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187.婚約

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陛下との食事の帰り中庭横の通路を歩いていると前からグラント様が来た。目が合うと駆け寄りいきなり両手で両頬を持ちあげる。突然の事に私もエスコートしてくれているレオさんも声もでない。

「何かありましたか?」
「へっ?」
「涙の痕が…」
「あ!陛下と食事をして話していたらちょっとナーバスになって泣いちゃいました」
「…」

そしてここからはグラント様にエスコートしてもらい部屋に戻った。部屋に戻ると何かを察したケイティさんが扉を少し開けて退室する。

2人きりになるとグラント様は抱きしめ口付ける。激しいのを覚悟したが優しい口付けだ。グラント様の腕の中はいつも通り温かくて安心する。
そしてモーブルに移る事に不安を感じているか聞き、不安より寂しいと話すと出来れば同行したいと言い表情を曇らす。心配かけたと思い


「きっと楽天家の私は行ったらすぐ慣れると思うんですがね…今はちょっと弱ってます」
「ならば貴女の傍に貴女を慕う者はおかない方がいいですね。弱っている貴女にアプローチする可能性があります。さっきのレオ殿の様に」

何でレオさんなのかよく分からないが確かに今優しくされたら弱いかもしれない。苦笑いをし用向きを聞くと、頼んであった挨拶の順を持って来てくれた様だ。効率よく回れるようにしてくれていて、夕刻は終わるように組んでくれいる。

「ありがとうございます。またアルディアには戻って来るけと何時戻れるか分からないから、お世話になったお礼は言っておきたくて」
「貴女らしいですね。多恵様…夜訪問してもいいですか?」

遅くならなければとお受けすると、また口付けて微笑み外に控えるケイティさんを呼んだ。
お仕事がまだあるグラント様と別れて早速挨拶回りに向かう。

グラント様はやはり仕事が出来る。まわる順番は無駄がなくあっという間にまわる事が出来た。部屋に戻る頃には6刻になり丁度夕飯時間となった。

挨拶に行く先々でまずチョコのお礼を言われる。チョコは高級品らしく下働きの人達は中々口にする事が出来ない。初めての人も多く感動された。
何にせよ喜んでくれたのとお礼を言え満足だ。
はぁ…今日は営業終了で後はゆっくりします…じゃなかった!グラント様が来るんだった。
本当は湯浴みを早く済めせて寝室でてん君と戯れたいけど約束したから仕方ないなぁ… そして夕食後6刻半にグラント様が来た。

「へ?」

正装をし両手に抱えきれない程の薄紫の薔薇を抱えての登場に固まる。すると夕刻から就いてくれているサリナさんが気が付くと退室している。
グラント様は目の前の来ると跪いて薔薇を差し出した。これって…

「貴女がアルディアに帰ってからと思っていましたが…やはり待てない。候補ではなく私と婚約しアルディアに戻られたら私の妻になって下さい」
「えっと…プロポーズ⁈」

そう、正式にグラント様からプロポーズを受けた。

「えっと…」
「婚約はモーブルで虫が着かないようにする為のもので、貴方を束縛するものではありません。貴女は思うままに過ごせばいい。そして女神の役目を終えて私を受け入れてくれるなら妻になってほしい」

“いずれはプロポーズされるかも”と思っていたが実際されると密かに嬉しい。でも…婚約って口約束でいいの?何か書面に残したりどこかに届出とかするの?正直そんな時間無いんだけど…

「あの…明後日にはモーブルに行くのに婚約とかって手続きが大変で無理なのでは?」
「書面にサインするだけで紙きれ1枚のものです。そこはあまり重要視していません。貴女の婚約者という肩書が欲しいのです。婚約者ならば大手を振って貴女に会いに行ける」

急に言われ口籠ったが正直嬉しい。受けていいのだろうか⁈悩んでいたら

『たえ グラント だいじょうぶ リリス だめ いわない』
『本当に?』
『てん いう ほんとう』

てん君に後押ししてもらい

「えっと…よろしくお願いします。あっ!でも離れている間に…」
「多恵様それ以上は言わないで下さい。私の命か尽きるまでそれは絶対ない!貴女の悪い癖だ。しかしそれはご自分に自信がない所からきているのをちゃんと理解してますよ」
「ありがとう…」

グラント様は少し潤んだ瞳で花束を渡してくれた。花束は大きくて重く長くは持ってそうにない。花束を見つめてどうしようか考えていたら、ふと花束の中心に小さい箱があるに気付く。する時グラント様が花束を持ってくれて、視線で箱を開封する様に促してきた。

『やっヤバイ!ドキドキして来た!これって…』

平然を装っているが口から心臓が飛び出しそうだ。
箱を開けたらプラスに小さなアメジストがはめられた指輪だった。

「以前貴女がケイティ嬢達と貴女の世界の婚約の作法の話をしていたと聞きました。ケイティ嬢にその時の話を聞き用意しました。アルディアにはその様な習慣がないので、一から職人に作らせこの箱庭に一つしかありません」
「嬉しい…」

グラント様は花束をテーブルに置き指輪を手に私の手を取った。どうやら填めてくれる様だ。
嬉しくて手を見つめていたら、グラント様が固まる。

「ん?」
「申し訳ない。との指に填めるのでしょうか?」

填める指が分からずあたふたするグラント様が可愛くて思わず私からキスをして左手薬指を動かして教える

私の薬指にグラント様の瞳と同じ薄紫の石が光っている。顔を上げたら少し潤んだ綺麗な菫色の瞳と目が合う。暫く会えない日々がやってくる。このままグラント様の腕の中にいたい。するとまた不安が顔を出す。

「昨日キース殿と話し合い多恵様が移られたら、モーブルに慣れられるまで交代で会いに行く事を決めました。恐らく妖精王が毎日行くのでしょうが、我々も貴女の役に立ちいのです。本当は協力などしたくないが、愛する女性の為ならなんでもやります」
「ありがとう。その気持ちが嬉しい」

するとグラント様は顔を上げ珍しく大きな声で叫ぶ

「私は今最高に幸せだ!」

幸せをグラント様の腕の中で噛みしめていたら、抱き上げあれそのままソファーに移動?
今日は紳士的なグラント様に安心していたら、最後に想いを込めた激しい口付けをいただく事になった。やっぱりグラント様の口付けは長い!

酸欠でぐったりしやっと解放してもらった。
こうしてグラント様は私の婚約者1号となった。
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