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3.いざ出版社へ
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やっと金曜日。遠足前の子供の様に早く起きてしまった。起きて直ぐに新幹線で食べるおにぎりを握り、厚焼き卵とウインナーを焼いて使い捨ての容器に入れる。
担当の宇賀さんとの約束は10時。時間を逆算すると家を6時過ぎに出なければならない。気がつくと5時20分を過ぎていて身支度を急ぐ。
休みの日はノーメイクだし、仕事の時はファンデと口紅に軽くチークしかしない。でも今日は何年かぶりにフルメイクをしてみた。鏡を見ながらメイクしても変わり映えしない自分に落胆する。
「げっ!もう6時じゃん」
慌てて戸締りと荷物のチェックをし家を出て最寄り駅に向かう。朝早いのでまだ電車も道も混んでいない。そうして7時過ぎの新幹線に乗り首都圏に向かった。早朝のこの時間の新幹線はリーマンが多く、寝ている人が多い。私は連結部近くの窓際に座り景色を眺めながら、ゆっくり朝ごはんを食べていた。
ふと通路を挟んだ反対の席に座る男性が目に入る。
学生さんだろうか? Tシャツにデニムの男性でパンを咥えスマホに齧り付いてる。
ゲームでもしているのか思ったら、見た感じ文字を打っているようだ。私も外出時の執筆はスマホでするから分かる。
『それにしで凄い集中力。さっきからパンを咥えたままで食べてないじゃん』
集中して文字を打っている時って、側から見たらあんな感じなんだとはじめて知った。その彼はまだスマホに集中している。あまり見ていては失礼なので視線を戻し、朝食を食べ終えてノートPCを鞄から出し今度は私が文字を打ち出す。
何故か今日は集中できて調子が良く言葉が湧き出てくる。こんな時は自ずとブラインドタッチする指もよく動き
『切りがいいからお茶を…』
そう思い顔を上げると視線を感じ通路に目をやると、あの学生さんが通路に立ち私を見てる?
「?」
目が合うと席に戻らずどこかに行ってしまった。なんだったんだろう? 疑問に思ったけど気にせず執筆に集中していた。するとスマホのアラームが鳴る。乗り過ごし防止の為に乗車前にセットしてあったのだ。何故なら集中している時の私は周りの音が聞こえなくなるし、寝てしまう可能性もあるからだ。
アラームを止めて降りる準備をし、ふと通路反対側の学生さんの席を見ると別の人が座っている。
『あれ?移動した?私が見すぎて嫌がられたの?』
小心者の私は気になってしまう。少し気落ちしたところで新幹線のスピードが落ちだし、そろそろ駅に到着するようだ。リーマン達は荷物を持ち出口に向かう。ここは終着駅では無く直ぐに降りないといけない。そうさっきの学生さんの事気にしている場合ではなかった。
やっと新幹線を降り案内表示を見ながら在来線に乗り換える。首都圏に来たのは2年ぶりだ。確か専門学校の友人の結婚披露宴に招待されて以来だ。
間違わないように確認して歩くから約束時間ギリギリになってしまった。
やっと出版社の前まで来てスマホを手に持ち入る。ギリギリの3分前だ。受付は無人で内線電話とPCが有り、前まで来ると音声が流れる。
『いらっしゃいませ。アポイントがお有りのお客様はQRコードをカメラにかざして下さい。それ以外のお客様は該当部署の番号を入力下さい』
「凄い!うちの会社なんて古びた内線電話だけだもんなぁ~ えっと宇賀さんからQRコードが送られていたから…」
スマホにQRコードを表示しカメラに翳すと
『星野様お待ちしておりました。プリントされた入館証をパソコン横のケースに入れ入場し、”5番”のつい立でお待ち下さいませ』
案内の通りプリントされたレシート大の紙をケース?ネームプレート?に入れ入口に向かうと、電車の自動改札と同じ様な機械がセットされていて緊張する。そして入館証をかざしロビーに入った。
ガランとしたロビーには人は居らずキョロキョロしていたら、警備員が声をかけてくれ指定されたつい立に案内された。
座って宇賀さんを待っていると、隣りの話し声が聞こえてきた。話の感じから隣も私と同じっぽい。
パーテーションで区切られただけなので、否でも応でも内容が聞こえてくる。
話をしているのは若い?男性と女性で、女性が出版社の人の様だ。
「何のために呼んだんですか?書籍化が決まった訳でもないのに」
『そうそう!私も同じ事思った!』
すると女性は淡々と
「それはこの後別室でご説明いたしますので、こちらの誓約書をよく読んでサインしてください」
『契約書?』
「誓約書?」
隣の男性も困惑している様だ。隣の会話が気になりつい立にへばり着く勢いでいたら
「お待たせいたしました?」
「あ…」
違和感ありありな体勢の時に担当の宇賀さん?が来てしまった。慌てて立ち上がり最敬礼しご挨拶すると、宇賀さんは明らかに笑っている。
「では、別室にご案内します」
気がつくと隣の男性は誓約書にサインした様で、別室行きになっていた。
「星野先生?」
「あっごめんなさい。よろしくお願いします」
さっきから半笑いの宇賀さんはテーブルに書類を沢山置き、その一番上には私が書いた小説をプリントアウトした物があった。そして…
「一番にお伝えさせていただく事は、貴女の小説はまだ保留中です」
「つまりまた書籍化が決まってないと?」
「はい」
やっぱりなぁ… なら何で呼んだの?
すると私の小説を打出した紙の束を私の目の前に置き宇賀さんが見る様に促す。言われるままにページを捲ると…
『凄い!ちゃんと読んでいるのが分かる。それにメモと付箋がたくさん』
書籍化申請は恐らく沢山されている筈だから、担当者はさっとしか読んでないと思っていた。でも審査するにあたりしっかり読んでくれている事に感動していたら
「勿体無いですよ」
「はい?」
宇賀さんの発言の意図が分からず固まってしまう。
そして宇賀さんはクリアーファイルから1枚の書類を取り出した。それは…
『さっきの男性も渡されていた誓約書だ』
やっぱり私にも出された。絶賛動揺中だけど取り敢えず説明をお願いします!
担当の宇賀さんとの約束は10時。時間を逆算すると家を6時過ぎに出なければならない。気がつくと5時20分を過ぎていて身支度を急ぐ。
休みの日はノーメイクだし、仕事の時はファンデと口紅に軽くチークしかしない。でも今日は何年かぶりにフルメイクをしてみた。鏡を見ながらメイクしても変わり映えしない自分に落胆する。
「げっ!もう6時じゃん」
慌てて戸締りと荷物のチェックをし家を出て最寄り駅に向かう。朝早いのでまだ電車も道も混んでいない。そうして7時過ぎの新幹線に乗り首都圏に向かった。早朝のこの時間の新幹線はリーマンが多く、寝ている人が多い。私は連結部近くの窓際に座り景色を眺めながら、ゆっくり朝ごはんを食べていた。
ふと通路を挟んだ反対の席に座る男性が目に入る。
学生さんだろうか? Tシャツにデニムの男性でパンを咥えスマホに齧り付いてる。
ゲームでもしているのか思ったら、見た感じ文字を打っているようだ。私も外出時の執筆はスマホでするから分かる。
『それにしで凄い集中力。さっきからパンを咥えたままで食べてないじゃん』
集中して文字を打っている時って、側から見たらあんな感じなんだとはじめて知った。その彼はまだスマホに集中している。あまり見ていては失礼なので視線を戻し、朝食を食べ終えてノートPCを鞄から出し今度は私が文字を打ち出す。
何故か今日は集中できて調子が良く言葉が湧き出てくる。こんな時は自ずとブラインドタッチする指もよく動き
『切りがいいからお茶を…』
そう思い顔を上げると視線を感じ通路に目をやると、あの学生さんが通路に立ち私を見てる?
「?」
目が合うと席に戻らずどこかに行ってしまった。なんだったんだろう? 疑問に思ったけど気にせず執筆に集中していた。するとスマホのアラームが鳴る。乗り過ごし防止の為に乗車前にセットしてあったのだ。何故なら集中している時の私は周りの音が聞こえなくなるし、寝てしまう可能性もあるからだ。
アラームを止めて降りる準備をし、ふと通路反対側の学生さんの席を見ると別の人が座っている。
『あれ?移動した?私が見すぎて嫌がられたの?』
小心者の私は気になってしまう。少し気落ちしたところで新幹線のスピードが落ちだし、そろそろ駅に到着するようだ。リーマン達は荷物を持ち出口に向かう。ここは終着駅では無く直ぐに降りないといけない。そうさっきの学生さんの事気にしている場合ではなかった。
やっと新幹線を降り案内表示を見ながら在来線に乗り換える。首都圏に来たのは2年ぶりだ。確か専門学校の友人の結婚披露宴に招待されて以来だ。
間違わないように確認して歩くから約束時間ギリギリになってしまった。
やっと出版社の前まで来てスマホを手に持ち入る。ギリギリの3分前だ。受付は無人で内線電話とPCが有り、前まで来ると音声が流れる。
『いらっしゃいませ。アポイントがお有りのお客様はQRコードをカメラにかざして下さい。それ以外のお客様は該当部署の番号を入力下さい』
「凄い!うちの会社なんて古びた内線電話だけだもんなぁ~ えっと宇賀さんからQRコードが送られていたから…」
スマホにQRコードを表示しカメラに翳すと
『星野様お待ちしておりました。プリントされた入館証をパソコン横のケースに入れ入場し、”5番”のつい立でお待ち下さいませ』
案内の通りプリントされたレシート大の紙をケース?ネームプレート?に入れ入口に向かうと、電車の自動改札と同じ様な機械がセットされていて緊張する。そして入館証をかざしロビーに入った。
ガランとしたロビーには人は居らずキョロキョロしていたら、警備員が声をかけてくれ指定されたつい立に案内された。
座って宇賀さんを待っていると、隣りの話し声が聞こえてきた。話の感じから隣も私と同じっぽい。
パーテーションで区切られただけなので、否でも応でも内容が聞こえてくる。
話をしているのは若い?男性と女性で、女性が出版社の人の様だ。
「何のために呼んだんですか?書籍化が決まった訳でもないのに」
『そうそう!私も同じ事思った!』
すると女性は淡々と
「それはこの後別室でご説明いたしますので、こちらの誓約書をよく読んでサインしてください」
『契約書?』
「誓約書?」
隣の男性も困惑している様だ。隣の会話が気になりつい立にへばり着く勢いでいたら
「お待たせいたしました?」
「あ…」
違和感ありありな体勢の時に担当の宇賀さん?が来てしまった。慌てて立ち上がり最敬礼しご挨拶すると、宇賀さんは明らかに笑っている。
「では、別室にご案内します」
気がつくと隣の男性は誓約書にサインした様で、別室行きになっていた。
「星野先生?」
「あっごめんなさい。よろしくお願いします」
さっきから半笑いの宇賀さんはテーブルに書類を沢山置き、その一番上には私が書いた小説をプリントアウトした物があった。そして…
「一番にお伝えさせていただく事は、貴女の小説はまだ保留中です」
「つまりまた書籍化が決まってないと?」
「はい」
やっぱりなぁ… なら何で呼んだの?
すると私の小説を打出した紙の束を私の目の前に置き宇賀さんが見る様に促す。言われるままにページを捲ると…
『凄い!ちゃんと読んでいるのが分かる。それにメモと付箋がたくさん』
書籍化申請は恐らく沢山されている筈だから、担当者はさっとしか読んでないと思っていた。でも審査するにあたりしっかり読んでくれている事に感動していたら
「勿体無いですよ」
「はい?」
宇賀さんの発言の意図が分からず固まってしまう。
そして宇賀さんはクリアーファイルから1枚の書類を取り出した。それは…
『さっきの男性も渡されていた誓約書だ』
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