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第三章 「女子会」というものにも付き合わされる・一日目
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Ⅰ
それは、弁財天の言葉から始まった。
「冷くん、お願い! お休みが欲しいの!」
冷は驚いて目を見開いたが、すぐに冷静になってゆっくりと口を開く。
「……分かりました。それで、何日休みは必要ですか? 一週間あれば足りますか?」
きらりと光る冷の眼が、弁財天を捉える。弁財天は焦って、「え!?」と声をあげた。すぐに訂正が入る。
「違うの、ニ、三日でいいのよ! 女子会がしたいの!」
「……はい?」
冷はゆっくりと聞き返した。
そんな会話が、ひと月ほど前に繰り広げられたのである。
弁財天は、人間の世界の「流行」というものが好きであった。今回は、「女子会」と呼ばれる、女子のみで行う会が気になったらしい。それを自分の友人を社に呼んで行うという。友人にはすでに話が通っているらしいが、あとは日程を決めるだけだという。
冷はすぐに弁財天の仕事を調整した。二週間前後、無理させずに予定を詰めて仕事をするように日程を組む。無理をさせたところで、途中で仕事を投げ出すことが分かっているからだった。
弁財天が無理せず、さらに休みができるように仕事を割り振れば、なんとか三日の休みを作ることができた。すぐに予定を弁財天に伝え、数日経たずに返事が届いたらしく、冷へと報告に来る。そうして、しっかりと日程が決まると、弁財天は冷が組んだ日程通りに仕事を行った。
問題なく、休みまでに全ての仕事を終えた弁財天はだいぶ疲れていたが、待ちに待った女子会がすぐそこまで迫っていて、疲れなどすぐに無くなっていた。
冷自身も、日常を過ごしながら、「女子会」とやらを調べ、必要なものを準備し、毎日忙しく過ごしていた。
女子会とは、主に女性だけで飲食店などで集会を開き、女性だけで話をする宴会のこと――。弁財天が好きそうだと、冷は調べた時に思った。
現代の人間の女性はとても華やかだ。自分たちが知る、神様たちの華やかさとはまた違う。自分たちの知らないものが多く、驚くことが多かった。
「……なんとか、なるだろう」
急ぎの仕事が入れば、俺かもしくは弁財天様に確認してもらうしかないが……。
冷はため息をつく。
初めての試みで、冷自身も迷うことが多いが、腹を括るしかないと考え、当日を迎えるのだった。
Ⅱ
弁財天の言っていた、「女子会」当日。友人の女性の神様を数人呼び、話をしたり、遊ぶのだと彼女は嬉しそうに語っていた。
無事に終わることだけを願おう。
冷はため息をついた。
弁財天は自分の社の前でうろうろと歩き回る。どうにも落ち着かなかった。
元々は自身の社ではなく、全員が共同で使っている社の中にある、弁財天の部屋で行うつもりだった。しかし、これに対して冷が変更を申し出たので、自身の社を使うことになった。
弁財天の部屋は、本来、龍神や宇賀神と共同で使用している大きな社の中にあった。各々所持している社は、主に仕事用なため、生活では使用することが少ないのだ。そのため、場所を決める時、全く眼中になかったのだった。
共同の場所では、招かれる神様たちも、龍神たちも落ち着かないだろう、と冷の計らいであった。それを聞いて、弁財天も頷く他なかった。
さらに、弁財天や招かれる神様たちが社の中にいても気配が分からないように、冷が結界を張ってくれている。陰陽術の一種だと冷は言っていた。
さすが冷くんよねー。
くすくすと思い出し笑いをしていれば、弁財天の横に冷が立つ。
「お見えになりました」
冷の言葉に、弁財天も視線を前へと向ける。ゆっくりと白い牛が現れ、牛車を引いてきた。弁財天たちの前で止まると、簾がゆっくりと上がっていく。中からゆっくりと降りてきたのは――。
「久しぶり、弁財天ちゃん!」
「久しぶりー、天照ちゃん!」
お互いの両手を合わせ、きゃーと再会を喜ぶ天照大御神と弁財天。弁財天の良き友人、天照大御神。今回の招待客の一人である。
冷は天照大御神へ頭を下げる。
「お待ちしておりました、天照大御神様。この度は我が主、弁財天の我儘をお聞きくださり、ありがとうございます」
「え!? い、いえ……。こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。あ、の……冷さんも、お久しぶりです」
「お久しぶりでございます」
冷は再度天照大御神へ頭を下げる。天照大御神は着物の袖で口元を隠しつつ、視線を彷徨わせた。
「あ、あの……名前、長いですので、天照で構いませんから……」
「……では、お言葉に甘えて、天照様とお呼びさせていただきます」
冷はそう言って、再三頭を下げると、天照大御神の神守の元へと歩を進める。
そんな冷を見つめ、天照大御神はほうっと一つ息をついた。
実は、この天照大御神、冷に惚れていた。以前、弁財天と共に知った彼に、いわゆる一目惚れをしたのである。
ちなみに、そのことに弁財天はしっかりと気がついていた。
冷は天照大御神の神守、時雨へと近付く。牛車と共に来ていた彼は、牛の世話をしていた。
「久しいな、時雨殿。元気そうで何よりだ。今回はこちらの我儘に付き合わせてしまって、申し訳ない」
「久しぶりだな、冷殿。貴殿も元気そうだな、何よりだ。いやいや、我が主が楽しみにしておったのでな。構わぬぞ」
「迷惑をかける」
「なんの、なんの」
冷と時雨の会話が弾む。それを眺める女性二人はにこにこと微笑んでいた。
以前、弁財天と天照大御神が顔を合わせた時が、この二人の初対面であった。冷はこの時初めて他の神守と意気投合し、時間を忘れて語り合ったのだった。それ以来、時雨が良き神守仲間であり、良き友であり、また良き好敵手であった。
時雨は笑う。
「冷殿、お主であれば安心して任せられる。我が主を頼むぞ」
「ああ、承知している。天照様は何としてでもお守りする故、任せて欲しい」
「うむ」
時雨の元気な返事に重なったのは、天照大御神の小さな黄色い悲鳴。もちろん、冷の言葉が嬉しかっただけである。
「守る」と言ってくれたこと、さらに先程進言したように、「天照」と呼んでくれたこと――。それだけで彼女は嬉しかった。
横にいる弁財天は終始にやにやと笑いっぱなしだ。
冷は弁財天の視線にだけ気がついていたが、それは無視して時雨に話しかける。
「しかし、時雨殿。すぐに発つのか? 時間があるのであれば、茶の一杯――」
「いや、仕事が残っている故、これで失礼致す。冷殿、またいずれゆっくりと語ろう。二日後に迎えに参る故、よろしく頼む」
「そうか……。分かった。あまり引き留めても申し訳ない。またゆっくり来てくれ、その時は歓迎する」
「うむ。……主様、私はこれにて失礼致します。ごゆっくりと楽しんできてくださいませ」
「すみません、時雨。面倒をかけます。よろしくお願いしますね」
「はっ!」
時雨は冷との会話を終え、そのまま自分の主、天照大御神へと話しかける。天照大御神は申し訳なさそうに返答をした。時雨は力強く返事をし、自身の主へ頭を下げる。その後、すぐに牛車の牛へと飛び乗り、一礼するとすぐに牛車を走らせたのだった。
時雨を見送ると、冷は二人の神様へと向き直る。
「弁財天様、天照様。社へご案内致します」
「あら、冷くん、私はまだ待つわよ?」
「いえ、残りの御二方がお見えになられましたら、ご案内致しますので、先に社へお入りください。……お客様の天照様をお一人にするのも心苦しいですので」
「い、いえ、私は――」
「それもそうね。行きましょ、天照ちゃん」
冷は二人の神様の前を歩き出す。弁財天はまだ気にする天照大御神の背中をぐいぐいと押してゆっくりと歩き始めた。天照大御神も観念したのか、しずしずと歩を進めた。
社の扉を開け、部屋へと案内した冷は、すぐに社を後にし、残りの二人の神様が現れるのを待つ。
五分後、到着した二人を見て、冷は頭を下げた。
「お待ちしておりました――」
Ⅲ
冷が二人を連れて社の中を歩く。部屋へと辿り着き、襖をゆっくりと開ければ、すでに中で待っていた弁財天と天照大御神の視線がこちらを向く。弁財天は嬉しそうに二人に手を振った。
「いらっしゃい、石長ちゃん、木花ちゃん!」
弁財天が女子会に招待した残りの二人は、石長比売と木花之佐久夜毘売であった。石長比売はおずおずと頭を下げ、木花之佐久夜毘売はにこやかに手を振る。
冷は二人が部屋に入るのを確認すると、そのままお茶を入れに行く。ゆっくりと茶を入れ、時間をかけて戻ってくるとすでに女性の神様たちは話に花を咲かせていた。
冷は静かに声をかけ、部屋へと入る。
「失礼致します。お茶をお持ち致しました」
「ありがとうー、冷くん」
冷は全員にお茶を配ると、そのまま退出しようとした。しかし、行く手を阻む手があった。何を隠そう、この人である。
「冷くん、ちょっと付き合って」
「……弁財天様、今回は『女子会』、と呼ばれるものなのでしょう? 私がいては邪魔になりますので」
「えー、冷くんならいいわよー。ねー?」
四人の女性は各々頷く。冷はつきそうになったため息を無理矢理飲み込んだ。一度ぐるりと見回してから頷いた、渋々だったことは分からないように気をつけてだ。
「……分かりました。少しならお付き合い致します」
「さっすが、冷くんー!」
弁財天が手を叩いて喜ぶ。他の三人も楽しそうに笑った。そのうちの天照大御神は隠していたが、たいそう喜んでいたのだった。
冷はすぐさま眷属である鼠を呼び出した。龍神と宇賀神の元へ、彼ら専用の眷属へと伝言をしてもらうためだった。龍神の眷属である小龍と、宇賀神の眷属である猫へ伝えることを依頼すると、鼠は承ったとばかりにお辞儀をし、てってってと走り去っていく。
無論、護衛ではなく、仕事の見張り役の依頼であった。ちなみに、護衛はついでである。
冷はそれを見送ると、弁財天たちの輪に渋々加わった。もちろん、そんな素振りは見せないが。
「……お待たせ致しました」
「はーい! じゃあ、冷くんも加わったし、始めましょう!」
俺のことは気にしなくていいのだが……。
冷の言葉は出さずに飲み込む。
弁財天はそんなこと露知らずに、笑いながら話す。ふと、冷は気になって首を傾げた。
「弁財天様、始めるとは一体――」
「冷くんたら、女子会よ? することと言ったら、『こいばな』、ってものよ!」
その言葉に全員が各々反応する。石長比売、木花之佐久夜毘売は嬉しそうに声を上げ、天照大御神は小さく声を上げた後、真っ赤なった顔を袖で隠す。冷はといえば、綺麗な眉をひそめた。
しまった、聞くんじゃなかった……。
今更思っても、後の祭り。弁財天はのりのりである。冷は極力静かに聞き返した。
「……それは、あなたが聞きたいだけでは?」
「えー、女子会はそういうものをするって書いてあったわよー?」
何にだ、と思った冷だが、冷静に考えて納得した。恐らく、人間の世界にある、「ぱそこん」と呼ばれるものを利用したのだ、と。それも以前、弁財天が気に入って買っきてたわけで、現在は全員が簡単に利用できるように共有の場所に置いてある。ちなみに、冷もまた「女子会」をそれで調べたのである。すぐに納得が出来たのは、それが理由だった。
そして、この弁財天、実は恋の話が大好きである。島へ参拝に来る人間の恋人たちに近寄っては、会話を聞こうとする始末。一度、気配を出しすぎて、一組の恋人が恐怖で逃げてしまったことがあり、冷は長々と彼女へ説教をしたことがあったというのは、苦いは思い出である。
ちなみに、この竹島には「島に恋人で行くと別れる」という話もあるらしいが、これはすべて恋の話に目がない弁財天から出来た話であった。噂によれば、女性の神様だから、嫉妬すると言われているらしい。完全に真逆である。真実は、「島に恋人で行くと別れる」ではなく、「島に恋人で行くと神様の興味を引いてしまって、恐怖を味わうことになる」が正しいのであった。
冷は過去を思い出して、顔を顰める。それから、ゆっくりと立ち上がった。
「……そういうことであれば、私は失礼致します。仕事もありますので」
「えー、いいじゃない! 冷くんのこいばな聞きたいー!」
「謹んで辞退します。大体にして、私のこいばななど聞いても面白くないでしょう」
「いいえ、興味ありますわ」
第三者の声が入る。すっと綺麗な手を挙げたのは、木花之佐久夜毘売であった。冷は意外だと思った。彼女をじっと見つめる。
「しかし、木花之佐久夜毘売様――」
「長いので、木花で構わないですわ、冷さん。せっかく殿方がいらっしゃるんですもの、殿方のお話を伺いたいですわ。ねえ、姉様」
これに戸惑ったのは、話を振られた石長比売である。
「え!? い、いえ、私は――」
「姉様ったら、そんなに慌てなくても。ふふっ、そんなところも可愛らしいのですが」
「……木花に言われたくないわ、木花のほうが綺麗で可愛いもの。私は……嫁ぎ先で返品されるぐらいだから……」
「まあ、あれは見る目のない阿呆がいけないんですわ! 姉様の良さが分からないなど、言語道断ですもの!」
「申し訳ございませんが、こちらで邇邇芸命様の愚痴はやめていただけますか」
冷は思わず姉妹の会話に口を挟んだ。さすがにほかの神様の愚痴を聞くのは申し訳なく思うのである。
木花之佐久夜毘売の旦那、邇邇芸命へと二人が嫁いだ話は結構有名である。
邇邇芸命は、二人の父親である大山津見神へ木花之佐久夜毘売との結婚の許しを乞うた。大山津見神は喜び、もう一人の娘の石長比売も添えて送ったのだ。ところが、石長比売は醜いという理由で返品され、木花之佐久夜毘売とだけ結婚することにしたのだった。
大山津見神が二人を送ったのには理由があった。石長比売には命が石のように永遠であるように、木花之佐久夜毘売には花のように美しく栄えるように、と。もちろん、大山津見神はこれに対して怒ったが、誰も予想していなかった者が大激怒したのだ。それが、木花之佐久夜毘売であった。
知らぬ間に姉の姿がなく、木花之佐久夜毘売は邇邇芸命に確認した。そうして返ってきた答えに、木花之佐久夜毘売は旦那となった彼に平手をくらわせたのだった。
「あなたは本当に外見しか見てなかったのですね。ようく分かりました。姉様を傷つける方と結婚など致しません。今回のお話はなかったことにしていただきます」
木花之佐久夜毘売ははっきりと言い切ると、実家へと帰って行った。
実は、木花之佐久夜毘売、彼女は姉が大好きであった。現代では、「シスコン」と呼ばれる者である、それも極度の。
実家で泣いていた石長比売と、それを慰める大山津見神の前に、木花之佐久夜毘売は颯爽と帰ってきた。驚いたのは、実家にいた二人である。特に石長比売は驚き、涙が止まるほどであった。二人は木花之佐久夜毘売に理由を聞いて、さらに驚いた。そこに駆けつけたのが、焦った邇邇芸命である。修羅場としか言えない場でも、木花之佐久夜毘売は全く動じなかった。
結局、石長比売の説得でなんとか木花之佐久夜毘売の結婚が破棄になることはなかったが、その後から彼女が一言も邇邇芸命と会話をしていないのはまた別の話。
木花之佐久夜毘売は冷の言葉を聞いても、「いいえ」と首を振った。
「あの阿呆のことは、それぐらい、いいえ、もっと言わないと気が済みませんわ。大体にして姉様が必死に可愛く説得してくださったから許しただけであって、本来なら許すこともましてや結婚だってするつもりなかったのですよ。もう、あの阿呆が言うことなど信用しておりませんし」
「駄目よ、せっかく木花のこと気に入ってくれたんだから。私のせいで結婚が破棄だなんて――」
「いいえ、姉様のが大事ですから。大体にして、結婚のことだって、父様が姉様と一緒にと言ったから了承しただけなんですのよ。姉様とばらばらになるのであれば、そもそも頷いてなどいなかったですわ」
「もう……」
石長比売は長い髪を耳にかける。照れ隠しのつもりだろう、顔が赤いのは見て取れた。すでに分かりきっている木花之佐久夜毘売は大好きな姉に抱きつく。
冷はそれを見つつ、冷静に返す。
「……とりあえず、お名前の件はお言葉に甘えさせていただきます。そして、木花様の御意見は分かりました。しかし、私の意見はあくまでも一つの例としてです。あまり真に受けないでいただけますと幸いです」
「ええ、それで構いませんわ。ぜひ、あの阿呆の対策のためにもお聞かせ下さいな」
「そろそろ邇邇芸命様のその呼び方はお止めいただけませんか。……石長比売様、天照様も構いませんか?」
「……は、はい。すみません、木花が」
「わ、私も問題ありません」
「それでは」
冷は浮かした腰を元に戻す。横にいる弁財天はにこにこと微笑んでいた。皆、一度自分の茶を口にする。冷は自分がこんなことになるとは思ってなかったため、自分の茶はない。ただ、様子を眺める。
しかし、そこで強引に進めるのは、やはり彼女である。
「で? 冷くん、好きな人はいるの?」
「……あなたはそういう人ですよね」
冷はつきたくなったため息を無理矢理飲み込む。何度目か分からないこの状態に、だんだんと冷は辛くなってきていた。
弁財天はそんなことは全く気が付かずに会話を続ける。
「えー、気になるじゃないー。ちなみに、好みはあるの?」
「ちょっと黙っていただけますか」
冷はじろりと彼女を見た。当の本人は口をとがらせて文句を言っている。冷はしばし沈黙した後、静かに返答した。
「……好きな人はいません。まあ、いたとしても言いませんが」
「えー、いないのー!? というか、いても言わないのは何でよー!」
「言いませんよ。まず、弁財天様に教えたら言いふらされそうなので」
「ひどーい!」
冷はあくまでも淡々と返す。正直言って、こういう話も得意ではない。なんと言っても、女性に囲まれた状態で語るなど、考えたことも無い状況だ。この場所から逃げ出したい衝動に駆られてしまう。
そんな中、またすっと綺麗な手を挙げたのは、木花之佐久夜毘売であった。
「言わないのはどうしてでしょうか? 今の言い方では、弁財天ちゃんがいなくても言わないと言うことでしょう?」
「……私個人の意見ですが、好きな人のこととかを告げるのは恥ずかしいですので」
冷は目を伏せつつ、冷静に返した。その返事に天照大御神はほっとしつつ、自分が対象になっていないことが分かって悲しくも思った。ぐるぐると感情がまわりにまわる。しかし、やっと想い人のそういう話が聞けるのである。落ち込むのは後で、と言い聞かせ、話をしっかりと聞くことにした。
しかし、そんな時間は突如終わりを告げる。
遠慮がちに襖を叩く音が、小さくながらも強調される。冷はゆっくりと立ち上がり、襖を開けた。見れば、小龍がおずおずと立っていた。冷は膝をつき、目線を同じにする。
「どうした?」
小龍に問いかければ、小龍は泣き始める。冷はゆっくりと話を聞き、やがて低い声で呟く。
「……まったく、あの人は」
冷は小龍の涙を拭ったあと、すぐに指示を出す。小龍は慌てて頭を下げると、逃げるように去っていった。冷はそれを見送った後、四人の神様へと頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。気にせず、ご歓談をお楽しみください。私はこれにて失礼致します」
「えー、冷くん、行っちゃうのー?」
「……少し、席を外しすぎました。仕事に戻ります」
「あら、冷さん。まだお話の続き、聞かせていただきたいですわ」
木花之佐久夜毘売はにこりと微笑む。思わずその言葉に、天照大御神も何度も頷いた。石長比売は何も言わないが、じっと視線を寄越してくる。冷は何度目か分からないため息を無理矢理飲み込み、頭を下げた。
「……その話は、明日にさせていただきます」
「約束ですよ?」
「かしこまりました」
木花之佐久夜毘売の念押しに、しっかりと返事をした。正直に言えば、頷きたくはなかったが、さすがに神様の、しかもお客様には嫌とも言えない。腹を括らねば、と冷は強く思った。
そうして、冷は社を出た。全速力である場所へ向かう。
数分後、龍神の悲鳴が響き渡るのであった――。
Ⅳ
なんとか二人の神様の仕事を終わるように世話をし、女性の神様四人の世話も同じように行う。
違うことと言えば、食事に関してだ。食事は毒味は欠かさないが、お客様の三人には今回眷属を連れてくるように伝えていた。食事の前に、毒味をしてもらうためだった。こちらで眷属に目の前で毒味をしてもらうことも考えたが、疑われる可能性があった。一番信頼できる、自身の神守、もしくは眷属がいいと冷は考えたのである。しかし、天照大御神の神守、時雨のように、仕事があることは目に見えていた。だからこそ、眷属にしたのである。
天照大御神の眷属、鶏。
石長比売と木花之佐久夜毘売の眷属、小猿が二匹。
そうして、弁財天の直属の眷属、白蛇。
その目の前に、冷の作った昼食が並ぶ。いつも目にしている弁財天や白蛇はもちろんのこと、他の者たちも目を輝かせた。冷は思わず内心拳を握った。現代でいう「ガッツポーズ」をしたのである。もちろん、内心であるが。料理好きな冷としては、喜んでもらえるのがとても嬉しかったのでだ。
「皆様、必ず眷属に毒味をさせてから食べてくださいね」
「冷くんが危ないもの入れるわけないわよー! こんなに美味しそうだし!」
「弁財天様はよくても、他の皆様は違いますので。安全をきちんと確認していただかなくては。確かに危ないものは入れておりませんが」
「こ、これは、なんとまあ美味しそうな……! 弁財天ちゃん、これを毎日食べてるんですの? ずるいですわー」
「えへへー、いいでしょー?」
木花之佐久夜毘売は驚きつつ、目を輝かせつつ、弁財天へと話しかける。弁財天は嬉しそうに笑った。
冷がじっと見ていれば、弁財天の眷属、白蛇が弁財天の料理を口にする。蛇しては珍しい咀嚼をすると、またぐわっと先程より口を大きく開けた。そして、再度食らいつこうとした――のを、弁財天が止める。
「もう、この子はー。自分のがあるでしょ、私のを取らないの」
白蛇はしゅんと頭を垂れる。弁財天は食べる気満々だ。
それを見ていた、他の眷属たちも真似して、神様の料理を口にする。咀嚼をして、しばらく口だけを動かしていたが、目を輝かせると再度料理へ突入しようとした――が、それを各々止められる。
「こら、どうしたの」
「珍しいこともあるものですわ」
「……これは、一体――」
「ふふーん、みーんな冷くんの料理に胃袋掴まれたわねー。ほらほら、皆も食べましょう! 毒味はもう終わったでしょう?」
「そうですね。眷属の方々の分もありますから、慌てずに。では、どうぞ」
「いただきます!」
冷の言葉に、一同一斉に食べ始める。天照大御神、石長比売、木花之佐久夜毘売は一口食べると、全員目を輝かせた。各々「美味しい」と口々に告げる。冷はまたしても心中で拳を握った。
「美味しい……! こんな料理、初めて……!」
「恐縮です。おかわりもありますが」
「冷くん、私ー!」
「あなたは本当に……」
冷はそう言いながら、弁財天のおかわりを注ぐ。天照大御神は感動しながら食べる。冷は気になったことを口にした。
「しかし、天照様。時雨殿がしっかり作っているのでは?」
「あ……。そうなんですが、時雨は、その、豪快と言いますか……」
「ああ、納得しました」
天照大御神の言葉に、冷は頷く。
時雨はなんと言っても、男らしい性格をしている。言うなれば、男の料理といった豪快なものなのだろう。人柄から予想出来て、思わず冷は口元を綻ばせる。そして、それを偶然目撃した天照大御神がときめくのであった。
「確かに、なかなかこんなに美味しい料理は食べられませんわ。弁財天ちゃん、羨ましいです」
「ええ、本当に……。いい神守さんよね、冷さん」
木花之佐久夜毘売も石長比売も大絶賛である。冷は頭を下げた。
昼食でだいぶ満足していた女性の神様たちだったが、その後、午後三時のおやつや夕食でさらに満足するのであった。
そうして時は過ぎ、本日の夜は女性の神様たちは、談笑して夜遅くまで過ごすらしい。
冷は警備に参加しつつ、一日を振り返った。誰もいないことを確認すると、盛大にため息をつく。何度も飲み込んだため息を全て吐き出すかのように。
「……まさか、ここまでだったとは。初めての試みではあったが、少し甘く見ていたかもな」
冷は明日のことを考えて、さらに憂鬱になる。なんと言っても、今日後回しにしてしまった例の「こいばな」の続きをしなくてはいけないのだから。
二人の男性の神様たちも、やはりというか、目を離すと危ないことがよく分かった。眷属の小龍と猫が何度も泣いて謝ってきたのを思い出して頭が痛くなる。彼らが悪い訳では無いのだが、彼らの手には負えないことを物語ってしまっていた。
面倒ごとしか思いつかない頭を、一度洗いたくなってしまう。しかし、やるしかないのである。
「……腹を括ろう」
冷は警備をしながら、明日のことをついつい考えて夜を明かすのであった。
それは、弁財天の言葉から始まった。
「冷くん、お願い! お休みが欲しいの!」
冷は驚いて目を見開いたが、すぐに冷静になってゆっくりと口を開く。
「……分かりました。それで、何日休みは必要ですか? 一週間あれば足りますか?」
きらりと光る冷の眼が、弁財天を捉える。弁財天は焦って、「え!?」と声をあげた。すぐに訂正が入る。
「違うの、ニ、三日でいいのよ! 女子会がしたいの!」
「……はい?」
冷はゆっくりと聞き返した。
そんな会話が、ひと月ほど前に繰り広げられたのである。
弁財天は、人間の世界の「流行」というものが好きであった。今回は、「女子会」と呼ばれる、女子のみで行う会が気になったらしい。それを自分の友人を社に呼んで行うという。友人にはすでに話が通っているらしいが、あとは日程を決めるだけだという。
冷はすぐに弁財天の仕事を調整した。二週間前後、無理させずに予定を詰めて仕事をするように日程を組む。無理をさせたところで、途中で仕事を投げ出すことが分かっているからだった。
弁財天が無理せず、さらに休みができるように仕事を割り振れば、なんとか三日の休みを作ることができた。すぐに予定を弁財天に伝え、数日経たずに返事が届いたらしく、冷へと報告に来る。そうして、しっかりと日程が決まると、弁財天は冷が組んだ日程通りに仕事を行った。
問題なく、休みまでに全ての仕事を終えた弁財天はだいぶ疲れていたが、待ちに待った女子会がすぐそこまで迫っていて、疲れなどすぐに無くなっていた。
冷自身も、日常を過ごしながら、「女子会」とやらを調べ、必要なものを準備し、毎日忙しく過ごしていた。
女子会とは、主に女性だけで飲食店などで集会を開き、女性だけで話をする宴会のこと――。弁財天が好きそうだと、冷は調べた時に思った。
現代の人間の女性はとても華やかだ。自分たちが知る、神様たちの華やかさとはまた違う。自分たちの知らないものが多く、驚くことが多かった。
「……なんとか、なるだろう」
急ぎの仕事が入れば、俺かもしくは弁財天様に確認してもらうしかないが……。
冷はため息をつく。
初めての試みで、冷自身も迷うことが多いが、腹を括るしかないと考え、当日を迎えるのだった。
Ⅱ
弁財天の言っていた、「女子会」当日。友人の女性の神様を数人呼び、話をしたり、遊ぶのだと彼女は嬉しそうに語っていた。
無事に終わることだけを願おう。
冷はため息をついた。
弁財天は自分の社の前でうろうろと歩き回る。どうにも落ち着かなかった。
元々は自身の社ではなく、全員が共同で使っている社の中にある、弁財天の部屋で行うつもりだった。しかし、これに対して冷が変更を申し出たので、自身の社を使うことになった。
弁財天の部屋は、本来、龍神や宇賀神と共同で使用している大きな社の中にあった。各々所持している社は、主に仕事用なため、生活では使用することが少ないのだ。そのため、場所を決める時、全く眼中になかったのだった。
共同の場所では、招かれる神様たちも、龍神たちも落ち着かないだろう、と冷の計らいであった。それを聞いて、弁財天も頷く他なかった。
さらに、弁財天や招かれる神様たちが社の中にいても気配が分からないように、冷が結界を張ってくれている。陰陽術の一種だと冷は言っていた。
さすが冷くんよねー。
くすくすと思い出し笑いをしていれば、弁財天の横に冷が立つ。
「お見えになりました」
冷の言葉に、弁財天も視線を前へと向ける。ゆっくりと白い牛が現れ、牛車を引いてきた。弁財天たちの前で止まると、簾がゆっくりと上がっていく。中からゆっくりと降りてきたのは――。
「久しぶり、弁財天ちゃん!」
「久しぶりー、天照ちゃん!」
お互いの両手を合わせ、きゃーと再会を喜ぶ天照大御神と弁財天。弁財天の良き友人、天照大御神。今回の招待客の一人である。
冷は天照大御神へ頭を下げる。
「お待ちしておりました、天照大御神様。この度は我が主、弁財天の我儘をお聞きくださり、ありがとうございます」
「え!? い、いえ……。こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。あ、の……冷さんも、お久しぶりです」
「お久しぶりでございます」
冷は再度天照大御神へ頭を下げる。天照大御神は着物の袖で口元を隠しつつ、視線を彷徨わせた。
「あ、あの……名前、長いですので、天照で構いませんから……」
「……では、お言葉に甘えて、天照様とお呼びさせていただきます」
冷はそう言って、再三頭を下げると、天照大御神の神守の元へと歩を進める。
そんな冷を見つめ、天照大御神はほうっと一つ息をついた。
実は、この天照大御神、冷に惚れていた。以前、弁財天と共に知った彼に、いわゆる一目惚れをしたのである。
ちなみに、そのことに弁財天はしっかりと気がついていた。
冷は天照大御神の神守、時雨へと近付く。牛車と共に来ていた彼は、牛の世話をしていた。
「久しいな、時雨殿。元気そうで何よりだ。今回はこちらの我儘に付き合わせてしまって、申し訳ない」
「久しぶりだな、冷殿。貴殿も元気そうだな、何よりだ。いやいや、我が主が楽しみにしておったのでな。構わぬぞ」
「迷惑をかける」
「なんの、なんの」
冷と時雨の会話が弾む。それを眺める女性二人はにこにこと微笑んでいた。
以前、弁財天と天照大御神が顔を合わせた時が、この二人の初対面であった。冷はこの時初めて他の神守と意気投合し、時間を忘れて語り合ったのだった。それ以来、時雨が良き神守仲間であり、良き友であり、また良き好敵手であった。
時雨は笑う。
「冷殿、お主であれば安心して任せられる。我が主を頼むぞ」
「ああ、承知している。天照様は何としてでもお守りする故、任せて欲しい」
「うむ」
時雨の元気な返事に重なったのは、天照大御神の小さな黄色い悲鳴。もちろん、冷の言葉が嬉しかっただけである。
「守る」と言ってくれたこと、さらに先程進言したように、「天照」と呼んでくれたこと――。それだけで彼女は嬉しかった。
横にいる弁財天は終始にやにやと笑いっぱなしだ。
冷は弁財天の視線にだけ気がついていたが、それは無視して時雨に話しかける。
「しかし、時雨殿。すぐに発つのか? 時間があるのであれば、茶の一杯――」
「いや、仕事が残っている故、これで失礼致す。冷殿、またいずれゆっくりと語ろう。二日後に迎えに参る故、よろしく頼む」
「そうか……。分かった。あまり引き留めても申し訳ない。またゆっくり来てくれ、その時は歓迎する」
「うむ。……主様、私はこれにて失礼致します。ごゆっくりと楽しんできてくださいませ」
「すみません、時雨。面倒をかけます。よろしくお願いしますね」
「はっ!」
時雨は冷との会話を終え、そのまま自分の主、天照大御神へと話しかける。天照大御神は申し訳なさそうに返答をした。時雨は力強く返事をし、自身の主へ頭を下げる。その後、すぐに牛車の牛へと飛び乗り、一礼するとすぐに牛車を走らせたのだった。
時雨を見送ると、冷は二人の神様へと向き直る。
「弁財天様、天照様。社へご案内致します」
「あら、冷くん、私はまだ待つわよ?」
「いえ、残りの御二方がお見えになられましたら、ご案内致しますので、先に社へお入りください。……お客様の天照様をお一人にするのも心苦しいですので」
「い、いえ、私は――」
「それもそうね。行きましょ、天照ちゃん」
冷は二人の神様の前を歩き出す。弁財天はまだ気にする天照大御神の背中をぐいぐいと押してゆっくりと歩き始めた。天照大御神も観念したのか、しずしずと歩を進めた。
社の扉を開け、部屋へと案内した冷は、すぐに社を後にし、残りの二人の神様が現れるのを待つ。
五分後、到着した二人を見て、冷は頭を下げた。
「お待ちしておりました――」
Ⅲ
冷が二人を連れて社の中を歩く。部屋へと辿り着き、襖をゆっくりと開ければ、すでに中で待っていた弁財天と天照大御神の視線がこちらを向く。弁財天は嬉しそうに二人に手を振った。
「いらっしゃい、石長ちゃん、木花ちゃん!」
弁財天が女子会に招待した残りの二人は、石長比売と木花之佐久夜毘売であった。石長比売はおずおずと頭を下げ、木花之佐久夜毘売はにこやかに手を振る。
冷は二人が部屋に入るのを確認すると、そのままお茶を入れに行く。ゆっくりと茶を入れ、時間をかけて戻ってくるとすでに女性の神様たちは話に花を咲かせていた。
冷は静かに声をかけ、部屋へと入る。
「失礼致します。お茶をお持ち致しました」
「ありがとうー、冷くん」
冷は全員にお茶を配ると、そのまま退出しようとした。しかし、行く手を阻む手があった。何を隠そう、この人である。
「冷くん、ちょっと付き合って」
「……弁財天様、今回は『女子会』、と呼ばれるものなのでしょう? 私がいては邪魔になりますので」
「えー、冷くんならいいわよー。ねー?」
四人の女性は各々頷く。冷はつきそうになったため息を無理矢理飲み込んだ。一度ぐるりと見回してから頷いた、渋々だったことは分からないように気をつけてだ。
「……分かりました。少しならお付き合い致します」
「さっすが、冷くんー!」
弁財天が手を叩いて喜ぶ。他の三人も楽しそうに笑った。そのうちの天照大御神は隠していたが、たいそう喜んでいたのだった。
冷はすぐさま眷属である鼠を呼び出した。龍神と宇賀神の元へ、彼ら専用の眷属へと伝言をしてもらうためだった。龍神の眷属である小龍と、宇賀神の眷属である猫へ伝えることを依頼すると、鼠は承ったとばかりにお辞儀をし、てってってと走り去っていく。
無論、護衛ではなく、仕事の見張り役の依頼であった。ちなみに、護衛はついでである。
冷はそれを見送ると、弁財天たちの輪に渋々加わった。もちろん、そんな素振りは見せないが。
「……お待たせ致しました」
「はーい! じゃあ、冷くんも加わったし、始めましょう!」
俺のことは気にしなくていいのだが……。
冷の言葉は出さずに飲み込む。
弁財天はそんなこと露知らずに、笑いながら話す。ふと、冷は気になって首を傾げた。
「弁財天様、始めるとは一体――」
「冷くんたら、女子会よ? することと言ったら、『こいばな』、ってものよ!」
その言葉に全員が各々反応する。石長比売、木花之佐久夜毘売は嬉しそうに声を上げ、天照大御神は小さく声を上げた後、真っ赤なった顔を袖で隠す。冷はといえば、綺麗な眉をひそめた。
しまった、聞くんじゃなかった……。
今更思っても、後の祭り。弁財天はのりのりである。冷は極力静かに聞き返した。
「……それは、あなたが聞きたいだけでは?」
「えー、女子会はそういうものをするって書いてあったわよー?」
何にだ、と思った冷だが、冷静に考えて納得した。恐らく、人間の世界にある、「ぱそこん」と呼ばれるものを利用したのだ、と。それも以前、弁財天が気に入って買っきてたわけで、現在は全員が簡単に利用できるように共有の場所に置いてある。ちなみに、冷もまた「女子会」をそれで調べたのである。すぐに納得が出来たのは、それが理由だった。
そして、この弁財天、実は恋の話が大好きである。島へ参拝に来る人間の恋人たちに近寄っては、会話を聞こうとする始末。一度、気配を出しすぎて、一組の恋人が恐怖で逃げてしまったことがあり、冷は長々と彼女へ説教をしたことがあったというのは、苦いは思い出である。
ちなみに、この竹島には「島に恋人で行くと別れる」という話もあるらしいが、これはすべて恋の話に目がない弁財天から出来た話であった。噂によれば、女性の神様だから、嫉妬すると言われているらしい。完全に真逆である。真実は、「島に恋人で行くと別れる」ではなく、「島に恋人で行くと神様の興味を引いてしまって、恐怖を味わうことになる」が正しいのであった。
冷は過去を思い出して、顔を顰める。それから、ゆっくりと立ち上がった。
「……そういうことであれば、私は失礼致します。仕事もありますので」
「えー、いいじゃない! 冷くんのこいばな聞きたいー!」
「謹んで辞退します。大体にして、私のこいばななど聞いても面白くないでしょう」
「いいえ、興味ありますわ」
第三者の声が入る。すっと綺麗な手を挙げたのは、木花之佐久夜毘売であった。冷は意外だと思った。彼女をじっと見つめる。
「しかし、木花之佐久夜毘売様――」
「長いので、木花で構わないですわ、冷さん。せっかく殿方がいらっしゃるんですもの、殿方のお話を伺いたいですわ。ねえ、姉様」
これに戸惑ったのは、話を振られた石長比売である。
「え!? い、いえ、私は――」
「姉様ったら、そんなに慌てなくても。ふふっ、そんなところも可愛らしいのですが」
「……木花に言われたくないわ、木花のほうが綺麗で可愛いもの。私は……嫁ぎ先で返品されるぐらいだから……」
「まあ、あれは見る目のない阿呆がいけないんですわ! 姉様の良さが分からないなど、言語道断ですもの!」
「申し訳ございませんが、こちらで邇邇芸命様の愚痴はやめていただけますか」
冷は思わず姉妹の会話に口を挟んだ。さすがにほかの神様の愚痴を聞くのは申し訳なく思うのである。
木花之佐久夜毘売の旦那、邇邇芸命へと二人が嫁いだ話は結構有名である。
邇邇芸命は、二人の父親である大山津見神へ木花之佐久夜毘売との結婚の許しを乞うた。大山津見神は喜び、もう一人の娘の石長比売も添えて送ったのだ。ところが、石長比売は醜いという理由で返品され、木花之佐久夜毘売とだけ結婚することにしたのだった。
大山津見神が二人を送ったのには理由があった。石長比売には命が石のように永遠であるように、木花之佐久夜毘売には花のように美しく栄えるように、と。もちろん、大山津見神はこれに対して怒ったが、誰も予想していなかった者が大激怒したのだ。それが、木花之佐久夜毘売であった。
知らぬ間に姉の姿がなく、木花之佐久夜毘売は邇邇芸命に確認した。そうして返ってきた答えに、木花之佐久夜毘売は旦那となった彼に平手をくらわせたのだった。
「あなたは本当に外見しか見てなかったのですね。ようく分かりました。姉様を傷つける方と結婚など致しません。今回のお話はなかったことにしていただきます」
木花之佐久夜毘売ははっきりと言い切ると、実家へと帰って行った。
実は、木花之佐久夜毘売、彼女は姉が大好きであった。現代では、「シスコン」と呼ばれる者である、それも極度の。
実家で泣いていた石長比売と、それを慰める大山津見神の前に、木花之佐久夜毘売は颯爽と帰ってきた。驚いたのは、実家にいた二人である。特に石長比売は驚き、涙が止まるほどであった。二人は木花之佐久夜毘売に理由を聞いて、さらに驚いた。そこに駆けつけたのが、焦った邇邇芸命である。修羅場としか言えない場でも、木花之佐久夜毘売は全く動じなかった。
結局、石長比売の説得でなんとか木花之佐久夜毘売の結婚が破棄になることはなかったが、その後から彼女が一言も邇邇芸命と会話をしていないのはまた別の話。
木花之佐久夜毘売は冷の言葉を聞いても、「いいえ」と首を振った。
「あの阿呆のことは、それぐらい、いいえ、もっと言わないと気が済みませんわ。大体にして姉様が必死に可愛く説得してくださったから許しただけであって、本来なら許すこともましてや結婚だってするつもりなかったのですよ。もう、あの阿呆が言うことなど信用しておりませんし」
「駄目よ、せっかく木花のこと気に入ってくれたんだから。私のせいで結婚が破棄だなんて――」
「いいえ、姉様のが大事ですから。大体にして、結婚のことだって、父様が姉様と一緒にと言ったから了承しただけなんですのよ。姉様とばらばらになるのであれば、そもそも頷いてなどいなかったですわ」
「もう……」
石長比売は長い髪を耳にかける。照れ隠しのつもりだろう、顔が赤いのは見て取れた。すでに分かりきっている木花之佐久夜毘売は大好きな姉に抱きつく。
冷はそれを見つつ、冷静に返す。
「……とりあえず、お名前の件はお言葉に甘えさせていただきます。そして、木花様の御意見は分かりました。しかし、私の意見はあくまでも一つの例としてです。あまり真に受けないでいただけますと幸いです」
「ええ、それで構いませんわ。ぜひ、あの阿呆の対策のためにもお聞かせ下さいな」
「そろそろ邇邇芸命様のその呼び方はお止めいただけませんか。……石長比売様、天照様も構いませんか?」
「……は、はい。すみません、木花が」
「わ、私も問題ありません」
「それでは」
冷は浮かした腰を元に戻す。横にいる弁財天はにこにこと微笑んでいた。皆、一度自分の茶を口にする。冷は自分がこんなことになるとは思ってなかったため、自分の茶はない。ただ、様子を眺める。
しかし、そこで強引に進めるのは、やはり彼女である。
「で? 冷くん、好きな人はいるの?」
「……あなたはそういう人ですよね」
冷はつきたくなったため息を無理矢理飲み込む。何度目か分からないこの状態に、だんだんと冷は辛くなってきていた。
弁財天はそんなことは全く気が付かずに会話を続ける。
「えー、気になるじゃないー。ちなみに、好みはあるの?」
「ちょっと黙っていただけますか」
冷はじろりと彼女を見た。当の本人は口をとがらせて文句を言っている。冷はしばし沈黙した後、静かに返答した。
「……好きな人はいません。まあ、いたとしても言いませんが」
「えー、いないのー!? というか、いても言わないのは何でよー!」
「言いませんよ。まず、弁財天様に教えたら言いふらされそうなので」
「ひどーい!」
冷はあくまでも淡々と返す。正直言って、こういう話も得意ではない。なんと言っても、女性に囲まれた状態で語るなど、考えたことも無い状況だ。この場所から逃げ出したい衝動に駆られてしまう。
そんな中、またすっと綺麗な手を挙げたのは、木花之佐久夜毘売であった。
「言わないのはどうしてでしょうか? 今の言い方では、弁財天ちゃんがいなくても言わないと言うことでしょう?」
「……私個人の意見ですが、好きな人のこととかを告げるのは恥ずかしいですので」
冷は目を伏せつつ、冷静に返した。その返事に天照大御神はほっとしつつ、自分が対象になっていないことが分かって悲しくも思った。ぐるぐると感情がまわりにまわる。しかし、やっと想い人のそういう話が聞けるのである。落ち込むのは後で、と言い聞かせ、話をしっかりと聞くことにした。
しかし、そんな時間は突如終わりを告げる。
遠慮がちに襖を叩く音が、小さくながらも強調される。冷はゆっくりと立ち上がり、襖を開けた。見れば、小龍がおずおずと立っていた。冷は膝をつき、目線を同じにする。
「どうした?」
小龍に問いかければ、小龍は泣き始める。冷はゆっくりと話を聞き、やがて低い声で呟く。
「……まったく、あの人は」
冷は小龍の涙を拭ったあと、すぐに指示を出す。小龍は慌てて頭を下げると、逃げるように去っていった。冷はそれを見送った後、四人の神様へと頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。気にせず、ご歓談をお楽しみください。私はこれにて失礼致します」
「えー、冷くん、行っちゃうのー?」
「……少し、席を外しすぎました。仕事に戻ります」
「あら、冷さん。まだお話の続き、聞かせていただきたいですわ」
木花之佐久夜毘売はにこりと微笑む。思わずその言葉に、天照大御神も何度も頷いた。石長比売は何も言わないが、じっと視線を寄越してくる。冷は何度目か分からないため息を無理矢理飲み込み、頭を下げた。
「……その話は、明日にさせていただきます」
「約束ですよ?」
「かしこまりました」
木花之佐久夜毘売の念押しに、しっかりと返事をした。正直に言えば、頷きたくはなかったが、さすがに神様の、しかもお客様には嫌とも言えない。腹を括らねば、と冷は強く思った。
そうして、冷は社を出た。全速力である場所へ向かう。
数分後、龍神の悲鳴が響き渡るのであった――。
Ⅳ
なんとか二人の神様の仕事を終わるように世話をし、女性の神様四人の世話も同じように行う。
違うことと言えば、食事に関してだ。食事は毒味は欠かさないが、お客様の三人には今回眷属を連れてくるように伝えていた。食事の前に、毒味をしてもらうためだった。こちらで眷属に目の前で毒味をしてもらうことも考えたが、疑われる可能性があった。一番信頼できる、自身の神守、もしくは眷属がいいと冷は考えたのである。しかし、天照大御神の神守、時雨のように、仕事があることは目に見えていた。だからこそ、眷属にしたのである。
天照大御神の眷属、鶏。
石長比売と木花之佐久夜毘売の眷属、小猿が二匹。
そうして、弁財天の直属の眷属、白蛇。
その目の前に、冷の作った昼食が並ぶ。いつも目にしている弁財天や白蛇はもちろんのこと、他の者たちも目を輝かせた。冷は思わず内心拳を握った。現代でいう「ガッツポーズ」をしたのである。もちろん、内心であるが。料理好きな冷としては、喜んでもらえるのがとても嬉しかったのでだ。
「皆様、必ず眷属に毒味をさせてから食べてくださいね」
「冷くんが危ないもの入れるわけないわよー! こんなに美味しそうだし!」
「弁財天様はよくても、他の皆様は違いますので。安全をきちんと確認していただかなくては。確かに危ないものは入れておりませんが」
「こ、これは、なんとまあ美味しそうな……! 弁財天ちゃん、これを毎日食べてるんですの? ずるいですわー」
「えへへー、いいでしょー?」
木花之佐久夜毘売は驚きつつ、目を輝かせつつ、弁財天へと話しかける。弁財天は嬉しそうに笑った。
冷がじっと見ていれば、弁財天の眷属、白蛇が弁財天の料理を口にする。蛇しては珍しい咀嚼をすると、またぐわっと先程より口を大きく開けた。そして、再度食らいつこうとした――のを、弁財天が止める。
「もう、この子はー。自分のがあるでしょ、私のを取らないの」
白蛇はしゅんと頭を垂れる。弁財天は食べる気満々だ。
それを見ていた、他の眷属たちも真似して、神様の料理を口にする。咀嚼をして、しばらく口だけを動かしていたが、目を輝かせると再度料理へ突入しようとした――が、それを各々止められる。
「こら、どうしたの」
「珍しいこともあるものですわ」
「……これは、一体――」
「ふふーん、みーんな冷くんの料理に胃袋掴まれたわねー。ほらほら、皆も食べましょう! 毒味はもう終わったでしょう?」
「そうですね。眷属の方々の分もありますから、慌てずに。では、どうぞ」
「いただきます!」
冷の言葉に、一同一斉に食べ始める。天照大御神、石長比売、木花之佐久夜毘売は一口食べると、全員目を輝かせた。各々「美味しい」と口々に告げる。冷はまたしても心中で拳を握った。
「美味しい……! こんな料理、初めて……!」
「恐縮です。おかわりもありますが」
「冷くん、私ー!」
「あなたは本当に……」
冷はそう言いながら、弁財天のおかわりを注ぐ。天照大御神は感動しながら食べる。冷は気になったことを口にした。
「しかし、天照様。時雨殿がしっかり作っているのでは?」
「あ……。そうなんですが、時雨は、その、豪快と言いますか……」
「ああ、納得しました」
天照大御神の言葉に、冷は頷く。
時雨はなんと言っても、男らしい性格をしている。言うなれば、男の料理といった豪快なものなのだろう。人柄から予想出来て、思わず冷は口元を綻ばせる。そして、それを偶然目撃した天照大御神がときめくのであった。
「確かに、なかなかこんなに美味しい料理は食べられませんわ。弁財天ちゃん、羨ましいです」
「ええ、本当に……。いい神守さんよね、冷さん」
木花之佐久夜毘売も石長比売も大絶賛である。冷は頭を下げた。
昼食でだいぶ満足していた女性の神様たちだったが、その後、午後三時のおやつや夕食でさらに満足するのであった。
そうして時は過ぎ、本日の夜は女性の神様たちは、談笑して夜遅くまで過ごすらしい。
冷は警備に参加しつつ、一日を振り返った。誰もいないことを確認すると、盛大にため息をつく。何度も飲み込んだため息を全て吐き出すかのように。
「……まさか、ここまでだったとは。初めての試みではあったが、少し甘く見ていたかもな」
冷は明日のことを考えて、さらに憂鬱になる。なんと言っても、今日後回しにしてしまった例の「こいばな」の続きをしなくてはいけないのだから。
二人の男性の神様たちも、やはりというか、目を離すと危ないことがよく分かった。眷属の小龍と猫が何度も泣いて謝ってきたのを思い出して頭が痛くなる。彼らが悪い訳では無いのだが、彼らの手には負えないことを物語ってしまっていた。
面倒ごとしか思いつかない頭を、一度洗いたくなってしまう。しかし、やるしかないのである。
「……腹を括ろう」
冷は警備をしながら、明日のことをついつい考えて夜を明かすのであった。
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