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ビデオ
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私が父と一緒に住んでいた時の話です。
母は私を産んでからすぐに病気で亡くなってしまったので、私は母の記憶がありません。
でも、母は自分にビデオテープを残してくれた。
今では、ビデオデッキも中々家にない時代だけど、
母はレトロ好きな父に合わせて、
ビデオで残してくれたのです。
毎年、毎年、誕生日に合わせて母はメッセージをビデオに残してくれました。
そのビデオは20歳の誕生日まで用意されていました。
この頃の私はある男性に夢中になり、ビデオの存在を忘れてしまったのです。
その男性は、いわゆる最低な男でした。
DVや私のお金も取ってギャンブルな毎日。
でも、その当時は嫌じゃなかった。
支配されながは、青アザをいっぱい作りながら彼の為に一生懸命でした。
誕生日が過ぎて1か月経った頃父の体調が悪くなり入院する事になりました。
「お父さん、大丈夫?」
私はすぐお見舞いに行きました。
病院はいつも通っている所だったので、家から近くて安心しました。
「大丈夫!ちょっと油断した。ちゃんと薬を飲まなきゃだなあ」
父は笑っていた。
「おい!ところで、誕生日はお前どこに居たんだ?」
「あっ…友達の家にいたよ」
嘘をついた。これで何度目だろう。彼がいる事を父は知らない。
「お母さんのメッセージ聞いたか?俺も聞いた事ないから、どんなメッセージが入っていたのか聞きたいなあ…最後のメッセージだなあ」
「あっ…うん」
まだ、聞いていなかった。
「聞いたよ。お父さんには内緒」
「内緒?女同士の内緒かあ?ははは」
父は悲しそうに笑っていた。
多分、全部見透かされているのだ。
父の病院から帰って、自分の部屋に。
「ごめんね、お母さん…」
私は遅れたが、お母さんからの最後のビデオメッセージを聞く事にした。
ジッジ…ジッジ…ジッジ
「あれ?」
中々、ビデオが再生されない。
「お母さん…遅れたから、怒ったのかなあ」
その瞬間!
お母さんが映っていた。
「誕生日おめでとう。20歳の誕生日。1か月遅れやね…コラァ!!ダメよー。ふふふ」
なっ何で1か月遅れで見てるって…知ってるの?
「お父さん、入院してるから心配だけど、すぐに元気になるから、安心しな」
お母さん?何で?何?!このビデオ
不思議と怖くはなかった。
「後ね、気がかりなのは、あんたの彼氏。別れなさい。って言っても、できないよね…
優しい子やんもね。でも大丈夫!それは本当の恋じゃないからね。お母さんがあんたの彼氏を煎餅みたいにしてやるからね。私の大事なあんたを毎日いじめて本当に頭にきてるからね!」
お母さん…は何でもお見通しなんだね。
20年前に撮ったビデオメッセージなのに、私がどんな人になる事も分かっていたんだね。
涙がどんどん溢れてきました。
「お母さんはいつもずっと見てるからね」
私のお母さん。最後のビデオメッセージが終わりました。
次の日、彼氏はトラックに轢かれました。
「ははは、お母さん…本当に煎餅にしたんだね…ははは」
私の大好きなお母さんの話です。
母は私を産んでからすぐに病気で亡くなってしまったので、私は母の記憶がありません。
でも、母は自分にビデオテープを残してくれた。
今では、ビデオデッキも中々家にない時代だけど、
母はレトロ好きな父に合わせて、
ビデオで残してくれたのです。
毎年、毎年、誕生日に合わせて母はメッセージをビデオに残してくれました。
そのビデオは20歳の誕生日まで用意されていました。
この頃の私はある男性に夢中になり、ビデオの存在を忘れてしまったのです。
その男性は、いわゆる最低な男でした。
DVや私のお金も取ってギャンブルな毎日。
でも、その当時は嫌じゃなかった。
支配されながは、青アザをいっぱい作りながら彼の為に一生懸命でした。
誕生日が過ぎて1か月経った頃父の体調が悪くなり入院する事になりました。
「お父さん、大丈夫?」
私はすぐお見舞いに行きました。
病院はいつも通っている所だったので、家から近くて安心しました。
「大丈夫!ちょっと油断した。ちゃんと薬を飲まなきゃだなあ」
父は笑っていた。
「おい!ところで、誕生日はお前どこに居たんだ?」
「あっ…友達の家にいたよ」
嘘をついた。これで何度目だろう。彼がいる事を父は知らない。
「お母さんのメッセージ聞いたか?俺も聞いた事ないから、どんなメッセージが入っていたのか聞きたいなあ…最後のメッセージだなあ」
「あっ…うん」
まだ、聞いていなかった。
「聞いたよ。お父さんには内緒」
「内緒?女同士の内緒かあ?ははは」
父は悲しそうに笑っていた。
多分、全部見透かされているのだ。
父の病院から帰って、自分の部屋に。
「ごめんね、お母さん…」
私は遅れたが、お母さんからの最後のビデオメッセージを聞く事にした。
ジッジ…ジッジ…ジッジ
「あれ?」
中々、ビデオが再生されない。
「お母さん…遅れたから、怒ったのかなあ」
その瞬間!
お母さんが映っていた。
「誕生日おめでとう。20歳の誕生日。1か月遅れやね…コラァ!!ダメよー。ふふふ」
なっ何で1か月遅れで見てるって…知ってるの?
「お父さん、入院してるから心配だけど、すぐに元気になるから、安心しな」
お母さん?何で?何?!このビデオ
不思議と怖くはなかった。
「後ね、気がかりなのは、あんたの彼氏。別れなさい。って言っても、できないよね…
優しい子やんもね。でも大丈夫!それは本当の恋じゃないからね。お母さんがあんたの彼氏を煎餅みたいにしてやるからね。私の大事なあんたを毎日いじめて本当に頭にきてるからね!」
お母さん…は何でもお見通しなんだね。
20年前に撮ったビデオメッセージなのに、私がどんな人になる事も分かっていたんだね。
涙がどんどん溢れてきました。
「お母さんはいつもずっと見てるからね」
私のお母さん。最後のビデオメッセージが終わりました。
次の日、彼氏はトラックに轢かれました。
「ははは、お母さん…本当に煎餅にしたんだね…ははは」
私の大好きなお母さんの話です。
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