっ、わっ、わきを舐めるだなんておかしいよぉ……!」
ニコルが目を潤ませ、ぐす、ぐすと鼻を啜る。
レインは手を止め、涙目で自分を見上げる少女を観察した。ニコルの深紅色の目から困惑の涙がこぼれ落ちていく。
「ふっ、ううぅ……わ、たし……おかしいの。くしゅぐったいのにっ、体がびくびくして変な声でちゃう……! おっ、男のひとにっ、あまり腋を見せちゃいけないって教わったのに、なんでぇ……!? わっ、たし。おかしいのかな? 腋をなめられるとっ、こそばゆいのにきもちいいのっ……」
ニコルは快楽を感じながらも戸惑っている。性的な知識に疎いニコルにとっては、こうして腋を愛撫されることが信じられないことなのだろう。
「……おかしくないよ、ニコ」
そうだ、ニコルという少女は清らかで無垢だった。世の中の汚いものに触れさせないように、下衆な男の餌食にならないように、自分が彼女を見守り続けたのだ。毎夜共に寝ていたから、ニコルに自慰の経験がないことも知っている。おそらく彼女は、性感という概念も知らないのかもしれない。
そう考えたレインは、安心して身を委ねてもらえるように少女の金髪にキスを落とした。
「おかしくない、僕がニコのどこを可愛がったって全然おかしくない。そうやって気持ちよくなるのも自然なことなんだ」
「ほ、ほんとう……?」
「うん。気持ちいいと思うのは、ニコが僕のことを求めてくれているからだよ。だから、そのまま体の力を抜いていて。声も我慢しないで」
ニコルの唇がレインの指になぞられる。妖しい光を湛えた双眼で少女を見つめ、レインは滑らかな頬にキスを落とした。
「あっ……れい、ん……」
仄暗いレインの目。浅ましい欲望が滲むその目は昏く、食べられてしまいそうでほんの少し怖い。けれど、自分に対する労りもはっきりと感じられた。
「ね? 僕のサンタクロース……」
優しいその声にニコルはこくりと頷き、体の力を抜いた。目を瞑り、レインにされるがまま舌の愛撫を受け入れる。腋の窪みにぴったりと嵌まる形で鼻を押し付けられ、ニコルは羞恥に悶え泣いた。
「くひゅっ、んんっ! んっ、はぁあああああっ……!」
痙攣するニコルの腋をゆっくりと舐め回した後、レインはようやく彼女の腋を解放した。そのままニコルの両乳房に彼の手が伸ばされる。
乳房をごく優しく揉まれる。肌触りの良い毛がたっぷり生えたレインの手に包みこまれると、胸全体にじんわりとした心地よさが広がっていく。腋とはまた異なる優しい快楽に、ニコルは微笑んだ。
「んんっ、はあん……。あぁ……レインの手、ふわふわできもちいい……」
「はあっ、はあ……ニコのおっぱい。……ああ、すごい。女の子のおっぱいってこんなに軟らかいの……?」
ふにふにとニコルの乳房を揉むレインは、己の手の中で形を変える肉に釘付けになった。下着越しにニコルの胸を揉んだことはあるが、こうして直接触れるのは初めてだ。形を保っているのが不思議なほどに柔い肉が、手のひらにしっとりと吸い付いてくる。
「こっ、これが生のおっぱい……ニコのおっぱい……!」
レインの喉からきゅるきゅると興奮を示す音が鳴る。年頃の男は、初めて触れる女の胸にたちまち魅了された。
丸くこんもりと盛り上がった白い双丘に、ぷっくりと膨らんだ桃色の乳輪。少し大きめのその乳輪は艷やかに光り、レインの目に眩しく映る。薄紅色の乳首は片方が隠れていて、レインはそのアンバランスな形に興味を抱いた。
白く柔い肉をつついてみたり、そっと指を沈めてみたり。探究心溢れる顔で胸を弄るレインに、ニコルは少し複雑そうな目を向けた。
「れ、レイン。パイ生地みたいにこねないで。女の子の胸がそんなにめずらしい?」
「うん。僕にはないものだからさ……。君のおっぱいを揉んでると思うと、おかしくなりそうなほど興奮する。前から思ってたけどニコのおっぱいって大きいよね。ここだけじゃなくてお尻もしっかり大きいし。ふふ、君を乗せてる時にいつも思ってたんだ」
「っそ、そんなこと思ってたの!? レインのへんたい。むっつり!」
お尻が大きいと思われてたなんて恥ずかしい。ニコルがふいと顔を背けると、男は楽しそうに笑った。
「拗ねないでよ、ナイスバディだって褒めてるんだ。ね、ニコのふわふわおっぱい舐めさせて。君のここをしゃぶるのを楽しみにしていたんだ」
たくさんぺろぺろしてあげるって前に言ったよね。
レインは口を開き、己の赤く長い舌を見せつけるようにべろりと出した。
「あっ……」
ぬらりと光る赤い舌。
蠢く肉に、ニコルは背をぞくりと震わせ身じろいだ。
その長い舌が、自分にどれほどの快楽を与えてくれるのかニコルはよく知っている。旅の最中、暗いテントの中で彼に捕らわれ、夜毎下着越しに胸を責められたことを思い出す。布越しでもあんなに気持ちよかったのに、直接触れられたらどうなるのか――。
ニコルが期待に唾を飲み込むと、レインの舌がぬるりと彼女の乳房に巻き付いた。
「レイン、お風呂済ませたよ」
ニコルが声を掛けると毛布の下から腕が伸びてきて、彼女をあっという間に引きずり込んだ。驚くニコルの顔の横に手が置かれる。荒い息を吐きながら自分の上に覆い被さる男に、ニコルは真っ赤な顔を向けた。
「ニコ、寒くない?」
「う、うん」
程よく温められた毛布の中で、レインの目がぎらぎらと光り輝いている。彼は裸だ。体毛越しでもはっきりと分かるほど逞しく割れた腹筋に、胸元の毛と同じくふんわりと盛り上がった白い陰毛。そそり勃つピンク色の男根は怒張していて、太い血管が浮き出ている。
テントでも目にした、屈強な男の裸体がすぐそこにある。間近に感じるレインの体温とにおいに、ニコルは胸が激しく跳ねるのを感じた。
(わ……私、とうとうレインとしちゃうんだね……!)
レインが体を寄せ、己の毛を擦り付けてくる。瑞々しいニコルの太ももがもふもふ、ふわふわと擽られる。愛しい少女にマーキングを施しながら、レインは吐息混じりの声で懇願した。
「……見せてよ、ニコ。隠さないで」
欲望を露わにした震え声に、ニコルの肩がぴくりと跳ねる。焼け付くような強い視線の中、ニコルはおそるおそる布を退けた。
「っ……はず、かしいよ……」
少女の白い肌が露わになる。
焦がれ続けた女の生まれたままの姿を目にし、レインは感嘆の息を吐いた。
華奢な肩にくびれた腰、肉付きの良い乳房。微かに光る金色の髪と陰毛が美しい。ニコルの肉体は健康的で、女性らしい艶かしさに溢れている。無垢で淫らなその肢体を目に焼き付けるように、レインは何度も瞬きをした。
「うぅ……! レイン、そんなに見ないで」
「どうして? すごく綺麗だ。それに、はだかんぼの君は一度見てるよ」
「変だって思われたら嫌だわ。その……あそこが毛深い、とか」
女の子は色々気にするのよと言いながら太ももをすり合わせるニコルに、レインは大きな笑い声を上げた。
「ぷっ、あははははっ! 何言ってるの、毛なんて気にする必要ないじゃないか! 僕なんて全身毛だらけなんだよ」
ふわふわもこもことした手がニコルの頭を撫で回す。レインの言葉に彼女も吹き出し、二人はお互いの顔を見て笑いあった。
「ねえ、ニコ。ご褒美もらって本当にいいの?」
美しい獣の貌が近づいてくる。伏せられた長い睫毛は少し憂いを帯びていて、何か思い悩むことがあるのだとニコルに伝えてくる。ニコルはレインの口吻を撫で、しっかりと頷いた。
「もちろん。そのつもりでいいよって返事をしたの」
「でも、元には戻れなくなるよ。君を抱いたら歯止めが効かなくなる。絶対に今より束縛してしまう。僕は君のことが好きすぎるんだ。可愛すぎて他の誰にも見せたくないから、どこかに閉じ込めておきたいくらいなんだ」
レインは俯き、沈んだ声でニコルに問いかけた。
「分かってると思うけど、僕は不純な男だよ。君は務めを果たすために頑張ってたけど、僕はご褒美が欲しくて本気を出した。何より僕と一緒にいたら獣人の呪いが――」
「もう、そこまで!」
ぶつぶつと呟くレインの黒い鼻をちょんとつつき、ニコルは彼の言葉を遮った。
「言ったでしょ! あなたのは呪いじゃなくて祝福なんだって。私、レインと一緒にいられてとても幸せだった。レインの存在を嫌だって思ったことは一度もないわ」
「……しつこくてごめん。でも僕、まだ気にしてるんだよ。僕と一緒になったらニコはいつまでも苦労するんじゃないかって。来年の仕事も、今回みたいに大変な思いをするよ」
「それでもいい、死ぬまでドジのニコルのままでいい! どんなに大変な思いをしたって、あなたが助けてくれるでしょう? レインがいれば最後は絶対に上手くいく」
力強いニコルの言葉にレインの睫毛が微かに震える。ニコルが彼の大きな額にキスをしながら「世界一大好きよ」と囁くと、レインは嬉しそうに獣耳を動かした。
「レイン、抱いて。あの時レインが我慢してくれたのは知ってるけど、お預けをくらって焦れったいって思ったんだから」
あなたが欲しい。
ニコルがレインにそう囁くと、彼はニコルの頬に鼻先を近づけた。
「……もう我慢できない。愛しいサンタクロース、君のことが大好きだ」
レインの感極まった声が胸を震わせる。
ああ、やっとレインと一緒になれるんだ。
ニコルは目を閉じ、男の接触を受け入れる姿勢を見せた。
「ニコ、大好き」
「んっ……んぅ」
レインの赤い舌が、ニコルの桃色の唇にそっとくっつけられる。角度を変えて、強さを変えて。触れるだけの接触を数秒した後に、レインはニコルの様子を窺いながら舌を動かし始めた。
「ふ……は、あぁ……はっ、レイ、ン……きもち、いい……」
「うん……うん、とっても気持ちいいね、ニコ。ね……僕たちのファーストキスを覚えてる? ニコが僕の舌にこうやって唇をくっつけてくれたんだよ。ふふ……なんだかあの時を思い出すね」
「ふあっ……ふふ……そう、だね……」
互いの存在を確かめる慰撫の口付け。互いに微笑みあいながら行われる穏やかなキスに、ニコルの胸がとくとくと跳ねる。ぬめり気のある優しい舌の感触に、少女の唇から喜びの吐息が漏れ出ていく。
「はぁっ……レイン……好き、大好き……」
目元に朱を差し、口腔の快楽に浸るニコルが愛おしい。彼女の甘い息遣いを味わいながらレインはうっとりと目を瞬いた。
「ニコの唇は美味しいね」
「んはっ、はぁ……ふ、ふふ……。そうかな?」
「うん。ミルクに似ていて、なんだか胸がいっぱいになる味がするんだ」
少女の艷やかな桃色の唇をひと舐めし、レインは満ち足りた笑みを浮かべた。
「僕、君と初めて会った時からずっとキスしたいって思ってたんだよ。ぷるぷるつやつやの唇は、果物みたいでとっても美味しそうに見えたから」
「ふぁっ、レイ、ン……」
「ああ……目が蕩けてる。かわいい。何度キスしても、もっとしたくなる」
甘い言葉と共に再び唇を奪われる。
顎を持たれながら、唇を舌先でちろちろと舐められる。自在にうねるレインの舌はニコルの下唇をそっと掬い上げたり、敏感な口の外周をねっとりと這い回ったりする。ニコルはレインの口先に一生懸命唇をくっつけながら、はふはふと不器用な呼吸をした。
「にこ、ニコ……」
男の声が切なく胸を震わせる。
足りない。もどかしい。愛するレインとキスをするのはとても気持ちいいのに、口付ければ口付けるほど、なぜか飢えていく気がする。
自分の芯が潤み、蕩ける。もっとこの男が欲しい。その体温で自分を包みこんでほしい……。ニコルが無意識のうちにレインにすり寄ると、彼は無言の要求に応えるように少女の頬を摩った。
「ニコ、口を開けて」
優しい声掛けと共に柔らかく唇をつつかれる。ニコルが少し口を開くと、レインの舌がにゅるりと入り込んできた。
「んひっ!? んやあぅっ!」
敏感な上顎を遠慮なく舐め上げられ、ニコルの口から甲高い声が飛び出る。やや激しさを含んだ愛撫にニコルは肩を跳ね上がらせた。
人間ではおよそ届かないであろう喉の奥から歯の裏側までを一気になぞられ、歯のひとつひとつに男の舌を這わされる。執拗な接触に思わず舌を隠そうとすれば、引っ込めた舌を横から掬い取られ、そのまま絡みついた舌に舐め回される。食べられてしまうかのような濃厚な口付けに、ニコルはぎゅっと目を瞑った。
「んっ、んっ、んんんむぅっ……!」
「はあ、はっ……はあ……。ふふっ、ニコの舌はちっちゃいね。僕の舌より薄くて短くて、持ち主と同じくらい可愛い……。ああ、だめだよ。逃げないで。君も舌を絡ませて……」
「んむぅぅ……!? ああっ、ぁはあ……っ! れ、いん……! ひたっ、すっちゃだめぇ……!」
口腔の隅々まで犯される。互いの熱い息が混じり合ってひとつになる。濡れた肉の擦れ合いに、口から重さのある快感が奔り抜ける。己の舌先を恍惚とした顔で吸ってくる男にニコルは被虐的な視線を向けた。
「んっ、んにゅっ、んんんん……」
ちゅ、じゅう、じゅるり。少女の切ない声と共に、粘り気のある水音が絶えず響く。飲みきれない唾液がニコルの唇から溢れ、彼女の首までを濡らしていく。目を瞑るニコルがまなじりを濡らすと、レインはふわふわした指を彼女の耳に挿し入れてきた。
「ねえニコ。僕の目を見て」
「やっ……はず、かし……よぉ……」
「頼むよ、僕を見てほしいんだ。見つめ合いながらキスしたら、もっと気持ちよくなれるよ」
なんでも僕のお願いを聞いてくれるって言ったでしょう?
悪戯っぽく囁かれたその言葉に、ニコルはぴくりと肩を震わせた。
そんな風に言われては断れないじゃないか……。羞恥を堪えながらおそるおそるニコルが目を開くと、レインの双眼が優しい色を宿しながら彼女を見つめていた。
「……可愛い。可愛いね、ニコ……」
黄と青の目には、悦楽に顔を蕩けさせる女がくっきりと映っている。レインとキスをしている時の自分は、こんなにもいやらしい表情をしているのか――。目を逸らしたくなるほどいやらしい女の表情に、ニコルは顔を背けたくなった。
「ふ、はっ……にこっ、僕のにこる。大好き、大好き……」
「んむぅっ……! は、あ、んんんっ……」
濃厚な口付けは続く。欲を剥き出しにした獣の息遣いが、なお快楽を増幅させる。ひとつの生き物のようにうごめく獣の舌は、ニコルの小さな舌にくるりと絡みつき、舌根から敏感な舌先までをぬるぬると扱き上げる。
掠れた声で可愛い、大好きと囁かれると全身が溶けてしまいそうだ。淫らな粘膜同士の接触に、ニコルは自分の秘部から雫が溢れ出ていくのを感じた。
(ぁ……この感じ、また……)
股から何かが垂れる感覚がする。自分の内側がむずむずするような感覚と共に訪れるこの変化は、レインにキスをされると必ず起きる。
初心なニコルはそれが何を意味するのか分からなかったが、月のものを迎えた時と似た感覚にどうしようもない恥ずかしさを感じていた。
ちゅく、ちゅくと音を立てながらレインの舌がニコルの腔内を蹂躙する。目を見開きながらひたすら少女を食らわんとする男は獣らしい荒々しさがあって、少し怖ろしい雰囲気を放っている。レインはニコルの両頬をがっちりと掴んだ後、彼女の舌を殊更強く吸い上げた。束縛感の強いキスに、ニコルの唇からくぐもった声が飛び出る。
「んっ、んむうううぅぅ……!」
「ぷっ、は、はあっ……! はあっ、はっ……。ニコの、美味しかったぁ……」
「んやっ、んぅ……れ、いん……」
粘っこい糸がふたりを繋ぐ。濃厚な接触に、ニコルは息も絶え絶えにくたりと力を抜いた。
レインの舌がニコルの口からゆっくりと引き抜かれ、唾液にまみれたそれがそのまま彼女の肌に這わされる。レインは口角を上げ、己の舌で少女を蕩けさせた充実感に浸った。
「甘えん坊のトナカイにお恵みを……愛しいニコ、もっと君の肌をぺろぺろさせて」
荒い息を吐くレインは、濡れた口元を拭うこともせずにニコルの耳を可愛がった。濡れた舌が耳朶に触れる。敏感な耳裏をつつかれ、ニコルは弱々しく首を横に振った。
「あぁ……あ……み、み……舐めちゃだめ……!」
耳たぶを優しく噛まれる。己の獣耳とは違う耳の形にレインは強い興味を抱いた。
「ニコのみみ、ちっちゃくて可愛い。僕のと全然違う」
レインは小さなそれに舌を差し入れ、少女の耳の穴を優しく塞いだ。ニコルの聴覚がレインのもたらす音に占められていく。くちゅ、くちゅ。粘っこい水音が頭の中に大きく響く。生温かい息を注ぎ込まれ、敏感な耳穴に舌を入れられると、身を捩りたくなるような切ない快感がこみ上げてくる。
「ぁ、ぁあっ! やっ……ま、って。れいん……そこぉ、敏感なのぉ……! は、あぁん……はっ、はぁぁぁ……」
「ふふっ、僕が舐めるたびにひくひくする。君は耳も敏感なんだね」
ぴちゃ、ぴちゃり、くちゅ。脳髄まで響くような唾液音がニコルをどんどん淫らな気持ちにさせる。あえかな声を漏らし、少女はびくびくと体を震わせた。
薄い耳の皮膚を丹念に舐められた後は、首に舌を這わされる。大好きだと囁かれながら、ごく優しい力で首をかぷりと噛まれる。花嫁の首に所有印を残したいと思う、男の独占欲の現れ。獣らしさを感じさせるトナカイの求愛行動を、ニコルは微笑みながら受け入れた。
「ああ……堪らない。特にここはにおいが濃いね」
両腕を上に縫い留められる。レインの尖った鼻先が腋に近づいてきて、ニコルは思わず悲鳴を上げた。
「えっ!? ま、まって! レインっ、わきは舐めちゃだめよっ! そんなところ汚いから!」
「どうして? お風呂上がりの君のここはとっても綺麗だよ。ふふ、石鹸の香りに混じってニコ本来のにおいがする。僕を魅了する甘い甘いにおいだ。ね、もっと嗅がせて」
「あっ、あっ、だめ……!」
ふす、ふすと音を立てて黒鼻がひくつく。ニコルは一生懸命逃げようとしたが、レインの太い腕がそれを許さない。呆気なく腋に舌をくっつけられ、そのままべろりと勢い良く舐めあげられる。皺のひとつひとつをなぞるような執拗な舐め方に、ニコルは大きく体を跳ね上がらせた。
「んはあっ! あはああぁぁぁあんっ!」
(なっ、なんで? 何で私、こんな声出して……!?)
ニコルは戸惑った。くすぐったいのに気持ちがいい。
皮膚の薄いそこを舐められる度、寒気に似たぞわぞわとした感覚が全身を走り抜ける。敏感な神経が寄り集まった腋の窪み。普段秘められている場所に鼻をくっつけられ、そのまま舐め回される背徳感が堪らない。
「ひっ、ひぃ! んやぁっ、レインってばぁっ……そこぺろぺろしないでぇ……! くしゅっ、くすぐったいのお!」
「はっ、はあ! ふぅ……ニコのわき、とっても美味しいっ……」
レインの生温かい鼻息が腋に掛かる。顔を見上げられながら腋をねっとり舐められ、ニコルはかっと顔が熱くなるのを感じた。腋を舐められてみっともなく声を上げる自分を見られている。好きな男の前で醜態を晒していると思うと酷く恥ずかしい。
「やんっ、ひゃうぅっ……! にゃっ、なんでそんなとこぉっ……こっち見ないでよレインっ、わたひのかおっ、みないでぇ……!」
(やだぁっ……。腋を嗅がれてるのにっ、間近で見られて恥ずかしいのに……なのになんで? 声、抑えられない……!)
感じ入った声を上げる少女をじっと見つめ、レインはもう片方の腋にも舌を伸ばした。石鹸の香りに混じって、ニコル本来の甘いにおいが鼻をくすぐる。腋の窪みに鼻をくっつけ、わざと音を立ててにおいを嗅ぐと少女の喘ぎ声はいっそう強くなった。
「ふひゃっ!? ああっ、あっ、はひぃっ! まってレインっ、おねがいだからまってぇ! はうぅんっ! そこくすぐったいからぁっ! ひゃっ、ひゃめえぇっ……! んっ、んんっ。んくうぅぅぅ……!」
毛が生え揃った手がニコルの細い腕を撫で回す。柔らかい指がニコルの腋をこちょこちょと擽ったり、つうっと皺をなぞったりする。必死に逃げようとしても両手をひとまとめに押さえつけられ、屈強な体に縫い留められてしまう。少しの抵抗も許してくれないレインの優しい拘束。強いこそばゆさと、それに含まれるどろりとした快楽に襲われ、ニコルは途切れ途切れの息を上げた。
「あはあっ、ああぁぁ……ひんっ、だめぇ……」
体をかくかくと震わせるニコルに構わず、レインは丹念にニコルの腋に奉仕し続けた。少女が快感に喘ぐ度、舌先に感じる甘酸っぱさはどんどん強くなる。やや意地悪そうな笑みでレインはそっと囁いた。
「だめ? 本当に? ニコってばとっても気持ちよさそうだよ。腋を舐められるの好きなんでしょ、もっと舐めてほしいって顔してるよ」
「あっ、ぁ、やあぁっ……! ち、ちがうもん……。そんなところっ、舐めちゃいけないんだよ? んやっ、わっ、わきを舐めるだなんておかしいよぉ……!」
ニコルが目を潤ませ、ぐす、ぐすと鼻を啜る。
レインは手を止め、涙目で自分を見上げる少女を観察した。ニコルの深紅色の目から困惑の涙がこぼれ落ちていく。
「ふっ、ううぅ……わ、たし……おかしいの。くしゅぐったいのにっ、体がびくびくして変な声でちゃう……! おっ、男のひとにっ、あまり腋を見せちゃいけないって教わったのに、なんでぇ……!? わっ、たし。おかしいのかな? 腋をなめられるとっ、こそばゆいのにきもちいいのっ……」
ニコルは快楽を感じながらも戸惑っている。性的な知識に疎いニコルにとっては、こうして腋を愛撫されることが信じられないことなのだろう。
「……おかしくないよ、ニコ」
そうだ、ニコルという少女は清らかで無垢だった。世の中の汚いものに触れさせないように、下衆な男の餌食にならないように、自分が彼女を見守り続けたのだ。毎夜共に寝ていたから、ニコルに自慰の経験がないことも知っている。おそらく彼女は、性感という概念も知らないのかもしれない。
そう考えたレインは、安心して身を委ねてもらえるように少女の金髪にキスを落とした。
「おかしくない、僕がニコのどこを可愛がったって全然おかしくない。そうやって気持ちよくなるのも自然なことなんだ」
「ほ、ほんとう……?」
「うん。気持ちいいと思うのは、ニコが僕のことを求めてくれているからだよ。だから、そのまま体の力を抜いていて。声も我慢しないで」
ニコルの唇がレインの指になぞられる。妖しい光を湛えた双眼で少女を見つめ、レインは滑らかな頬にキスを落とした。
「あっ……れい、ん……」
仄暗いレインの目。浅ましい欲望が滲むその目は昏く、食べられてしまいそうでほんの少し怖い。けれど、自分に対する労りもはっきりと感じられた。
「ね? 僕のサンタクロース……」
優しいその声にニコルはこくりと頷き、体の力を抜いた。目を瞑り、レインにされるがまま舌の愛撫を受け入れる。腋の窪みにぴったりと嵌まる形で鼻を押し付けられ、ニコルは羞恥に悶え泣いた。
「くひゅっ、んんっ! んっ、はぁあああああっ……!」
痙攣するニコルの腋をゆっくりと舐め回した後、レインはようやく彼女の腋を解放した。そのままニコルの両乳房に彼の手が伸ばされる。
乳房をごく優しく揉まれる。肌触りの良い毛がたっぷり生えたレインの手に包みこまれると、胸全体にじんわりとした心地よさが広がっていく。腋とはまた異なる優しい快楽に、ニコルは微笑んだ。
「んんっ、はあん……。あぁ……レインの手、ふわふわできもちいい……」
「はあっ、はあ……ニコのおっぱい。……ああ、すごい。女の子のおっぱいってこんなに軟らかいの……?」
ふにふにとニコルの乳房を揉むレインは、己の手の中で形を変える肉に釘付けになった。下着越しにニコルの胸を揉んだことはあるが、こうして直接触れるのは初めてだ。形を保っているのが不思議なほどに柔い肉が、手のひらにしっとりと吸い付いてくる。
「こっ、これが生のおっぱい……ニコのおっぱい……!」
レインの喉からきゅるきゅると興奮を示す音が鳴る。年頃の男は、初めて触れる女の胸にたちまち魅了された。
丸くこんもりと盛り上がった白い双丘に、ぷっくりと膨らんだ桃色の乳輪。少し大きめのその乳輪は艷やかに光り、レインの目に眩しく映る。薄紅色の乳首は片方が隠れていて、レインはそのアンバランスな形に興味を抱いた。
白く柔い肉をつついてみたり、そっと指を沈めてみたり。探究心溢れる顔で胸を弄るレインに、ニコルは少し複雑そうな目を向けた。
「れ、レイン。パイ生地みたいにこねないで。女の子の胸がそんなにめずらしい?」
「うん。僕にはないものだからさ……。君のおっぱいを揉んでると思うと、おかしくなりそうなほど興奮する。前から思ってたけどニコのおっぱいって大きいよね。ここだけじゃなくてお尻もしっかり大きいし。ふふ、君を乗せてる時にいつも思ってたんだ」
「っそ、そんなこと思ってたの!? レインのへんたい。むっつり!」
お尻が大きいと思われてたなんて恥ずかしい。ニコルがふいと顔を背けると、男は楽しそうに笑った。
「拗ねないでよ、ナイスバディだって褒めてるんだ。ね、ニコのふわふわおっぱい舐めさせて。君のここをしゃぶるのを楽しみにしていたんだ」
たくさんぺろぺろしてあげるって前に言ったよね。
レインは口を開き、己の赤く長い舌を見せつけるようにべろりと出した。
「あっ……」
ぬらりと光る赤い舌。
蠢く肉に、ニコルは背をぞくりと震わせ身じろいだ。
その長い舌が、自分にどれほどの快楽を与えてくれるのかニコルはよく知っている。旅の最中、暗いテントの中で彼に捕らわれ、夜毎下着越しに胸を責められたことを思い出す。布越しでもあんなに気持ちよかったのに、直接触れられたらどうなるのか――。
ニコルが期待に唾を飲み込むと、レインの舌がぬるりと彼女の乳房に巻き付いた。
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