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手紙
しおりを挟む私は広島県にある集落に住んでいました。父が早くに亡くなり、母も追うように亡くなったのです。
なので親戚の家に住みながら、子供時代を過ごしていました。
当時は10歳で仲の良い友達が1人いまして、
その子の名前は「みとちゃん」
女の子でした。
ここの集落には不思議な習慣がありまして
10歳になると、女児は大人の女性とみなされます。
そして真夏の夜に
女性達はある家の中に入っていくのです。
「行きたくないなあ」とみとちゃんは言いました。
「行かなきゃいいよ」私は言いました。
「でも、お母さんが、行かんとダメって言うけん」
「そうなんか…いつも不思議じゃったんだけど…毎年毎年何をしてるんじゃろ?」
「うちもお母さんに聞いたんじゃけど
教えてくれんのよ」
「ふーん…じゃ、行ったら教えて!」
「いいよ!」
みとちゃんと約束をしました。
ある日の事…この日は猛暑でここの集落の最高気温を叩き出していました。
私はみとちゃんの事が気になって気になって仕方がありません。
みとちゃんの家は50メートル先にあって
近かったから、こっそり覗きに行きました。
「早く用意せんとっ」みとちゃんのお母さんが怒っています。
「もう、出来とる」
みとちゃんは元気がありません。
「手紙持った?」
「手紙持ったよ」
「今日はお父さんを流すんやけんな」
「お父さん…かわいそう」
「かわいそうじゃない!可哀想なのは
お母さんとあんたじゃけんな。」
『流す?ってなんじゃ?』私は思いました。
みとちゃんとお母さんは綺麗なお洋服を
着て、ある手紙を持ってとある家に行きました。
私は後をついて行きました。
ある家とは、ここの集落で長寿のお婆が、すんでいる家でした。
みとちゃんとお母さんの他にも、近所の女性たちが集まっています。
「あの手紙…って何だろう」
私は不思議でした。
長寿のお婆が話をしています。
「手紙は持ってきたか?
手紙がないとあの世に行けんからな。
名前を書いて、後は…うん
今年は川上さんの旦那さんじゃなあ」
「はい」
みとちゃんのお母さんは返事をしています。
そうすると女性達は、
「ちちちちにになななな」とみんなが一斉に天を仰ぎながら唱えはじめました。
今でも忘れる事が出来ない異様な光景でした。
みとちゃんを見ると、いつものみとちゃんじゃありません。
白目をむいて、一緒に呪文を唱えています。
私は怖くなり固まってしまいました。
その時、草むらから覗いていた私の背後から、
「見たなあ…お前も流されんようになあ…
見てるからなあ」
と、耳元で誰かが囁きました。
私はびっくりして振り返ったけど
誰もいません。
私は恐怖に顔がこわばってしまい、お家に帰りたくなりました。
でも、動けません。
目の前を見ると集まった女性たちが、
草むらにいる私を睨んでいました。
そこに、みとちゃんが手紙を持って
自分の所に近づいてきます。
「みとちゃん!!こんな所にいたらいけん!
逃げるんじゃ!」
私はみとちゃんの腕を掴みました。
白目をむいたみとちゃんは
手紙を私の額につけたかと思うと、一瞬正気に戻り、
「手紙には恨みが書いてあるけんな。
ここに名前が書かれないようにせんとな」
と、みとちゃんは静かな声で言いました。
気付くと私は家で寝ていました。
後日、みとちゃんは行方不明になってしまい、警察の方や集落のみんなを集めて探したけど見つかりませんでした。
みとちゃんの父は後日川に落ちて死亡。事故扱いになり、お葬式で都会の女性と浮気していた事が分かりました。
みとちゃんのお母さんは娘の行方不明がたたり半狂乱になり病院にいるそうです。
私はみとちゃんが手紙の中身を話してしまったからあの世に連れていかれたんだと思いました。
...................
あれから…
……………..
私は今年で50歳。
妻子もいるけど、、好きな女ができました。
その人の名はおとみさん。
スナックに勤務している小柄な女性。
まだ25歳で歳の差はあるけど、
私は彼女の笑顔に惚れてしまいました。
「どうしたの?急にそんな怖い話してぇ」
甘えるような、おとみの声。
「いやあ…ちょっとね、、」
「さっきの話…本当の話?…怖いわあ」
おとみが私にしがみつきます。
「いやいや、あの手紙は恨みが辛みが書いてあるかもしれんが、まあ、、迷信じゃ!!
わしには関係ない!」
大笑いしながら、おとみの肩をぎゅと寄せました。
……………………………………………………
ずっと見てるよ。名前を書かれんようにせんとな…
………………………………………………….
その手紙…奥さんが持っているとも知らずに
…
....................................................
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