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第三話
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さく、さくと白雪を踏みしめる。転ばないように気をつけながら、ニコルは村の広場を目指した。
銀世界の中で輝く温かいランプの光。どこからか漂うジンジャークッキーの香りに、愉快な顔をした雪だるま。十二月を迎えたユッカ村は、聖夜の訪れを祝う雰囲気に満ちている。通り沿いには飾り立てられたトウヒのツリーが置かれ、風が吹くたび樹に留められたベルが美しい音を響かせた。
「はぁ……」
明るい景色に相応しくないどんよりとした溜息を、少女は何度も吐いた。
(レイン、心配してるだろうな)
自分の手を握りながら『行かないで』と引き止めてきた彼の顔は寂しそうだった。ひとりになるのを嫌う男だ、レインは今頃辛い思いをしながら自分の帰りを待っているに違いない。
(ごめんねレイン。でも、最近あなたに励まされるのが辛いの。私の劣等感が刺激されて……)
レインは驚くほど健気だ。間抜けな主を慰め、いつまでも従順に仕えてくれる。
手先が器用で、何でも出来て、美しい。
自分はそんな彼のことが大好きだ。
だからこそ思う。大切なレインをドジのニコルに仕えさせたままでよいのかと。
自分といる限り、彼はいつまでも陰口を叩かれてしまう。優しくて賢いトナカイなのに、魔女の使いだなんだと言われて忌避されてしまうのだ。
レインは大切なパートナーで、ひとつ屋根の下で育ってきた家族だ。いつまでも一緒にいたい。
しかし、自分は彼の傍にいる資格があるのだろうか?
共にいることで、レインを苦しめてしまわないだろうか。
「っ……。やだなあ、小さい頃は何も考えずレインに甘えられたのに……」
これから先、レインが間抜けなサンタクロースに愛想を尽かす時が来るかもしれない。そうなる前に、彼を解放してあげた方がいいのではないか。
近頃、ずっと考えてしまう。
レインのような優秀なトナカイは、他の誰かといた方が幸せになれるのではないかと。
「うぅ……そんなのいや……」
レインと離れる想像をすると胸がとても痛くなる。ニコルは彼を想い、また涙を流した。
……考え事をしているうちに、いつの間にか広場に着いてしまったらしい。
村の広場には、見上げるほど大きな祝祭の樹がある。その下には祖父の像とポストがあり、真っ白なライチョウがたくさんの手紙をせっせとポストの中に運び入れていた。
十二月になると、世界各地からサンタクロース宛の手紙が届く。
ユッカ村の成人、すなわちサンタクロースの務め。それは子供たちからの手紙に目を通し、各々が用意したプレゼントを聖夜に贈ることだ。
今年もこの時期がやってきた。
一年に一度の、サンタクロースの正念場。
ニコルは涙を拭き、自分の手に負えそうな仕事はあるだろうかとポストの蓋に手をかけた。
「あらぁ? 今日はレイン君と一緒じゃないのねえ」
粘っこい女の声が響く。
ニコルがはっと後ろを振り向くと、声の主は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ごきげんよう。レイン君はどうしたの? あなたが間抜けすぎて、とうとう大切なトナカイからも見放されてしまったのかしら?」
「……リザ」
「まあ、お鼻が真っ赤よ! まるで赤い鼻のトナカイみたい! いつも笑いもののニコルさん、あなたはそりを引いていた方がお似合いじゃなくって? んふふふふっ……!」
真っ直ぐにぶつけられる悪意に、ニコルは顔を強張らせた。
華やかな顔立ちをした少女は、背の低いニコルの頭から足先までをわざとらしく見つめ、嘲りの笑い声を上げた。
「貧相ね。今日もちんちくりんですこと」
長い銀髪をなびかせながら、リザはニコルへと近づいた。リザの歪んだ口元からは、どんな悪口を言ってやろうかという厭らしさが滲んでいる。ニコルは彼女から一歩一歩距離を取りつつ、己の不運を嘆いた。
(ど、どうしてこんな時に限ってリザに会うのよ。今は絶対に顔を会わせたくなかったのに……!)
リザ。
隣町に住む裕福な少女。ニコルは彼女が大の苦手だった。
リザは美しい。深緑のコートを着た彼女の立ち姿は、すらりとしていて上品だ。ぱっちりとした銀の瞳に、妖艶に輝く赤い唇。魅惑的なリザに想いを寄せる男は多く、彼女はいつも数人の男性を従えている。だが、今日はそのお仲間がいない。ひとりで姿を現したリザに、ニコルは嫌な予感がした。
「何か用なの? 私は仕事で忙しいのよ。嫌味だけ言いに来たならそこをどいてちょうだい」
リザを睨み付ける。すると彼女は己の唇に指を這わせ、ねっとりとした微笑みを浮かべた。
「お仕事ねぇ。サンタクロースの役目を十分に果たせないあなたに、できる仕事はあるのかしら?」
「……あるに、決まってるでしょ」
「随分と自信がなさそうに答えるのね。こんな情けない主に仕える羽目になって、レイン君は本当に可哀想だわ」
目を背けるニコルに、リザは美しくも歪んだ顔を近づけた。
「あなたと交渉しに来たのよ。ねえ、ドジのニコルさん。そろそろレイン君を渡す気になってくれた?」
その言葉に、ニコルはぎゅっと拳を握った。
ニコルがリザを嫌う訳。
それは彼女がレインに目を付けているからだった。
こうして声を掛けられるようになったのは数ヶ月前からだ。リザはユッカ村に寄った際、たまたま見かけたトナカイの獣人に興味を抱いたらしい。『毛色の違う男を味わってみたくなった』という理由で、リザはレインを渡すよう執拗に迫ってきた。
憂鬱の源、リザ。
意地悪な陰口に加え、彼女の存在が自分を苦しめ続けている……。
溜息を吐くニコルに構わず、リザは熱烈な声を上げた。
「わたくし、レイン君のことが欲しいのよ。毛並みが艷やかで、目は宝石みたいに輝いていて。顔立ちは獣そのものだけれど、立ち居振る舞いが紳士的で惹かれるわ。それに獣人は絶倫だと聞くの、夜もわたくしを満足させてくれそうよね?」
(……下品な)
「彼はこのわたくしのペットに相応しい。新たな王子様を迎えるために、ここまでひとりやって来たのよ。だって下僕を連れてきたら、彼らがレイン君に嫉妬してしまうでしょ?」
ニコルはこの場にいないレインを思い唇を噛み締めた。
……こんな女にレインを渡したくない。
「やめてよリザ。あなたみたいな浮気性な女に、うちのレインはやれないわ!」
「やれないですってぇ? 何様なのかしら、あなたこそ美しいレイン君を縛り付けないで。狭っ苦しいボロ小屋で過ごすより、高貴なわたくしに可愛がられた方が彼も幸せに決まってるわ。そうでしょう?」
「…………」
「ねえ、あなたのせいでレイン君が悪く言われているそうじゃない! 彼のことを思うのなら、手放してあげるのが正しい選択ではなくって? わたくしに迎え入れられたなら、誰もレイン君の悪口を言わなくなるわよ」
「…………っ」
黙りこくったニコルに、リザはにたにたと笑った。
「わたくしの町でも噂になってるわよ? ユッカ村には、プレゼントをひとつも届けられない落ちこぼれのサンタクロースがいるって! レイン君も報われないわねえ。一生懸命頑張ったって、主がこれではねぇ」
「やめて」
「ドジなあなたにレイン君が手懐けられるなら、わたくしにだってできるわ。さあ、彼を渡しなさい。そしたら聖夜には、たぁくさんの金貨をプレゼントしてあげる!」
「いやっ……嫌よ。レインは大切な家族なの。あなたなんかに渡さない! さっさとユッカ村から出ていって!」
叫んだニコルに、リザは凄みのある表情を浮かべた。
「聞き分けのない子ね。家族だなんて笑わせるわ、好きな男をわたくしに奪われるのが怖いだけでしょ? 今のあなた、すっごく浅ましい顔をしてるわよ」
「えっ?」
戸惑うニコルを突き飛ばし、リザは乱暴にポストの蓋を開けた。一番上にある封筒を引っ掴み、雪の上に座り込む少女に向けて叩きつける。
ニコルの金髪をぐっと掴み上げ、リザは低い声を出した。
「落ちこぼれのサンタクロースさん。あなたがどうしてもレイン君を渡してくれないというのなら、わたくしと勝負をしましょうよ」
「勝負?」
「その手紙を送った子供にプレゼントを届けることができれば、あなたの勝ち。届けることができなかったら、あなたの負け。どう、シンプルでしょう?」
リザはちろりと自分の唇を舐め、嬉しそうに囁いた。
「あなたが勝ったら、暫くはユッカ村に顔を出さないでいてあげる。だけどあなたが負けた場合……その時は問答無用でレイン君を奪うわ。下僕を連れて、彼をあなたの呪縛から救い出す。身の程知らずの女の子がどんなに喚いたって、もう二度とレイン君には会わせてあげない」
「なっ、なによそれ……」
「ふふっ、聖夜の訪れが楽しみねえ? 落ちこぼれのサンタクロースさんは、今年もひとつもプレゼントを届けられないのでしょうけど。んふふっ、あっははははははははは!」
リザは大笑いをし、呆然とするニコルに向けてまた『楽しみねえ』と繰り返した。
彼女は己の勝利を確認しているようだ。
ニコルの胸に焦燥感が込み上げる。
……自分がプレゼントを届けられなければ、レインと離れ離れになってしまう。
そんなの嫌だ。
ニコルは封筒を拾い上げ、リザを潤んだ目で見据えた。
「その勝負、受けて立つわ。私は絶対この子にプレゼントを届けてみせる! 私が勝ったら、二度とユッカ村に来ないでちょうだいっ……」
声が震える。
今にも泣き出してしまいそうなニコルを馬鹿にした目で見つめ、リザはくるりと踵を返した。
封筒を胸元に仕舞い、鼻を啜りながら帰路につく。道すがら、リザに投げかけられた言葉を思い出してしまう。
――あなたのせいでレイン君が悪く言われているそうじゃない! 彼のことを思うのなら、手放してあげるのが正しい選択ではなくって?
(そんなの分かってるよ。こんなちんちくりんより、誰か他の人に仕えた方がレインだって幸せかもしれない……。私だってそう考えたことがあるわ)
――レイン君も報われないわねえ、一生懸命頑張ったって、主がこれではねぇ。
(レインの傍にいたいと思うのは、私のわがままなのかもしれない。……ごめんねレイン。情けない主人で、本当にごめんね……)
痛い。リザの言葉が深く胸に突き刺さる。
こんなに痛いのは、彼女の言葉が正しいからだ。
「とにかく、今はプレゼントを届けることだけ考えないと……」
ニコルは気分を切り替えるために、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
今年こそ、サンタクロースの仕事を全うしなければならない。祖父とレインの顔を交互に思い浮かべつつ、ニコルは重い足取りで家に向かった。
*
「ニコ、随分遅かったじゃないか! もうっ、どこ行ってたの? 僕すっごく心配したんだよ」
家の前に着くなり、ニコルはぎゅうとレインに抱き締められた。ふわふわしたレインの頭に雪が被っている。彼はどうやら、外で主の帰宅を待っていたようだ。
「レイン、雪だらけじゃない! そんなんじゃ風邪を引いちゃうよ!」
「僕はもこもこしてるから寒くない。それよりも、ニコの方がずっと冷えてるじゃないか! ああ、駄目だ。君は体調を崩しやすいんだから! さあ、中に入って。僕が温めてあげる」
手を引かれ暖炉の前に座らされる。雪だらけの赤外套を脱がせ、レインはニコルの体をすっぽりと包み込んだ。
「ふふ。ニコが僕の腕の中にいる。幸せだ……可愛いニコ、僕のサンタクロース。僕たちはいつまでも一緒だよ。ずっとこうしていようね」
嬉しそうな男の声がニコルの胸をちくりと痛ませる。
彼女はレインの言葉に頷き、密かに涙を浮かべた。
*ー*ー*ー*ー*ー*
『きたの、ぎゅっとしたそらのきらめきがほしいです』
それだけが書かれた手紙。
おおよその者は首を傾げる内容だったが、『北のぎゅっとした空の煌めき』が何を指すのか、ニコルは幸いにして心当たりがあった。
分光石。
オニキスの如き艶やかな黒の地色、そして表層に踊る雲母に似た輝き。明かりを受けると、表面の結晶が強烈な七色の閃光を放つ。
天を彩る極光をそのまま映し取ったかのような神秘的な石。
それはこの国の一地方でしか採れない、非常に貴重な宝石だった。
「懐かしい。私も小さい頃に同じものを欲しがったんだよね。何でも言うことを聞くからって、おじいちゃんに一生懸命ねだったんだっけ」
朝起きたら、枕元に虹色の石が置かれていた時の嬉しさはよく覚えている。祖父から贈られた分光石のペンダントを握りしめ、ニコルは目を潤ませた。
(この子は、どんな思いでサンタクロースに便りを出したんだろう?)
静かな夜。
暖炉の傍で、持ち帰った手紙をじっと見つめる。
黄ばんだ紙に書かれた字は拙く、封筒は虫食いの跡がある。滲んだ文字をなぞって、ニコルは黒く汚れた指を見た。
(煤で書かれてる。インクを使えない環境にいるのかな)
封筒に染み付いた黴のにおい。湿気た紙に、ところどころ綴りを間違えている文字。
この子供は、おそらく貧困の中で暮らしている。古びた紙に一生懸命欲しいものを書いて、異国のサンタクロースに願いを託したのだろう。
叶えてあげたい。
ニコルは、真っ先にそう思った。
(リザのこととか、悪口を言われてしまうんじゃないかとか……。気がかりなことはたくさんある。でもそれ以前に、私はひとりのサンタクロースとしてこの子に笑顔を届けたい)
枕元にプレゼントが置かれていた時のあの喜びを、この子にも味わってほしい。紅色の目を瞬かせ、ニコルは決心した。
「楽しみに待っててね。絶対にあなたの願いを叶えてみせるから」
*
翌朝。
ベッドの上でレインに抱き締められながら、ニコルはひらひらと地図を見せた。
「――という訳で、分光石を採掘しに行きたいの」
「駄目だね、危険な鉱山にニコを行かせたくない! というか、どうしてわざわざ採掘に? 分光石なんて隣町で売ってるじゃないか」
「お土産屋さんの分光石は品質が良くないし、綺麗に光るものを買おうとすると物凄く高くなるわ。それに今年は深雪で各地の物流が滞ってる。分光石がお店に並んでいないらしいのよ」
男の胸に顔を埋め、ニコルは一生懸命に頼み込んだ。
「だから、レインの力を借りたいの。ね、いいでしょ。ユッカ村いちばんのトナカイさん、私をここに連れて行って!」
押し付けられた地図には大きな赤丸が記されている。目的地を指し示す印をレインはちらと見遣った。
「うーん……。僕を頼りにしてくれるのは嬉しいんだけどさあ……」
レインは歯切れの悪い様子で返事をした。彼の眉が、いかにも気がかりだといった調子で顰められる。
「僕の足でも、鉱山まではそれなりの日数がかかるよ。今年は悪天候続きで、道中吹雪に見舞われる可能性だって高い。僕は何てことないけど、君は体が弱いんだ。野営中に絶対体調を崩すだろ」
「崩さないもん」
「いいや、崩すね。何年ニコのことを見てきたと思ってるんだ」
レインは溜息を吐き、ベッド横のテーブルに置かれた便りを手に取った。
「空の煌めきが欲しい……か。ニコ、どうしてそんなに食いつくんだい? 危険を冒して鉱山に行くなんて君らしくないよ」
「この子がどういう思いでサンタクロースに手紙を出したのか考えたら、居ても立っても居られなくなったの」
煤、虫食い、黴、しみだらけの封筒。この子供にとっては、紙もペンも貴重品なのかもしれない。
「この便りは、今まで見た手紙の中で一番ぼろぼろだわ。まともな紙も買えない暮らしをしている中で、ささやかな願いをサンタクロースに託したのだとしたら。私はそれを、何としても叶えてあげなくちゃいけない」
北の、ぎゅっとした空の煌めき。
それが何を指すのか知る自分のもとに、この手紙はやって来た。
(他のサンタクロースは、この子が何を望んでいるのかきっと分からない。だから、私がこの便りを受け取ったことに運命的なものを感じるの)
自分はサンタクロースになってから、ひとつもプレゼントを送り届けられなかった落ちこぼれ。
でも、今年こそは変わりたい。大きくて綺麗な煌めきを届けてこの子を笑顔にしてあげたい。
(……それに)
――その手紙を送った子供にプレゼントを届けることができれば、あなたの勝ち。届けることができなかったら、あなたの負け。
(あんな女に負けたくない。レインと離れ離れになりたくない!)
リザがレインの背に乗ったり、胸元の毛に顔を埋めているところを想像すると酷く不快になる。レインにそんなことをしていいのは自分だけだ。
ニコルはベッドから勢い良く起き上がり、聖人の赤外套を羽織った。
「よし、行ってくる」
一掴みの金貨を鞄に放り込み、素早く支度を進めていく。袋に旅糧を投げ入れる主にレインは首を傾げた。
「ニコ……何してるの?」
「旅の準備よ。レインが連れて行ってくれないならひとりで行くわ」
「ま、待って! 鉱山まで君が辿り着ける訳ないじゃないか、途中で遭難しちゃうよ! ねえニコ、やめよう? この仕事は他のサンタクロースに任せようよ」
「いくら止めても聞かないわよ。私は行くの、何としても分光石を手に入れる!」
おっとりとした目元を一生懸命に吊り上がらせ、ニコルは力強く言い切った。いつもらしくない主の様子にレインは戸惑ったが、やがて観念したように両手を上げた。
「ああもう分かった! そこまで言うなら僕が連れて行く!」
「えっ、本当に? やったぁ、優しいトナカイさんならそう言ってくれると思ってたわ! ありがとうレイン!」
自分に抱きついてくる少女に顔を赤らめ、レインはニコルの頬をぺろりと舐めた。
「大好きなニコを放っておくことなんてできないよ。ねえ、気がついてる? 君は地図を読み間違えてるよ」
「へっ?」
ふわふわの指が、地図に記された赤丸の上に置かれる。ニコルがよく見ると印を付けた場所は鉱山ではなく、前人未踏の絶崖だった。
「鉱山は逆方向だよ、可愛いニコ。君はいったいどこへ行こうとしてたんだい?」
「…………」
恥ずかしそうに俯くニコルに、レインは『やっぱり僕がいないと駄目だなあ』と嬉しそうに呟いた。
銀世界の中で輝く温かいランプの光。どこからか漂うジンジャークッキーの香りに、愉快な顔をした雪だるま。十二月を迎えたユッカ村は、聖夜の訪れを祝う雰囲気に満ちている。通り沿いには飾り立てられたトウヒのツリーが置かれ、風が吹くたび樹に留められたベルが美しい音を響かせた。
「はぁ……」
明るい景色に相応しくないどんよりとした溜息を、少女は何度も吐いた。
(レイン、心配してるだろうな)
自分の手を握りながら『行かないで』と引き止めてきた彼の顔は寂しそうだった。ひとりになるのを嫌う男だ、レインは今頃辛い思いをしながら自分の帰りを待っているに違いない。
(ごめんねレイン。でも、最近あなたに励まされるのが辛いの。私の劣等感が刺激されて……)
レインは驚くほど健気だ。間抜けな主を慰め、いつまでも従順に仕えてくれる。
手先が器用で、何でも出来て、美しい。
自分はそんな彼のことが大好きだ。
だからこそ思う。大切なレインをドジのニコルに仕えさせたままでよいのかと。
自分といる限り、彼はいつまでも陰口を叩かれてしまう。優しくて賢いトナカイなのに、魔女の使いだなんだと言われて忌避されてしまうのだ。
レインは大切なパートナーで、ひとつ屋根の下で育ってきた家族だ。いつまでも一緒にいたい。
しかし、自分は彼の傍にいる資格があるのだろうか?
共にいることで、レインを苦しめてしまわないだろうか。
「っ……。やだなあ、小さい頃は何も考えずレインに甘えられたのに……」
これから先、レインが間抜けなサンタクロースに愛想を尽かす時が来るかもしれない。そうなる前に、彼を解放してあげた方がいいのではないか。
近頃、ずっと考えてしまう。
レインのような優秀なトナカイは、他の誰かといた方が幸せになれるのではないかと。
「うぅ……そんなのいや……」
レインと離れる想像をすると胸がとても痛くなる。ニコルは彼を想い、また涙を流した。
……考え事をしているうちに、いつの間にか広場に着いてしまったらしい。
村の広場には、見上げるほど大きな祝祭の樹がある。その下には祖父の像とポストがあり、真っ白なライチョウがたくさんの手紙をせっせとポストの中に運び入れていた。
十二月になると、世界各地からサンタクロース宛の手紙が届く。
ユッカ村の成人、すなわちサンタクロースの務め。それは子供たちからの手紙に目を通し、各々が用意したプレゼントを聖夜に贈ることだ。
今年もこの時期がやってきた。
一年に一度の、サンタクロースの正念場。
ニコルは涙を拭き、自分の手に負えそうな仕事はあるだろうかとポストの蓋に手をかけた。
「あらぁ? 今日はレイン君と一緒じゃないのねえ」
粘っこい女の声が響く。
ニコルがはっと後ろを振り向くと、声の主は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ごきげんよう。レイン君はどうしたの? あなたが間抜けすぎて、とうとう大切なトナカイからも見放されてしまったのかしら?」
「……リザ」
「まあ、お鼻が真っ赤よ! まるで赤い鼻のトナカイみたい! いつも笑いもののニコルさん、あなたはそりを引いていた方がお似合いじゃなくって? んふふふふっ……!」
真っ直ぐにぶつけられる悪意に、ニコルは顔を強張らせた。
華やかな顔立ちをした少女は、背の低いニコルの頭から足先までをわざとらしく見つめ、嘲りの笑い声を上げた。
「貧相ね。今日もちんちくりんですこと」
長い銀髪をなびかせながら、リザはニコルへと近づいた。リザの歪んだ口元からは、どんな悪口を言ってやろうかという厭らしさが滲んでいる。ニコルは彼女から一歩一歩距離を取りつつ、己の不運を嘆いた。
(ど、どうしてこんな時に限ってリザに会うのよ。今は絶対に顔を会わせたくなかったのに……!)
リザ。
隣町に住む裕福な少女。ニコルは彼女が大の苦手だった。
リザは美しい。深緑のコートを着た彼女の立ち姿は、すらりとしていて上品だ。ぱっちりとした銀の瞳に、妖艶に輝く赤い唇。魅惑的なリザに想いを寄せる男は多く、彼女はいつも数人の男性を従えている。だが、今日はそのお仲間がいない。ひとりで姿を現したリザに、ニコルは嫌な予感がした。
「何か用なの? 私は仕事で忙しいのよ。嫌味だけ言いに来たならそこをどいてちょうだい」
リザを睨み付ける。すると彼女は己の唇に指を這わせ、ねっとりとした微笑みを浮かべた。
「お仕事ねぇ。サンタクロースの役目を十分に果たせないあなたに、できる仕事はあるのかしら?」
「……あるに、決まってるでしょ」
「随分と自信がなさそうに答えるのね。こんな情けない主に仕える羽目になって、レイン君は本当に可哀想だわ」
目を背けるニコルに、リザは美しくも歪んだ顔を近づけた。
「あなたと交渉しに来たのよ。ねえ、ドジのニコルさん。そろそろレイン君を渡す気になってくれた?」
その言葉に、ニコルはぎゅっと拳を握った。
ニコルがリザを嫌う訳。
それは彼女がレインに目を付けているからだった。
こうして声を掛けられるようになったのは数ヶ月前からだ。リザはユッカ村に寄った際、たまたま見かけたトナカイの獣人に興味を抱いたらしい。『毛色の違う男を味わってみたくなった』という理由で、リザはレインを渡すよう執拗に迫ってきた。
憂鬱の源、リザ。
意地悪な陰口に加え、彼女の存在が自分を苦しめ続けている……。
溜息を吐くニコルに構わず、リザは熱烈な声を上げた。
「わたくし、レイン君のことが欲しいのよ。毛並みが艷やかで、目は宝石みたいに輝いていて。顔立ちは獣そのものだけれど、立ち居振る舞いが紳士的で惹かれるわ。それに獣人は絶倫だと聞くの、夜もわたくしを満足させてくれそうよね?」
(……下品な)
「彼はこのわたくしのペットに相応しい。新たな王子様を迎えるために、ここまでひとりやって来たのよ。だって下僕を連れてきたら、彼らがレイン君に嫉妬してしまうでしょ?」
ニコルはこの場にいないレインを思い唇を噛み締めた。
……こんな女にレインを渡したくない。
「やめてよリザ。あなたみたいな浮気性な女に、うちのレインはやれないわ!」
「やれないですってぇ? 何様なのかしら、あなたこそ美しいレイン君を縛り付けないで。狭っ苦しいボロ小屋で過ごすより、高貴なわたくしに可愛がられた方が彼も幸せに決まってるわ。そうでしょう?」
「…………」
「ねえ、あなたのせいでレイン君が悪く言われているそうじゃない! 彼のことを思うのなら、手放してあげるのが正しい選択ではなくって? わたくしに迎え入れられたなら、誰もレイン君の悪口を言わなくなるわよ」
「…………っ」
黙りこくったニコルに、リザはにたにたと笑った。
「わたくしの町でも噂になってるわよ? ユッカ村には、プレゼントをひとつも届けられない落ちこぼれのサンタクロースがいるって! レイン君も報われないわねえ。一生懸命頑張ったって、主がこれではねぇ」
「やめて」
「ドジなあなたにレイン君が手懐けられるなら、わたくしにだってできるわ。さあ、彼を渡しなさい。そしたら聖夜には、たぁくさんの金貨をプレゼントしてあげる!」
「いやっ……嫌よ。レインは大切な家族なの。あなたなんかに渡さない! さっさとユッカ村から出ていって!」
叫んだニコルに、リザは凄みのある表情を浮かべた。
「聞き分けのない子ね。家族だなんて笑わせるわ、好きな男をわたくしに奪われるのが怖いだけでしょ? 今のあなた、すっごく浅ましい顔をしてるわよ」
「えっ?」
戸惑うニコルを突き飛ばし、リザは乱暴にポストの蓋を開けた。一番上にある封筒を引っ掴み、雪の上に座り込む少女に向けて叩きつける。
ニコルの金髪をぐっと掴み上げ、リザは低い声を出した。
「落ちこぼれのサンタクロースさん。あなたがどうしてもレイン君を渡してくれないというのなら、わたくしと勝負をしましょうよ」
「勝負?」
「その手紙を送った子供にプレゼントを届けることができれば、あなたの勝ち。届けることができなかったら、あなたの負け。どう、シンプルでしょう?」
リザはちろりと自分の唇を舐め、嬉しそうに囁いた。
「あなたが勝ったら、暫くはユッカ村に顔を出さないでいてあげる。だけどあなたが負けた場合……その時は問答無用でレイン君を奪うわ。下僕を連れて、彼をあなたの呪縛から救い出す。身の程知らずの女の子がどんなに喚いたって、もう二度とレイン君には会わせてあげない」
「なっ、なによそれ……」
「ふふっ、聖夜の訪れが楽しみねえ? 落ちこぼれのサンタクロースさんは、今年もひとつもプレゼントを届けられないのでしょうけど。んふふっ、あっははははははははは!」
リザは大笑いをし、呆然とするニコルに向けてまた『楽しみねえ』と繰り返した。
彼女は己の勝利を確認しているようだ。
ニコルの胸に焦燥感が込み上げる。
……自分がプレゼントを届けられなければ、レインと離れ離れになってしまう。
そんなの嫌だ。
ニコルは封筒を拾い上げ、リザを潤んだ目で見据えた。
「その勝負、受けて立つわ。私は絶対この子にプレゼントを届けてみせる! 私が勝ったら、二度とユッカ村に来ないでちょうだいっ……」
声が震える。
今にも泣き出してしまいそうなニコルを馬鹿にした目で見つめ、リザはくるりと踵を返した。
封筒を胸元に仕舞い、鼻を啜りながら帰路につく。道すがら、リザに投げかけられた言葉を思い出してしまう。
――あなたのせいでレイン君が悪く言われているそうじゃない! 彼のことを思うのなら、手放してあげるのが正しい選択ではなくって?
(そんなの分かってるよ。こんなちんちくりんより、誰か他の人に仕えた方がレインだって幸せかもしれない……。私だってそう考えたことがあるわ)
――レイン君も報われないわねえ、一生懸命頑張ったって、主がこれではねぇ。
(レインの傍にいたいと思うのは、私のわがままなのかもしれない。……ごめんねレイン。情けない主人で、本当にごめんね……)
痛い。リザの言葉が深く胸に突き刺さる。
こんなに痛いのは、彼女の言葉が正しいからだ。
「とにかく、今はプレゼントを届けることだけ考えないと……」
ニコルは気分を切り替えるために、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
今年こそ、サンタクロースの仕事を全うしなければならない。祖父とレインの顔を交互に思い浮かべつつ、ニコルは重い足取りで家に向かった。
*
「ニコ、随分遅かったじゃないか! もうっ、どこ行ってたの? 僕すっごく心配したんだよ」
家の前に着くなり、ニコルはぎゅうとレインに抱き締められた。ふわふわしたレインの頭に雪が被っている。彼はどうやら、外で主の帰宅を待っていたようだ。
「レイン、雪だらけじゃない! そんなんじゃ風邪を引いちゃうよ!」
「僕はもこもこしてるから寒くない。それよりも、ニコの方がずっと冷えてるじゃないか! ああ、駄目だ。君は体調を崩しやすいんだから! さあ、中に入って。僕が温めてあげる」
手を引かれ暖炉の前に座らされる。雪だらけの赤外套を脱がせ、レインはニコルの体をすっぽりと包み込んだ。
「ふふ。ニコが僕の腕の中にいる。幸せだ……可愛いニコ、僕のサンタクロース。僕たちはいつまでも一緒だよ。ずっとこうしていようね」
嬉しそうな男の声がニコルの胸をちくりと痛ませる。
彼女はレインの言葉に頷き、密かに涙を浮かべた。
*ー*ー*ー*ー*ー*
『きたの、ぎゅっとしたそらのきらめきがほしいです』
それだけが書かれた手紙。
おおよその者は首を傾げる内容だったが、『北のぎゅっとした空の煌めき』が何を指すのか、ニコルは幸いにして心当たりがあった。
分光石。
オニキスの如き艶やかな黒の地色、そして表層に踊る雲母に似た輝き。明かりを受けると、表面の結晶が強烈な七色の閃光を放つ。
天を彩る極光をそのまま映し取ったかのような神秘的な石。
それはこの国の一地方でしか採れない、非常に貴重な宝石だった。
「懐かしい。私も小さい頃に同じものを欲しがったんだよね。何でも言うことを聞くからって、おじいちゃんに一生懸命ねだったんだっけ」
朝起きたら、枕元に虹色の石が置かれていた時の嬉しさはよく覚えている。祖父から贈られた分光石のペンダントを握りしめ、ニコルは目を潤ませた。
(この子は、どんな思いでサンタクロースに便りを出したんだろう?)
静かな夜。
暖炉の傍で、持ち帰った手紙をじっと見つめる。
黄ばんだ紙に書かれた字は拙く、封筒は虫食いの跡がある。滲んだ文字をなぞって、ニコルは黒く汚れた指を見た。
(煤で書かれてる。インクを使えない環境にいるのかな)
封筒に染み付いた黴のにおい。湿気た紙に、ところどころ綴りを間違えている文字。
この子供は、おそらく貧困の中で暮らしている。古びた紙に一生懸命欲しいものを書いて、異国のサンタクロースに願いを託したのだろう。
叶えてあげたい。
ニコルは、真っ先にそう思った。
(リザのこととか、悪口を言われてしまうんじゃないかとか……。気がかりなことはたくさんある。でもそれ以前に、私はひとりのサンタクロースとしてこの子に笑顔を届けたい)
枕元にプレゼントが置かれていた時のあの喜びを、この子にも味わってほしい。紅色の目を瞬かせ、ニコルは決心した。
「楽しみに待っててね。絶対にあなたの願いを叶えてみせるから」
*
翌朝。
ベッドの上でレインに抱き締められながら、ニコルはひらひらと地図を見せた。
「――という訳で、分光石を採掘しに行きたいの」
「駄目だね、危険な鉱山にニコを行かせたくない! というか、どうしてわざわざ採掘に? 分光石なんて隣町で売ってるじゃないか」
「お土産屋さんの分光石は品質が良くないし、綺麗に光るものを買おうとすると物凄く高くなるわ。それに今年は深雪で各地の物流が滞ってる。分光石がお店に並んでいないらしいのよ」
男の胸に顔を埋め、ニコルは一生懸命に頼み込んだ。
「だから、レインの力を借りたいの。ね、いいでしょ。ユッカ村いちばんのトナカイさん、私をここに連れて行って!」
押し付けられた地図には大きな赤丸が記されている。目的地を指し示す印をレインはちらと見遣った。
「うーん……。僕を頼りにしてくれるのは嬉しいんだけどさあ……」
レインは歯切れの悪い様子で返事をした。彼の眉が、いかにも気がかりだといった調子で顰められる。
「僕の足でも、鉱山まではそれなりの日数がかかるよ。今年は悪天候続きで、道中吹雪に見舞われる可能性だって高い。僕は何てことないけど、君は体が弱いんだ。野営中に絶対体調を崩すだろ」
「崩さないもん」
「いいや、崩すね。何年ニコのことを見てきたと思ってるんだ」
レインは溜息を吐き、ベッド横のテーブルに置かれた便りを手に取った。
「空の煌めきが欲しい……か。ニコ、どうしてそんなに食いつくんだい? 危険を冒して鉱山に行くなんて君らしくないよ」
「この子がどういう思いでサンタクロースに手紙を出したのか考えたら、居ても立っても居られなくなったの」
煤、虫食い、黴、しみだらけの封筒。この子供にとっては、紙もペンも貴重品なのかもしれない。
「この便りは、今まで見た手紙の中で一番ぼろぼろだわ。まともな紙も買えない暮らしをしている中で、ささやかな願いをサンタクロースに託したのだとしたら。私はそれを、何としても叶えてあげなくちゃいけない」
北の、ぎゅっとした空の煌めき。
それが何を指すのか知る自分のもとに、この手紙はやって来た。
(他のサンタクロースは、この子が何を望んでいるのかきっと分からない。だから、私がこの便りを受け取ったことに運命的なものを感じるの)
自分はサンタクロースになってから、ひとつもプレゼントを送り届けられなかった落ちこぼれ。
でも、今年こそは変わりたい。大きくて綺麗な煌めきを届けてこの子を笑顔にしてあげたい。
(……それに)
――その手紙を送った子供にプレゼントを届けることができれば、あなたの勝ち。届けることができなかったら、あなたの負け。
(あんな女に負けたくない。レインと離れ離れになりたくない!)
リザがレインの背に乗ったり、胸元の毛に顔を埋めているところを想像すると酷く不快になる。レインにそんなことをしていいのは自分だけだ。
ニコルはベッドから勢い良く起き上がり、聖人の赤外套を羽織った。
「よし、行ってくる」
一掴みの金貨を鞄に放り込み、素早く支度を進めていく。袋に旅糧を投げ入れる主にレインは首を傾げた。
「ニコ……何してるの?」
「旅の準備よ。レインが連れて行ってくれないならひとりで行くわ」
「ま、待って! 鉱山まで君が辿り着ける訳ないじゃないか、途中で遭難しちゃうよ! ねえニコ、やめよう? この仕事は他のサンタクロースに任せようよ」
「いくら止めても聞かないわよ。私は行くの、何としても分光石を手に入れる!」
おっとりとした目元を一生懸命に吊り上がらせ、ニコルは力強く言い切った。いつもらしくない主の様子にレインは戸惑ったが、やがて観念したように両手を上げた。
「ああもう分かった! そこまで言うなら僕が連れて行く!」
「えっ、本当に? やったぁ、優しいトナカイさんならそう言ってくれると思ってたわ! ありがとうレイン!」
自分に抱きついてくる少女に顔を赤らめ、レインはニコルの頬をぺろりと舐めた。
「大好きなニコを放っておくことなんてできないよ。ねえ、気がついてる? 君は地図を読み間違えてるよ」
「へっ?」
ふわふわの指が、地図に記された赤丸の上に置かれる。ニコルがよく見ると印を付けた場所は鉱山ではなく、前人未踏の絶崖だった。
「鉱山は逆方向だよ、可愛いニコ。君はいったいどこへ行こうとしてたんだい?」
「…………」
恥ずかしそうに俯くニコルに、レインは『やっぱり僕がいないと駄目だなあ』と嬉しそうに呟いた。
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