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184.サムシングフォー

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最近気づいたがキスも性格が出る様だ。

フィラは性格通り俺様な感じで強引、グラント様は意外にもねちっこい。キース様は常に様子を見て私の機微に合わしている感じだ。
でも総じて3人ともキスが長い!彼らが満足する頃には私はぐったりしHPが無くなる。キスでこれならその先は怖すぎる。ここにきて”絶倫疑惑”が浮上した。もしそうなら3人も夫にしたら早死するかもしれない。腹上死なんてぜってー嫌だ!

外はすっかり日は落ち灯を灯し馬車は進む。御者の小窓がノックされ到着が近いと知らせてくれる。
キース様のキスから逃げてカーテンを開けたらライトアップされた綺麗なアルディア城が見えてきた。

やっと到着し扉が開くとキース様が先に降り手を借り降りると、苦い顔をしたグラント様が待っていた。
まずは護衛頂いた騎士さんにお礼を言いう。何故かグラント様とキース様は見つめ合って?いる。

『チャンス!今のうちにこっそり部屋に帰ろうかなぁ…』

ゆっくり後退していたらキース様にがっつり腰を持たれて引き寄せられる。口火を切ったのはグラント様だった

「多恵様お帰りなさい。おかしいですね。なぜキース殿が一緒なのです?」
「貴方と思う事は一緒で少しでも愛おしい方と一緒にいたいのです。そうそう私も候補に戻りました。お互いいがみ合うのではなく愛する女性の為に協力し多恵様を幸せにしたい」
「私は貴方の助けなくとも多恵様を幸せにできる。協力する気はない」

ぐったりなのにやめてほしい…

「2人ともケンカするなら私先に部屋に帰ります。続きは2人でして下さい」
「「ケンカしませんから、部屋まで送らせて下さい」」

おー!見事にシンクロして。普段からそれくらい仲良くしてよ。やっと部屋に戻るの事になり、右にグラント様で左にキース様という贅沢エスコートで廊下を歩く。

はぁ…疲れたあと3日は大人しくしてようと今決めた!

部屋に戻ってもグラント様とキース様いがみ合いは続き、溜息を吐いた私に気付いたケイティさんに2人は締め出された。この世界の男性が嫉妬深いのは標準装備なのか⁈ 
2人が帰りソファーに雪崩落ちるとケイティさんが労ってくれ、港町の感想を聞かれる。

「海がキレイで街並みも異国情緒あふれてて楽しかったよ!そうそう…ケイティさんその青いリボンの箱2つとも下さい。」
「畏まりました」

箱をケイティさんから受取り箱の底に付けた目印を確認して一つをケイティさんに渡す。首を傾げているケイティさんに

「それ、婚姻のお祝いです。ケイティさんはまだ先だけど、私はもうすぐモーブルに行くから先に渡しておくね。ここでは婚姻時にお祝いを送る習慣が無いと聞いたけど、私の世界では婚姻祝いは贈るのが普通なの。こっちにいる間お世話になったから何かしたくて…開けてみて!気に入ってくれるといいけど…」

箱を持って固まるケイティさん。完璧侍女さんが珍しい反応をしている。再起動したケイティさんは震えた手でゆっくりプレゼントを開ける。

「ケイティさん危険なモノなんて入って無いからそんなに慎重に開けなくても…」

苦笑しながらそう言うと

「違うんです。嬉し過ぎて涙を堪えたら手が震えて…」

箱を開けたケイティさんは目を見開き開口一番

「綺麗…このグラスは…」
「ケイティさんの領地でしているかは知らないけど、婚姻時に赤いブロスで作った果実酒を飲ませ合う習慣があると聞いたので、その時に使ってもらえたらと思って…」

ケイティさんのところでも果実酒を飲ませ合う習慣があり、いいチョイスにキース様に感謝する。ケイティさんは青色の珍しいグラスを見入っている。そこで

「私の世界では花嫁はサムシングフォーっと言って【新しい物】、【古い物】、【借りた物】、【青い物】を身に着けて嫁ぐと幸せになれるというジンクスがあるの。それの内の【青い物】にしてみました。披露パーティーで使わなくても普段旦那様と晩餐の時に使ってくれたら嬉しいな」
「・・・」
「ごめん。勝手に用意して気に入らなかった⁈」
「申し訳ございません。勤務中なのに…」

ケイティさんが目頭をハンカチで押さえて泣き出し抱き付いて来た。

「今まで色んなお方にお仕えしましたがこの様に侍女に心を砕いて下さる方はいらっしゃらなかった。嬉し過ぎて勤務中に私的な事で涙するなんて侍女失格です」

気に入ってくれてとても嬉しい。出来れば最後のお勤めの日に居れないのが残念だ。
やっと落ち着いたケイティさんは語り出した。

「正直、多恵様の侍女を仰せつかった時、異世界の乙女だからどの様なお方が分からず警戒していたのです。非常識なお方なら苦労は必至ですから…
しかしお会いしたら愛らしい女性でしっかりしているかと思うと、変な所が抜けていて構いたくなる不思議な魅力をお持ちでした。短い期間とはいえ貴女にお仕えできた事を光栄に思います。出来るならば嫁がずモーブルに付いて行きお仕えしたかった…」

嬉しい言葉に泣きそうになる。お礼を言いたいのは私の方だ。

「ありがとう…お世辞でもうれしいよ。アルディアはいい人しばかりで異世界に来て不安だったけど、すんなりと順応できたのは本当に皆さんのお陰だと感謝してます。リリスのお仕事が終わればまた戻って来るね。その時はお友達になってもらえますか⁈」
「光栄ですわ。お帰りをお待ちしております」

こうしてお祝いを渡せて満足した私は、出発までに会えないエレナさんのお祝いと城勤め皆さんの為に買ったを大量にチョコをケイティさんに託した。

こうしてモーブル出発前のスケジュールを全てこなし、後3日はお世話になった方々にお別れの挨拶回りに向かうのみとなった。

『はぁ…あっという間だったなぁ…今は気が張っているけど、モーブル行ったらホームシック必死だなぁ…』

そんな事を考えていたら、遅い時間なのに文官さんが手紙を持ってきた。手紙は2通で1通はシリウスさんからで、3日後のお迎えについてだった。どうやらシリウスさんがお迎えに来るらしい。
もう1通は陛下からで明日の昼食を一緒にとのお誘いだった。文官さんに陛下の昼食のお誘いをお受けすると伝えて就寝する事にした。
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