ちょっと不思議な怖い話

桃香

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妄想 3

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3.


あれから、加藤くんと連絡が取れない。
毎日LINEeしているんだけど、
既読にはなっても、返信が返ってこないの。

完全に嫌われた。


そう思っていた。


やっぱり、初めての彼氏だと、
ダメージが強くて会社にも行けない。


もう、何日休んだかなあ…


そんな時、あけみからLINEeが…


『会社、ずっと休んでるみたいだけど
大丈夫?
今度、私の家で愚痴大会でもしようよ?笑』


あけみの優しさが本当に嬉しかった。

『ありがとう。家に引きこもっていたけど
久しぶりに外に出てみようかなあ。』


私は久しぶりに人と会うのを楽しみにしながらも、加藤くんについても相談しようと思いあけみの家に行きました。

あけみの家は入社歓迎会の時に終電を逃した女性たちがあけみの家に泊まったから、
なんとなく、道のりはわかっていました。

『ここかなあ…
あけみの家は会社に近いから道に迷わなかった。』


ピンポーン


「はーい。あいてますよー。」


ドアを開けたらそこに立っていたのは
あけみじゃなくて、加藤くんでした。

「なっなんで?加藤くんが?」

身体が固まっていくのを感じた。

「言ってなかった、ごめんね。
私達付き合っているんだ。」


「…」


加藤くんは何も言わない。
ただ笑顔で私を見てくる。



「びっくりした?加藤くんが言うなって言うから今日の今まで言えなかったんだ。
まあ、上がって上がって!」




その言葉を聞いた瞬間、怒りが…
ふつふつと湧き上がっていく憤怒を感じた。

今まで楽しかった想い出が全て嘘だったんだ…嘘だったんだ…何で…何で…


私は膝から崩れ落ちた。



「………………。」




どれだけの時間が経ったかなあ…


部屋の中が暗い、実際、灯りはついているのに暗く感じる。
目に水が入って滲んで見える。


汗かなあ?

いやあ…違う…血だ。





辺りを見回すとあけみも加藤くんも
倒れている。しかも血まみれで…

「だっ大丈夫!?どうしたの?」

私は駆け寄った。
気が動揺しながらも右手にしっかり
握られている物を目にした。

包丁だ。


「ゔわあわあわあわあわ!!!!」


私がやったの???

全然覚えてない…!


ゆっくりあけみの方に近づいていく。

タコパでもしようと思っていたのか、

テーブルにはタコ焼き機が置いてある。


入社歓迎会の後、同僚とみんなとしたタコパの思い出が蘇る。

『楽しかったなあ…』

加藤くんは…

加藤くんは、どうなった?大丈夫?

あれ?!


いない…



いない…


いない…


加藤くんはどこを探してもいなかった。


ただ、目の前にいるのは

血まみれのあけみ。

知らないメガネをかけた男性。



どうなってるの?どうなっているの?

はあはあ…

誰?この人?誰ー?


おかしい!何もかもがおかしい!
加藤くんは!どこにいるの?



「はあはあ、LINEeだ!LINEe」

私は自分のカバンを貪った。


スマホを取り出しLINEeを見た。

加藤くん何て名前はない。

「ない!ない!何で!
消してないのに!ない!」


しばらく、呆然としていると、

………


はっと気がついた。


………



…………


『私の…妄想だあ…』


そうです。

私は妄想をやめていなかった。

むしろ、現実と妄想の狭間が分からなくなっていた。


『はははは、こっこれは妄想だよね!
妄想だあああ』



加藤くん何て人物はいなかった!
妄想の中での彼氏。

いやいやいやー!


どこからが、私の妄想なの?
合コンは?
会社は??
私の………容姿は…


鏡に映った自分は、


全くの別人だった。


髪はパサパサのショート。
中肉の体型。
冴えない顔。



「こっこれが…私…私なの?

いやあああ!!!!」


身体の力が抜け落ちていくのを感じながら、ある事を…思い出していた。


あけみは会社の同僚でなく、大学時代の友達。あけみは外資系会社に就職が決まったけど、私だけが、決まらなくて…

ずっとずっと悩んで…


私はあけみを見下ろした。


「あ…けみに…なりたかったんだ…は…ははは…」







………



………

LINEeには、

メッセージ…

「久しぶりに会いたいね!
私、結婚する事になってね、
紹介したいから、、、是非遊びに来てね」




境界線はすぐに分からなくなってしまう。


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