女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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181.いざファーブス領へ

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どんどん甘くなるグラント様。恥ずかしくなって来て、アーサー殿下に叱られた事を話してしまう。

『離れている間に、グラント様にいい人が出来るかもしれない』と言ったら『箱庭が滅んでもそんな事はないし、奴は軟派な男では無い』と怒られました」

そう言いお二人の友情を感じ嬉しくなったと話す。するとグラント様は微笑み、そしてなぜか片眉を上げて

「そうですか…それにしても…多恵様は私の愛をまだお疑いの様ですね。昨日の口付けでは足りないのでしょうか?」
「へっ?」

そう言うとまた噛みつくような口付けをされた。グラント様の胸元を叩いて抵抗しやっと解放され

「スミマセンデシタ・・・」

安易な発言に反省していたらサリナさん入室許可を求めてきた。許可を出すと手紙を持って入室して

「グラント様。多恵様は連日の外出でお疲れです。そろそご退室を…」
「あぁ…明日はファーブス領ですね。港町は活気があって楽しめるでしょう」
「はい」

グラント様はまた口付けて退室していった。そして退室を確認したサリナさんはグラント様の溺愛に、目のやり場に困るとボヤいている。迷惑をかけ謝ると

「多恵さんを責めた訳では無いのですよ。多恵さんが選ばれた男性は皆さん愛情過多と言うか、独占欲が強い方ばかりですわ」
「重ね重ねすみません」

恐縮しながらサリナさんから手紙を受取り目を通す。キース様からで明日の予定が書かれていた。明日は日帰りしようと思ったら早朝の出発になる様だ。遅くても2刻前に起きないと間に合わない。連日の外出で少し疲れが溜まってきている。そのせいか少し痩せた気がする。

「さぁ…明日の準備もございます。お早く湯浴みをなさって下さい」

そうだ!早く寝ないと明日は買い物を沢山するから体力を回復させないと!
直ぐに湯浴みをし夕食後にお茶を頂きなら寝るまでの間、サリナさんとお話しをする。
そしてアーサー殿下の求婚を断った事を話すと、なんとも言えない顔をするサリナさん。殿下は人として好きだけど、愛し子を儲ける未来が描けないと話す。静かに聞いていたサリナさんは

「貴族ならば自分の望む縁は少なく、婚姻後に愛情を育むことが多いのです。多恵様の様にご自分の意思でお決めになれるのは羨ましいですわ」

そう言い苦笑いをした。そんなサリナさんに殿下が私をずっと想うと言ってくれた事。そしてそれを理解してくれる相手を見つけると話した事を告げる。

「でもね殿下は今は気付かないだけで、他に殿下に合う女性がいると思うの。その女性と幸せになって欲しい」

遠回しにサリナさんとの縁を望んでいる事を打ち明けると、微妙な顔をして

「殿下は王族であらせられ、血を繋ぐ役目をお持ちです。意に添わなくても妃を娶られないといけません」
「理解してくれる女性を捜すと仰っていたよ。そんな女性いるのかなぁ…初めは良くてもやっぱり自分だけを見て欲しいと思うのが女だから…」
「私はお答えできる立場ではありませんので…」 

ここで勇気を出して発破をかけてみる

「サリナさん根性出して殿下に告白したら?」
「多恵さん。私を不敬罪で投獄させたいのですか⁈」
「そんな訳…でもさー殿下ならロイヤルスマイルで“ありがとう”って言いそうだけど」

サリナさんもそう思ったのか顔を合わせて笑う。きっとサリナさんなら殿下が私に想いがあっても、殿下を支えていい妃になりそうなんだけどなぁ…でもこれ以上は口を出さない方がよさそうだ。縁があれば必ず引き合うから。

7刻半になり早目に就寝する。今日は朝からお出かけでてん君をもふっていない。てん君を呼ぶとあからさまに拗ねている。

『たえ いそがしい てん さみしい』
『ごめんね もう少ししたら落ち着くから』
『たえ いま だいじ がまん』
『てんく~ん!』

ベッドの中で全力でてん君をもふもふしていたら、いつの間にか力尽き眠っていた。

やはり疲れが溜まっている様で、てん君の前足パンチとサリナさんの大きな声で目が覚めた。ここから慌ただしく身支度し護衛騎士さんが迎えに来てくれるのを待つ。確か第1~3騎士団から5名と女性騎士が1名同行してくれるはず。
ソファーに座りぼんやりしていたらお迎えが来た。

「へ?」

何この面子は!各団の副団長と女性騎士はジャンヌ様が来た。慌てて立ち上がり駆け寄ると見事に躓き前に倒れる。流石騎士さんで咄嗟に皆さんが手を差し伸べてくれ転倒を免れ、真正面にいたデュークさんが受け止めてくれ

「お怪我はございませんか?」
「ありがとうございます兄貴」
「「「アニキ?」」」

思わず兄貴って言っちゃた!皆さん何の事が分からずキョトンとしている。

「えっと…デュークさんごめんなさい。私の世界でそれは兄様を意味します。馴れ馴れしいですよね…」
「何を仰います。光栄ですよ!」

“兄貴”が意味が判明したらクレイブさまが

「私は”兄貴”になれませんか⁈」

クレイブ様が眉顰め聞いてくる

「えっと…兄貴なんて失礼では?」
「私も兄貴と呼ばれたい!呼んでいただけませんか?」
「デューク様もそうですが“兄貴”流石にあれなので“兄様”でもいいですか?」
「「はい!」」

2人は嬉しそうに微笑む。そして不服そうにレオ様が

「私は兄様はちょっと…」
「あのですね別に敬称を変える必要は無くてですね…」

何かずれて来ていない?話題を変えて

「そもそも今日の護衛の人選が間違っていませんか?」

どうやら今回の外出がアルディア最後になるので、護衛は精鋭をと陛下が命じたらしい。第1と第2はアーサー殿下とヒューイ殿下がお決めになって、第3はトーイ殿下が前回と同様にトーナメントをし、試合に勝った者を選んだそうだ。

「何か私ごときにこんな凄い方に就いて頂いて申し訳ないです」
「何を仰います。貴女は王族の尊き方々と同じです。誠心誠意お仕えいたします」
「やめて下さい。堅苦しいのは苦手です。いつもの様に砕けた口調でお願いします」

冷静に状況を見ていたジャンヌ様が出発を促す。予定時間が過ぎていたようだ。密かにジャンヌ様が怒っている。

馬車にはジャンヌ様が乗車され、各副団長たちは馬で並走される。馬車の中でジャンヌ様から港町のおすすめのお店を聞き、行きたいお店をピックアップする。
車内はジャンヌ様との会話が弾み長い1刻ほどの移動も苦にならなかった。窓から見える景色が変わってきたら、御者の小窓が開き間もなく到着すると教えてくれる。その後少ししたら馬が嘶きと馬車が停まる。クレイブ様の手を借りて降りると立派な建物の前にキース様がいた。キース様は足早に来て抱きしめる。
今日のキース様はスーツ姿ではなく、ダークグレーのスラックスに白シャツと同じくダークグレーのベストを着用。クールなイメージの彼に良く合っている。

「良く起こし下さいました。今日は我が領地を案内できることを光栄に思います」
「お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします」
「騎士団の皆さんはこのホテルで待機いただき、ジャンヌ様は平服で公爵家騎士団と共に護衛いただきます。多恵様。護衛は離れて付きますので、私の側を離れないで下さい」
「はい。皆さん今日はよろしくお願いします」

こうして副団長達と別れてキース様と港町へくり出します。
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