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第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ
第31話 背負ってますなあ
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「しかし今日は本当に助かったよデュランス、ソニア。回復がめちゃくちゃ助かったしあの関節技は見てて痺れたぜ」
「何言ってるんですか旦那。旦那の捨て身あってこその勝利ですよ!」
「そうっス! 私もあのネズミに脇固めを仕掛けながらチラッと兄さんの方見たら火だるまでロングソード振りかざしてるんスもん! めちゃくちゃ驚きましたよ!」
「あの異形は相当格上だったからな。ああでもしないと無理だったよ」
デュランスとソニアは才能に恵まれた若者だ。
デュランスがいたからこそ『死ななければ安い』の精神で異形に立ち向かうことが出来たんだ。
これから役に立つ呪文も覚えるだろうしベルティーナと同じくパーティの要となってくれるだろう。
ソニアの格闘技も人型相手には猛威を振るうだろう。テコの原理を利用した関節技はある程度の格上も制圧できるはずだ。
スライムやワイバーンのような人型ではないモンスターとの戦い方は……そのうち考えよう。
筋はいい子だからな。きっとうまくいくさ。最悪俺とギフンが出張ればいい。
「しかしデュランス、ソニア。お前らその年で同棲って随分進んでるんだなあ。おじさんびっくりしちゃったよ」
俺は昨日からずっと二人の仲が気になって気になって仕方がなかった。
リーゼントクレリックと格闘家エルフの組み合わせ。気になるなってのが酷な話でしょ!
厄介なおじさんモードで探りを入れてみるとしよう。
「へ? 旦那何言ってるんですか? 俺とソニアが? ないないないない! ないですよ~。いやだなあ。ハハハ」
あっけらかんとデュランスは笑う。ん? これは俺の見込み違いだったのか?
お似合いに見えたんだがな。
「そそそそ、そうっスよ。 わ、私が、デュデュディランスと!? お笑いッスススよ! ハハ、ハハハ!」
「だよなあ!? んも~アイザックの旦那初っ端からかましてくれるんですから~」
あ、デュランスこいつアホだわ。
アホリーゼントアホクレリックだわデュランスこいつ。
ソニアはまるで湯気が出ているのかと錯覚するくらい顔を真っ赤にしながらうつむいていた。
おいおいおいおい耳まで真っ赤になってるよ。
「あああアイザックの兄さん! じじ自分は? こんな? プルプル前髪スライムヘッドなんか? アレだし!?」
「お、おお。そ、そうか。す、すまんなソニア。デュ、デュランスも」
「そうですよ~。旦那って戦闘センスだけじゃなくて笑いのセンスもあるなんて憧れちゃうな~」
「ん~……レベルドレインとネズミに加えてもう一つ解決しなきゃいけない問題ができちまったなあこれ」
「え? 何か問題があるんですか旦那? 俺、手伝いますよ!」
デュランスがご立派な前髪を整えてからこちらに親指を立てる。お前なんなんだよ、なんなんだよお前……
それから十五分程歩いた所でデュランスが声を上げる。
「もう少しですよ! 旦那!」
街から少し離れた郊外に佇む粗末な石造りの教会が見えてきた。
「教会。お前ら教会で暮らしてたのか?」
「そうなんですよ。結構ボロいですけど住めば都って奴です」
正直意外だった。確かにデュランスはクレリックだが
実際に教会で暮らしている職業冒険者としてのクレリックはそう多くない。
大抵他の冒険者と同じように宿屋や借家で暮らしているのがザラだ。
教会で暮らしているクレリックの冒険者を見るのはこれが初めてだった。
フムフムと頷いているとソニアが語りかけてきた。
「アイザック兄さん。実はここは教会だけじゃないんス!」
錆の浮いた門がキイキイと軋みながら開かれると突然子どもたちが駆け寄ってきた。
「デュランス兄ちゃん! ソニア姉ちゃんおかえり!」
「おうただいまロク。いい子にしてたか?」
「超めっちゃ奇跡クラスにしてたよ!」
「気安く奇跡とか言うな言うな。腹減ったろ。飯作るから遊んで待ってな」
「じゃあ私と遊ぶっス! 私に捕まったら暗黒の儀式の生贄っス!」
ロクと呼ばれる女の子を筆頭に他の子供達とソニアが庭へ駆け出していく。
なるほど教会だけじゃないとはそういうことか。
「お前ら孤児院もやっているのか」
「ええ。ま、未熟者なりに必死で頑張ってます」
デュランスはヘヘっと笑った。
このボロボロの建物を一目見ればわかる。
こいつらは決して豊かで余裕のある暮らしをしているわけじゃない。
この若さで背負うものが多すぎるぞデュランス、ソニア。
俺が年相応に背負ってないってのもあるがな。
「俺、昔貴族だったんですよ。ストリセって知ってます? ここから北に位置する辺境の半端貴族なんですけどね。何もない田舎だけど、いいオリーブオイルが取れてたんですよ」
そう言いながら笑うデュランスは少し寂しそうだった。
「ストリセ……すまん初耳だ。しかしお前貴族だったのかあ……」
「随分前の話ですけどね」
俺は驚いた。貴族からクレリックへの転身なんて普通はありえない。
デュランスの回復魔法、補助の効果を見るに聖職者の適正は非常に高い。
何よりこいつがいたからこそ俺達は異形に勝つことが出来た。
そんなデュランスが元は貴族だったとは。
「事情、聞いてもいいのか?」
「戦争ですよ」
答えるデュランスは渋い顔だ。
「よくある話です」
クレリックは経緯を語り始めた。
「何言ってるんですか旦那。旦那の捨て身あってこその勝利ですよ!」
「そうっス! 私もあのネズミに脇固めを仕掛けながらチラッと兄さんの方見たら火だるまでロングソード振りかざしてるんスもん! めちゃくちゃ驚きましたよ!」
「あの異形は相当格上だったからな。ああでもしないと無理だったよ」
デュランスとソニアは才能に恵まれた若者だ。
デュランスがいたからこそ『死ななければ安い』の精神で異形に立ち向かうことが出来たんだ。
これから役に立つ呪文も覚えるだろうしベルティーナと同じくパーティの要となってくれるだろう。
ソニアの格闘技も人型相手には猛威を振るうだろう。テコの原理を利用した関節技はある程度の格上も制圧できるはずだ。
スライムやワイバーンのような人型ではないモンスターとの戦い方は……そのうち考えよう。
筋はいい子だからな。きっとうまくいくさ。最悪俺とギフンが出張ればいい。
「しかしデュランス、ソニア。お前らその年で同棲って随分進んでるんだなあ。おじさんびっくりしちゃったよ」
俺は昨日からずっと二人の仲が気になって気になって仕方がなかった。
リーゼントクレリックと格闘家エルフの組み合わせ。気になるなってのが酷な話でしょ!
厄介なおじさんモードで探りを入れてみるとしよう。
「へ? 旦那何言ってるんですか? 俺とソニアが? ないないないない! ないですよ~。いやだなあ。ハハハ」
あっけらかんとデュランスは笑う。ん? これは俺の見込み違いだったのか?
お似合いに見えたんだがな。
「そそそそ、そうっスよ。 わ、私が、デュデュディランスと!? お笑いッスススよ! ハハ、ハハハ!」
「だよなあ!? んも~アイザックの旦那初っ端からかましてくれるんですから~」
あ、デュランスこいつアホだわ。
アホリーゼントアホクレリックだわデュランスこいつ。
ソニアはまるで湯気が出ているのかと錯覚するくらい顔を真っ赤にしながらうつむいていた。
おいおいおいおい耳まで真っ赤になってるよ。
「あああアイザックの兄さん! じじ自分は? こんな? プルプル前髪スライムヘッドなんか? アレだし!?」
「お、おお。そ、そうか。す、すまんなソニア。デュ、デュランスも」
「そうですよ~。旦那って戦闘センスだけじゃなくて笑いのセンスもあるなんて憧れちゃうな~」
「ん~……レベルドレインとネズミに加えてもう一つ解決しなきゃいけない問題ができちまったなあこれ」
「え? 何か問題があるんですか旦那? 俺、手伝いますよ!」
デュランスがご立派な前髪を整えてからこちらに親指を立てる。お前なんなんだよ、なんなんだよお前……
それから十五分程歩いた所でデュランスが声を上げる。
「もう少しですよ! 旦那!」
街から少し離れた郊外に佇む粗末な石造りの教会が見えてきた。
「教会。お前ら教会で暮らしてたのか?」
「そうなんですよ。結構ボロいですけど住めば都って奴です」
正直意外だった。確かにデュランスはクレリックだが
実際に教会で暮らしている職業冒険者としてのクレリックはそう多くない。
大抵他の冒険者と同じように宿屋や借家で暮らしているのがザラだ。
教会で暮らしているクレリックの冒険者を見るのはこれが初めてだった。
フムフムと頷いているとソニアが語りかけてきた。
「アイザック兄さん。実はここは教会だけじゃないんス!」
錆の浮いた門がキイキイと軋みながら開かれると突然子どもたちが駆け寄ってきた。
「デュランス兄ちゃん! ソニア姉ちゃんおかえり!」
「おうただいまロク。いい子にしてたか?」
「超めっちゃ奇跡クラスにしてたよ!」
「気安く奇跡とか言うな言うな。腹減ったろ。飯作るから遊んで待ってな」
「じゃあ私と遊ぶっス! 私に捕まったら暗黒の儀式の生贄っス!」
ロクと呼ばれる女の子を筆頭に他の子供達とソニアが庭へ駆け出していく。
なるほど教会だけじゃないとはそういうことか。
「お前ら孤児院もやっているのか」
「ええ。ま、未熟者なりに必死で頑張ってます」
デュランスはヘヘっと笑った。
このボロボロの建物を一目見ればわかる。
こいつらは決して豊かで余裕のある暮らしをしているわけじゃない。
この若さで背負うものが多すぎるぞデュランス、ソニア。
俺が年相応に背負ってないってのもあるがな。
「俺、昔貴族だったんですよ。ストリセって知ってます? ここから北に位置する辺境の半端貴族なんですけどね。何もない田舎だけど、いいオリーブオイルが取れてたんですよ」
そう言いながら笑うデュランスは少し寂しそうだった。
「ストリセ……すまん初耳だ。しかしお前貴族だったのかあ……」
「随分前の話ですけどね」
俺は驚いた。貴族からクレリックへの転身なんて普通はありえない。
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