女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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160.パンプアップ

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『はぁ…やっと終わった。後はイザーク様のトコで今日は終わり。頑張ろう』

ガッツポーズで自分を鼓舞しイザーク様の執務室に向かう。執務室に着き意気込んで入室したら、イザーク様は不在。で何故がグラント様が居て、挨拶もそこそこに抱き締められた。
状況が分からずグラント様の腕の中でジタバタする私。護衛騎士のポールさんが離すように忠告するがグラント様は一向に離さない。抗うのに疲れた私は成すがままで抱き締められている。

『あれ?マッチョになってる?』

旅行前に会った時は窶れていてフラフラしてたのにがっしりしている。特に大胸筋が発達している。
カップ上がりました?

「グラント。多恵様はお疲れだ。離して差し上げなさい」

遅れて来たイザーク様によりやっと解放された。

「あの…グラント様近いです…」
「そうですか?」

べったりくっついて座るグラント様は終始にこやかだ。密着してさらによく分かる。私が居ない間に鍛えた様だ。まだ私の好きな細マッチョだからこれ以上は鍛えないで欲しい…

「多恵様。お疲れの所申し訳有りません。お願いしておりました貴族とのお茶会ですが、明後日になりました。参加予定の貴族は6家参加します。当日は騎士が常に1名と侍女にサリナ嬢が着きますので安心下さい」

「分かりました。まだ読んでいませんが参加する方から手紙が届いていましたよ」
「こちらも注意しますが執拗な接触か有れば対処するので仰って下さい」

はぁ…人見知りの私には気が重いイベントだ。この後2日後のビルス殿下とビビアン王女の見送り、その翌日のダラス殿下のお見送りの詳細を聞く。ゔーん覚悟はしていたがハードだ。

「多恵様がモーブルに移られるまで日がなく、スケジュールがタイトで申し訳ありません。気になる所は仰って下さい再調整します」

スケジュールを書いた紙を確認しながら説明をうける。

明日  …  フリー
2日後 …  ビルス殿下、ビビアン王女見送りとお茶会
3日後 …  ダラス陛下お見送り
4日後 …  オブルライト領を視察し1泊
5日後 …  王都に戻りフリー
6日後 …  アーサー殿下とお出かけ
7日後 …  未定

ん?暫くアルディアを離れるからあそこに行ってみたい。

「あの…行きたい所がありますが、調整可能ですか?」
「遠出で無ければ大丈夫ですよ」『えっ!』

思わず隣に座るグラント様を見上げた。
グラント様の腕に力が入る。あからさまに機嫌が悪い。そっか!貴方はMr.やきもちでしたね。

「以前にキース様に教えてもらったファーブス領にあるチョコラーテ専門店に行きたいのです。7日後のフリーの1日では難しいですか?」

少し考えたイザーク様は朝一出発すれば可能らしく、早速ファーブス公爵へ連絡してくれる事になった。嬉しくてお礼を言うと

「多恵様、私がお供しましょう!」

食い気味にグラント様が同行すると申し出た。忙しい彼にお願いするのは気が引ける、キース様に案内してもらう約束していたし… そう述べると

「…実質キース殿との逢瀬を…」
「違います。チョコラーテ専門店でチョコドリンクが頂けると聞いて行きたいのと、港町でサンゴや真珠細工が名産だと聞いています。近々婚姻する元侍女のエレナさんと婚姻予定のケイティさんに何かお祝いを買いたいんです。お2人共私がモーブルに行ってから式を挙げられるので、お祝いを渡してからモーブルに行きたいのです」

目的を伝えると何故か黙り込む二人。変な事言った? この箱庭には結婚祝い的な習慣はないの?
すると何故か涙ぐむイザーク様。そしてやたらいい顔で微笑むグラント様。う…ん意味がわからん。

「分かりました。貴女の望むままに…」

ファーブス領行きは決まり、モーブルへの荷造りは私が留守中に侍女の皆さんがしてくれる事になった。
バース領の出発前に陛下パパに貰ったお小遣いが沢山残っているから、侍女の皆さんにチョコラーテを沢山買っていこう。考えてだけでウキウキしてきた。
雑談をしていたら6刻になっていた。再度調整をお願いしイザーク様の執務室を後にした。予想はしていたがグラント様が部屋まで送ってくれる。腰に腕を回され密着し歩きにくい。

「グラント様。歩きにくいです。少し離れて下さい」
「それは無理です。歩きに難いならお抱きしましょう」
「断ります」
「バース領で誰からお心を受け取ったのですか?」
「もぅ意地悪言わないで下さい。報告書で大方知っているんでしょ⁈」

相変わらずMr.やきもちだ。鍛えてがっしりしたグラント様は男らしさが増し、一緒に居ると恥ずかしい…でもそれは絶対言わない。だってグラント様が豹変するから危険だ。

「貴女が居ない日々は無いも感じないつまらない日々でした。この城に貴女が居るだけでこんなにも穏やかにいれる。貴女がモーブルに行ってしまったら私はどうって過ごせばいいのだろう…」

寂しげにそう言うグラント様。

「人は順応するものです。初めはお互い寂しいでしょうがきっと慣れますよ」
「寂しいと思って下さるのか⁈」
「はぃ?そりゃ頻繁にあっていた人と離れると寂しいですよ」

部屋に着いてお礼を言おうとしたら当然の様に一緒に入室するグラント様。マリカさんが居て驚いている。

「すまぬがすぐ用件は終わる故、席を外してもらえるか?」

焦るマリカさんが視線を送ってくる。応じないと反対に厄介だから少しだけお相手しよう。マリカさんに頷いたら退室していった。
マリカさんが退室すると待ってました! とばかりに抱きしめてくるグラント様。でも私もグラント様の抱擁は大好きだからちょっと嬉しい。

「貴女が旅の間に貴女に再度選んでもらえる男になるべく心身ともに鍛えたんです」
「確かに逞しくなられましたよね」

『トーレーニングに目覚めてこれ以上マッチョにならないでね…』

と心の中で呟く。そしてグラント様は伴侶候補に戻りたいと熱望する。でも… 

「気持ちは嬉しいけど、もう少し待ってほしい。今はモーブルとそれに関係してバスグルの対策で頭が一杯で自分の事は考えられないんです」

「分かってます。責任感が強い貴女だからそう言うだろうと思っていました。モーブルに行っても貴女への思いは変わらない。離れる分想いは余計に強くなるでしょう。手紙を書きます。時間を見つけて会いに行きます。私を貴女の心の中において下さい」

『もうずっと前から私の心にいますよ…』

でも今は言わない。言ったら絶対ラブラブな雰囲気突入できっと走り出したらグラント様は止まってくれない。
私もリリスのお仕事後回しにしてしまうから。

「ぐぅ~」

いいタイミングで私のお腹の虫が鳴った。そうだ朝も昼もあまり食べて無かった。恥ずかしくて俯くと

「お疲れの所申し訳ございませんでした。侍女を呼び夕食を用意してもらいましょう。その前に…頬に口付けていいですか?」

赤い顔を上げて頷くと頬に額にグラント様のキスの嵐が…恥ずかしくて身じろぐと更に抱きしめる腕の力が強まり体が密着する。

「ぐぅ~」

2度目の腹の虫が泣いたので背中を叩いて開放してもらった。
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