女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

文字の大きさ
上 下
159 / 189

158.王の決断 ルークside

しおりを挟む
モーブル、バスグルの話し合いの見届け役として両者の会談に加わる事になり、時間まで執務室で雑務をこなしていた。護衛騎士が多恵殿の遣いが来て多恵殿が面会を求めていると伝える。
まだ会談までに時間がある。胸騒ぎがしい直ぐ会うと返事をし多恵殿が来るのを待った。
執務室に来た多恵殿は気の所為か明るい表情をしている。そして前置きもなく

「私から伴侶候補の解消をお願いしました」
「貴女に無理強いした者がいるのか?」

と聞いたら候補者達と意見が合わず解消して考る時間が欲しいと言う事だった。更に多恵殿は伴侶は王族、貴族ではなく平民からでもいいと言い出した。
イザークと呆れてしまう。
アーサーをはじめ候補者の男どもは”青い”。相手を恋うばかりで思いやれていない。恋われるばかりで多恵は殿逃げ場が無くなり辛くなったのだろう…

そして平民の暮らしがしたいと言い出した。流石にそれは容認できない。囲うわけではないが、ロナウドの様に身に危険が伴わない様にしなければならない。頭を抱えていたらイザークがいい提案をした。

「侍女のサリナ嬢から休暇願いが出てるので、一緒に子爵領に向かわれては?」

多恵殿は喜びモーブルとレッグロッドから許可をもらって下さいとおねだりをして来た。
なんと可愛いのだろう。娘がいたらこんな感じなのだろう。いや多恵殿は娘だ。娘のためにダラス殿とオーランド殿に了承を得に行った。

モーブルとレッグロッドから了承を貰いイザークにバース子爵に多恵殿の滞在する旨を連絡させ、多恵殿の希望通り平民の扱いをする様に命じ影をバース領に向かわせた。

多恵殿が旅立ち(元)候補者達の様子が耳に入る。落ち込み伏せっている者や奮起し己を鍛える者様々だ。我が息子は情けない事に前者で公務が滞りデュークが仕切ってくれている。
アーサーは王になるべく教育を受け本人も努力をお拘らず才もあり、次期王に相応しい男となり今まで挫折知らずに来た。アーサーが望めば身分関係なく拒む女性はいないだろう。そうアーサーは今回が初めての挫折。儂としては次期王が女神の乙女を妃に迎える事は最上級の喜びだ。
しかし…儂の眼から見て恐らく多恵殿はアーサーを選ばない。根拠は無いが多恵殿は実年齢より精神年齢が高く儂とかわらん。経験値や知識は高い故、確たる考えと意志をもつ。
対してアーサーは王族故全てにおいて”国”を優先する考えだ。多恵殿は元の世界では平民だった故考え方が異なる事がある。

今はいいが夫婦となるとそのズレは次第に大きくなり諍いを生む。女性を蔑む訳ではないが微笑み夫に賛同する女性が妃に好ましい。

多恵殿は素晴らしく愛らしい女性だ。儂が若かったら確実に惚れている。アーサーが王族では無く一般貴族なら多恵殿と上手くいったもやしれん。
多恵殿が留守の間にアーサーに話をし決断させるいいタイミングなのかもしれん。そんな事を考えながら多恵殿の様子を知らせた報告を読む。

「はぁ…」

もう旅先で求婚されている。あのお方はどれだけの男を魅了するのだろう…

翌日にアーサーを執務室に呼び出した。
部屋に来たアーサーは自信をなくし情けない顔をしている。ため息を吐き従僕と騎士を退室させた。

「アーサーなんだその顔は!王族がそんな顔をしていたら貴族や民が不安になる。しっかりせんか!」
「申し訳ありません」

アーサーは座り直し表情を引き締める。

「お前に父としてまた王として話がある。単刀直入に言おう。多恵殿を諦め貴族から妃を娶れ」
「父上!」

家臣から早く妃をと要望が絶えない事。そして多恵殿が旅から帰るとモーブルに拠点を移す事を話した。アーサーは節目がちに静かに聞いている。

「恐らくモーブルに行き次にレッグロッドへ渡り、役目を終えられるのは恐らく数年後。その時はお前は30近い。世継ぎも急ぐのに正直待っている余裕はない」
「しかし次期王は私で無くてもヒューイやトーイが居るではありませんか!」
「家臣はお前を次期王に望んでおる。民も大切だが王家を助ける家臣は蔑ろにできん」

アーサーの気持ちが分かるだけに伝える儂も辛い。

「しかし私は多恵殿を…」
「ならば多恵殿がモーブルに移るまでに時間をつくる故、多恵殿と向き合い求婚しなさい。もし多恵殿が受け入れたら、婚約し役目が終えるまで王位継承は伸ばそう。家臣は儂が納得させる」

これが最大の妥協点だ。これ以上はまた貴族から不審を買ってしまう。親としては初めて恋おた女性だ叶えてやりたいが…アーサーの表情が絞まりいつもの息子になった。この後多恵殿の旅の報告を読んだアーサーは苦笑し

「このままいくと多恵殿は箱庭中の独身男性から求婚されますよ」
「それだけ愛すべき女性おひとなのだよ」

この後アーサーと男同士で愛する女性の話で盛り上がった。

アーサーは翌日から公務に戻り、自らデュークに頼み鍛錬に励みだした。それはまるで一世一代の求婚の為に自分を磨いている様だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

処理中です...